監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
母親が妊娠しているときに、赤ちゃんの大きさを調べて、大きくなりすぎていると指摘されるケースがあります。
このとき、大きさに誤差があることも考えられますが、本当に赤ちゃんが大きいのであれば、出産に困難を伴うことを覚悟する必要があります。状況によっては、帝王切開による出産も考えなければなりません。
この記事では、赤ちゃんが大きくなりすぎる「巨大児」について、原因や出産方法、出産のリスク等について解説します。
目次
巨大児とは、出生体重が4000g以上の赤ちゃんのことです。赤ちゃんが巨大児であることは、出生後に初めて分かる場合もあります。
母親のお腹の中にいる胎児の体重を正確には測れないため、超音波検査により、赤ちゃんの頭の大きさやお腹まわりの大きさ等を測る方法によって体重を推定します。赤ちゃんの推定体重は、重い方にも軽い方にも、10%程度の誤差が生じるケースが多いです。
巨大児は出産時や産後に、母親や赤ちゃんにリスクを伴うこともあります。
赤ちゃんが巨大児になる原因として、主に以下のようなものが考えられます。
両親の一方が、あるいは両方が高身長な場合や大柄な場合などでは、母親のお腹の中で、赤ちゃんが大きくなってしまうことがあります。
このような理由で赤ちゃんが大きいのであれば、赤ちゃんは健康であることが多いものの、出産には困難を伴うケースが少なくありません。
また、両親の少なくとも一方が、生まれたときに大きかった場合には、赤ちゃんが大きくなるケースもあります。これは、現在では親が標準体型になっていても同様です。
なお、巨大児を産んだ経験のある母親は、その後の出産でも赤ちゃんが巨大児になる確率が高まります。
母親が妊娠する前から糖尿病であった場合や、妊娠糖尿病になった場合には、赤ちゃんが巨大児になるリスクが高くなります。これは、母親の血糖値が高い場合、胎盤を通って赤ちゃんに届くブドウ糖の量も多くなり、赤ちゃんが成長しすぎてしまうからです。
肥満である女性が妊娠すると、赤ちゃんが巨大児になりやすいです。
母親の肥満が巨大児の原因になる仕組みは、まだ完全には解明されていません。
しかし、肥満である母親の胎盤は大きくなりがちであるため、赤ちゃんが育ちすぎることに影響していると考えられています。
巨大児の出産方法として、早い時点で陣痛促進剤を投与する方法や、帝王切開により出産させる方法が考えられます。
赤ちゃんが巨大児だと考えられるときに、医療機関側から説明を受けるはずです。しかし、巨大児であることを確定させるのは困難であるため、不確かな状況で判断を迫られる場合も考えられます。
赤ちゃんが巨大児だと、難産になるリスクや、赤ちゃんや母親が負傷するリスクなどがあります。赤ちゃんが大きければ大きいほど、リスクは高くなります。
巨大児の出産による赤ちゃんと母親への影響について、次項より解説します。
巨大児の経腟分娩では、赤ちゃんの出産までに時間がかかることが多いです。また、出産の途中で母親の恥骨などに肩が引っかかってしまうなど、トラブルのリスクも高くなっています。
巨大児の経腟分娩で、赤ちゃんに生じることの多い障害や合併症として、主に以下のようなものが挙げられます。
出産時
出産後
巨大児の経腟分娩では、母親にも負傷するリスクがあります。生じることの多い合併症として、主に以下のようなものが挙げられます。
出産時
出産後
巨大児の出産について、以下のような場合には医療過誤の疑いが考えられます。
赤ちゃんに巨大児の疑いがあっても、帝王切開を行う義務までは認められないことが多いです。
ただし、予測される赤ちゃんの大きさの程度や、母親の持病または既往症、出産中の胎児心拍数、医療機関側の検査や説明等の要因によって、結論が変わる可能性もあります。
巨大児の出産に関する医療過誤の裁判例について、以下で解説します。
名古屋地方裁判所 平成18年6月30日判決 平13(ワ)3895号
本件は、妊娠38週程度の時期に4348グラムの巨大児だと推定された赤ちゃんが、出産の際に肩甲難産となり、クリステレル圧出法や会陰切開、吸引分娩を行って経腟分娩されたものの亡くなってしまった事案です。なお、生まれた赤ちゃんの体重は4852グラムでした。
裁判所は、胎児心拍数の記録からは赤ちゃんの除脈が認められないとしました。また、肩甲難産の発生が懸念されても、直ちに帝王切開を行う注意義務は認めませんでした。
しかし、本件では肩甲難産の危険因子が幾重にも重なっており、分娩の経過によっては帝王切開に移行する注意義務は否定できないとしました。
その上で、被告病院の医師は、肩甲難産の危険性を高める吸引分娩やクリステレル圧出法を行っており、分娩方法選択の注意義務に違反していると認定しました。
さらに、カテーテルによる赤ちゃんの気道確保などは行っておらず、肩甲難産になった赤ちゃんを娩出させるための多種多様な手技を行ったとは認められないため、状況に応じた各種手技を施行する注意義務に違反していると認定しました。
肩甲難産の周産期死亡率に照らせば、上記の注意義務違反がなければ、赤ちゃんが死亡しなかった高度の蓋然性が認められて、逸失利益や慰謝料、弁護士費用等、合計約3256万円の請求を裁判所は認容しました。

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