医療裁判の勝訴率

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

近年の医療過誤訴訟の処理状況と」傾向

医療過誤、医療事故、医療ミスに関連する全国の医療訴訟に関する判決のうち、原告側の請求が一部でも認められた判決数に対する割合(認容率)は、2010年に20.6%となり、前年より4.7ポイントの大幅な減少となりました。認容率は、2003年の44.3%をピークに以後は減少傾向にあります。

年間の新規医療訴訟の件数は、2010年には794件となり、前年に比べて62件増加しましたが、2年前の876件よりは少なくなりました。既済件数は921件で31件減少し4年連続の減少、平均審理期間は24.4ヵ月で0.8ヵ月減少しました。

新規件数も2004年の1110件をピークに減少に転じ、その後、07年に31件の増加を見せたものの、08年に再び減少、09年も減少傾向をたどり、10年には再度増加しましたが08年レベルに戻すほどでありませんでした。

このような傾向を見て分析できることは、一つには弁護士が増えたことによる「やみくも裁判」の弊害がると思われます。

昨今の弁護士のホームページなどを見てみると、つい先ごろまで自己破産などの債務整理を主にやっていた弁護士(または弁護士事務所)が取り扱い分野の中に、債務整理や離婚訴訟などと並んで、医療事故を上げています。医療事件は、日頃債務整理や離婚や交通事故などばかりやっている弁護士が、医学書片手に簡単にできる弁護活動ではありません。こういった弁護士側の状況も、医療裁判の勝訴率(認容率)の低下に影響していることはいなめないのではないでしょうか。

また、2003年の勝訴率(認容率)44.3%をピークに以後減少傾向にある原因の一つとして、裁判所側の事情?もあるのではないかと私たちは見ています。というのも、あまり被害者側が医療裁判に勝ちすぎると、医療現場が委縮してしまい、医療崩壊につながるのではないかという懸念があるからです。

それを懸念した裁判所側が、よほど明らかな医療ミスなどの証拠がない限り、病院側に有利な判決を下しているのではないかという見方です。すべての裁判所や裁判官の立場がそうだとは思いませんが、いずれにしろそういったことも含め、認容率の低下が近年おきているのではないかと私たちは分析しています。

医療訴訟における近年の認容率(勝訴率)

一般の民事訴訟(通常訴訟)では、原告側が勝訴するケースが多いのが一般的です。それには、原告側には「自分が負けるかもしれない」と思えば、「訴訟を起こさない」という選択肢があるわけですから、訴訟を選択したケースで「認容率」(勝訴率)が結果的に高いのは当然かもしれません。

実際に判決に至った通常訴訟での認容率(一部認容を含む)を見ますと、平成8年から平成16年までの9年間の平均値で、85.4%という圧倒的な勝率となっています。

これに対して医療事件に関する訴訟では、同じく平成8年から平成16年までの9年間の平均値で、認容率は39.9%と大きく下回ります。これは通常訴訟の認容率の実に「半分以下」、ということになります。通常訴訟と比較した場合、医療訴訟で勝訴を得ることの相対的な困難さが窺われます。

しかしながら、故・田宮二郎さん主演の「白い巨塔」がお茶の間をにぎわせていた昭和40年代前半には、医療過誤訴訟の認容率は11.1%という低水準にありました。その後、昭和50年代になって30%を超えるようになり、平成15年には、一時的ではありますが、44.3%の認容率を記録したこともありました。

しかし、前章でも述べましたように、近年はその認容率も減少傾向を辿り、平成17年には37.6%、平成20年には26.7%、そして平成22年には20.2%という認容率の落ち込みをみせています。

弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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