監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
ERCP検査とは、胆管や膵管に造影剤を注入して調べる検査です。
ERCP検査は、治療も併せて行えるメリットもありますが、物理的な刺激などによって膵炎を引き起こされるケースがあるなど、医療過誤が疑われることもあります。
この記事では、ERCPによって起こり得る医療過誤について、損害賠償請求が認められるのかも含めて解説します。
目次
ERCP検査によって医療過誤を疑うことのできるケースとして、主に以下のようなものが挙げられます。
特に、腸管を傷つけられたケースでは、医師の手技の誤りを追及できる可能性があります。
また、急性膵炎はよく知られている合併症であり、すぐに対応してもらわなければ重篤な症状を引き起こすおそれがあるため、対応が遅れたことを追及できる可能性があります。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)とは、口から内視鏡を入れて十二指腸を通り、胆管や膵管に細いチューブによって造影剤を注入し、結石やがん等の異常がないかを調べる検査です。
腹部エコー検査やCT検査、MRI検査等によって胆管や膵管などに異常が疑われる場合、確定診断のために行われます。また、狭くなっている胆管を拡張したり、胆石を除去したりする治療も併せて行うことができます。
ERCPは、急性膵炎や胆管炎、消化管穿孔、造影剤へのアレルギー反応などの合併症を引き起こすことがあります。
なかでも、急性膵炎はよく知られている合併症であり、重症になると命を落とすケースもあるため、すぐに診断して適切な治療を行う必要があります。
ただし、膵炎はERCPの直後ではなく、時間が経ってから発症するケースもあるため、全身状態の観察が重要です。
ERCPに関する医療過誤では、高額な損害賠償を認めた裁判例もあります。医療過誤を疑った場合には、最初に弁護士へ相談することが一般的です。
弁護士に相談したら、カルテや検査画像などの証拠となる資料を収集し、医学文献の確認や協力医からの意見聴取を行って、医療過誤があったのか、医療過誤と患者の死亡などの結果に因果関係があったのか等を検討します。
検討の結果、医療過誤であり因果関係も存在したと判断すれば、医療機関側との示談交渉を行います。交渉がまとまらなければ、訴訟による決着を含めた対応を行います。
ERCPに関して医師の過失が認められた裁判例について、以下でご紹介します。
大阪地方裁判所 平成12年9月28日判決 平9(ワ)2992号
本件は、被告病院において8月7日にERCP検査を受けた患者について、胆石を内視鏡によって摘出できなかったため、後日、開腹手術を行って摘出する予定としたところ、患者が重症急性膵炎を発症して8月13日に死亡した事案です。
患者は、検査後から鳩尾あたりの痛みを継続的に訴えていましたが、ERCPに伴う急性膵炎の発症率は0.1%以下とされているところ、被告病院の医師が急性膵炎に対する予防的措置として薬を投与しつつ、痛み止めや他の薬を投与したことには、特に不合理な点はないと裁判所は認定しました。
しかし、8月8日には血清アミラーゼ値の異常な高値が判明していたこと等から、この時点では急性膵炎を疑うべきであり、確定診断のための検査を実施する注意義務があったとしました。
被告病院の医師には、それ以降も確定診断や病状の把握のための検査を怠った過失が認められました。
軽症および中等症の急性膵炎の死亡率は10%程度であり、重症膵炎のショック症状が現れたのは8月9日の午前中であったため、検査の時間を考慮しても半日以上の時間があったことから、被告病院の医師の過失がなければ患者の死亡は避けられたと推認するのが相当だと裁判所は認定し、医師の過失と患者の死亡の結果には相当因果関係があるとされました。
そして、逸失利益や死亡慰謝料、弁護士費用等、合計約1億2891万円の請求を認容しました。
ERCPに関連して、患者によくない結果が発生したことについて医療機関側の賠償責任が認められるためには、過失があったことを主張する必要があります。
ERCPの医療過誤で、医療機関側の過失として主張するべき主なポイントについて、次項より解説します。
ERCP検査が必要であったか、検査しても問題ない状態であったかを確認します。
検査の前に既往症を確認して、胃の切除を行った経験や、造影剤などによってアレルギーを起こしたことがないか等をチェックしなければなりません。
ERCPがリスクを伴う検査であることについての説明はなされていたかを確認します。
特に、ERCPには膵炎を引き起こすリスクがあるため、その点についての説明が重要となります。
ただし、ERCPによる膵炎によって死亡するリスクがあることや、死亡する確率について詳細に説明すること等について要求することは難しいでしょう。
ERCPよりも明らかに利益の大きな方法がある場合には、患者に説明する必要があると考えられます。
ERCPを実施した医師の手技に過失がなかったかを確認します。
医師が腸管に対して垂直方向に大きな力を加えたり、消化管の動きが強い状態でERCPを継続しようとしたりすれば、手技上の過失が認められる可能性があります。
ただし、処置が一般的なものであったケース等では、医師の過失を証明することは容易ではありません。
過失があったことを確認するためには、医療過誤に詳しい弁護士への相談が必要となる場合が多いでしょう。
ERCP検査や、治療後の対応に過失がなかったかを確認します。
特に、膵炎が発生していないかを確認することや、膵炎が重症化するのを防ぐための措置が適切であったのかについては念入りに確認するべきでしょう。
過去の裁判例では、主に以下のようなことが争点となっています。
損害賠償請求を成立させるには、医療機関側に過失があっただけでは不十分で、その過失によって患者が亡くなったといえる「因果関係」が必要です。
この因果関係は、「医療機関に過失がなければ患者は助かったと判断できるか」という点が基準になります。
法律上は、患者が助かったと認められるだけの高度な蓋然性(可能性の高さ)が求められます。
ただし、高度の蓋然性までは認められないケースでも、医療機関側の過失と死亡との間に相当程度の可能性が認められれば、慰謝料など一部の損害賠償が認められることがあります。
ERCPによって引き起こされた結果が医療過誤によるものではないかと考え、賠償請求を検討している方は、医療過誤に強い弁護士への相談をおすすめします。
医療機関側の過失を主張するためには、医療と法律の両方について、十分な知識を有している必要があります。そのため、弁護士だけでなく、協力医の存在も欠かせません。
弁護士法人ALGでは、医療過誤を扱った実績の豊富な弁護士が何人も在籍しており、協力医のネットワークも整えているため、複雑な医療過誤の事例に関するご依頼にも対応可能です。
ERCPに関する医療過誤の疑いについては、ぜひ私たちにご相談ください。

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