監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
羊水塞栓症は発症することが稀な疾患です。しかし、妊娠や出産に伴って発症する条件は広く、すべての母親にリスクがあるといえます。
発症すると、現在の医学であっても死亡率が低くないため、早期の診断や治療を行うことが重要となります。
この記事では、羊水塞栓症を発症する確率や死亡率、羊水塞栓症の症状、原因、診断方法、治療方法等について解説します。
目次
羊水塞栓症とは、胎児の細胞や組織が含まれている羊水が、母親の血液に入り込むことによって引き起こされる疾患です。主に、羊水に含まれる物質へのアレルギー反応によって引き起こされると考えられており、発症してしまうと重篤な症状になるケースが多いです。
母親の死につながるおそれもある、危険な病気だといえます。
羊水塞栓症は珍しい疾患であり、2万~3万例の出産につき1例だけ発症する程度の頻度です。そのため、過度に恐れる必要はありません。
ただし、発症してしまうと重篤化リスクの高い疾患でもあります。
羊水塞栓症を発症してしまうと、かつては死亡率が60%~80%といわれていました。しかし、現在では死亡率が下がっており、20%~40%になったといわれています。
羊水塞栓症の症状として、主に以下のようなものが挙げられます。
羊水塞栓症は、DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併することがあります。
DICとは、全身の血液が何らかの要因によって固まり、小さな血栓が大量に発生する疾患です。DICの影響で、血液を固めるために必要な血小板などが大量に消費されると、出血を止める能力が下がってしまうため、大量出血につながるおそれもあります。
羊水塞栓症の原因は、近年では、夫の抗原に由来するたんぱく質が母親の血液中に入ってしまうことにより、免疫が過剰に反応してしまうためだと考えられています。
羊水塞栓症を引き起こす要因として、主に以下のようなものが挙げられます。
羊水塞栓症は迅速に診断して治療する必要があります。そのため、以下の3つの条件を満たした場合には、臨床的羊水塞栓症と診断して治療を開始します。
①妊娠中または分娩後12時間以内に発症した
②A~Dの症状や疾患のうち、1つ以上に対して集中的な治療を行った
A)心停止
B)分娩後2時間以内の原因不明の大量出血(1500mL以上)
C)播種性血管内凝固症候群
D)呼吸不全
③観察された所見や症状が、他の疾患としては説明できない
羊水塞栓症を完治させる手術や薬は存在しないため、対症療法で回復させます。主な治療は以下のようなものです。
赤ちゃんを助けるために、帝王切開などによって出産させるケースも多いです。
羊水塞栓症による赤ちゃんへの影響は、まだ明確にはなっていません。しかし、赤ちゃんにも悪影響を及ぼしているリスクは否定できず、母親への治療が必要となるため赤ちゃんだけに集中できないことが影響するおそれもあります。
もしも、羊水塞栓症の原因が常位胎盤早期剥離などであった場合には、原因となった疾患によって赤ちゃんが危険な状態になるリスクもあるため、帝王切開などで出産させることも検討しなければなりません。
羊水塞栓症について医療過誤が疑われるケースとして、以下のような事例が挙げられます。
高熱のある妊婦への処置が誤っていたために赤ちゃんが亡くなり、そのことが原因となって、羊水塞栓症を発症して妊婦である母親も亡くなってしまった事案の裁判例について、以下で解説します。
仙台高等裁判所 平成12年2月29日判決 平10(ネ)181号
本件は、被告病院に通院していた妊婦である母親が、臨月間近で39.9℃の高熱を発症したために被告病院を訪れたところ、解熱剤のメチロンの注射のみで家に帰されてしまい、翌日に容態が悪化して、主治医が赤ちゃんを娩出させたところ亡くなっており、母親も亡くなってしまった事案です。
裁判所は、赤ちゃんの死因について考察し、母親に何らかの感染症があったとしても、それが直ちに赤ちゃんの死亡の原因となることは考えにくく、メチロンは妊娠中の投与について慎重に行うことを説明書で求めていること等から、他の処置を行わずにメチロンを投与したために赤ちゃんが亡くなったと推認するのが相当だとしました。
また、母親の死因については、確定可能なものが他に見当たらないため、羊水塞栓症を発症して呼吸不全に陥り死亡したと判断しました。
以上の赤ちゃんと母親の死因から、被告病院には、母親に対して抗生剤を投与する等せずにメチロンを投与した義務違反・過失があり、それによって赤ちゃんと母親が亡くなったことを裁判所は認めました。
そして、母親の逸失利益や慰謝料、弁護士費用等として、合計約5061万円の請求を認容しました。

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