タイ進出サブページ タイ進出サブページ

1.最新法律アップデート
2.最新法令要約
3.重要判例・ルーリング

最新法律アップデート

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
財務省 財務省通達:外国から電磁的にサービスを提供する事業者又は外国の電子プラットフォーム事業者の付加価値税納付期限の延長について(第2号) 2023/8/11 2023/9/1
歳入局 歳入局長通達(第49号):仏歴2566(2023)年免税に関する勅令に基づく電子寄付システムを介した寄付を対象とする所得税、付加価値税、特定事業税及び印紙税の免除に関する基準、手続き及び条件 2023/8/29 2023/1/1~2023/12/31
歳入局 歳入局長通達:電子寄付システムを介して行われた教育機関への寄付を対象とする所得税、付加価値税及び特定事業税の免除 2023/6/28 2023/1/1
歳入局 歳入局長通達(第436号):電気自動車奨励のための支援金を対象とする所得税免除のための基準、手続き及び条件について 2023/9/15 2023/8/16
歳入局 歳入局命令第171/2566号:歳入法典第41条第2項に定める所得税の納付について 2023/9/15 2023/1/1

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、商務省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

最新法令要約

1.個人情報保護法(PDPA)適用からの1年間を振り返って

昨年度より個人情報保護法が適用されてから現在に至るまでに、同法に定める権限組織が確立され、すべての委員の選任が完了しました。個人情報保護法に定める権限組織は、以下の通りです。

  • 個人情報保護委員会(幹部委員及び専門委員9名)
  • 専門家委員会(個人情報侵害に関する苦情の受付義務及び権限を有しており、財政及び経済に関する苦情の受付を担当する部門及びデジタル技術に関する苦情の受付を担当する部門に分別される。
  • 個人情報保護委員会事務局

尚、個人情報保護法に関して民間企業を対象として発布された通達及び規則は、以下の通りです。

  1. 仏歴2565(2022)年個人情報保護委員会通達 主題:個人情報処理者による個人情報処理活動記録の作成及び保管に関する基準及び手続について
  2. 仏歴2565(2022)年個人情報保護委員会通達 主題:小規模企業である個人情報管理者による個人情報管理記録作成の免除
  3. 仏歴2565(2022)年個人情報保護委員会通達 主題:個人情報管理者の安全対策について
  4. 仏歴2565(2022)年個人情報保護委員会通達 主題:個人情報侵害の通報に関する基準および手続について
  5. 仏歴2565(2022)年苦情の申立、申立の拒否、苦情問題の解決、苦情の審理及び審理期間に関する個人情報保護委員会規則

2.東部特別開発地区(EEC)及び東部経済回廊への投資奨励措置

東部経済回廊における投資奨励恩典が享受されるには、投資委員会の定める基準及び条件を満たす必要があります。例えば、人材開発に関する事業は、双務協力の制度による職業訓練プロジェクト又はWork – Integrated Learning(WIL)などの、本投資奨励措置の条件に基づくタイ人材開発のための協力計画を有していることが求められます。技術及びイノベーションの研究開発プロジェクトについては、投資委員会(BOI)が認可した当該プロジェクトに基づく計画を有しており、奨励証書発行日から3年以内に技術及びイノベーションにおける研究開発プロジェクトへの投資額又は経費の合計が最初の3年間における売上総額の1%以上又は2億バーツ以上のいずれか低い方を満たすことが条件とされております。

東部特別開発地区(EEC)及び東部経済回廊における投資奨励措置に該当する事業は、2022年12月8日付投資委員会通達第18/2565号に基づき、A1+、A1、A2、A3及びA4(いずれも法人税免税恩典のある事業)に定める業種が対象となります。但し、事業場において所在が不明確な業種や事業場の所在地が、チャチュンサオ県、ラヨーン県及びチョンブリ県以外であることを条件としている業種、クラスターターゲット産業は本措置に基づく恩典の対象外となります。

3.中小企業(SMEs)を対象とする投資奨励措置に関する指針

投資委員会は、中小企業(SMEs)を対象とする投資奨励措置に関する指針を発布しました。当該指針には、中小企業の定義や、機械、資金、株主持分、機械への資本的支出及び登録資本金に対する負債の割合などが規定されております。投資委員会から奨励恩典を受けた中小企業(SMEs)については、奨励証書に定める最低資本金を満たした会計年度において法人所得税の免除が適用されますが、投資奨励事業(BOI)と非奨励事業(Non-BOI)による収入の総額が年間5億バーツ以内とされており、当該免除は、奨励事業による最初の収益が発生した会計年度から起算して3年分の財務諸表から考慮されます。

奨励事業が、投資委員会の定める基準を満たさなくなった場合は、当該事業の恩典及び条件が、通常の投資奨励における基準に変更され、当該事業は中小企業(SMEs)を対象とする奨励恩典に変更することができなくなります。また、通常の奨励恩典を適用できない場合は、当該投資奨励恩典は取り消されることになります。

重要判例・ルーリング

1.通常的な商業銀行の類似事業に対する特定事業税の免除(歳入局ルーリング第0702/4119号)

会社は外貨両替事業を営んでおり、当該事業は歳入法典第91/2(5)に定める通常の商業銀行の事業に該当するものなので、両替又は当該両替事業による通貨の取引に起因する経費控除前の利益は、歳入法典第91/6条(3)及び勅令(第469号)第5条の定めるところにより、0.01%の率による特定事業税の納税義務が課される。

2.運転資金の増加及び剰余金の資本化を目的とした本店からの借入金に対する利息の支払いにおける法人所得税の取り扱い(歳入局ルーリング第0702/4123号)

銀行が本店からの借入のために社債を発行し、米国の本店に対して利息を支払うことは、本店とタイ国内の支店が同一の法人であったとしても、タイ米国租税条約においては、タイ国内における恒久的事業場(PE)に該当する支店の所得及び経費は、本店と別の法人の所得と経費とみなされる。よって、銀行は当該利息について、(PEに対する)課税所得計算上の損金として算入することが認められ、歳入法典第70条及びタイ米国租税条約第11項及び第12項に基づき、当該利息額に対して10%の税率により源泉徴収する義務を有する。

そのほかに、仏歴2551(2008)年金融機関事業法第32条に基づいて、銀行が会計上本店に帰属する剰余金を資本化することは、タイ国内における資産の保持のために銀行の剰余金を本店持分として送金したものとみなされる。これは損益計算書又はその他の帳簿上の利益を処分して外国の居住者に対する債務として計上することとなるため、銀行は歳入法典第70条の2(1)に基づき、当該処分対象の金額の10%の税率で源泉徴収する義務を有する(利益送金税)。

3.不良債権の償却(歳入局ルーリング第0702/3199号)

会社の債権(未収入金)の各々が2百万バーツ以内であり、当該債権が事業によって又は事業に起因して発生したものであり、且つ時効が満了していない場合、会社がこれを民事訴訟として提起して裁判所が受理する旨の命令をしており、当該会社の取締役が当該債権を不良債権としてその会計期間の末日から30日以内に償却する旨を承認していれば、会社は仏歴2534(1991)年省令第186号第5及び第7項により、裁判所が訴状を受理した会計年度の不良債権として償却することができる。また、その後に会社が不良債権として償却した債権の返済を受けたときは、当該金額について、その返済を受けた会計年度における法人所得税計算上の所得として算入しなければならない。

4.雇用者による従業員の異動権限と雇用者の地位の譲渡(特別控訴裁判所判例第858/2564号)

本件は、雇用者が労働者を異動させる権限の範囲を論点とするものである。その内容によれば、本件の雇用契約上、雇用者は適当と判断する他の事業場又は他の職務に異動させる権限を有する旨が規定されており、労働者もこれに署名した事案であった。当該規定は、雇用者の有する他の事業場に限り労働者を異動させる権限を有する旨のものであって、労働者を他の雇用者の下で、外国に異動させる権限が与えられたものではない。

労働者が上記の雇用者の命令に基づく業務に承諾しないことは、雇用者の重大な命令に従わないこととはならない。何故ならば雇用者による権限の行使または命令は、不当且つ違法なものであるからである。

5.残業と雇用者の権限(特別控訴裁判所判例第2904/2562条)

本件は、雇用者が残業をさせてくれないとして、労働者が雇用者を訴えた事案である。

労働法では、雇用者は労働者からその都度承諾を得ない限り、残業をさせることは禁止されている。

雇用者によれば、残業がある場合、雇用者は差別することなくこれに勤務させることを検討する内容の文章を記載していた。当該文章は、承諾があった際に契約を発生させるには不明瞭な文章である。単にもし残業がある場合は差別することなく勤務をさせる旨の表明をしているに過ぎない。すなわち、残業を認めるかは雇用者の裁量によるものであるため、労働者に対して残業をさせる義務が生ずるものとはならない。

よって、雇用者は時間外勤務を希望する労働者を選抜するために、裁量によって検討する権限を有することとなる。雇用者が労働者に対して残業をさせるか否かについては、雇用者の権利及び経営権限によるものである。また、裁判所にも雇用者が労働者に対して残業をさせることを命ずる法律は存在しない。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら