医師が子宮内容除去術の際に手技を誤り、子宮および小腸に穴を開けた過失と、その後の処置が速やかに行われなかったことにより腹膜炎を発症し手術を余儀なくさせた過失により、損害賠償の請求が認められた事件

判決東京地方裁判所 平成18年7月20日判決

子宮内容除去術とは、流産手術ともいわれ、子宮に残った胎児や、胎盤を取り除く手術のことです。器械を使って子宮口を拡張したうえで、子宮に残った組織を取り除くことで子宮機能をリセットし妊娠できる状態に戻します。

子宮内容除去術は、日帰りで受けることも可能ですが、妊娠している子宮は柔らかいため、手術の際に穴が開いたり、合併症を引き起こすことがあります。開いた穴の大きさによっては、早急に開腹し修復をしなければ腹膜炎を併発し死に至る可能性があるため、細心の注意を払って手術を行うことが重要となります。

以下では、子宮内容除去術を行った際に処置を誤って、子宮および小腸に穴を開けたことや、その後の処置を速やかに対応しなかったことについて病院側が過失を認めて、被告病院に対し362万円余の賠償を命じた事件を紹介します。

事案の概要

女性Aは妊娠していましたが、胎児の心拍が確認できず流産していると診断され、被告病院で子宮内容除去術を受けることになりました。

9月19日の午前11時より、被告病院のB医師によって手術が行われました。子宮内の胎児や胎盤を取り除くため器具を挿入しましたが、子宮底を確認することができず違和感を感じたため、C医師に確認してもらいました。異常な所見は認められなかったため、D医師に交代して引き続き手術を行い午後4時36分に手術が終了しました。

術後にB医師が超音波検査をしたところ、子宮内に遺残物は見当たりませんでしたが、穴が開いている疑いが見受けられました。B医師は、感染症の可能性も考慮し、止血剤と抗生剤を投与しました。

午後7時50分頃、女性AはB医師に下腹部痛を訴えていましたが、再度検査をすることはありませんでした。

術後2日の午後2時40分頃、D医師は女性Aに対し腹部レントゲン検査を行いました。検査の結果、子宮および小腸に穴が開いていること、さらに腹膜炎を発症していることが確認され、小腸を27㎝切除して子宮の縫合手術を行い、退院後も腹痛と体調不良を理由に約1ヶ月欠勤することになりました。

女性Aは、子宮内容除去術を行った際に子宮および小腸に穴を開けたことや、その後の処置が遅れた過失があるということを理由に、被告病院に損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

本件は、病院側が、子宮内容除去術の際に子宮に穴を開けた過失と、その後の処置が速やかに行われなかった過失について争わず認めました。

そのため原告側が主張した、損害の範囲と損害額が争点となりました。

裁判所は、被告病院の過失により入院および手術を余儀なくされた女性Aに対し以下の損害を認めました。

  1. ①入院期間中(15日間)の諸雑費
  2. ②入院期間中の休業損害は認められるが、退院時の女性Aの体調は良好であったため、退院後の体調不良による欠勤については、一定の範囲の休業損害
  3. ③過失によって将来の妊娠に及ぼす影響および手術跡が残ったことについての懸念による精神的損害
  4. ④弁護士費用

①~④を踏まえて、裁判所は被告病院に対し、362万円余の請求を認めました。

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