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2023年度不動産及びコンドミニアムの譲渡及び抵当権設定登記に関する措置、電子税務及び電子源泉税システムに関する措置、労働裁判事例研究

2023年度住宅の権利及び法律行為登記における手数料の軽減措置

タイ政府は、住宅の所有を希望する国民の促進及び負担の軽減、さらに不動産事業の強化を図るために、住宅の権利及び法律行為の登記手数料を、土地査定額及び建物の価格又は売却額の2%から、1%に軽減し、不動産抵当権設定登記手数料を、極度額又は融資総額の1%から、0.01%に軽減することを決定した。

本措置は、一軒家、二戸建住宅、連棟住宅、業務用建物及びコンドミニアム(新築及び中古物件も含む)で、取引価格又は査定価格が3百万バーツ以内又は抵当権の金額が契約につき3百万バーツ以内、又、購入者はタイ国籍を有する個人が対象となる。本措置は、2023年1月3日~同年12月31日までになされた登記に限り適用される。

又、本措置における抵当権設定は、上記により手数料が軽減された不動産の売買登記に起因して行う抵当権設定であり、これを同時に登記していることが条件となっている。

電子税務システムへの投資奨励措置及び電子源泉税システム利用促進のための税務措置

1月24日、政府は、電子税務システムへの投資奨励措置及び電子源泉徴収税利用促進措置の適用期間を延長することを以下の通り承認した。

1.会社又は法人格を有する組合に対して、以下の支出額の2倍による損金算入。

  1. 電子税額票及び電子領収書システム(e-Tax Invoice & e-Receipt)への投資に係る費用。
  2. 電子源泉税システム (e-Withholding Tax) への投資に係る費用。
  3. 2023年1月1日~2025年12月31日までの期間中に、サービス提供者に対して支払った電子税額票及び電子領収書システム (e-Tax Invoice & e-Receipt) 及び電子源泉税システム (e-Withholding Tax )サービス利用料を対象。

2.2023年1月1日から2025年12月31日までの期間、源泉徴収率が5%、3%及び2%から、1%へ軽減。

但し、本措置は、財団及び協会への支払は対象外となる。これらについては省令に定める源泉徴収率が適用される。

労働裁判事例研究

1.従業員が予め(雇用者)と合意した就労期間に基づいて業務を遂行しなかった場合における損害賠償。

最高裁判例第3811/2561(2018年)号の判決は、会社は従業員を…として雇用し、会社は従業員に対して商業上の秘密情報である会社の製造、商品の販売方法及び製品に関しての学術及び技術研修を開催しており、会社は事業運営の継続性を図るために、従業員と規約を合意していたが、その条件によれば、従業員が勤続期間1年満了前に退職した場合は会社に対して8万バーツを限度とする損害賠償金を課すという合意をしていた事案である。本最高裁判決によれば、雇用者は、当該規約に損害賠償金を定めることができる。何故ならば当該損害賠償金は、合意した就労期間に基づいて業務を遂行しなかったことによるもの、つまり債務の履行を怠る又は正しく履行しなかったものと見做され、本件は仏歴2541年労働保護法に定める契約の解除権の行使や解除権の行使期間を定めることとは関係がない、と判示した。

この判決は、合意した期間前に、従業員が辞職した場合に会社が請求できる損害賠償額を合意している場合には、その金額が合理的な範囲内である限り、有効であることを示している。

2.従業員が退職後に業務を雇用者に対して引き渡さないことによる損害賠償金に関する労働及び税務事件。

最高裁判例第5461/2555(2012年)号によれば、従業員は雇用者に対して補償金及び事前通告に代わる補償金請求を訴えている一方、雇用者側は、コンピューターシステムの制御を担う従業員が、当該コンピューターシステムに関する業務、即ちコンピューターに関するパスワード及びデータを故意に引き渡さなかったことによってコンピューターシステムを稼働させることができなかったことから、外注費用が約26万バーツ程かかったとして損害賠償の反訴をした事案である。しかし、裁判所は、雇用者が解雇後(2004年8月5日に解雇、翌日から発効、解雇日の夕方以内に引き渡すよう命じていた。) から数時間ほどしか業務引継ぎの時間を与えていなかったと認められるので、業務の引継ぎを行わなかったことによる損害は軽微なものであるとして、裁判所は従業員に対して1万バーツを雇用者に支払うよう命じた。本件、従業員は業務において違反行為を犯していないので、雇用者は従業員に対して事前通告に代わる補償金を支払わなければならない。一方、雇用者も、従業員が業務を引き渡さなかったことによる損害に対する賠償金を従業員に請求することができる。従って、本判例では、雇用契約の解除が従業員の退職又は解雇であるかによらず、雇用者が従業員に対して業務の引き渡しを求めており、これを怠ったことによって雇用者に対して損害をもたらしたのであれば、雇用者は従業員に対して損害賠償請求をすることができることになる。

最高裁判例第203/2559(2016年)号の判決は、経理部長が取締役に対して必要な情報を通知していないこと及び付加価値税賦課決定通知書を原告の新経理部長に対して引き渡していなかったことは、後任の募集期間中に、退職した経理部長に業務を遂行させ、当該退職した経理部長が後任の新経理部長に業務を引き継いだか否かについて確認していない雇用者の管理不足によるものであるため、原告が本件を認識していなかった及び期限以内に異議申し立てができなかったことは、歳入法典第3条の8に定める必要な事情とはならないとした事案である。この判決の教訓は、従業員が引継ぎを行ったことを理由に、歳入局やその他政府機関に対して、期限の遅れについて相当な理由があると正当化するのは難しいということです。従業員の退職に当たっては、こうした支障がおきないよう、引継ぎを徹底させる必要があるでしょう。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら