ニューズレター

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2022.11.21

最低賃金改定、社会保険料減額措置

2022年10月より、最低賃金改定が施行されました。また社会保険料の一時的な減額措置も通達されています。まだ対応していない企業は、早めに対応することをお勧めいたします。

Topics1 最低賃金の改訂と調整のポイント

2022年9月13日において、内閣は、2022年10月1日からタイ全土で最低賃金の引き上げを承認する旨決議いたしました。当該引き上げは、物価の上昇やコロナによる経済影響から労働者を支援するため、同年の8月に行われた労働省賃金委員会会議の決議によるものです。

最低賃金は、各都県におけるGDP及び物価によって異なるものであり、引き上げの内容は、以下の通りとなっております。

チョンブリ県、ラヨーン県、プーケット県 1日354バーツ
バンコク都、ノンタブリ県、パトゥムターニー県、ナコンパトム県、サムットプラカーン県、サムットサコーン県 1日353バーツ
チャチュンサオ県 1日345バーツ
アユタヤ県 1日343バーツ
クラビー県、コンケーン県、チェンマイ県、トラ―ト県、ナコンラチャシマ県、プラチンブリ県、パンガー県、ロッブリ―県、ソンクラー県、サラブリー県、スパンブリー県、スラータニー県、ノンカーイ県、ウボンラチャタニ県 1日340バーツ
カラシン県、チャンタブリ―県、ナコンナヨック県、ムクダハン県、サコンナコン県、サムットソンクラーム県 1日338バーツ
カンチャナブリ県、チャイナ―ト県、ナコンパノム県、ナコンサワン県、ブンカーン県、ブリラム県、プラチュワップキリカン県、パヤオ県、パッタルン県、ペッチャブリ県、ピサヌローク県、ペッチャブーン県、ヤソートン県、ローイエット県、ルーイ県、サケーウ県 、スリン県、アントーン県、ウタラディット県 1日335バーツ
カムペンペット県、チャイヤプーム県、チュムポーン県、チェンラーイ県、トラン県、ターク県、ナコンシータマラート県、ピジット県、プレー県、マハーサラカム県、メーホンソーン県、ラノーン県、ラチャブリ県、ランパーン県、シーサケート県、サトゥ―ン県、シンブリー県、スコータイ県、ノンブアランプ―県、アムナートチャルーン県、ウタイタニー県 1日332バーツ
ナラーティワート県、ナーン県、パッタニー県、ヤラー県、ウドンタニ県 1日328バーツ

最低賃金における1日とは、通常勤務時間の8時間又は健康及び安全に危険をもたらす業務の場合は7時間を意味します。

最低賃金に違反した場合

最低賃金を官報に掲載後、労働基準監督官による調査でそれが発覚し、雇用者に対して警告したにもかかわらず、従わない場合は、雇用者は仏歴2541(1998)年労働者保護法第144条及び第90条1項の規定により、6ヶ月以下の懲役もしくは10万バーツ以下の罰金又はこれらの併科に処されます。実務的にも、雇用者が労働基準監督官により最低賃金の引き上げに関する法律および規則を遵守する旨の警告書を受け当該雇用者がそれに従わない場合、労働基準監督官は雇用者逮捕を警察に通報することがあります。しかしながら、雇用者と労働者間において最低賃金引き上げを他の月に延期するが、最低賃金の引き上げが適用された10月にさかのぼってその引き上げ分を支払う合意をしている場合、雇用者は罰則の対象とならず延期することが可能です。

最低賃金に足りない賃金については、労働者は、労働調査官か労働裁判所のいずれにかに訴えることが可能です。なお、労働裁判所設置法第8条第2項には、労働保護法などにより係官に訴える権利を付与する規定がある場合は、当該訴えなどの手続きをした後でないと労働裁判所に訴えが提起できない旨の定めがありますが、最高裁判例第5601-2564/2563号によれば、労働調査官又は労働裁判所のいずれかを選択的に訴える権利を労働者に認めています。従って、いきなり労働裁判所から訴状が届くこともありますので、ご注意ください。

5つの最低賃金調整のためのテクニック

ここでは、最低賃金が引き上げられた際に雇用者が労働者の賃金を円滑に調整できるよう、以下の5つのテクニックをご紹介します。

  1. 全員に対して均等に増額(一度に22バーツ引き上げ):この方法は、雇用者が賃金を明確に管理できるメリットがあるほか、従業員の業務意欲の向上にも繋がる。
  2. 増額率を徐々に下げる(会社の日給の最低額から最高額(Min-Max)までの間において、増額率を22-20-18へと徐々に下げていく方式):一定の公平性が確保できるメリットがある。
  3. 学歴に比例して調整(高卒以下は22バーツ増額/職業訓練学校、短大卒は24バーツ増額/大卒は27バーツ増加):この方法は理解しやすく、明確であるほか、組織における賃金管理の基準を確立することができる。
  4. 勤務期間に比例して調整:例えば、1年は22バーツ上昇、2年は23バーツ上昇など。これにより勤務期間の長い従業員の業務意欲の向上に繋がり、従業員のインセンティブ制度の確立に繋がる。
  5. 業務成績に比例して調整:例えば、Aは25バーツ増加、Bは23バーツ増加、Cは21バーツ増加、Dは18バーツ増加、Eは15バーツ増加、Fは12バーツ増加など。この方法は、組織に対して公正なものであり、業務成績の良い従業員の業務意欲の向上に繋がるほか、組織における賃金管理の基準を確立することになる。

なお、最低賃金以下の金額で支払うために、勤務時間を短縮することは違法です。賃金委員会通達によれば、最低賃金の基準となる「1日」とは、通常労働時間における1日の勤務時間を意味するので、1日の勤務時間が8時間を下回っていても1日分の最低賃金の支払を要するとされているためです。

Topics2 社会保険料減額措置

官報のホームページは、2022年9月30日において社会保険料の減額を定める省令を発表しました。その内容は、社会保険料の雇用者及び社会保険被保険者拠出分を、2022年10月から同年12月までの賃金分につき、5%から3%に軽減する措置であり、コロナ及びタイ全土における最低賃金の引き上げにより影響を受けた雇用者、並びに労働者の金銭的流動性強化に貢献することを目的としております。社会保険料の内容は、以下の通りです。

2022年度 被保険者拠出率 被保険者最高拠出額 雇用者拠出率 雇用者最高拠出額
通常額 5% ฿750 5% ฿750
1月 5% ฿750 5% ฿750
2月 5% ฿750 5% ฿750
3月 5% ฿750 5% ฿750
4月 5% ฿750 5% ฿750
5月 1% ฿150 1% ฿150
6月 1% ฿150 1% ฿150
7月 1% ฿150 1% ฿150
8月 5% ฿750 5% ฿750
9月 5% ฿750 5% ฿750
10月 3% ฿450 3% ฿450
11月 3% ฿450 3% ฿450
12月 3% ฿450 3% ฿450
合計 ฿6,300 ฿6,300

本社会保険料減額は、年間における納付額の総額が減少することから、2022年度における個人所得税の申告において社会保険料の控除額上限が6,300バーツに減額されます。(通常は、750 ×12=9,000バーツ。)

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