個人再生の要件とは?利用するための必要条件をわかりやすく解説

個人再生の要件とは?利用するための必要条件をわかりやすく解説

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監修
監修弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長 弁護士

個人再生とは、裁判所を介して行う債務整理の方法のひとつで、自宅などの財産を手元に残したまま借金を大幅に減額してもらって、残りを3~5年で分割返済する手続です。

住宅ローンがあっても家を手放さずに借金を減額できるなら・・・」と、個人再生を検討されている方もいらっしゃるかと思います。

ですが、借金の問題を抱えている人であれば、誰でも個人再生を利用できるものではありません。

個人再生をするためには、申立要件・開始要件・認可要件・住宅ローン特則の利用要件など、場面によって設けられた様々な必要条件を満たさなければなりません。

そこで今回は、個人再生の要件についてわかりやすく解説していきたいと思います。

個人再生をするための要件

個人再生をするための主な要件は住宅ローンを除いた債務総額が5000万円以下であること・このままでは借金を返済できなくなるおそれがあること・安定した収入があることです。

なお、個人再生には小規模個人再生給与所得者等再生の2種類の手続があって、それぞれ特有の要件もあります。

そこで、個人再生の要件を、申立要件・開始要件・認可要件という場面ごとに設けられた必要条件ごとに分けて、表にまとめてみました。

申立要件 共通要件 ① 支払不能のおそれがあること
② 民事再生手続の申立棄却事由がないこと
特有要件 ③ 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと
(小規模個人再生)
開始要件 共通要件 ① 安定した収入があること
② 住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下であること
特有要件 ③ 給与またはこれに類する定期収入の見込みがあり、その変動幅が小さいこと
(給与所得者等再生)
④ 過去7年間に免責または再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと
(給与所得者等再生)
認可要件 共通要件 ① 再生計画案が提出期限までに提出されていること
② 最低弁済額を上回る弁済額が設定されていること
特有要件 ③ 債権者の過半数の同意があること
(小規模個人再生)

小規模個人再生

小規模個人再生とは、個人再生の手続のひとつで、個人事業主や給与所得者を対象としています。

要件を満たしていて、債権者の同意が得られる場合は、アルバイトの方や年金受給者でも小規模個人再生の手続が利用できます。

小規模個人再生の特有要件

小規模個人再生では、個人再生の共通要件に加えて次の特有要件を満たす必要があります。

申立要件
  • 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと
認可要件
  • 債権者の過半数の同意があること

給与所得者等再生

給与所得者等再生とは、個人再生の手続きのひとつで、会社員や公務員などの安定した収入が見込める給与所得者を対象としています。

小規模個人再生よりも厳しい要件を満たしていれば、債権者の同意がなくても給与所得者等再生の手続が利用できます。

給与所得者等再生の特有要件

給与所得者等再生では、個人再生の共通要件に加えて次の特有要件を満たす必要があります。

開始要件
  • 給与またはこれに類する定期的な収入があり、その変動幅が小さいこと
  • 過去7年間に免責または再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

個人再生の申立要件

個人再生をするためには、裁判所へ個人再生を申し立てる必要があります。

個人再生を申し立てるための必要条件=申立要件は、次のとおりです。

① 支払不能のおそれがあること

支払不能とは、収入や財産が足りず、支払期日の到来した債務を継続的に弁済できない状態にあることを指します。
支払不能に至っていなくても、支払不能のおそれがある場合には、個人再生を申し立てることができます。


② 民事再生手続の申立棄却事由がないこと

申立棄却事由とは、個人再生の申立てができない条件のことです。
次のいずれかに該当していなければ、個人再生の申立てが認められます。

  • 費用の予納がないとき
  • 破産手続が進行していて、その手続によることが債権者にとって利益であると考えられたとき
  • 再生計画案の作成・可決・認可の見込みがないことが明らかであるとき
  • 不当な目的で申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき

③ 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと

小規模個人再生では、共通要件に加えて、「債務を返済するにあたって無理な資金繰りや財産の売却が必要になり、これにより事業継続に著しい支障を来す」という要件を満たす必要があります。

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個人再生の開始要件

個人再生を申し立てた後、裁判所によって「個人再生の開始要件を満たしている」と判断されると、個人再手続が開始されます(=再生手続開始決定)。

個人再生の開始要件は、次のとおりです。

  • 安定した収入があること
  • 住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下であること
  • 給与またはこれに類する定期収入の見込みがあり、その変動幅が小さいこと
  • 過去7年間に免責または再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

それぞれの要件ごとに、詳しくみていきましょう。

①安定した収入があること

個人再生をするためには、安定した収入があることが必須条件です。

個人再生では、すべての借金の返済義務がなくなるわけではありません。

基本的に、手続き後は3年かけて大幅に減額された借金を返済していく必要があります。

そのため、自営や雇用によって、返済計画案に従って3年(最長で5年)で完済が見込める程度の安定した収入がなければ、個人再生が認められないのです。

とはいえ、必ずしもサラリーマンや正社員である必要はなく、「継続的に借金の返済を続けていける」と判断されれば、アルバイト、非正規社員、そして年金受給者であっても個人再生が認められます。

②住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下であること

個人再生をするためには、住宅ローンを除いた債務総額が5000万円以下である必要があります。

そもそも個人再生は、法人が利用する“民事再生”を、個人でも利用しやすいように一部手続を簡略化したものです。

民事再生では債務額の上限がありませんが、個人再生では「債務総額が5000万円以下であること」という上限が設定されています。

住宅ローンを除いた債務総額が5000万円を超える場合は、通常の民事再生手続を利用するか、自己破産を検討することになります。

③給与またはこれに類する定期収入の見込みがあり、その変動幅が小さいこと

給与所得者等再生の場合、「安定した収入があること」の要件が小規模個人再生よりも厳格に定められていて、「定期収入の見込みがあって、その変動幅が小さいこと」という特有の要件も満たす必要があります。

具体的には、雇用による給与や、自営による事業所得、不動産所得、年金といった定期的な収入を得る見込みがあって、その収入の変動幅が小さいことが条件となります。

変動幅が小さいかどうかは、一般的に「過去2年間の年収に20%以上の変動があるかどうか」を目安に判断されます。

こうした安定収入の要件を満たしていれば、アルバイトや年金受給者であっても個人再生が利用できる可能性があります。

④過去7年間に免責または再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

給与所得者等再生では、以前にも個人再生や自己破産をしたことがある場合には、「7年間の期間を開けなくてはならない」という特有の要件も満たさなければなりません。

7年間の期間を開けないと個人再生が認められないケース

  • 過去に給与所得者等再生の手続を行っていた場合
  • 過去に再生計画に従った返済中に債務者に責任がないやむを得ない事情で返済が困難になり、ハードシップ免責を受けていた場合
  • 過去に自己破産の手続をして免責が認められていた場合

給与所得者等再生は、債権者の同意がなくても借金の減額が認められます。

過去に借金の減額や免責を認められた人に対して、短期間のうちに再び借金の大幅な減額を認めることは、債権者への返済が果たされない可能性が高いことから、債権者に不利益とならないよう、こうした制限が設けられています。

個人再生の認可要件

個人再生手続が開始され、再生計画案を作成・提出すると、裁判所による審査が行われ、債権者の異議も出なければ認可決定が出されます。

個人再生の認可要件は、次のとおりです。

  • 再生計画案が提出期限までに提出されていること
  • 最低弁済額を上回る弁済額が設定されていること
  • 債権者の過半数の同意があること

それぞれの要件ごとに、詳しくみていきましょう。

①再生計画案が提出期限までに提出されていること

再生計画案は、裁判所が指定した期限までに提出されている必要があります。

再生計画案の提出期限は、再生手続開始決定と同時に裁判所によって設定されます。

通常は個人再生の申立てから3~4ヶ月後に期限が設定されますが、この提出期限を1日でも遅れてしまうと、手続が廃止されてしまい、個人再生ができなくなります。

再生計画案は、民事再生法で定められた基準に従って適切な内容で作成する必要があり、さらに、実際に遂行が可能な内容でなければ認可が下りません。

内容に不備があると裁判所から補正の指示が出されますが、提出期限までに補正を終えて完成させた再生計画案を提出する必要があるので注意しましょう。

②最低弁済額を上回る弁済額が設定されていること

個人再生では、債務総額に応じて最低弁済額が定められていて、再生計画案は、この最低弁済額を上回る金額で設定されている必要があります。

個人再生の最低弁済額は、小規模個人再生と給与所得者等再生とで次のように異なります。

小規模個人再生の場合

小規模個人再生の場合、次の2つのいずれか高い方の額が最低弁済額となります。

  • 債務総額に応じて最低限返済しなければならない金額
  • 借金の総額(住宅ローンを除く) 最低弁済額
    100万円未満 借金全額
    100万円以上 500万円以下 100万円
    500万円以上 1500万円以下 借金額の5分の1
    1500万円以上 3000万円以下 300万円
    3000万円以上 5000万円以下 借金額の10分の1
  • 精算価値(申立ての時点で債務者が保有している財産の総額)

給与所得者等再生の場合

給与所得者等再生の場合、次の3つのいずれか高い方の額が最低弁済額となります。

  • 債務総額に応じて最低限返済しなければならない金額
  • 借金の総額(住宅ローンを除く) 最低弁済額
    100万円未満 借金全額
    100万円以上 500万円以下 100万円
    500万円以上 1500万円以下 借金額の5分の1
    1500万円以上 3000万円以下 300万円
    3000万円以上 5000万円以下 借金額の10分の1
  • 精算価値(申立ての時点で債務者が保有している財産の総額)
  • 可処分所得の2年分(収入総額から税金や最低生活費などを差し引いた金額)

③債権者の過半数の同意があること

小規模個人再生の場合、「債権者の過半数の同意があること」という特有の要件も満たす必要があります。

小規模個人再生では、提出された再生計画案に対する賛否が書面決議の形式で行われます。

書面の提出がない場合は同意したものとみなされ、書面が提出され不同意の債権者がいる場合には、次の2つを満たせば、再生計画案は同意があったものと判断され、個人再生の認可が下ります。

  • 再生計画案に反対(不同意)を表明した債権者の数が半数未満であること
  • 反対(不同意)を表明した債権者の有する債務額が債務総額の半分未満であること

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個人再生で住宅資金特別条項を利用する要件

個人再生では、住宅資金特別条項を利用することで、住んでいる自宅を手放すことなく借金を大幅に減額することができます。

住宅資金特別条項とは、個人再生の手続において住宅ローンの支払いを従前通り続けることにより、自宅を維持したまま、ほかの借金を大幅に減額してもらうという制度で、住宅ローン特則とも呼ばれます。

住宅資金特別条項は、次の要件を満たせば、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらでも利用することができます。

  • 住宅資金貸付特権(住宅ローンとしての借入れ)であること
  • 再生債務者所有の住宅であること
  • 再生債務者の居住用の建物であること
  • 住宅ローン以外の債権の抵当権が設定されていないこと
  • 滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続開始の申立てをしていること

それぞれの要件ごとに、詳しくみていきましょう。

①住宅資金貸付債権(住宅ローンとしての借入れ)であること

住宅資金特別条項を利用するためには、住宅資金貸付債権(住宅ローンとしての借入れ)であることが必要条件です。

たとえば、次のような事柄を目的として分割払いで借り入れたもので、抵当権が住宅に設定されているものが対象となります。

  • 住宅の購入や建設に必要な資金
  • 増築や改築、リフォームなど、住宅の改良に必要な資金

②再生債務者所有の住宅であること

住宅資金特別条項を利用するためには、個人再生を申し立てる債務者本人が所有している住宅であることも必要条件です。

なお、配偶者などと共有名義である場合も、所有名義人に再生債務者が含まれていれば、住宅資金特別条項を利用することが可能です。

③再生債務者の居住用の建物であること

住宅資金特別条項を利用するためには、再生債務者所有の住宅であることに加えて、再生債務者の居住用の建物であることも必要条件となります。

居住用といえるかは、「床面積の2分の1以上が自己の居住用とされていて、現実に居住の実態があるかどうか」で判断されます。

たとえば、住宅を店舗や事務所と兼用している場合、「住居の部分が床面積の2分の1以上ある」と判断されれば、住宅資金特別条項を利用することが可能です。

一方で、自宅兼店舗(事務所)の住居部分の床面積が2分の1に満たない場合や、別荘や事業用・投資用の不動産のように再生債務者自身の居住の実態がない建物は、住宅資金特別条項の対象外となります。

④住宅ローン以外の債権の抵当権が設定されていないこと

住宅ローン以外の債権の抵当権が住宅に設定されていないことも、住宅資金特別条項の利用要件です。

抵当権は、ひとつの住宅に対して複数設定することが可能です。

たとえば、住宅ローンのほかに、車のローンや事業用資金の借入れなどで住宅を担保にしている場合、住宅資金特別条項で住宅ローンの抵当権を実行できないようにしても、ほかの債権者が抵当権を行使することは可能なので、結果的に住宅を手元に残せなくなってしまいます。

そのため、住宅ローン以外の債務の抵当権が住宅に設定されている場合は、住宅資金特別条項が適用されないので注意しましょう。

⑤滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続開始の申立てをしていること

滞納による代位弁済がなされている場合、6ヶ月以内に個人再生の再生手続開始の申立てをする必要があります。

住宅ローンを滞納すると、保険会社が代わりに銀行へ住宅ローンの支払いを行います。

これを代位弁済といって、代位弁済の日から6ヶ月が経過すると、住宅資金特別条項が利用できなくなるため注意しましょう。

代位弁済後に住宅資金特別条項を利用する場合には、早期の準備や対応が重要なポイントとなるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

個人再生の条件についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう

個人再生をするためには、様々な必要条件を満たしていなければなりません。

申立要件や開始要件、認可要件は、小規模個人再生と給与所得者等再生とで特有の条件もあるため、ご自身が個人再生の要件を満たしているのか、個人再生がご自身に合った方法であるのか、不安や疑問を感じたら早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人ALGでは、個人再生に関することはもちろん、ほかの債務整理の方法についても提案・アドバイスすることが可能です。

個人整理の手続きを、そのまま任せることもできますので、どのようなことでお悩みなのか、まずはお気軽にご相談ください。

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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長

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