タイ進出サブページ タイ進出サブページ

最新判例・ルーリング(労務・税務)

不当解雇と会社が業績赤字(実際は赤字ではない)の場合
(特別控訴裁判所第2980/2561号)

雇用者が継続赤字などの経済的な問題に遭遇した場合の解雇は、正当な理由を有する解雇となり、不当解雇とはならない。その際、雇用者は業績赤字による解雇の必要性を立証する義務を有する。赤字を理由とした解雇は、雇用者は解雇時における赤字の状況と、その後の年度において雇用者は事業を継続することが不可能になるほどの危機に遭遇しており、解雇による解決を行わないと事業の継続ができないことが明確に表れていなければならない。

従業員送迎者による従業員の福利厚生における、労働法及び興味深い税務に関する論点。

雇用者が従業員の通勤における便宜を図るために福利厚生として従業員送迎車を提供しており、本件は以下のような税務上の論点が考えられる。

2.1 税務上の論点

法人所得税(CIT):会社は、公平且つ差別することなく、雇用者の定める各地点において従業員を送迎するために、運送スケジュールを定めなければならない。これによって事業に関連するものであるとみなされ、当該送迎者に関する費用を法人所得税計算に算入することができる。

付加価値税:会社が従業員送迎者に係る費用を仕入税額に算入することが可能かについては、当該車両の座席数による。

座席が10人乗り以下の乗用車+ハイヤーパーチェス+事業で使用することが目的である場合:この場合、歳入法典第82/5条(6)及び付加価値税に関する歳入局長通達第42号第2項(1)第2段の規定により、仕入税額として控除することができないことから、車両のリースによる仕入税額を売上税額から控除する権利を有しない。従って、会社は自動車を購入又はレンタルした場合を対象として仕入税額が認められる。

雇用者が、雇用者の定める経路での従業員の送迎を他の業者に依頼した場合:運送料は、歳入局命令第トーポー4/2528号第12/4項に定める所得に該当し、1%の税率による源泉徴収を行わなければならない。従業員の送迎サービスを提供している業者は、歳入法典第81条(1)(p)の規定により、付加価値税(VAT)が免除される。

雇用者が運送サービス業者と、雇用者の定める日時及び経路での従業員の送迎サービス契約を締結し、当該サービスの提供における車両の占有が雇用者に帰属し、従業員の送迎以外の他のサービスに使用しない場合:これは民商法典第608条に定める運送受託契約に該当し、支払者である雇用者の会社は、歳入局命令第トーポー4/2528号第12/4(2)項の規定により、1%の率による源泉徴収をしなければならない。また、運送契約は、歳入法典末尾の収入印紙課税物権表で納付が定められていないことから、印紙税の納付を要しない。

雇用者の会社が車両のレンタル契約を締結して、貸主が車両を会社に引き渡して会社が占有している場合:民商法典第573条に定める賃貸契約に該当するものであり、会社は歳入局命令第トーポー4/2528号第6項(2)の規定により、5%による源泉徴収義務を有する。車両のレンタルは動産の賃貸借契約であり、歳入法典の末尾における収入印紙課税物権表に定める文書ではないので、収入印紙の貼付けを要しない。

2.2.労働法上の論点

最高裁判所判決要旨第2687/2543号

雇用者が、指定された日時及び経路に基づいた従業員送迎者を福利厚生として提供しており、送迎のための移動中に事故が起こっても、業務に起因した危険の遭遇とはならない。しかし雇用者が従業員に対して出張を命じており、その移動中に事故に遭った場合は業務に起因する危険と見做される。

最高裁判所判決要旨第7734-7739/2553号

雇用者が従業員送迎者の経路を変更した場合、当該変更は詳細の変更と見做され、雇用形態において重要な変更ではないとされるので、従業員の不利となる雇用形態の変更とはならない。

人事管理と賃金の相殺、及び労働争議(最高裁判所判例第13798/2014号)

基本的には、賃金の相殺は労働者保護法第76条に定める賃金の相殺であるものとされ、法律上、例外事項に該当しない限り、雇用者は賃金の天引き又は相殺を行ってはならない。しかしながら、従業員が退職又は雇用の消滅による賃金との相殺は、例え就業規則で規定がないとしても、雇用者は民商法典第76条によりこれを行う権利を有する。何故ならば労働者保護法第76条は、従業員の雇用期間中においてのみ天引きや相殺が禁ぜられているものであって、さらに雇用者は他方の承諾を得ることを要さずに一方の意思表示のみで賃金の相殺を行うことができる。

不当な契約に関する法律と、海外研修契約におけるケーススタディ
(最高裁判所判決第1422/2567号)

本件研修は、被告が操縦免許を取得し、業務に従事することができるために行うものなので、本件研修は当然に被告の利益となるものである。また、原告が負担していた研修費用は231,764バーツである。被告は研修期間が14日間であったが、その後3年間雇用者と勤務しなければならない旨の規定は、通常よりも被告に負担が掛かるものでもない。たとえ原告の経済的地位が従業員よりも優越性があるとしても、原告に有利となる合意事項とはならないとされる。

また、被告は、研修費用を賃金を得る労働の提供によって支払うものとし、もし契約に基づき3年間勤務を継続しない場合は、当該研修費用の全額返金とともに、費用及び利息の3倍の加算金を支払う旨の規定は、研修費用を投資した従業員の退職をさせないための雇用者の事業を守るための規定である。被告は研修後に原告のもとで勤務するか、当該研修費用を加算金及び利息を加算して返金するかを選択する権利が与えられている。よって本件は被告に通常よりも負担が掛かる規定とはならない。海外研修資金支援契約は、仏歴2540(1997)年不公正契約法第4条第3項及び第5条第1項に定める不当な契約に該当しない。

税務ルーリング

輸出事業者が0%のVAT恩典を行使する場合の付加価値税の取り扱い
歳入局ルーリング第ゴーコー0702/ポー/1887号
日付:2023年4月4日

質問:

  1. Q社は、付加価値税登録事業者であり、輸出入業を営んでいる。Q社は外国のA社から通関手続きを行って輸入している。その後Q社は外国のB社に商品を輸出販売した。輸出の際は、乙仲業者がQ社名義で輸出通関手続きを行う。A社への代金の支払い及びB社からの代金の受け取りは、タイ国の法律に基づいて設立されたK社が、K社の口座で行っていた。
  2. 歳入局の職員は、Q社が代金の受取り及び支払いを自社で行わずに、K社の口座を経由して行っていることについて説明を求めた。Q社の説明によれば、M氏はQ社の株主であり、2020年度にK社の代表取締役を務め、且つK社の口座の支払指示権限を有している。
  3. K社は、B社と売買契約を締結し、その後M氏は社内の他の取締役との紛争が生じたことから、J氏と共同してQ社を設立して事業を行っている。M氏はB社に対して、K社の代わりにQ社がB社への販売業者として取引を行う旨の合意を締結した。従って、A社への代金の支払及びB社からの代金の受取を、K社の口座を経由して行っていた。しかし現在においては、Q社の口座で金銭の取引を行っているので、Q社とK社の法的関係はない。
  4. Q社は、歳入局命令第ポー97/2543号第2項(4)では輸出事業者はレターオブクレジット(L/C)の開設証拠、又は電信送金(T/T)及びT/Pの作成証拠などといった、登録事業者名義の税額票(Invoice)に基づく支払証拠が有する旨が定められているが、Q社が他者の口座を経由して商品の代金を受け取っており、当該口座の名義人の会社とは代理人又は関係を有してないので、Q社は付加価値税(VAT)の税率0%が適用される輸出者とはなるか否かについて質問している。

ルーリング

会社が外国に物品を販売及び輸出していた場合は、歳入法典第77/1条(13)に定める輸出者に該当し、同法第80/1条(1)の規定により、0%の税率による付加価値税(VAT)が適用される。歳入局は査定官吏に対して調査の指針を定めており、それは歳入局命令第97/2543号第2項に定める証拠資料から調査することができる。従って、会社は輸入及び輸出申告書及びインボイスを査定官吏に提示したところ、支払証拠が他社の名義である又は会社は自社が販売者又は輸出者である他の資料を有しているのであれば、会社は0%による付加価値税(VAT)が適用される。

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates
バンコクオフィス 所長 弁護士
川村 励 プロフィールはこちら