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3.重要判例・ルーリング

最新法律アップデート

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
1 財務省 歳入局第ポー162/2566号(主題:歳入法典第41条第2項に定める所得税の納付について) 2023/11/20 2023/11/15
2 財務省 歳入局長通達(主題:タイ国とアメリカ合衆国間における、情報交換システムを通じた情報送信に関する基準、手続き及び条件) 2023/11/23 2023/12/4
3 財務省 財務省通達(主題:災害が発生した地域における納税者に対する申告納税期限の延長措置) 2023/11/24 2023/12/8
4 財務省 付加価値税(VAT)に関する歳入局長通達(第253号)(主題:外国に出国し、且つ歳入法典第84/4条に基づき付加価値税の還付申請権を有する旅行者に対して物品販売する登録事業者の資格及び基準について) 2023/11/27 2023/12/8
5 財務省 付加価値税(VAT)に関する歳入局長通達(第254号)(主題:タイ国外に出国し、且つタイ国外に持出す目的で登録事業者から物品を購入した旅行者に対する歳入法典第84/4条に定める付加価値税還付に関する基準、手続き及び条件について) 2023/11/27 2023/12/8
6 財務省 付加価値税(VAT)に関する歳入局長通達(第255号)(主題:タイ国外に出国し、且つタイ国外に持出す目的で登録事業者から物品を購入した旅行者に対する歳入法典第84/4条に定める付加価値税還付の申請代理人の選定に関する基準、手続き及び条件について) 2023/11/27 2023/12/8
7 財務省 歳入局通達(主題:仏歴2560(2017)年税務における国際協力のためのタイ・米国間の協定に履行するための法律に基づく報告義務者の地位証明書の申請における書式について) 2023/11/27 2023/12/8
8 財務省 免税に関して規定する歳入法典に基づく財務省令第390号(仏歴2566(2023)年)(主題:タイ国の末永い発展に供するための投資奨励における税務措置)(第126号の改正) 2023/11/30 2023/12/8

※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、労働福祉保護委員会、商務省、国防省、農業・協同組合省、運輸省、天然資源・環境省、エネルギー省、工業省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。

トピックス・ニュース

1.2024年以降より、給与源泉徴収税申告(P.N.D. 1,P.N.D 1Kor,P.N.D. 1 Kor (Special))は、電子申告が義務化へ

かつては歳入法典第40条(1)に定める雇用所得(給与)に対する源泉徴収税(P.N.D. 1,P.N.D 1Kor,P.N.D. 1 Kor (Special))の申告は、紙面による申告及び歳入局ウェブサイトにおける電子申告による方法が選択できましたが、この度歳入局は、デジタルタックスシステムの促進及び不正還付請求の防止を目的として、2024年1月度以降における給与源泉徴収税申告を対象に、電子申告のみ受け付けする旨を発表しました。これによって紙面による申告はできなくなりますが、現時点においても、電子申告の利用率が98%であることから、電子申告への一本化としても納税者に影響が及ばないとされております。

また、PND.1に基づく源泉徴収税申告でも、e-withholding Taxシステムを使用することができます。このシステムは、銀行を通じて行うものであり、銀行が代わりに源泉して納付するもので、申告者の便宜供与及び負担の軽減にもつながります。

2.内閣による電気料金減額の決議前に発行された電気料金請求書

内閣は2024年9月~12月分の電気料金を軽減する旨を閣議決定しましたが、電力会社は既に9月分の請求書を発行済みであるため影響が出ています。従って、支払時には減額後の料金で支払うこととなりますが、既に支払った場合には、その差額を10月分の電気料金から差引くこととなります。例えば、9月における減額前の電気料金請求額が500バーツであり、減額によって399バーツとなりました。未払いの場合はそのまま減額後の399バーツで支払うことができますが、既にこれを支払っていた場合、電力会社は10月の電気料金から、9月分の差額である101バーツを差引いて請求することになります。

現時点において、12月19日の内閣の会議にて、同措置を4月分まで延長することが閣議決定されています。

3.タイ工業規格協会(TISI)による、基準を満たしていない製品のタイ国内流入防止措置

タイ国内に輸入される製品の安全性及び標準化を確保するため、タイ工業規格協会(TISI)は、輸入者に対して輸入時にナショナルシングルウインドウ(NSW)による申請及び許可を得てから、税関より物品を受取ることができることを定めました。そして、これに違反した製造者/輸入者には2年以下の懲役及び2百万バーツ以下の罰金(工業規格法第21条、第48条)が科されることになりました。この措置以外にも、e-Trackingシステムを通じた異常な輸入又は輸入禁止物品の密輸調査、e-Surveillanceシステムを通じた許可証取得者の追跡、また販売についてはe-Market Surveillanceを通じた販売場所の追跡、そのほかにも、タイ食品・医薬品局(FDA)、消費者保護委員会と協力してすべての販路を制御することによって製品が消費者に販売される前に製品の標準を維持するなどの対策が講じられます。

なお、工業規格を満たさない製品の販売者は、6ヶ月以下の懲役または50万バーツ以下の罰金に処されます。(工業規格法第36条、54条)

重要判例・ルーリング

1.租税回避目的のための株式出資 (最高裁判例第7847/2560号)

B社の増資に伴いA社がB社に出資をし、株式を引き受けた行為は、A社への債務を有するB社からの配当を期待してのことではなく、B社の保有するA社に対する債務の解消を目的としたものである。債務の解消を目的とした増資のための株式の引き受けが、投資によるリターンを追求するための資本的支出ではない場合、B社の清算登記により確定した、A社が保有するB社株式の出資金が払い戻されないことによる損失は、利益の追求又は事業のために専ら支出した費用とならず、歳入法典第65条の3(13)に基づき、損金算入が認められない。

【コメント】
この判例は、株主に対して債務を有する会社から増資を引き受けたが当該会社の清算の際に払い戻しを受けられない場合に損金算入が認められるかについて定めた、歳入局通達ポー135/2551(現在では廃止)を遵守したにもかかわらず、歳入局が、この通達に基づかず実態に基づいて損金計上を否認した事例ですが、最高裁もこの歳入局の課税を追認したものです。そもそも、この通達は内容からしても条件や論理性がよく分からないものでもあったのですが、歳入局みずから発行した通達に従ったとしても、実質的に見て問題があると認められる場合は、必ずしも通達通りに課税執行が行われるわけではないことを示す事案です。

2.長期滞在資格(Long term visa)を有する外国人の所得税減税措置を行使した場合の個人所得税の取り扱い(2023年8月25日付歳入局ルーリング第ゴーコー0702/4782号)

特別技能を有する長期滞在資格(Long term visa)を取得した外国人は、所得税に関する歳入局長通達(第427号)に定める基準、手続き及び条件を遵守していれば、仏歴2543(2000)年勅令(第743号)によって個人所得税の税率が17%まで減税される。この恩恵を受けるための重要な条件は、会社(雇用者)が最初に恩典を行使する課税年度の末日までに歳入局に対して当該減税措置を行使する所得者(労働者)の名簿を届け出て、歳入局がこれを受理することである。この届出を行わない場合は直ちに権利が喪失し、当該外国人労働者は所得税減税恩典が行使できないほか、期間の延長もできない。

3.保税区域(フリーゾーン)内における事業者に対して国内で役務を提供した場合における付加価値税(VAT)の取り扱い(2023年5月23日付歳入局ルーリング第ゴーコー0702/ポー/2832号)

付加価値税に関する歳入局長通達(第105号)第2項(4)に基づき、0%の付加価値税納付が認められる輸出を目的とした保税区域内での製造のためにタイ国内で提供した役務は、輸出目的の製造に供するために提供した役務に限られる。当該役務が、保税区域内における輸出目的の製造のためにタイ国内/保税区域内で提供したものであることを明示できない場合は、7%の付加価値税が課される一般のタイ国内における役務の提供と見做され、役務の利用者も7%の仕入税額を売上税額から合法的に控除することができる。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら