自己破産をしたらどうなる?その後の生活や家族への影響など解説
借金の返済ができなくなって自己破産を検討しているものの、日常生活やご家族への影響を心配して一歩踏み出せずにいらっしゃる方も多いです。
自己破産はすべての借金が免除される一方で、他の債務整理と比べて、日常生活や家族への影響が大きくなる可能性があります。
ですが、必ずしもそれがデメリットになるとは限りません。
自己破産をした場合の日常生活やご家族への影響について、本記事で詳しく解説していきたいと思います。
自己破産をしたらどうなる?
自己破産をすると、非免責債権を除くすべての借金の支払義務が免除されて、借金がゼロになります。
そもそも自己破産は、借金の返済が困難になった個人が裁判所に破産を申し立てて、財産を手放す代わりに借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
手続きの性質上、高額な財産は手放すことになったり、職業や移動に制限が生じたりするほか、ブラックリストに載ることで日常生活に一定の支障をきたすことがあります。
自己破産を検討していても、こうした生活やご家族への影響を心配して手続きに踏み出せない方も多くいらっしゃいます。
そこで、19のケースごとに、自己破産の影響について詳しくみていきましょう。
自己破産の手続きの概要やメリット・デメリットについて、以下ページで詳しく解説しています。
ぜひご参考ください。
抱えている借金はどうなる?
自己破産をして裁判所から免責の許可が得られると、それまでに抱えていた借金は全額免除=ゼロになって支払う必要がなくなります。
ただし、税金や社会保険料など、免責の対象とならない債権=非免責債権もあるので注意しましょう。
免責されず自己破産後も支払義務が残る債権の一例
- 税金(所得税、住民税、固定資産税など)
- 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、国民年金保険料など)
- 養育費や婚姻費用
- 罰金
- 不法行為による損害賠償金 など
持ち家などの不動産はどうなる?
自己破産をすると、基本的に持ち家などの不動産は手放すことになります。
自己破産では、20万円以上の価値がある財産は換価処分されて債権者への返済に充てられます。
不動産は20万円以上の価値がある財産に含まれるため、自己破産する債務者本人名義の持ち家や不動産は、ローンが残っているかどうかにかかわらず手放すことになります。
持ち家を手放すことになると、当然ながら同居しているご家族も住めなくなり、引っ越しや場合によっては転職・転校が必要になるなど、多大な影響が及ぶ可能性があります。
持ち家を残したまま債務整理をしたい場合は、個人再生を検討しましょう。
賃貸住宅の場合は?
賃貸住宅の場合、自己破産しても賃貸借契約が解除されることはないのでそのまま住み続けることができます。
ただし、家賃滞納を理由に賃貸借契約が解消される可能性はあるので注意しましょう。
車はどうなる?
自己破産をすると、債務者本人名義の車は手放すことになる可能性が高いです。
自動車ローンが残っている場合、その車に担保権が設定されていると、自己破産することで債権者に車が回収されてしまいます。
自動車ローンが残っていない場合でも、20万円以上の価値がある車は換価処分されて債権者への返済に充てられるため、手元に残すことは難しいでしょう。
もっとも、次のようなケースでは車を手放さずに済む可能性があるので、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
自己破産をしても車を残せる可能性があるケース
- 査定額が20万円以下の場合
- 登録年数が5~7年以上経過している場合
- 車が生活や仕事に不可欠だと裁判所に認められた場合
借金の保証人はどうなる?
自己破産をすると、借金の保証人が一括請求されてしまいます。
自己破産によって借金の支払義務が免除されるのは、自己破産をした主債務者本人のみです。
保証人の支払義務までは免除されず、借金の支払義務は保証人へと移るため、自己破産によって主債務者へ請求できなくなった分は、債権者から保証人へ一括請求されます。
ご家族やご友人が借金の保証人になっているケースも少なくないでしょう。
この場合、自己破産をすることで保証人となっているご家族やご友人への影響は避けられないので、ケースによってはご自身の自己破産と同時に、ご家族やご友人の債務整理も検討する必要があります。
家族や会社にばれる?
自己破産したことがご家族や会社にばれるケースは、それほど多くありません。
ご家族と別居している、生計を別にしているケースではバレずに自己破産できる可能性がありますが、次のような事柄がきっかけで自己破産したことが知られてしまう場合があります。
自己破産が家族や会社にばれるきっかけ
- ご家族や会社から借金をしていて自己破産開始の通知が届いた
- ご家族や会社の関係者が保証人になっていて債権者から一括請求された
- ご家族や会社の関係者が官報を見た
- 手続きに必要な書類を集めるためにご家族や会社の協力が必要になった
- 裁判所や債権者からの連絡・郵便物をご家族や会社に見られた
- 不動産や車などの財産が回収された
- 家族カードが使えなくなった
- 給料の振込口座が凍結された
- 債権者から給料を差し押さえられた
- 資格・職業制限を受ける職業に就いている など
家族はどうなる?
自己破産をしても、ご家族名義の財産が処分されることも、ご家族の信用情報や進学・就職・結婚に影響することもありません。
そもそも自己破産は債務者個人の手続きなので、ご家族が直接的に不利益を受けることはほとんどありません。
ただし、次に挙げるケースのように、状況次第ではご家族に間接的な影響が及ぶ可能性があります。
自己破産がご家族に影響するケース
- 借金の保証人になっているご家族が一括請求される
- ブラックリストに載っている間はお子さんの奨学金の保証人になれない
- 主債務者のクレジットカードに紐づく家族カードが利用できなくなる
- 自宅が回収されて引っ越しや転勤、転校を余儀なくされる
- 車が回収されて生活に不便が生じる など
仕事はどうなる?
自己破産をしても、仕事で降格・減給・解雇といった処分を受けることはありません。
ただし、自己破産の手続き中は一部の資格・職業が制限されるため注意が必要です。
自己破産によって制限がかかる資格・職業
- 弁護士・司法書士・弁理士・税理士・公認会計士などの士業
- 公証人・公正取引委員・教育委員会などの一部の公務員
- 銀行の取締役・信用金庫の役員などの金融関連業
- 警備員
- 生命保険の募集人
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 古物商 など
こうした資格・職業の制限は、破産手続の完了によって解除(復権)されることがほとんどですが、一時的であっても職業が制限されることを回避したいのであれば、任意整理や個人再生を検討する必要があります。
給料はどうなる?
自己破産の破産手続開始決定後に支払いが確定した給料は、手続きの影響を受けず、以降の給料もそのまま全額が受け取れます。
一方で、自己破産によって給料が処分されて債権者への返済に充てられる2つのケースがあります。
<ケース1>自己破産を申し立てる前に受け取った給料
自己破産を申し立てる前に受け取った給料は現金や預貯金として扱われます。
99万円以上の現金や、20万円以上の預貯金は、処分の対象となって債権者への返済に充てられます。
<ケース2>破産手続開始決定時点で支払いが確定していた給料
破産手続開始決定時点で支払いが確定していた給料は、手取り額の4分の1が処分の対象となって債権者への返済に充てられます。
すでに給料を差し押さえられている場合は?
自己破産を申し立てる前に返済を滞納してしまい、すでに給料を差し押さえられてしまっている場合、自己破産の手続きを進めるなかで給料の差し押さえが中止または失効するため、給料を満額受け取れるようになります。
| 管財事件 | 管財事件の場合、破産手続開始決定が出されると差し押さえの効力は失われるため、給料を満額受け取れるようになります。 |
|---|---|
| 同時廃止 | 同時廃止の場合、破産手続開始決定が出されると差し押さえは中止されます。 その後、免責許可決定が出されると差し押さえの効力が失われるため、給料を満額受け取れるようになります。 |
退職金はどうなる?
自己破産をすると、退職金も財産の一部として処分の対象になる可能性があります。
自己破産における退職金の扱いは、破産手続開始決定時の状況により、次のように異なります。
- すでに退職金を受け取っている場合は現金や預貯金と同じ扱いになる すでに退職金を受け取っている場合は、現金や預貯金として扱われます。
そのため、退職金を含めた現金が99万円を超える、あるいは預貯金が22万円を超える場合は全額が処分の対象となります。 - 退職済みでこれから退職金を受け取る予定の場合は4分の1が処分の対象になる 退職後でこれから退職金を受け取る予定の場合は、予定額の4分の1が処分の対象になります。
このとき、予定額の4分の1が20万円未満であれば、そのまま全額を受け取れます。 - 在職中でしばらく退職金を受け取る予定がない場合は8分の1が処分の対象になる 在職中の場合、実際に退職する必要はありませんが、“退職金見込額証明書”をもとに、破産手続開始決定時点で退職したと仮定して退職金を算出し、見込額の8分の1が20万円を超える場合は、その相当額を支払うことになります。
携帯はどうなる?
自己破産をすると、端末代や利用料金の未払い・滞納がある場合、携帯電話やスマートフォンは強制解約となったり、端末が回収される可能性があります。
自己破産によって携帯電話・スマートフォンが使えなくなるケース
- 携帯電話・スマートフォン端末の分割払いが残っている場合
- 利用料金の未納・滞納がある場合
- キャリア決済を利用していて支払残高がある場合
逆に、端末代や利用料金の未払い・滞納がなければ携帯やスマホの端末を手放さずに済みます。
だからといって、手放したくないという思いから未納分や滞納分を一括で支払うのは、偏頗弁済(へんぱべんさい)という免責不許可事由に当たる行為とみなされ、自己破産が認められなくなる可能性があるのでやめましょう。
また、自己破産後、一定期間は携帯・スマホ端末の分割購入が難しくなる点にも注意が必要です。
クレジットカードはどうなる?
自己破産をするとクレジットカードは強制解約されます。
債務者本人名義の本カードはもちろん、紐づく家族カードも利用できなくなります。
新しいクレジットカードは作れる?
自己破産の手続き後、5~7年程度は新しくクレジットカードを作ることも難しくなります。
自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録され(=ブラックリストに載る)、情報が抹消されるまでの5~7年間はクレジットカードの審査に通らないためです。
なお、デビットカードやプリペイドカードは自己破産後も発行できるケースが多いものの、使い過ぎには注意しましょう。
新たな借り入れはできる?
自己破産後、ブラックリストに載っている5~7年程度は新たな借り入れが難しくなります。
借り入れをするにあたって、金融機関や貸金業者による信用情報の照会が行われます。
自己破産をすると、信用情報に事故情報が登録されてしまうことから、ブラックリストに載っている間は審査に通りにくくなるので、新規ローン契約など、新たな借り入れはできなくなるのが一般的です。
保険はどうなる?
自己破産において、保険を解約した際に契約者に対して払い戻される解約返戻金の総額が20万円を超える場合は、債権者に分配可能な財産があるとみなされるため、保険を解約して解約返戻金を債権者への返済に充てる必要があります。
| 保険の解約が必要ないケース | 保険の解約が必要になるケース |
|---|---|
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保険をどうしても解約したくない場合は?
保険を解約すると生活に支障をきたす場合、裁判所で自由財産の拡張が認められれば保険を解約せずに済む可能性があります。
ほかにも、自己破産をしても保険契約を維持する方法として次のようなものが考えられます。
- 契約者貸付制度を利用して解約返戻金の一部を受け取り、返戻金を20万円以下に抑える
- 保険法上の介入制度を利用して保険金の受取人に解約返戻金相当額を支払ってもらう
年金はどうなる?
自己破産では、すでに受け取った年金については現金や預貯金として扱われるため、金額によっては処分の対象となって債権者への返済に充てられます。
一方、これから受け取る年金については、公的年金と個人年金とで扱いが異なります。
| 公的年金 | 公的年金とは、国が運営する年金制度のことで、国民年金と厚生年金の2階建て構造になっています。 公的年金は国民の最低限の生活を保障するものとして、法律によって受給権が保護されており、自己破産をしても受け取る年金に影響はありません。
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|---|---|
| 個人年金 | 個人年金とは、公的年金を補う目的で個人が保険会社や信託銀行と任意で契約して積み立てを行う私的年金のことです。 個人年金は債務者個人の財産とみなされるため、解約返戻金が20万円を超える場合は強制解約となって債権者への返済に充てられます。
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奨学金はどうなる?
自己破産をすると奨学金の返済は免除されるため、奨学金がゼロになります。
このとき、奨学金の返済義務は保証人に移ることに注意しなければなりません。
機関保証という制度を利用している場合は、ご家族に迷惑がかかることはありません。
ですが、人的保証という制度を利用して2人の保証人を付けている場合、親を連帯保証人、親族を保証人としているケースが多く、自己破産によって保証人に迷惑をかけることになります。
ご家族や親族を奨学金の保証人にしている場合は、保証人への影響も考慮しましょう。
親が自己破産したら子どもの奨学金はどうなる?
親が自己破産しても、お子さんの奨学金に影響することはありません。
もっとも、ブラックリストに載っている間は奨学金の保証人になることができないので、ほかのご家族が保証人になったり、機関保証を利用する必要があります。
生活保護はどうなる?
自己破産をしても、生活保護の受給に影響はありません。
生活保護受給中に自己破産をしても、引き続き受給は可能ですし、減額されることもありません。
むしろ、生活保護費を借金の返済に充ててしまうと不正受給とみなされて、減額や支給が打ち切られるおそれもあるため、積極的に自己破産を検討するべきです。
生活保護受給者が法テラスを利用して自己破産をすると、一定の条件を満たしていれば弁護士費用が免除されるというメリットもあります。
また、自己破産をしたからといって生活保護の認定で不利になる心配もないので、自己破産後に生活保護を申請することも可能です。
旅行や出張はできる?
自己破産において、破産管財人が選任される管財事件となった場合、手続きが終了するまでの間は宿泊を含む旅行や出張などの移動が制限されます。
手続き中に居住地を離れる場合は、事前に裁判所の許可が必要になります。
なぜ管財事件の手続き中は移動が制限されるの?
管財事件となった場合、裁判所や破産管財人によって財産や免責を認めるかどうかの調査が行われます。
破産手続を円滑に進めるにあたって、裁判所や破産管財人といつでも連絡が取れるようにしておくため、居住地を離れる際には事前の許可が必要です。
引っ越しはできる?
自己破産の破産手続が終了するまでの間は、引っ越しをする際も裁判所の許可が必要になります。
破産管財人が選任される管財事件となった場合、円滑に手続きを進めるにあたって移動が制限されるのは、引っ越しの場合も同様です。
「自己破産するために持ち家を手放すことになった」
「家賃を抑えるために実家に戻ることにした」
など、破産手続を進めるなかで引っ越しが必要になるケースは少なくありません。
引っ越しが必要になった場合、事前に裁判所へ申請をして、引っ越し後の住所や繋がりやすい連絡先を伝えておけば、問題なく許可が下りることが多いです。
選挙権はどうなる?
自己破産をしても、選挙権に影響はありません。
選挙権や被選挙権は、自己破産による制限を受けません。
そのため、自己破産をしても選挙権は失われず、これまで通り投票することができますし、自己破産後に国会議員などの公職に立候補することも可能です。
お問合せ
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自己破産のデメリットやリスクを避ける方法
「家族や保証人に迷惑をかけたくない」
「どうしても手放したくない財産がある」
など、自己破産のデメリットやリスクを避けたい場合は、個人再生や任意整理といった、自己破産以外の債務整理手続きを検討しましょう。
個人再生
個人再生とは、裁判所を介して借金を大幅に減額してもらう手続きです。
自己破産のように借金の支払義務は免除されませんが、持ち家などの財産を手放さずに借金を元金ごと大幅に減らすことができます。
個人再生が向いているケース
- 継続的に安定した収入があって、計画通りに返済ができる場合
- 住宅ローンの返済が残っている場合
- 高額な借金を抱えているものの、車などの手放したくない財産がある場合
- 借金の主な原因がギャンブルや浪費など、免責不許可事由に該当する場合
- 自己破産で職業や資格に制限を受ける場合 など
個人再生の手続きやメリット・デメリットについて、以下ページで詳しく解説しています。
ご参考ください。
任意整理
任意整理とは、裁判所を介さずに利息のカットや返済期間延長について債権者と直接交渉をして、借金を減額してもらう手続きです。
借金の元金までは減らないものの、整理する借金を選べるため、財産や保証人への影響を避けることができます。
任意整理が向いているケース
- 借金の元金だけなら3~5年程度で完済が見込める場合
- 残したい財産があって、整理したい借金を選びたい場合
- 保証人に迷惑かけたくない場合
- 周囲に知られずに借金を整理したい場合
- 官報に載りたくない場合 など
任意整理の手続きやメリット・デメリットについて、以下ページで詳しく解説しています。
ご参考ください。
自己破産後の生活についてご不明な点は弁護士にご相談ください
「自己破産をすると身の回りの生活が一変する」というように、自己破産にマイナスなイメージを抱かれている方も少なくありません。
たしかに自己破産をすると生活やご家族に一定の影響が及ぶ可能性はあるものの、弁護士に相談することでデメリットやリスクを最小限に抑えるための対策を講じることが可能です。
そもそも自己破産するべきなのかを検討し、最適な解決方法を知るためにも、一度弁護士法人ALGまでご相談ください。
借金を整理して、生活を立て直すためのお手伝いをいたします。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
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