個人再生の流れを解説!期間やスムーズに進めるポイントなど
“個人再生”は、裁判所を介して借金を大幅に減額してもらい、残りを分割して返済していく手続です。
持ち家や事業を手放さずに借金を大幅に減額したい個人向けの債務整理方法ですが、手続が複雑なため、ほとんどの方が弁護士や司法書士に依頼して個人再生を行っています。
専門家に任せられるとはいえ、手続がどのような流れで進み、どのくらい期間がかかるのかが分からないと不安になる方も多いと思います。
そこで本記事では、個人再生の流れについて、手続にかかる期間やスムーズに進めるポイントを交えながら解説していきたいと思います。
個人再生を成功させるためにも、ぜひ参考になさってください。
目次
個人再生の流れ
個人再生を弁護士に依頼した場合の、基本的な手続の流れは次のとおりです。
自己破産や任意整理などのほかの債務整理の方法と比べて、手順が多く複雑なのが個人再生の特徴でもあります。
個人再生の手続をスムーズに進めるためにも、それぞれの手続について順を追って詳しくみていきましょう。
①弁護士に相談
借金の返済に困り、個人再生を考えたら、まずは弁護士に相談してみましょう。
借金の総額・借入先数などの借金の状況や、収入・財産の有無を伝えたうえで、次のことを確認します。
- そもそも債務整理が必要な状況か
- 個人再生が最適な方法か
- 個人再生をどのように進めたらよいか
- 個人再生にどのくらいの期間・費用がかかるのか
上記以外にも、不安や疑問に感じていることは忘れずに確認しておきましょう。
弁護士に相談した場合にかかる費用
弁護士に相談すると、相談料が発生します。
相談料は弁護士事務所によっても異なりますが、30分あたり5000円程度になることが多いです。
初回相談を無料で行っている事務所もありますので、積極的に活用しましょう。
②受任通知の送付
個人再生を弁護士に依頼することが決まったら、委任契約を締結します。
委任契約を契約した当日~翌日には、弁護士から債権者(貸金業者)に“受任通知”が送付されます。
受任通知を受けた債権者(貸金業者)は法律上、債務者に直接連絡することが禁止されるため、受任通知の送付後1週間ほどで債権者からの督促や取り立て、月々の返済が止まり、以降のやり取りはすべて弁護士を通して行われます。
弁護士との委任契約時にかかる費用
弁護士と委任契約を締結したら、弁護士費用のうち着手金を支払います。
個人再生を依頼した場合の着手金は弁護士事務所によって異なりますが、相場は30万円程度です。
③債権の調査・引き直し計算
弁護士は、受任通知の送付と同時に取引履歴の開示請求をして債権の調査も行います。
債権者より借金額や取引情報が記載された債権調査票が届くので、これをもとに引き直し計算を行い、現状の借金総額を確定させます。
引き直し計算とは?
引き直し計算とは、債権調査票で把握したこれまでの借入れ額を、利息制限法の上限利率(15~20%)に基づいて再計算することを指します。
引き直し計算によって利息を払いすぎていたことが判明した場合は、債権者に対して過払い金返還請求を行います。
④個人再生申立書の作成
現状の借金総額が確定し、個人再生を行うことが決まったら、裁判所へ提出する申立書を作成します。
申立書の作成にあたっては、依頼人(債務者)の収入・支出、家計、財産・資産についてさまざまな調査を行います。
この調査によって、個人再生手続のうち、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続のどちらの手続が適しているのかを判断し、裁判所へ提出する必要書類を作成・収集します。
必要書類
個人再生を申し立てる際には、主に次のような書類が必要になります。
- 再生手続開始申立書
※小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続で書式が異なります - 陳述書
- 債権者一覧表
- 家計収支表
- 財産目録
- 清算価値算出シート
- 住民票
- 給与明細や源泉徴収票などの収入を証明する資料
- 預貯金通帳のコピー
- 住宅ローンに関する資料 など
このほか、財産や資産を証明するための車検証や保険証券など、さまざまな書類が必要になるため、弁護士と分担して作成・収集していきます。
⑤裁判所への申立て
必要書類の準備が整ったら、裁判所へ個人再生を申し立てます。
申立先
個人再生の申立先は、申立人(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所です。
必要書類を裁判所へ提出することで、個人再生の申立てをします。
申立てに必要な費用 個人再生の申立てには、裁判所費用として数万~25万円程度が必要になります。
- 申立手数料(収入印紙):1万円程度
- 予納金(官報公告料):1万3000円程度
- 郵便切手代:2000~5000円程度
- 個人再生委員の報酬:15万~25万円程度
※個人再生委員が選任された場合
なお、裁判所によっては申立て後に個人再生委員が選任されたり、履行テストが行われたりします。
個人再生委員の選任
裁判所によっては、個人再生を申し立てた当日~1週間ほどで個人再生委員が選任されます。
個人再生委員とは?
個人再生委員とは、申立人(債務者)の収入や財産・資産を調査したり、 再生計画案の作成をアドバイスしたりして、手続が適正に行われるように監督・補助する役割を担う人です。
裁判所により、代理人とは別の弁護士が個人再生委員として選ばれます。
個人再生委員の選任から1週間以内に、申立人との面談が設けられます。
面談では、代理人となる弁護士が同席し、申立てについて内容の確認が行われます。
履行テストの開始
裁判所によっては、個人再生を申し立てた1週間後頃から履行テストが開始されます。
履行テストとは?
履行テストとは、申立人(債務者)の返済能力を確認するために、3~6ヶ月間支払いを行うことをいいます。
積立トレーニングとも呼ばれ、履行テストで支払ったお金は、個人再生委員の報酬を指しい引いた後で申立人に返還されます。
毎月、指定された口座へ、指定された金額を、指定された期日までに振り込まなければならず、滞納してしまうと個人再生の認可が得られなくなる可能性があります。
⑥個人再生手続の開始決定
書類の審査が行われ、問題がなければ申立てから1ヶ月ほどで裁判所による個人再生手続の開始決定がなされます。
このとき、個人再生の開始決定があったことや、申立人(債務者)の氏名・住所などが官報に記載されます。
⑦債権の届出・異議申述
個人再生手続が開始されると、裁判所から債権者へ個別に“開始決定書”と“債権届出書”が送付されます。
これらを受け取った債権者は、手続開始決定日の前日までの利息・遅延損害金を含めた債権額を債権届出書に記載し、定められた債権届出期間内に裁判所へ提出します。
債権届出書が提出された後、届出された債権額を認めるかどうかを示す債権認否一覧表を弁護士が裁判所へ提出します。
債権額に異議がある場合、申立人(債務者)と債権者の双方に異議を申し立てる“異議申述期間”が設けられ、双方の主張を裁判所が聴き取ったうえで、借金の額を確定させます。
⑧再生計画案の作成・提出
確定した借金をもとに、申立人(債務者)と相談したうえで弁護士が返済計画を立て、“再生計画案”を作成し、裁判所へ提出します。
再生計画案には提出期限があり、1日でも遅れると、理由を問わず再生手続廃止の決定がなされてしまうため注意しましょう。
再生計画案に掲載する内容 再生計画案には、主に次のような内容を記載します。
- 返済の開始時期
- 返済の総額
- 返済の方法
- 返済の期間
- 住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の利用について
⑨再生計画案に対する意見聴取・書面決議
小規模個人再生手続の場合
小規模個人再生手続では、債権者の同意が必要です。
そのため、提出した再生計画案が債権者へ個別に送付され、再生計画案に対する賛否が書面決議の形式で行われます。
このとき、次のいずれかに該当すると再生手続廃止の決定がなされてしまいます。
- 債権者の過半数以上が反対している
- 債権額の過半数以上を持つ債権者が反対している
給与所得者等再生手続の場合 給与所得者等再生手続では、債権者の同意は必要ないため、決議は行われず、意見聴取のみが行われます。
⑩再生計画の認可
意見聴取・書面決議の結果を考慮し、裁判所が再生計画の認可または不認可を決定します。
この決定は2週間ほどで官報に掲載され、さらに官報公告日から2週間が経過することで再生計画の認可または不認可の決定が確定し、個人再生の手続自体は終了します。
個人再生手続の終了時に発生する費用
弁護士へ依頼した手続が終了したら、弁護士費用のうち報酬金を支払います。
個人再生を依頼した場合の報酬金は弁護士事務所によって異なりますが、相場は20万~30万円程度です。
再生計画が不認可となった場合は? 再生計画が不認可となってしまった場合は、再度個人再生を申し立てるか、自己破産などのほかの債務整理方法を検討することになります。
⑪再生計画に沿って返済
再生計画の認可決定の翌月より、再生計画に従って返済を開始します。
個人再生の場合、一般的には3年間の分割払いで減額後の借金を返済することになりますが、3年での完済が難しい場合には最長で5年の分割払いが認められることがあります。
返済を滞納した場合は?
返済を滞納してしまうと、再生計画が取り消される可能性があります。
返済が難しくなったら、すぐに個人再生を依頼した弁護士へ相談しましょう。
返済先が多いなど、自分で計画を遂行する自信がない場合は、弁護士に返済代行を依頼することもおすすめです。
お問合せ
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
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※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
個人再生手続きにかかる期間
個人再生の手続にかかる期間は、6ヶ月~1年程度が目安になります。
弁護士への相談~裁判所への申立て:1ヶ月~数ヶ月程度
- 弁護士への相談:数週間~1ヶ月程度
- 受任通知の送付:受任当日~2日程度
- 債権の調査・引き直し計算:2~3週間程度
- 申立書の作成:2週間程度
裁判所への申立て~個人再生手続開始決定:1ヶ月程度
- 申立ての受理:2週間程度
- 再生手続開始決定:2週間程度
※個人再生委員が選任されて履行テストが行われると、さらに6ヶ月程度プラス
再生手続開始決定~再生計画の認可:4~6ヶ月程度
- 債権の届出:4週間程度
- 異議申述:2週間程度
- 再生計画案の作成・提出:1週間程度
- 意見聴取・書面決議:4週間程度
- 再生計画の認可~決定:4週間程度
➡ 弁護士への相談から再生計画の認可まで、トータルで6ヶ月~1年
なお、債権者が多い場合や、個人再生を申し立てる裁判所によっては、1年以上かかるケースもあります。
再生計画の認可決定後から完済までの期間 個人再生の場合、完済まで基本的に3年、最長で5年かかります。
ブラックリストに載る期間
個人再生の場合は、5~10年でブラックリストから削除されます。
ブラックリストに載っている間は、クレジットカードやローンの契約・利用が制限されることがあるので注意が必要です。
個人再生手続きをスムーズに進めるポイント
個人再生の手続をスムーズに進めるポイントは次のとおりです。
- 債務整理に強い弁護士に相談・依頼する
- 個人再生の手続の流れを把握する
- 書類の提出期限や費用の納付期限を厳守する
- 借金を正確に把握する
- 虚偽の報告をしない
- 無理のない再生計画を立てる
- 再生計画に従って滞りなく返済を行う
- 手続中に新たな借入れをしない
これらは、個人再生を成功させるためのポイントでもあるので、事前にしっかり確認しておきましょう。
個人再生をスムーズに進めるためにも、債務整理に詳しい弁護士にご相談下さい!
個人再生を検討されている方のなかには、費用が心配で弁護士への依頼をためらわれている方も多いのではないでしょうか。
個人再生の手続を弁護士へ依頼していないケースでは、個人再生委員が選任されることが多く、弁護士に依頼した場合よりも裁判所に支払う費用が高くなる可能性があります。
また、弁護士に依頼することで手続中は債権者からの督促や取り立てが止まるため、ストレスを感じることなくスムーズに手続が進められるというメリットもあります。
個人再生するべきか、期間や費用がどれくらいかかるのかを、納得のいくまで相談してから、弁護士への依頼を決めても遅くありません。
借金の返済にお困りの方は、ご自身に合った解決方法を知るためにも、まずは弁護士法人ALGまでお気軽にご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ 名を擁し()、東京、を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。