離婚で父親が親権を得るための4つのポイント|有利なケースや獲得事例
親権とは、子供と一緒に生活したり、財産を管理したりする権利のことをいいます。
日本での父親が親権を獲得できる割合は非常に低く、全体の1割ほどとなっています。
現状は、子供と長くいる時間が多い母親が圧倒的に親権をもつことが多いです。
本ページでは、父親が親権争いで不利な理由や父親が親権を獲得するためのポイントなど、親権をもちたい父親のために「父親の親権」について詳しく解説します。
目次
親権とは
親権とは、子供の監護や教育を行ったり、子供の財産を管理したりする権限であり義務のことをいいます。
親権には主に2つの権利があり、子供の身の回りの世話やしつけ、教育を行う権利である「身上監護権」と子供名義の財産を管理し、財産に関する法律行為を代理で行う権利である「財産管理権」があります。
親権は、婚姻中は、父母双方が親権者として持ちます。しかし、離婚をすれば、父母どちらか一方を親権者と必ず定めなければいけません。
親権について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
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離婚時の親権の決め方とは?
離婚時に未成年の子供がいた場合は、必ず親権者を決めて離婚届に記入しないと役所に受理してもらえません。
親権者の決め方は、当事者間での話し合いで決める場合は自由に決めることができます。
しかし、当事者双方が親権を持ちたいと言って話し合いで決まらない場合は、離婚調停を申し立てして、裁判官や調停委員を含めて離婚の話し合いのなかで親権者をどちらにするか決めることになります。
調停で不成立になった場合は、離婚裁判を提訴して、裁判所が親権をどちらにするか判断します。
裁判所が親権者を決める際の判断要素
裁判所が親権者を決める際に、最も重要視するのが子の福祉です。
では、裁判所は具体的にどのような判断要素にもとづいて親権者を決定しているのでしょうか。
以下の表にまとめましたのでご覧ください。
母性優先の原則 | 特に子供が幼い場合は母親による監護の必要性が高いという考え方です。特に子供が乳幼児のときに重視され、親権者として母親を優先される傾向があります。 |
---|---|
監護継続性の原則 | 現在の監護者・監護状況に問題なければ、これまでの生活環境を変えないことで子供の精神的安定がもたされると考えられています。 |
兄弟姉妹不分離の原則 | 基本的に兄弟姉妹を離ればなれにすべきではないと考えられています。 |
子供の意思の尊重 | 子供の意思や希望を尊重しなければならないとされています。 特に子供が満15歳以上の場合は子供の気持ちを聞くことは法律上必要となっています。 10歳前後以上であれば、子供の意思能力があるとみなされ、子供の意思を考慮する必要があるとされています。 |
監護体制の優劣 | 経済・居住・養育・教育などの環境が、より子供にとって望ましいほうを選ぶべきだという考えです。 |
面会交流に関する寛容性の原則 | 子供と離れて暮らす親との面会交流を認めることができるか、寛容になれるかも判断基準となります。 面会交流を通じて、離れて暮らす親と交流をもつことで子供の健全な育成や子供の利益が確保されるためです。 |
父親が親権争いで不利な理由
- 子供が小さければ小さいほど、母親に育てられたほうがいいという母性優先の考えが一般的に根強い
- 父親はフルタイムで仕事している方が多く、なかなか育児ができる時間が取れない
- 子供自身も父親より母親を選ぶことが多く、子供の意見も尊重される
- 離婚を決めるまでに子供の面倒を行ってきたのは主に母親である場合が多い
などが、父親が親権争いで不利な理由となります。
子供が小さければ小さいほど母親が有利
父親が親権争いに不利な理由は、子供は母親が育てるべきだという「母性優先の原則」の考えが一般的に根強くとられているからです。
子供が小さければ小さいほど、この原則は重視される傾向にあり、特に乳幼児は、乳飲み子で母親の存在が不可欠であり、母親が監護養育することが子供の利益(しあわせ)になるとされ、母親が親権者に指定されることが多いといえます。
仕事と育児の両立の難しさ
一般的に父親は一家の大黒柱としてフルタイムで働いていることが多く、家に居る時間が短く、子供と一緒にいる時間が少ないのが理由となります。
そのほかにも子供が熱を出したりすると、早退や有休をとって看護する必要があります。
不測の事態において、すぐに子供の元へ戻れる職場環境かどうか、子供が小さければ小さいほど、重視されます。
子供が母親を選ぶ
普段から母親と過ごす時間が長い分、子供自身が父親より母親と暮らすことを選ぶケースがよくあります。
子供の意見は、小さいうちは過度に重視できませんが、中学生くらいになってくると判断能力がついていきますので、尊重する必要があります。
15歳以上の子供の場合、調停・審判や裁判で親権を決める場合、意見を聞くことが義務付けられています。
10歳前後の子供の場合、意見を聞き、子供の意思を考慮して親権者をどちらにするか決める運用がされています。
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親権争いで父親が有利になる4つのケース
親権争いで父親が有利になるのは
- 父親に親権を譲った場合
- 母親が育児放棄した場合
- 母親が子供を虐待している場合
- 子供が父親と暮らしたがっている場合
などです。詳しくは下記項目で解説します。
父親に親権を譲った場合
父母当事者間での話し合いで、自由に親権者を決めることが原則です。そのため、母親が父親に親権を譲れば、親権者は父親となります。
母親の育児放棄
育児放棄の主な具体例を下記に挙げましょう。
- 子供に食事を与えない、世話をしない
- 子供を不潔な状態のままにしている
- 子供が話しかけても無視をする、会話をしない
- 家や自動車に置き去りにして外出する
- 家に閉じ込める、家に入れない
- 病気やケガをしても病院に連れていかない
上記のような行為は育児放棄とみなされますので、親権者としてふさわしくありません。
母親が育児放棄をしていれば、父親が親権者になる可能性は高いでしょう。
母親が子供を虐待している
母親が子供を虐待している場合は父親が親権者になる可能性が高いです。
一般的に子供を虐待している母親は、虐待している意識がなく、虐待を主張しても認めようとしませんので、虐待の事実があったことの証拠がとても重要となります。
子供にケガやあざがある場合は、写真を撮影しておいたり、医師に診断書を作成してもらったりして証拠を揃えておくことをお勧めします。
そのほかにも、虐待があったときの日記や音声・動画データも有力な証拠となる可能性がありますので、親権を父親に認めてもらうために、まずは証拠集めを率先して行うべきです。また、警察や児相に相談することも考えられます。
子供が父親と暮らしたがっている
子供が父親と暮らしたがっていれば、親権者を父親に指定される可能性が高くなります。
ただし、子供の年齢によって判断の比重が変わってきます。
乳幼児から10歳前後までは、子供の意思能力が乏しいとみなされ、子供の意思以外の判断基準の方が重視されてどちらが親権者にふさわしいか判断されます。
10歳前後になると、子供に意思能力があるとみなされ、ある程度、子供の意思が尊重されます。
15歳以上になると、調停・審判や裁判のときに必ず子供の意見を聴取することが義務付けられており、子供の意思が大きく尊重されます。
父親が親権を獲得した場合の養育費はどうなるのか
養育費は、子供が経済的・社会的に自立するまでにかかる生活費全般です。子供が健やかに成長していくためにも必要なものです。
離婚をして、夫婦でなくなっても、子供の親であることに変わりありませんので、扶養義務は父母ともにあります。
母親よりも父親のほうが収入は高いとしても、父親が親権を獲得すれば、母親が当然養育費を支払うことになります。
養育費の金額は当事者間の話し合いで自由に決めることもできますし、当事者間の話し合いでは養育費を決めることができなければ、家庭裁判所に対し、「養育費調停」を申し立てることになります。
家庭裁判所の手続きによって養育費の金額を決めるときに利用されるのが「養育費算定表」です。
一般的に双方の収入に応じて、「養育費算定表」を参考にして金額を決めることになります。
養育について、下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
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父親が親権を獲得するためのポイント
養育する時間の確保
子供と過ごす時間を長く取れるように仕事の時間を調整できるか、仕事の都合で子供と一緒に居られないときは父親の両親(子供の祖父母)など周囲の協力を得られる体制であるかなど、子供を養育する環境が整っていれば、親権が獲得できる可能性が高くなります。
養育実績の証明
これまで、どのくらい子供を養育してきたか証明できるものを準備しておくことをお勧めします。
例えば、子供の食事の支度(お弁当作りも含む)、洗濯、掃除、学校行事の参加、病気時の看病状況、休日の子供との過ごし方など、具体的にどのようなことをして子供を養育してきたかをメモや日記や写真で残しておきましょう。
離婚後の収入などの経済状況
生活費や教育費など子供を育てていくのにはお金がかかりますので、安定した経済力をもっているほうが親権を認めてもらうのに有利となります。
一般的に父親のほうがフルタイムで働いている方が多く、母親に比べて経済力をもって安定している方が多いので、離婚前とほぼ生活状況が変わらないことを主張しましょう。
父親の健康状態
親権者が心身ともに健康であることも重視されます。
健康状態が悪いと子供の養育・監護がしっかりできるのかどうか、不安に思われます。
日常の育児や家事、保育園や幼稚園の送り迎え、休日に子供を遊びに行く体力や体制が整っている必要があります。
健康状態以外にも年齢も重視され、高齢な父親であると不安視される場合もあります。
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離婚調停で父親が親権を獲得できた解決事例
父親は出張などが多く、家を空けてしまうこともあり、父親の出張中に母親が2人の子供を近所に住む父親の両親に預けて旅行と称して出かけていくことがありました。
父親は不審に思い、探偵に依頼して母親の動向を調査したところ、母親の不貞(不倫)が発覚しました。
父親は離婚を決意し、2人の子供の親権の獲得を目指し、弁護士法人ALGに相談に来られました。
まず、子供2人を監護養育する体制をしっかり構築することをアドバイスし、父親が母親の不貞を踏まえて話を進めていくと、母親が自宅から出ていく形で別居することになりました。
別居後、再び探偵の調査を依頼したところ、母親は不貞相手と同居していることが判明しました。
その結果、かかる状態で母親が親権を取得することは困難であると確信して、離婚交渉を一気に推し進めることとし、慰謝料請求や親権などを粘り強く交渉しました。
(並行して不貞相手への慰謝料請求も行いました。)交渉を重ねた結果、母親は親権を諦めました。
父親の親権についてよくある質問
親権を獲得するのに不貞などの離婚原因は関係がありますか?
母親が不貞行為をしていたとしても、子供の世話についてしっかりおこなっていた場合、不貞行為自体が親権争いに影響してくることはありません。
しかし、子供の世話をせず、幼い子供を家に放っておいて、不貞相手と出かけているようなことがあれば、親権争いに影響します。
そのほかに、DVが原因で離婚した場合、子供に直接暴力をふるっていなかったとしても、子供の監護者・親権者としての適性が問題視され、親権争いに影響があるケースも考えられます。
父親から母親へ親権者を変更することはできますか?
一度決めた親権を変更したいとなっても、親の勝手な都合や気持ちで親権を変更することはできません。
親権者の変更はとても難易度が高く、やむを得ない事情がない限り、簡単には認められません。
しかし、子供が親権者である母親から育児放棄や虐待を受けている場合や、子供が親権者を父親に変更して欲しいと望んでいる場合など正当な理由があるケースは、親権の変更が認められる可能性が高いでしょう。
親権変更は、話し合いで変更することはできず、家庭裁判所での「親権者変更調停」の手続きが必要となります。
親権者の変更は、子供にとって生活環境が大きく変わり、混乱を生じさせてしまうおそれもあるため、慎重に検討する必要があります。
親権が獲得できなくても子供に会うことはできますか?
面会交流は、子供のためのものであり、両親が離婚してもどちらの親からも愛されていることを子供が実感をして、子供が健やかに成長するために必要とされているものですので、親権を獲得できなくても子供と面会交流する権利があります。
もし、親権が獲得できなければ、気持ちを切り替えて面会交流の回数を増やすよう、相手に交渉するのもひとつの手です。子供と接する機会が多くなれば、子供の成長を見守り、支えていることを実感できるでしょう。
面会交流について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
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母親が子供を連れ去った場合でも父親が親権者になることはできますか?
母親が合意もなく、子供を連れ去ってしまった場合は、違法となり、母親は親権者として不利になります。
しかし、以下の場合は、連れ去られた側の父親が親権争いに不利になるケースもあります。
- 父親のDVやモラハラが理由によって子供を連れ去った場合
- 母親が主に子供の世話をしていた場合
- 連れ去られてから一定期間経過している場合
まずは、自力で子供を取り返すのではなく、子の引渡し及び監護者指定審判の申立てなどを行い、家庭裁判所の手続きによって子供を引渡すよう求めましょう。
父親の親権についてわからないことなどがあれば弁護士にご相談ください
日本では、子供の親権争いにおいて、母親が有利とされているのが実情です。
しかし、父親で親権を持ちたいと強く思っている方は、諦めないでください。
ぜひ、法律の専門家である弁護士に親権問題について、ご相談ください。
夫婦の状況、子供の状況、もし父親が親権を持ったときに子供を問題なく育てられる環境であるかなどを確認させていただき、親権を獲得できるための適切なアドバイスをさせていただきます。
場合によっては、家庭裁判所の手続きを行う必要があるため、裁判所の申立て、裁判所の出廷なども弁護士が代理で行います。
父親の親権についてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGにお問い合わせください。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)