養育費が減額できる条件は?方法や減額調停の流れ・ポイントも解説
養育費の減額は、当事者間の話し合いで合意ができれば、いつでも可能となります。
しかし、話し合いでは折り合いがつかず、家庭裁判所を通して調停や審判を行うと減額を認められるためには、一定の条件や理由が必要となります。理由もなく「毎月の支払いが厳しいので減額したい」という言い分だけでは認められません。
本ページでは、養育費の減額ができる条件や、養育費の減額方法の流れ、養育費の減額が認められないケースなど養育費の減額について、詳しく解説します。
目次
一度決めた養育費の減額
養育費の減額は、離婚時に取り決めたときから扶養家族の変化や収入の変化などにより事情の変更が認められると減額が可能となります。理由もなく、「何か状況が変わったわけではないけど、ただ養育費を減らしたい」というものでは認められません。
養育費の金額は、当事者間での話し合いで自由に決めることができるので、双方で合意ができれば養育費を減額することができます。しかし、話し合いで決着せず、家庭裁判所で調停や審判などで取り決める場合は父母のそれぞれの年収・子供の年齢・子供の数をもとに養育費算定表を参考にして取り決めていることが一般的です。
一度取り決めた養育費について、減額したいと思っている方、減額をしたいと言われた方は、現在の養育費は妥当なのか確認することをお勧めします。
離婚の養育費について、下記ページで詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
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養育費が減額できる条件とは
養育費が減額できる条件は、「支払う側の事情」、「受け取る側の事情」、それぞれどんな場合か下記項目で詳しく解説します。
支払う側の事情
養育費を支払う側が
- 再婚をして子供が誕生した
- 再婚をして、再婚相手の連れ子と養子縁組をした
- やむを得ない事情(リストラや病気やケガに遭うなど)で収入が減った、もしくは無収入になった
などによります。
基本的には、再婚しただけでは減額事由にはなりません。再婚をして、新しく子供が誕生したり、連れ子と養子縁組をしたりして扶養家族が増えることにより経済的負担が増えることで減額が認められることになります。
自ら、仕事を自己都合で転職して収入が低くなったり、収入の安定しないフリーランスになったりして、減額したいというのも減額事由として認められないことがあります。リストラや病気・ケガをして、仕事が思うようにできなくなり収入が減った場合は養育費の減額が認められやすいでしょう。
受け取る側の事情
受け取る側が
- 再婚をして、子供を養子縁組した
- 収入が大幅に増加
などによります。
再婚相手と子供が養子縁組した場合は、法律上、親子関係が生じて、再婚相手が第一次的扶養義務者となり、子供を扶養する義務が生じます。そのため、子どもが養子縁組した場合は原則的には、実親の扶養義務は二次的なものになり、養育費が減額若しくは免除されます。ただし、再婚相手に収入がなく扶養が難しい場合は、子供と離れて暮らす実親が扶養義務として養育費を負担しなければなりません。
また、養育費を受け取る側の収入が増加したことも養育費の減額が認められるケースです。ただし、離婚時に無職であっても、養育費の取り決めをした際に、将来、収入があることを見込んでいた場合には、事情の変更として認められない場合もあります。
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養育費の減額方法の流れ
養育費の減額する方法ですが、
- ①当事者間での話し合い
- ②養育費減額調停を申立てして、調停の場で話し合いをする
- ③養育費減額審判に移行して、裁判所が判断する
という流れとなります。
下記項目で詳しく解説していきます。
話し合いによる減額
当事者間で話し合いでの合意ができれば、いつでも、どのような条件でも問題ありません。
しかし、相手からすれば今後も子供と生活をしていくための大事なお金ですので、スムーズに話し合いに応じてくれるかはわかりません。
しっかり減額して欲しい理由を伝えて、相手が逆上するような言動は慎み、真摯に対応しましょう。
話し合いで合意ができれば、相手が後に「減額するなんて承諾した覚えはない」というようなトラブルが生じることを防ぐためにも、合意書を作成しておくことをお勧めします。
養育費減額調停
当事者間の話し合いで養育費の減額について、折り合いがつかなければ、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てしましょう。
「養育費減額調停」では、裁判官や調停委員を交えて、事情の変更により離婚時に取り決めた養育費の減額について話し合って決める手続きです。調停で合意ができれば、調停は成立となります。
調停での話し合いが決裂して、調停が不成立になれば、「養育費減額審判」に移行して裁判所が養育費の減額について判断します。
養育費減額調停の期間
養育費減額調停にかかる期間は、家庭の事情によって異なりますが、概ね1ヶ月~1ヶ月半に1回の頻度で調停が実施され、約半年ほどかかると考えておくといいでしょう。
調停が終了するのは、「調停成立」だけでなく、「調停不成立」、「取り下げ」もあります。
必要な書類・費用
【必要書類】
- 申立書
- 戸籍謄本(対象となる未成年者が記載しているもの)
- 収入資料(源泉徴収票写し、課税証明書写し、確定申告書写し、給与明細写しなど)
【申立費用】
- 収入印紙1200円(未成年者一人につき)
- 予納郵券 各管轄裁判所によりますがおよそ1000円~2000円程
養育費減額調停のポイント
養育減額調停を有利に進めていくポイントとしては、養育費の相場を事前に確認しておきましょう。漠然とした理由や金額を調停委員や相手に伝えても、説得力がありません。
現在の養育費の相場は、養子縁組や再婚して新しく子供が誕生している場合などは計算が複雑となりますので、専門的知識のある弁護士に相談することをお勧めします。また、子どもが養子縁組したか否かが分からないという場合は、弁護士にご相談ください。子供たちの戸籍をたどることにより調査することが可能です。
そのほかにも調停委員を自分側の味方にすることもとても大切です。マイナスイメージとなるような感情的な発言は控え、真摯に養育費の減額についてあなたの意見や主張を伝えるようにしましょう。
養育費減額審判
養育費減額調停で話し合いが決裂し、調停が不成立となった場合は、「養育費減額審判」に移行します。
審判手続きは、裁判官が調停時に当事者双方から聴き取った内容、提出された証拠(資料)、家庭裁判所調査官が行った調査の結果などに基づいて、養育費の減額について判断を下すことになります。
審判結果に不服があれば、即時抗告することができます。即時抗告がないまま2週間が経過すると審判が確定することになります。
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調停や審判で養育費の減額が認められないケースとは
養育費の減額や免除が認められるのは、原則として収入の増減や、身分関係の変更などの事情の変更があった場合です。以下のケースはよくある養育費を減額したいという相談があるケースですが基本的に、減額が認められるのは難しいでしょう。
- 面会交流の回数が少ない(もしくは会わせてくれない)から養育費を支払わないというケース
- 受け取る側が再婚、あるいは彼氏ができたから支払わないというケース
- 借金の返済のため養育費を減額したいというケース
- 相場よりも高い金額で取り決めてしまったことに気付き、養育費を減額して欲しいというケース
養育費の減額に関する裁判例
減額が認められた裁判例
●東京高裁平成30年3月19日判決
【事案の概要】
父母は長男と長女が成年に達するまで月額一人あたり2万円を支払うことで合意しました。父は、母が再婚し再婚相手と子供たちが養子縁組をしたこと、自身の収入が減少したという事情をもとに、子供たちが養子縁組をした日以降の、養育費を0円とするよう変更を求めました。
裁判所は、このような事案で、養育費の支払い額を0円として免除することを認め、抗告審である高等裁判所も原審判断を相当として棄却しました。
【解説】
実母が再婚して、子供たちが養子縁組した場合は、養父が子供たちの扶養を含めて養育をすべて引き受けたものであるから、実母と養父が第一次的、子供たちに対する生活保持義務を負うこととなり、実父の養育費の支払義務は消失するべきであると判断されました。
減額が認められなかった裁判例
●東京高裁令和元年8月19日判決
【事案の概要】
父と母は、協議離婚時に公正証書で養育費を月額一人5万円(子供が3人いるので合計月額15万円)と定めましたが父から月額一人3万円に変更するよう求めました。
離婚時に定めた公正証書の中には住宅ローン10万円を除いた5万円を父が母に支払うという合意をされていました。
原審は月額一人2万6000円に変更する審判をしたところ、これを不服として抗告を申立てして原審判を取り消し、抗告の申立てを却下しました。
【解説】
住宅ローンを支払っている間は、住宅ローンの月額10万円を養育費15万円から差し引く条項で合意しており、差引条項を変更することなく、養育費の額のみを変更してしまうと、実質的に、受け取れる養育費の額が0円となってしまい不当であると考えられました。父により養育費減額の申立てをされた理由もないことから、公正証書による合意は実際の養育費としては住宅ローンの月額10万円を除いた月額5万円を支払うことを約束していると理解するのが相当のため(養育費の算定方式では子供3名で7万8000円が相当額)減額は認められないとしました。
養育費の減額に関するよくある質問
離婚後に再婚し、妊娠した場合は養育費の減額の対象になりますか?
養育費を支払っている方が再婚し、再婚相手の子供が産まれると、扶養家族が増えるので養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。注意しないといけないのは、養育費の減額が認められるのは、子供に対して(場合によっては再婚相手も)扶養義務が発生するときなので、子供が産まれた時点からとなります。ただし、調停はすぐに終わるものではないので、出産予定日が分かっているのであれば、出産前に調停の申立てることは可能です。
「養育費 再婚」について、下記ページで詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
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養育費の減額の際の計算方法などはありますか?
養育費の減額についての計算方法ですが、事情の変更を踏まえて改めて養育費を計算する必要があります。
原則としては、それぞれ当事者の年収や子供の年齢や子供の数に応じて、家庭裁判所でも運用されている「養育費算定表」を参考にして算定します。
しかし、取り決めたときから、再婚によって養子縁組をしたか、新しく子供が誕生したか、収入に変化があったかなど状況が変わっているので「養育費算定表」をそのまま使用できるとは限りません。以前の養育費の合意の際に取り込まれていた内容等を加味して、変更後の金額を定めることになります。
養育費減額調停で決まった養育費の支払いがなかった場合はどうなりますか?
養育費減額調停で合意が成立しているにも関わらず、未払いが生じたときは、裁判所を通じて「履行勧告」、「履行命令」、「強制執行」の手続きが可能となります。
履行勧告とは、裁判所が養育費の未払いについて調査し、相手に文書や電話で支払いをするよう勧告する制度です。強制力はありませんが、相手に心理的プレッシャーを与えるのに効果的だとされています。
履行命令とは、裁判所が期間を定めて、相手に期間内に養育費を支払うように命じる制度です。正当な理由もなく従わなかった場合は、10万円以下の過料を課される場合もあります。
ただし、上記の二つは、あまり実行力が無く、どうしても支払われない場合は強制執行を行うことになるでしょう。
強制執行とは、相手の給与や預貯金などの財産を強制的に差し押さえる手続きとなります。相手方がサラリーマンなどの給与所得者であり、職場が分かっている場合には、強制執行により給与を差し押さえることは特に効果的です。逆に、養育費を支払わなければならない側は、給与を差し押さえられると生活がままならなくなる危険がありますので、安易に滞納せず、支払えない事情があるのであれば、養育費の減額請求をすることを検討すべきでしょう。
養育費の減額について悩んでいることがあれば弁護士にご相談ください
養育費を支払う側でも受け取る側でも、再婚による扶養家族の変化や収入の変化によって事情の変更が認められれば、離婚時に取り決めた養育費が減額できる場合があります。
それぞれの家庭の事情によって、養育費が減額できる条件なのか、どのくらい減額できるのか異なります。特に、相手方が再婚している場合には、養育費の減額だけではなく、支払い免除を含めて検討すべきでしょう。
養育費について、お悩みの方は、ぜひ、離婚分野に精通している弁護士に相談してください。まずは、お気軽にご相談ください。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)