赤ちゃんの呼吸障害と人工呼吸器による治療のしくみやリスクなど

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

赤ちゃんの呼吸する能力が不十分である場合、人工呼吸器によって呼吸を助ける必要があります。

しかし、新生児の肺は膨らみにくいため、人工呼吸器の装着に伴う合併症が生じるリスクが比較的高いことに注意しなければなりません。

さらに、人工呼吸器が外れてしまう事故が発生すると、赤ちゃんに障害が残ってしまうリスクや、死亡してしまうリスク等があります。

この記事では、赤ちゃんの呼吸障害と人工呼吸器による治療方法、人工呼吸器の安全性等について解説します。

赤ちゃんに起こりやすい呼吸障害

赤ちゃんは身体の機能が十分に発達しておらず、呼吸の乱れが発生しやすいです。

特に、通常よりも早く生まれた赤ちゃんや、軽い体重で生まれた赤ちゃんは、呼吸に関する障害が起こりやすいため注意しなければなりません。

赤ちゃんに起こりやすい呼吸障害として、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 新生児呼吸窮迫症候群
  • 新生児一過性多呼吸
  • 未熟児無呼吸発作
  • 慢性肺疾患

人工呼吸器による赤ちゃんの治療方法

赤ちゃんの呼吸に問題がある場合には、NICU(新生児集中治療室)に入ることがあります。

NICUでは、赤ちゃんは温度や湿度が保たれた保育器に入り、呼吸障害がある場合には人工呼吸器などによって呼吸を補助されます。

また、早産児である等の理由で「サーファクタント」という物質が不足すると、赤ちゃんの肺が膨らまず、呼吸がうまくできなくなる「新生児呼吸窮迫症候群」を発症するおそれがあります。

発症してしまった場合には、人工呼吸器の装着だけでなく、人工的なサーファクタントを肺に投与することがあります。

人工呼吸器の種類としくみ

人工呼吸器

赤ちゃんの呼吸がうまくいかない場合には、主に以下のような方法が用いられます。

経鼻式持続陽圧換気 肺を膨らませるためのエネルギーを減少させることによって、呼吸を改善します。


気管内挿管 主に口から気管へチューブを挿入して、呼吸を助ける方法です。気道を確保して、呼吸数や換気量等をコントロールすることができます。

人工呼吸器の治療はいつまで行う?

赤ちゃんが、人工呼吸器を外して保育器から出られる基準は、明確に定められているわけではありません。
一般的な目安は、修正週数が37週程度になり、体重が2000g程度になったときだと言われています。

NICUで人工呼吸器を装着されていた赤ちゃんは、GCU(新生児回復室)で引き続き治療を受ける等してから退院することが多いです。

人工呼吸器の赤ちゃんへの安全性

赤ちゃんの肺は大人よりも膨らみにくいため、気圧を調節して、肺を損傷しないように注意しなければなりません。
また、赤ちゃんの協力を求めることができないため、適切に麻酔をかけて挿管ミスや抜管を防止しなければなりません。

合併症のリスク

赤ちゃんに人工呼吸器を装着することにより、主に以下のような合併症が生じるおそれがあります。

【人工的に空気を送り込むこと等による影響】

  • 気胸
  • 肺気腫

【挿管したチューブの接触等による影響】

  • 気管肉芽

【センサーの装着やテープの貼り付け等による影響】

  • やけど
  • 皮膚の損傷

後遺症のリスク

もしも、人工呼吸器が意図せずに外れてしまうと、赤ちゃんが呼吸困難となるリスクが高いです。
そうなれば、低酸素脳症を発症するおそれや、死亡してしまうおそれ等があります。

死亡のリスク

人工呼吸器が意図せずに外れてしまうと、赤ちゃんが死亡してしまうリスクがあります。

これは、自分で呼吸することが困難であるために人工呼吸器が用いられているからです。

同様に、人工呼吸器の装着が必要な赤ちゃんに装着しないことや、酸素の投与が必要な赤ちゃんに投与しないことには、赤ちゃんの死亡リスクを高めるおそれがあります。

新生児の人工呼吸器に関する医療過誤の裁判例

適切に人工換気を行わなかったことについて争われた医療過誤の裁判例について、以下で解説します。

【事件番号 平8(ワ)15601号、東京地方裁判所 平成12年10月23日判決】
本件は、自発呼吸がない状態で生まれた赤ちゃんが、マスクを患者の口と鼻全体に被せて手動で人工呼吸を行う「アンビューバッグ」による換気を受けたものの、低酸素性虚血性脳症により死亡した事案です。

裁判所は、赤ちゃんは胎児仮死の状態から新生児仮死に移行したことや、赤ちゃんが重度仮死であったこと等を認めました。
なお、生まれた赤ちゃんの状態が特に悪い重度仮死の場合には、アンビューバッグ等で1分程度換気してから、気管内挿管して換気する必要があります。
さらに、アンビューバッグは酸素ボンベに接続して、酸素を供給しなければなりません。

そのため、被告医院の医師が、酸素ボンベを接続していないアンビューバッグによる人工換気を漫然と継続したと指摘して、医師らの蘇生措置上の義務違反があったことや、義務違反と赤ちゃんの死亡との因果関係を認めて、逸失利益や慰謝料、弁護士費用等、合計約4500万円の請求を認容しました。

弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
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