個人再生と民事再生の違いとは?対象者や手続きなどを徹底比較
債務整理の方法のなかでも、個人再生と民事再生はよく混同されがちです。
個人再生と民事再生は、どちらも破産を回避しつつ、裁判所を介して経済状況の立て直しを図る法的手続きですが、対象者や手続きの複雑さ、費用などに違いがあります。
この記事では、個人再生と民事再生の違いについて、対象者や手続きなどを比較しながら解説していきたいと思います。
個人再生と民事再生のどちらを選ぶべきか悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。
目次
個人再生と民事再生の違い
“個人再生”と“民事再生”は、どちらも民事再生法に基づいた債務整理の手続きですが、主に「対象者」、「債務の上限」、「手続きの複雑さ」、「費用」、「債権者の同意」の5つの違いがあります。
個人再生とは?
個人再生とは、経済的な困難に直面した個人が裁判所を介して借金を元金ごと大幅に減額してもらって、残りを3年(最大5年)で分割返済していく債務整理の方法です。
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類の手続きがあります。
| 小規模個人再生 |
小規模個人再生は、主に個人事業主を対象とした手続きです。 次の利用条件を満たしていれば、会社員やアルバイト、年金受給者の方でも利用できますが、債権者の過半数が反対していると手続きが廃止になります。
利用条件
|
|---|---|
| 給与所得者等再生 |
給与所得者等再生は、主に会社員や公務員などの安定した収入が見込める給与所得者を対象とした手続きです。 次の利用条件を満たしていれば、債権者の同意がなくても利用できます。
利用条件
|
民事再生とは?
民事再生とは、経済的な困難に直面した法人や個人が、裁判所を介して債権者の多数の同意を得ることによって、破産を回避しつつ、事業を再建して債務を返済していく債務整理の方法です。
会社の再建を目的とした“民事再生”を、個人の方でも利用しやすいように手続きを簡略化したものが“個人再生”なので、手続きや費用に大きな違いがあります。
対象者
個人再生は個人だけが利用できますが、民事再生は個人・法人を問わず利用することができます。
| 個人再生 | 民事再生 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 個人のみ | すべての法人・個人 |
ここでいう「個人」とは、勤務先から給与を受け取っている給与所得者のほか、運送業や小売業などの事業を個人で営んでいる個人事業主も含まれます。
給与所得者の方が借金の返済ができなくなったり、個人事業主の方が売掛金の支払いが滞ってしまったりして経済的な困難に直面したとき、個人再生と民事再生、どちらかの方法で経済状況の立て直しを図ることができます。
もっとも、民事再生は手続きが複雑で費用も高額になることから、個人の場合、負債が数千万円を超えるなどの特別な事情がない限りは個人再生を利用することになります。
債務の上限
個人再生には「住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下」という債務の上限がありますが、民事再生にはこのような債務の上限はありません。
| 個人再生 | 民事再生 | |
|---|---|---|
| 債務の上限 | 5000万円以下 (住宅ローンを除く) |
なし |
個人が抱える債務が5000万円を超えるようなケースでは、個人再生ではなく民事再生や自己破産を利用することになります。
手続きの複雑さ
個人再生は民事再生の手続きを簡略化したものなので、民事再生よりも手続きが簡易になっています。
これに対して民事再生は、関係者が多いことから手続きが複雑になっています。
| 個人再生 | 民事再生 | |
|---|---|---|
| 債権額の確定方法 | 手続内で確定されるのみで、確定判決と同等の効力は与えられない | 債権調査規定に従って確定され、再生債権者表に記載されると、確定判決と同等の効力が認められる |
| 再生計画案の決議方法 | 書面による決議 (給与所得者等再生では、決議は行われず意見聴取のみ) |
債権者会議での決議 または 書面による決議 |
| 監督委員の有無 | 監督委員は選任されないが、個人再生委員が選任されて、裁判所から指定された職務のみを行うことがある | 監督委員が選任されて、手続き全般の監督職務を行う |
費用
個人再生では裁判所費用や弁護士費用をあわせて50万~80万円程度、民事再生では裁判所費用や弁護士費用をあわせると数百万単位の費用が必要になります。
| 個人再生 | 民事再生 | |
|---|---|---|
| 費用相場 | 50万~80万円程度 | 数百万~数千万円 |
個人再生において個人再生委員が選任されない場合、裁判所費用は数万円で済む場合があります。
一方、民事再生では手続き全般の監督を行うために監督委員が必ず選任されるので、報酬として最低でも200万円が必要になります。
さらに、弁護士に依頼する場合は裁判所費用に加えて数百万円単位の弁護士費用も必要になるため、費用が高額になります。
債権者の同意
再生計画案の認可について、個人再生の小規模個人再生と民事再生では、債権者の過半数および債権額の2分の1以上の債権者の同意が必要になります。
なお、個人再生では手続きを簡略化するために“みなし届出”という制度が設けられていて、決議の際に届け出をしなかった債権者は「同意した」とみなされるのに対し、民事再生では届け出をしなかった債権者は「同意しなかった」とみなされます。
| 個人再生 | 民事再生 | |
|---|---|---|
| 再生計画案の決議方法 | 書面による決議 (給与所得者等再生では、決議は行われず意見聴取のみ) |
債権者会議での決議 または 書面による決議 |
| 債権者の同意 | 債権者の過半数または債権額の2分の1以上が不同意だと、再生計画案は認可されない (給与所得者等再生の場合は同意が不要) |
債権者の過半数および債権額の2分の1以上の同意がないと、再生計画案は認可されない |
| 届け出がない場合 | 再生計画案に賛成であるとみなされる | 再生計画案に反対であるとみなされる |
小規模個人再生の場合、不同意が多数でない限り再生計画案は認可されますが、民事再生の場合は過半数以上の同意が必要になります。
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個人再生と民事再生どちらを選ぶべき?
個人再生と民事再生のどちらを選ぶべきかは、債務総額や手続きの目的によって異なります。
債務総額が5000万円以下であれば、まずは個人再生を検討しましょう。
債務総額が5000万円を超えている場合や、事業の再建が目的の場合は民事再生が適しています。
個人再生が向いているケース
個人再生は、民事再生と比べて手続きが簡易で、費用を抑えつつ経済状況の再生が図れます。
そのため、次のいずれかに当てはまる方は、まずは個人再生を検討しましょう。
- 債務総額が5000万円以下の場合
- 借金の返済が苦しくなった給与所得者や個人事業主の場合
- ローン返済中のマイホームを手放さずに債務整理をしたい場合 など
民事再生が向いているケース
民事再生は主に、経済的な困難に陥った会社が利用することを想定した規定になっています。
そのため、次のいずれかに当てはまる方は、民事再生をすることで前向きな経済状況の立て直しが図れる可能性があります。
- 債務総額が5000万円を超えている場合
- 支払不能や債務超過のおそれがある会社経営者の場合
- 破産を回避して事業を継続したい場合 など
個人再生についてご不明な点は弁護士にご相談ください
民事再生は関係者が多いことを想定して手続きが複雑になっているため、個人の方でも利用しやすいように手続きを簡略化したものが個人再生です。
そのため、多くは個人再生が利用されますが、なかには民事再生が適しているケースや、任意整理や自己破産が向いているケースもあります。
借金や収入の状況、手続きの目的によって、最適な債務整理の方法が異なります。
ご自身に合った借金問題の解決方法を知るためにも、個人再生や民事再生の手続きを検討されている方は、まずは弁護士法人ALGまでご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ 名を擁し()、東京、を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。