略式組織再編で株式買取請求権は認められる?簡易組織再編との違いなど

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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会社の経営判断として行われる組織再編では、反対する株主に株式買取請求権が認められています。

ただし、略式組織再編では、すべての株主に株式買取請求権が認められているわけではなく権利をもたない株主もいます。

株式買取請求権は株主の権利であるため、会社は正しく理解し、適切に対応しなければなりません。

本稿では、略式組織再編における株式買取請求権が認められる場合やその手続きの流れ等について分かりやすく解説していきます。

略式組織再編とは

略式組織再編とは、株主総会の決議による承認を省略できる合併・会社分割などの組織再編行為をいいます(会社法784条1項、796条1項)。

略式組織再編を行うには、当事者である会社の一方が他方の会社の議決権を90%以上保有しているなど特別支配関係にあることが条件となります。

このような特別支配関係にある組織再編では、被支配会社で株主総会を開催したとしても、実質的には特別支配会社が決議をコントロールすることになります。

特別支配会社の意向に沿う決議になると想定される以上、株主総会の開催意義は乏しく、実務上の簡素化のため承認が不要とされました。

ただし、株主総会決議が不要となるのは、議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合には、その割合)以上を保有されている会社についてのみであり、特別支配会社においては、株主総会決議が必要である点に変わりはありません。

略式組織再編を実施する際は、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

簡易組織再編との違い

簡易組織再編も略式組織再編と同様、株主総会決議を省略できる場合がある組織再編です。ただし、その趣旨や要件には違いがあります。

略式組織再編は議決権割合(特別支配関係があること)によって、株主総会決議を省略できます。

一方、簡易組織再編は組織再編によって生じる移動資産が小さく、株主への影響も限定的であるため株主総会決議を省略できるとされています。

消滅会社等の株主に交付される存続会社等の株式・社債・その他の財産の価額が、存続会社等の純資産額の20%以下である場合には、存続会社等の株主総会の決議は要りません(会社法796条2項等)。

ただし、この基準は定款でより厳しく変更することができます。

略式組織再編で株式買取請求権は認められる?

略式組織再編では、90%以上の議決権を特別支配会社が有しているものの、100%の議決権を有しているわけではありません。

そのため、残り10%未満にあたる被支配会社の少数株主は株式買取請求権を行使できますが、特別支配会社の株主には認められていません(会社法785条2項2号かっこ書、797条2項2号かっこ書)。

平成26年の法改正前は、すべての株主に株式買取請求権が認められていました。
しかし、特別支配会社の株主が自ら組織再編を進める立場でありながら、組織再編に反対して株式買取を請求するのは論理的矛盾が生じます。

特別支配会社の株主が株式買取請求権を行使する合理的な理由はないとして、法改正を機に正式に認めないとされました。

例えば、A社がB社の特別支配会社として、B社を吸収合併する場合、B社での株主総会決議を省略することができます。

株主総会決議の省略によって、B社の少数株主は意思表示の機会を失ったため、自身の権利を守る手段として株式買取請求権を行使できます。

特別支配会社であるA社は株主という立場であっても、自らの意向に沿った組織再編のため保護に値せず、B社へ株式買取請求権を行使することはできません。

株式買取請求権について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考ください。

さらに詳しく株式買取請求権とは?

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略式組織再編で株式買取請求権を行使する流れ

略式組織再編において、被支配会社の少数株主が株式買取請求を行う場合、一般的には以下の流れによって行われます。

  1. 会社からの通知・公告
  2. 株主による買取請求
  3. 買取価格の話し合い
  4. 合意に至らない場合は株式買取価格決定申立を行う

①会社からの通知・公告

会社は組織再編行為の効力発生の20日前までに、株式買取請求の対象となる株主に対して買取請求に関する通知、もしくは公告を行う義務があります。

略式組織再編では、株主総会は省略可能とされていますが、事前に情報提供する義務は残りますので注意しましょう。

略式組織再編における株式買取請求手続きでは、通常の株式買取請求手続きと大きく異なる点があります。

株主総会決議が省略されることによって、通常は株式買取請求権の行使要件となっている以下の2点が実施不可能となるため、要件に含まれません。

  • 株主による反対通知の送付
  • 株主総会における反対票の投票

②株主による買取請求

会社から組織再編について通知・公告を受けた株主は、会社に対して自身の株式を買い取るよう請求できます。

請求の際は、株式の種類や数、買取請求を行う意思表示などを明確にする必要があるため、実務上は書面等による通知が多いでしょう。

口頭による請求であっても法的には有効ですが、あとから言った言わないの無用なトラブルに繋がるおそれがあります。

株式買取請求の請求期限は「効力発生日の20日前から効力発生日前日まで」(新設合併等においては、組織再編を行う旨の通知または公告をした日から20日以内)とされています。

また、株券発行会社の場合には、期間内に株券を提出することも請求手続において必要とされています。

③買取価格の話し合い

株式買取請求における株式の買取価格に関しては、法律上、具体的な評価方法の定めはありません。原則として、株主と会社が協議して価格を決定します。

協議の結果、買取価格が合意に至れば、会社は「効力発生日から60日以内に」代金を支払わなければなりません(会社法786条1項等)。

買取価格については、会社法上「公正な価格」とされています。
具体的な計算方法が示されているわけではありませんが、可能な限り客観的に合理的と考えられる価格を提示していくべきと考えられます。

強引に不当な価格で買い取ってしまうと不要なトラブルを招くおそれもあるでしょう。買取価格の話し合いでは、「公正な価格」を意識して協議することが大切です。

株式買取請求権における公正な価格については、以下の記事で詳しく解説しています。

さらに詳しく株式買取請求権における「公正な価格」とは?

④合意に至らない場合は株式買取価格決定申立を行う

効力発生日から30日以内に価格協議が合意に至らない場合は、裁判所に株式買取価格決定申立を行うことができます(会社法786条2項等)。

株式買取価格決定申立とは、裁判所が双方の主張や鑑定人の意見等を考慮した上で「公正な価格」を決定する手続きです。

上場株式であれば市場価格を基礎とし、非上場株式ではDCF法等の評価方法を用いてアプローチします。

裁判所は評価額だけでなく、組織再編の背景などを含めた一切の事情を考慮して決定するため、必要な主張は根拠とともに明示しましょう。

株式買取価格決定申立は、効力発生日の30日後から60日以内に限定されていますので、期限管理には注意が必要です。

株式買取価格決定申立についての詳細は、以下の記事をご参考ください。

さらに詳しく株式買取価格決定申立とは?

略式組織再編における差止請求について

略式組織再編では、被支配会社の株主総会決議が省略されるため、少数株主が審議・反対する機会を奪われているといえます。

少数株主を保護するため、略式組織再編においては通常の組織再編よりも広範囲で株主による差止請求が認められています(会社法796条の2)。

略式組織再編では、以下のいずれかに該当する場合に差止請求が可能となります。

  • 組織再編が法令または定款に違反している
  • 組織再編契約に定められた対価の内容・割合が著しく不当であって、株主が不利益を受けるおそれがある

通常の組織再編については、株主総会というプロセスが設けられているため、差止請求できるのは①の「法令・定款違反」といった形式的な不備があるケースに限定されています。

略式組織再編や簡易組織再編に関しては弁護士法人ALGにご相談ください

略式組織再編では、株主総会決議が省略できるといった特徴がありますが、実施にあたっては要件を満たしているか十分に確認しなければなりません。

不十分な状況のまま略式組織再編を実施すれば、不適切として無効になるおそれもあるでしょう。

また、株式買取請求権の流れや株主による差止請求についても、通常の組織再編とは異なる部分があるため、正しく理解することが大切です。

しかし、会社法は非常に複雑であり、適切に対応するには専門家である弁護士のアドバイスが重要となります。

弁護士法人ALGでは、会社法に精通した弁護士が多数在籍しており、略式組織再編や簡易組織再編について事前のアドバイスや実務上のサポートなどを積極的に行っています。

少しでも疑問や不安があれば、ぜひ私どもへご相談ください。

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