タイ進出サブページ タイ進出サブページ

1.最新法律アップデート
2.最新法令要約
3.重要判例・ルーリング

最新法律アップデート

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
BOI 投資委員会通達第1/2566号 主題:新課税体制による影響の軽減に供するための投資奨励措置 2023/5/16 2023/3/20
歳入局 投資委員会通達第ポー10/2566号 主題:投資奨励恩典を受けた外国法人が事業場又は住居目的で土地を所有することを許可するための基準及び条件 2023/6/23 2023/6/23
歳入局 所得税に関する歳入局長通達第435号 主題:電子データ作成システム、電子データ受信システム、税金の送金システムへの資本的支出又は電子データ作成サービス提供者、電子データ送信サービス提供者又は税金の送金サービス提供者に対して支払ったサービス料を対象とする法人税免税に関する基準、手続き及び条件 2023/6/28 2023/1/1

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、商務省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

最新法令要約

1.新課税方針による影響の軽減に供するための投資奨励措置

投資委員会は、2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意されたグローバル・ミニマム課税に対応するための投資奨励措置を発布しました。グローバル・ミニマム課税とは、グループの全世界での年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業において、世界最低税率として15%を下回る法人税実効税率が他国の子会社や支店に課されている場合、15%を下回る法人税率と15%の差額の税金を、親会社や本店の所在地国が上乗せ課税できる制度です。日本でも国税庁がグローバル・ミニマム課税に対応して日本の親会社等に上乗せ課税ができる法改正が行われ、2024年4月1日以後に開始する会計年度から適用される予定となっています。

投資奨励恩典により法人税の免除を受けている企業の場合、法人税の実効税率はゼロまたはそれに近い税率となるため、対象企業は、親会社の所在地国にて追加課税を受けることが想定され、そうなるとせっかく投資奨励恩典を付与したとしても、投資促進の効果がかなり減じられることになることから、投資委員会は、下記のような対応策を講じたものです。

(1)対象企業
投資奨励恩典を受けた外資系企業(外国に親会社がある企業)で、恩典申請前の会計期間における対象企業グループの連結収入が、以下のいずれかであること。

  1. (1.1)280億バーツ以上
  2. (1.2)当該会計期間が12カ月未満である場合は、280億バーツを会計期間の残存する日数で按分した金額以上であること
  3. (1.3)歳入局長の通達する国別レポート (Country – by – Country Report) の提出者に該当していること

(2)本措置は、従来の法人税免税恩典を、投資による純利益に対して通常の税率(現在20%)の50%軽減(つまり、10%)に変更したうえで、本来の法人税免税期間の2倍以内に法人税軽減期間を延長する。但し、最大10年間とする。もっとも、法人税率10%だとすると世界最低税率15%を下回っているので、あまり意味のある措置ではないと思われるかもしれませんが、国税庁やOECDが規定している各国の実効税率の計算方法は、タイの場合で言えば、タイに所在している全ての子会社・支店に対する課税額/それら子会社・支店の税引前利益合計により、算定されるので、ある子会社のBOI利益に対する税率が10%となったとしても、BOI以外の事業をその子会社や他の子会社・支店がタイで行っている場合もありますから、タイでBOI事業以外に複数の事業をしている場合は、今回の措置により実効税率が15%近辺になることは十分あり得ます。また、日本で上乗せ課税を受ける際に、さらに、現地での給与等の費用や固定資産額の5%(最初の適用年度は給与用の費用は9.8%、固定資産額は7.8%とされ、9年間で5%に低減する経過措置あり)の控除を受けられます。従って、今回のBOIの措置はそれなりに意味のある措置と言えると思います。

上記の変更申請については特に期限はありません。新規申請の場合は、最初からこの恩典措置を受けることができます。

2.投資奨励恩典を受けた外国法人に対する、事業場又は住居目的の土地所有許可

投資委員会(BOI)は、投資奨励恩典を受けた外国法人による奨励事業の運営に供するため、事業場又は住居とする目的による土地所有に関する基準を通達しました。所有の基準及び条件は、以下の通りです。

  1. 1.土地の所有許可期間に亘って払込済資本金が5千万バーツ以上であること。
    旧規定でも、資本金5千万バーツ以上であったが、新規定により、土地の所有許可期間に亘って当該資本金の金額を維持する旨が明記された。
  2. 2.事業場用の土地所有は、奨励証書の数にかかわらず、法人の事業の規模を考慮して所有許可面積を検討する。
    旧規定:奨励証書につき、5ライ(1,800平米)まで。
  3. 3. 経営者、専門家又は作業員の住居として許可する土地の範囲は、100タランワー~20ライ(400平米~32,000平米)。
    3.1経営者又は専門家の住居:1世帯につき100タランワー(400平米)まで。資本金5千万バーツにつき1ライ(1,600平米)まで所有可。但し、最高10ライ(16,000平米)まで。旧規定:世帯数問わず、10ライ(16,000平米)まで所有可。
  4. 3.2従業員の住居:従業員数300名につき1ライ(1,600平米)まで。合計で、資本金5千万バーツにつき1ライまで所有可。但し、最大20ライ(24,000平米)まで。旧規定:従業員数問わず、20ライ(24,000平米)まで所有可。
  5. 3.3上記3.1及び3.2に定める資本金5千万バーツ毎に1ライ(1,600平米)の所有許可は、経営者、専門家及び従業員住居用の所有面積を合算するものとする。
  6. 4.住居の所在地が事業場と別の場所である場合、住居として所有する土地との距離は50キロ以内であること。
  7. 5.当該土地を、上記の目的以外の用途、道徳、慣習又はその自治体の善良なる文化に反する用途で使用しないこと。
  8. 6.条件に反した場合、土地の所有権がはく奪される。その際、投資委員会事務局から通知を受けた日から1年以内に当該土地を売却しなければならない。

重要判例/ルーリング

1.重大な就業規則違反を犯した場合の解雇 (最高裁判例第74/2566号)

マネージャークラスの従業員は、自身が重要な責任を有しており、且つ製造工程に必要な雇用者の事業につき注意を払うべき立場でありながら、製造工程の区域内に酒を持ち込んで音楽をかける行為は、重大な就業規則違反であるものと見做される。この場合、雇用者は損害の発生を待つことなく、且つ解雇補償金、事前通告に代わる補償金並びに不当解雇による損害補償金を支払うことを要さずに解雇することができる。

2.発行した警告書と同一の違反行為を再発した従業員の解雇(特別控訴裁判所判例第310/2566号)

労働者が、軽微なる就業規則又は雇用者の合法な命令に反する行為を行い、雇用者が警告書を発行したが、その警告内容に基づく行為を行った日から1年以内に再発した場合は、解雇補償金の支給、及び未消化有給休暇の買取を要さずに解雇することができる。また、本件の解雇は不当解雇とはならない。

3.従業員の容姿を職位と相応しく統制するための雇用者の権限(最高裁判例第6231/2559号)

雇用者が、従業員による国内線又は同日に往復する国際線の航空便の乗務のために、ボディマス指数(BMI値)の適用及び定める値によるウエストサイズの制限により客室乗務員の容姿を統制することは、合法な命令であり、且つ雇用状態に関する合意に反するものとはならない。何故ならば、当該命令はかつて客室乗務員に対して適用しており、労働者に対して不利益なものとはならないほか、これらは労働者全員に対して一般的に適用しているからである。そのほかにも、雇用契約及び就業規則に基づき管理する雇用者の権限範囲内である。

4.従業員が雇用者のパソコンのデータを削除した場合、人事部はどのような権限を有するか?(最高裁判例第3561/2556号)

従業員が、従業員の管理責任内にある雇用者のパソコンにおけるデータを削除又は破壊する行為は、従業員が雇用者の合法且つ公正な命令に意図的に違反したものと見做される。本件、当該データが他の従業員のパソコンから取得することが可能な状態であり、期日以内に顧客に納品することができ、雇用者に対して損害が及んでいなかったとしても、このような行為は、仏歴2541(1998)年労働者保護法第119条(1)により、故意に雇用者に対して損害を与えたものと見做され、雇用者は解雇補償金の支給を要さずに解雇することができる。

又、本件の行為は、労働者保護法の他、仏歴2560(2017)年コンピューターに関する違法行為に関する法律第9条の違反に該当するものである。これは、たとえ復元ソフトによってデータの復元ができたとしても、違反行為が解消されるものではない。何故ならば、当該従業員が雇用者のパソコンからデータを削除又は破壊したことに変わりはないからである。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら