監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
同じ時期に産まれた赤ちゃんと比べて、体が反り返しやすかったり、ミルクや母乳を上手く飲めなかったり、運動面の発育が悪いと感じると、「脳性麻痺ではないか…」と不安になるのも無理はありません。
この記事では、脳性麻痺はいつ判明するのか、どのような症状が現れるのか、治療方法などについて分かりやすく解説していきます。
目次
脳性麻痺の定義
受胎から生後4週間以内の新生児までの間に生じた、脳の非進行性病変に基づく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常です。
その症状は満2歳までに発現します。
進行性疾患や一過性運動障害、又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外します。(厚生省脳性まひ研究班の定義1968年)
上記の症候群を脳性麻痺といいます。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから生後4週間以内になんらかの原因で脳の神経が損傷すると、脳からの電気信号が筋肉にうまく伝わらなくなってしまい、思い通りに体が動かせない・姿勢を保てないといった運動障害が2歳くらいまでに発現します。
一度傷付いた脳の神経は元に戻せないため、将来的に治ることはありませんが、脳性麻痺の障害自体が進行することもありません。
運動障害の症状は、脳の損傷部分や範囲によって異なるため、どのような症状がいつ現れるかはお子さんによって異なります。
赤ちゃんの場合、体が反り返りやすかったり、手足がこわばったり、ミルクや母乳が上手く飲めなかったりして脳性麻痺に気付くことがあります。
もっとも、運動機能は成長過程で徐々にできるようになっていくものがほとんどで、個人差も大きいことから、生まれてすぐには脳性麻痺の診断ができないことも多いです。
明らかに分娩時に異常があった場合や、重度の障害がある場合以外は早期発見が難しいので、1年ほど経過観察をして、お子さんの発達状況や出生前後の異常の有無などによって、総合的に診断します。
生後3ヶ月頃にみられる脳性麻痺の特徴
生後6ヶ月頃までにみられる脳性麻痺の特徴
生後6ヶ月以降にみられる脳性麻痺の特徴
脳性麻痺の原因は、出生前の脳形成異常や胎内感染、出生後にかかった疾病など多岐にわたり、原因が全く分からないケースもあります。
脳性麻痺の原因のなかでも多いのが、分娩時の低酸素状態や感染症です。
低酸素状態
分娩時に赤ちゃんへ十分な酸素供給ができなくなると、低酸素状態になって後遺症につながることがあります。
低酸素状態を引き起こすものとして、次のような要因が挙げられます。
感染症
分娩時に赤ちゃんがウイルス感染すると、脳炎や髄膜炎を発症して後遺症につながることがあります。
感染症によって脳に損傷を負う可能性のあるものとして、次のような要因が挙げられます。
脳性麻痺は、脳の損傷部分によって次の4つの病型に分類され、それぞれ症状が異なります。
発症頻度が高いのはアテトーゼ型と痙直型ですが、反り返りが強い・体が硬くなる・手足が意図せず動くなど複数の症状を併せ持つ混合型であることも多いです。
また、脳の運動野以外の部分に損傷を受けると、知的障害や行動障害、視覚・聴覚の異常がみられることもあります。
痙(けい)直型(ちょくがた)とは、筋肉がこわばって手足が硬くなる病型です。
脳性麻痺に最も多くみられるタイプで、脳性麻痺児の約70~80%が痙直型だといわれており、大脳の運動指令を伝達する錐体路系が損傷することで引き起こされます。
痙直型の主な症状
筋肉のこわばりは、両手・両足に起こることもあれば(四肢麻痺)、片側の手足(片麻痺)、両足のみ(対麻痺)に起こることもあり、最も重い四肢麻痺では、ミルクや母乳が上手く飲めない嚥下障害や、けいれん発作、知的発達障害を伴うことも多くあります。
アテトーゼ型とは、自分の意思とは関係なく筋肉の緊張度合いが変わることにより、不随意運動がみられる病型です。
脳性麻痺児の約20%がアテトーゼ型だといわれており、大脳の奥深くにある不随意運動にかかわる大脳基底核が損傷することで引き起こされます。
アテトーゼ型の主な症状
アテトーゼ型の脳性麻痺児は、一般的に知能は正常で、けいれん発作を起こすことは稀であるケースが多いです。
運動失調型(弛緩型)とは、筋肉の動きを上手くコントロールできないために、体のバランスをとることが難しくなる病型です。
脳性麻痺児の約5%未満と最も少ないタイプですが、小脳や神経伝達路を損傷することで引き起こされます。
運動失調型の主な症状
混合型とは、2つ以上の病型が混合したものをいいます。
ほとんどが痙直型とアテトーゼ型の混合型で、それぞれの運動機能障害が入り混じった症状がみられるのが特徴です。
重度の知的発達障害を伴うことも多いです。
混合型の主な症状
脳性麻痺と診断された赤ちゃんは、運動機能の障害以外にも、てんかんや知的発達障害などの合併症を起こすことがあります。
また、脳性麻痺の影響でさまざまな二次障害を引き起こすケースも少なくありません。
脳性麻痺の合併症として、発症する可能性のある症状は次のとおりです。
てんかん 脳性麻痺児のてんかん発症率は約40%といわれています。てんかんは、けいれん・手足のこわばり・突然意識がなくなる(欠神発作)など、さまざまな種類・症状があります。
知的発達障害(精神遅滞) 脳の損傷が大きいと、合併症として知的発達障害(精神遅滞)を発症する確率が高くなります。
視覚・聴覚障害 身体的には、斜視や眼振、難聴などの視覚的・聴覚的な障害を合併するケースもあります。
摂食嚥下障害 食べることや飲み込むことが上手くできない、摂食嚥下障害を合併するケースも少なくありません。
上記のほかにも、言語障害、呼吸障害、睡眠障害など、脳性麻痺の合併症として発症する可能性のある症状はさまざまです。
脳性麻痺の障害自体は進行しませんが、二次的障害によって障害が重くなることはあります。
二次的障害とは、脳性麻痺の影響によって起こる副次的な障害のことです。
例えば、加齢や老化による機能低下や、日常生活における無理の蓄積による骨格の変形や関節の拘縮・脱臼が挙げられます。
他にも、以下のようなさまざまな障害が生じる場合があります。
胃食道逆流症(GERD) 脳性麻痺では、筋緊張が強くなると、背骨が曲がってしまったり、けいれんで腹圧が高くなったりして、胃の内容物が食道に逆流する“胃食道逆流症”を引き起こし、嘔吐や胃出血、誤嚥による肺炎を招くおそれがあります。
呼吸障害 脳性麻痺では、姿勢が上手く保てないことや筋緊張が強くなることが原因で、気道が狭くなったり、呼吸の動きが不十分になったりして、“呼吸障害”を引き起こし、気管支炎や肺炎を招くおそれがあります。
脳性麻痺の検査
脳性麻痺の診断では、次のような検査から総合的に判断されます。
なお、脳性麻痺以外の疾患の疑いがある場合には、これらのほかに血液検査・尿検査・電気生理学的検査・遺伝子検査が行われることもあります。
新生児の脳性麻痺の治療
脳性麻痺の症状は赤ちゃんによって異なるため、治療方法は多岐にわたります。
一度傷付いてしまった脳を完全に治療する方法はありませんが、少しでも自立した日常生活が遅れるように、次のような方法によって症状の緩和や調整を図ります。
健康に生まれてくるはずだった赤ちゃんが、医療過誤が原因で脳性麻痺となってしまった場合、医療機関側に責任を追及できる可能性があります。
医療機関側に過失があったこと、その過失により赤ちゃんが脳性麻痺になったという因果関係が認められれば、医療機関側から金銭による賠償(=損害賠償)を受けることができます。
損害賠償を請求するためには、当事者間で話し合って解決を目指す示談交渉や、裁判所等の第三者を介して解決を目指す調停・ADR、訴訟といった方法があります。
こうした手続きは、医学的知識や法的知識が必要になるため、まずは医療過誤問題に精通した弁護士への相談をご検討ください。

医療過誤のご相談受付
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