ニューズレター

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2022.12.20

外国人土地所有恩典の取り消し、BOI新規恩典、タイ民商法典会社規定関連の改正

Topics1 外国人による住居目的の土地所有

2022年10月25日、プラユット内閣は、コロナウイルス感染拡大状況によって低迷した経済の回復を図るため、有望な外国人によるタイ国内への投資の誘致を目的として、かかる有望な外国人(Long Term Resident Visa取得者)の住居のための土地所有を定める省令案を承認しました(但し、住居用目的、4千万バーツ以上の価格で1600万平米以内の土地を購入した場合が許可対象。またタイ国内への債券、投資信託、投資奨励案件などの投資が条件となっている。)。

しかしながら、その後、政党をはじめとする国民や土地局などの政府機関から、売国だとする批判の声が多く寄せられたため、プラユット内閣は、本省令案の承認を撤回しました。撤回の理由としては、さらにタイ国民も住居及び生計のための土地問題をかかえていることや、納税を要さずに投資ができる外国人は、タイ国民よりもはるかに財力や経済力があることから、土地の価格が高騰し、タイ国民の土地取得が困難となる事態が想定されるためと、報道されています。事実、例えば、外国人に対して49%の割合で購入できる権利を認めたことによってコンドミニアムの価格が高騰化しており、かかる事態も外国人の土地購入の一部自由化に対する懸念の声となっているようです。

なお、2022年11月8日、プラユット首相は、本省令案に関するマスコミの質問に対して、一部の外国人への土地所有の限定的自由化による影響の分析や国民を含めたヒアリングを行い、再度、検討するとのことです。

Topics2 BOI新規恩典

2022年11月4日、プラユット首相が議長を務める投資委員会会議において、5年計画の投資奨励戦略に基づく新経済のための投資奨励戦略進行における新投資奨励措置が承認されました。同投資奨励措置は、2023年1月3日より適用されます。承認された投資奨励措置及び定められるカテゴリーの投資により、以下の追加恩典が付与されるとのことです。

従来の生産拠点維持及び拡大プログラム

過去15年間にわたり、3事業以上の奨励恩典(BOI)事業を行っており、それらに対する投資総額が10億バーツ以上(約2.65億米ドル)となっている会社が、さらに、5億バーツ以上の新規BOI事業又はBOI事業拡大を申請し承認を受けた場合は、当該BOI事業の業種に応じて、最長で3年以内の法人所得税(CIT)免税措置又は最高5年間(2023年~2027年)法人所得税の50%税率による減額措置などの特別恩典の付与を受ける。

事業拠点の移転奨励プログラム

生産拠点及び地域統括本部をタイに移転してきた会社は、追加で3年間法人所得税免除恩典を付与される。一方、研究開発センター(R&D)を移転してきた会社は、業種に応じて、1~5年間追加で法人所得税免除恩典が付与される。

新産業カテゴリー

新経済へ進行するために、投資委員会は、特に特別な恩典が取得できる安定した活動を中心に、新たな奨励事業を承認した。新カテゴリーは、水素自動車、電気自動車バッテリー交換スタンド事業、新規食品、オーガニック食品などが挙げられる。新たに奨励が認められる再生可能エネルギー事業は、グリーンアンモニア、水素からの発電又は水蒸気の発生などといった、水素の製造及び関連する活動が挙げられる。

新世代技術

バイオテック、ナノテック及び技術の伝達に関する先端材料及びタイ国内の高等教育機関並びに研究機関との協力などの高度なイノベーション及び技術を有する川上産業への投資について、プレミアム恩典を付与し、無制限で10年~13年間の法人所得税が免除される。但し、奨励事業の業種による。ウエハー製造は、本カテゴリーに移行され、法人税免税恩典期間を、10年間から13年間に増加する。

新経済回廊

投資委員会は、既存の東部経済回廊(チョンブリ―県工業エリア)のほか、新経済回廊を、タイ国内4地方における特別投資区域とすることを承認した。同区域は、16県の区域がカバーされており、当該区域における投資に対して多数のインセンティブが設けられている。4つの区域は、北部経済回廊、東北部経済回廊、中部-西部経済回廊並びに南部経済回廊である。

Topics3 民商法典の改正

2022年11月8日、仏歴2565(2022)年民商法典改正法(第23号)が発布されました。同改正法は、2022年11月9日から起算して90日後に適用されます。民商法典の会社関連の条文が、主に以下の通り改正されます。

第1016条
旧規定 パートナーシップ又は会社の登記、登記後における登記事項の変更、及びその他第22編(パートナーシップ又は会社)に定める登記は、所管の大臣が定めるパートナーシップ及び会社登記事務局に所属の登記官に対して行うものとする。
新規定 パートナーシップ又は会社の登記、登記後における登記事項の変更、及びその他第22編(パートナーシップ又は会社)に定める登記は、会社の本店所在地の区域を管轄する又は所管の大臣が定めるパートナーシップ及び会社登記事務局において行うものとする。
第1017条
旧規定 登記内容又は広告内容が外国で生じたときは、その内容の登記又は広告期限は、登記又は広告する行政区にその通知が来た時から起算する。
新規定 登記内容又は広告内容が外国で生じたときは、その内容の登記又は広告期限は、登記したパートナーシップ又は会社の本店事務所にその通知がきたときから起算する。
第1020/1条
旧規定 大臣は、第1018条及び第1020条に規定する手数料を減額又は免除する権限を有する。
新規定 大臣は、第1018条及び第1020条に規定する手数料を、減額又は免除する権限を有する。
第1項に定める省令は、取引の形式によって手数料の料率を定めることができる。
【発起人の人数】第1097条
旧規定 3名以上の者が発起人となり、基本定款を作成、署名し、本法典の規定に基づくその他の行為をなすことによって株式会社を設立することができる。
新規定 2名以上の者が発起人となり、定款を作成、署名し、本法典の規定に基づくその他の行為をなすことによって株式会社を設立することができる。
【基本定款】第1099条
旧規定 基本定款は2通以上作成し、発起人全員及び2名の証人により署名するものとする。作成された基本定款のうち1通は、その会社の本店事務所が所在する王国内の区域を管轄する登記所に預託し、登記しなければならない。
新規定 基本定款は2通以上作成し、発起人全員及び2名の証人により署名がなされた後、1通を登記するものとする。
(旧2項は削除)
(新設)登記官が基本定款の登記を受理した日から起算して3年以内に会社の登記を行わない場合、当該基本定款の効力は消滅するものとする。
【付属定款の議題】第1108条(1)
旧規定 創立総会において実施すべき議題は、次の各号に掲げるところによる。
(1)会社の付属定款の合意。その際、取締役又は株主間において解決が不能な問題又は紛争の解決方法を定めることができる。
新規定 創立総会において実施すべき議題は、次の各号に掲げるところによる。
(1)会社の付属定款の合意。その際、取締役又は株主間において解決が不能又は決議が不能な問題又は紛争の解決方法を定めるべきものとする。
【株券の作成】第1128条第1項
旧規定 各株券は、少なくとも取締役1名によって署名されるべきものとする。
株券には、少なくとも以下の文章が記載されるべきものとする。
新規定 各株券は、少なくとも取締役1名によって署名及び社印(もしあれば)が押印されるべきものとする。
第1158条
旧規定 会社の付属定款により別段の定めのない限り、取締役は、次の6ヶ条に掲げる権限を有するものとする。
新規定 会社の付属定款により別段の定めのない限り、取締役は、次の7ヶ条に掲げる権限を有するものとする。
※以下の取締役会開催方法の追加に関する改正。
【取締役会の開催方法】第1162/1条
新規定 取締役会は、いかなる技術を用いた通信方法によっても開催することができる。この場合、取締役は総会場所に出席しなくても構わない。但し、会社の付属定款で禁じられている場合はこの限りではない。
第1項で規定される通信方法を用いた取締役会は、電子的手段による会議に関する法律に従うものとする。
第1項に定める通信方法を用いて(取締役会に)出席した取締役は、取締役会に参加したものとみなされる。さらに定足数として数えられ、取締役会において議決権を有するものとする。
解説
取締役会の開催方法について、これまで原則としてウェブ会議は認められなかったが、本改正によりウェブ会議が認められることとなった。
【株主総会招集方法】第1175条第1項
旧規定 総会の招集通知は、総会開催日より7日以上前に、少なくとも地方紙に1回掲載するほか、開催より7日以上前に会社の株主登録簿に名前が記載されている株主全員に対し配達証明付き書留郵便によって郵送するものとする。但し、特別決議のための総会招集は、開催日より14日以上前に行うものとする。
新規定 総会の招集通知は、総会開催日より7日以上前に、会社の株主登録簿に名前が記載されている株主全員に対し配達証明付き書留郵便によって郵送するものとする。但し、無記名株式を有し、当該株主に総会の通知を地方紙に少なくとも1回掲載しなければならない場合、または、当該株主総会開催日から7日以上前に省令で定められた条件及び手続に従い電子的手段で通知した場合は、この限りではない。特別決議のための総会招集通知は、開催日より14日以上前に行うものとする。
解説
これまで、株主総会の開催については、招集通知を地方紙に掲載することが義務付けられていたが、地方紙への掲載義務は原則撤廃された。また、省令により定められる電子的な方法により招集を行うことも可能とされた。
【株主総会の定足数】第1178条
旧規定 総会において、資本金の4分の1以上を代表する株主が出席しない場合は、当該総会において議題を審議することはできない。
新規定 総会は、資本金の4分の1以上を代表する2名以上の株主又は株主からの受任者が出席しなかった場合、如何なる議題も決議することができない。
【配当金の支払期限】第1201条第4項
旧規定 配当は、総会又は取締役会決議から1ヶ月以内に行うものとする。
新規定 配当は、総会又は取締役会決議から1ヶ月以内に完了させるものとする。
【会社解散事由】第1237条(4)(5)
旧規定 (4)株主数が3名未満に減少した場合。
(5)会社が継続できない原因があるとき。
新規定 (4)株主数が1名まで減少した場合。
(5)会社の継続が不能な原因があるとき。

第9編 株式会社の合併

第1238条
旧規定 株式会社は、合併(“Kuap kao”)することはできない。但し、特別決議による場合はこの限りではない。
新規定 株式会社は、特別決議によって合併(“Kuap Ruam”)することができる。二社以上の会社は、次の各号に揚げるいずれかの手法によって合併するものとする。
(1)会社を新設することによる合併(新設合併)。合併された両社は、法人格が消滅する。
(2)いずれかの会社が法人格を存続し、合併された他の会社が法人格を消滅することによる合併。
解説
これまで、民商法典の合併は、新設合併しか規定されていなかったが、今回、やっと、吸収合併が規定されることになった。
第1239条
旧規定 株式会社の合併(“Kuap”)を決定する旨の特別決議は、その日から14日以内に会社によって登記されなければならない。
新規定 株式会社の合併(“Kuap Ruam”)を決定する旨の特別決議は、その日から14日以内に会社によって登記されなければならない。
第1239/1条
新規定 会社合併(“Kuap Ruam”)の特別決議が決定されたが、総会に出席した株主が当該合併に反対した場合、会社は当該株主の保有する株式を合意した価格で買い取る者を手配しなければならない。合意することができない場合、価格査定人が査定した価格を採用する。当該株主が買取申込日から14日以内に株式の売却に応じない場合、会社は合併を継続し、当該株主は合併後の会社の株主とみなす。
第1項に定める価格査定人の選任は、省令に定める基準、手続き及び条件に従うものとする。
第1240条
旧規定 会社は、提案した合併に関する事項の通知を、地方紙に少なくとも1回以上掲載するとともに、会社の知る債権者全員に対し送付し、債権者にこの通知の日付以後60日以内に合併事項に異議がある場合は申し立てるものとする。
前項に定める期限以内に異議が申し立てられなかった場合、異議がないものとみなされる。
債権者が異議を申し立てた場合、会社は債務の弁済又は当該債務を保証しない限り合併を遂行することはできない。
新規定 会社を合併する特別決議が決定された際、会社はその日から14日以内に合併する会社の名簿に基づき、会社の債務者に対し当該決議通知書を送付しなければならない。その際、異議のある場合は当該決議通知書の受取日から1ヶ月以内に申し立てるものとする。又、会社は決議日から14日以内にその決議事項を地方紙に掲載するものとする。
債権者が異議を申し立てた場合、会社は債務の弁済又は当該債務を保証しない限り合併を遂行することはできない。
第1240/1条
新規定 第1239条及び第1240条に定める手続きを行った以後、合併する各会社の取締役は、次の各号に掲げる議題について審議するため、全ての株主を招集し、株主総会を開催しなければならない。
(1)合併後の会社名は、新社名を採用又は合併する会社のうちいずれかの社名を採用することもできる。
(2)合併する会社の目的
(3)合併する会社の株式資本は、従前の合併する会社の株式資本の額を下回ってはならない。
(4)合併する会社の株主に対する株式の割当。その際、第1222条を適用してはならない。
(5)合併する会社の基本定款
(6)合併する会社の付属定款
(7)合併する会社の取締役の選任
(8)合併する会社の会計監査人の選任
(9)その他会社の合併において必要な事項(もしあれば)
上記総会は、合併を行う会社のうち最後に(合併の)決議をした会社の決議日から6ヶ月以内に完了させなければならない。但し、本条に定める総会を延期する旨の決議がされた場合を除くが、1年を超えてはならない。
第1240/2条
新規定 第1240/1条に定める各事項について共同して審議するための株主総会は、次の各号を条件として、合併する会社のいずれかの本店事務所が所在する区域又は合併する会社のいずれかの本店事務所が所在する区域に近隣する県で開催するものとする。
(1)合併する会社の各々の株式総数の過半数以上の株主が出席することによって定足数を満たす。
(2)出席した株主が、そのうちいずれか1名を議長として選任する。
(3)総会における最終決定は、(1)によって出席した株主の多数決による。但し、別段の合意のある場合はこの限りではない。
第1240/3条
新規定 合併前の会社の取締役は、第1240/1条に定める総会終了後、7日以内に、合併後の会社の取締役に対し、会社の事業、資産、会計帳簿、書類及び証拠を引き渡さなければならない。
第1241条
旧規定 会社が合併されたとき、従前の会社は、各自、合併日から14日以内に登記しなければならない。合併によって成立した株式会社は、新会社として登記しなければならない。
新規定 合併した会社の取締役は、第1240/1条に定める総会終了後、14日以内に、登記官に対し、合併登記するとともに、第1240/1条に定める総会によって承認された基本定款及び付属定款を提出しなければならない。
第1242条
旧規定 新会社の株式資本は、合併した会社の株式資本総額に等しからなければならない。
新規定 登記官が合併登記を受理した際、登記官は登記事項に以下の注記を記載するものとする。
(1)会社の新設合併の場合、その合併前の会社は法人格が消滅した旨を注記として記載する。
(2)会社の吸収合併の場合、その吸収合併された会社は法人格が消滅した旨を注記として記載する。
解説
現行法でも、新設合併の際に消滅会社について別途解散清算手続きは不要であったが、条文上、明らかにされていなかった。
改正法案では、新設合併及び吸収合併について、消滅会社の解散清算登記は不要なことが、本条により明らかにされている。
第1243条
旧規定 新会社は、合併前の会社のすべての権利及び責任を承継するものとする。
新規定 合併した会社は、合併前の会社の有する資産、負債、権利及び責任のすべてを承継するものとする。

第12編 登記パートナーシップ及びパートナーシップ法人の株式会社移行

第1246/1条
旧規定 3名以上の出資者を有する登記パートナーシップ又は有限パートナーシップは、出資者全員の承諾を得ることで、次の各号に掲げる手続きによって株式会社へ組織変更することができる。
(1)出資者全員の承諾日から14日以内に文書をもって登記官に対し当該出資者全員がパートナーシップから株式会社への移行を承諾した旨を通知する。
(2)組織変更の通知を少なくとも地方紙に1回以上掲載するとともに、株式会社への組織変更希望の旨の通知書をパートナーシップの知る債権者全員に対し送付し、当該組織変更事項に異議のある場合は通知日から30日以内に申し立てるものとする。
異議が申し立てられた場合、当該パートナーシップは債務を弁済又は債務を保証しない限り、組織変更することはできない。
新規定 3名以上の出資者を有する登記パートナーシップ又は有限パートナーシップは、出資者全員の承諾を得ることで、次の各号に掲げる手続きによって株式会社へ組織変更することができる。
(1)出資者全員の承諾日から14日以内に文書をもって登記官に対し当該出資者全員がパートナーシップから株式会社への移行を承諾した旨を通知する。
(2)組織変更の通知を少なくとも地方紙に1回以上掲載するとともに、株式会社への組織変更希望の旨の通知書をパートナーシップの知る債権者全員に対し送付し、当該組織変更事項に異議のある場合は通知日から30日以内に申し立てるものとする。
異議が申し立てられた場合、当該パートナーシップは債務を弁済又は債務を保証しない限り、組織変更することはできない。

Topics4 土地及び建物税

アーコム財務大臣は、土地及び建物税について、2024年までの減額を検討中であることを発表しました。土地及び建物税が減額された際には、地方行政機関に影響が及ぶことから、当該期間の収入が減少した際には政府が補填することが必要ですが、政府側も予算に制限があることから、財務省も厳重注意の上で検討が必要としています。

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