少数株主とのトラブル|放置するリスクや企業がすべき対策など

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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少数株主は、通常、持ち株比率が低く、議決権が限られているため、会社の経営に対する直接的な影響力を及ぼす場面は限定的です。

しかし、少数株主であっても、会社の経営方針や配当、情報開示などに不満を持ち、経営陣との間でトラブルに発展することは決して珍しくありません。

また、少数株主は会社法などで一定の保護を受けており、場合によっては株主代表訴訟や株式買取請求権などの権利を行使し、会社の円滑な経営に大きな影響を与えるリスクもあります。

これらを未然に防ぐためには、少数株主とのトラブル事例を理解し、適切な対策を講じておくことが大切です。

本稿では、少数株主との間で起こりうるトラブルの具体例や、トラブルを放置することによるリスク、会社が実践すべき有効な対策について詳しく解説していきます。

少数株主とトラブルになるケースとは?

会社と株主の間で起こるトラブルは様々ですが、一般的に以下のようなトラブルが散見されます。

  • 経営方針や戦略に関するトラブル
  • 配当に関するトラブル
  • 情報開示の不透明さに関するトラブル
  • 親族が少数株主の場合のトラブル

経営方針や戦略に関するトラブル

少数株主が、経営陣の打ち出す経営方針や戦略に対して異議を唱えるケースがあります。

たとえば、企業買収や合併、重要な資産の売却といった経営判断に関して、必ずしもすべての株主から賛同が得られるとは限りません。

少数株主が「会社の将来にマイナスだ」と判断し、株主総会で反対票を投ずるなど、経営陣と対立することも少なくないのです。

また、株主は、こうした経営施策によって会社に損害が生じたと判断した場合、株主として経営陣の責任を追及することも考えられ、最終的には法的措置を講じることもありえます。

このような対立が表面化すれば、経営全体の安定性が損なわれるリスクが高まることになるでしょう。

会社は、少数株主の意見であるとしても軽視することなく、丁寧に説明を行い、理解を得る努力を怠らないようにしなければなりません。

配当に関するトラブル

順調に利益が出ているにもかかわらず、配当が少ない、もしくは配当が行われないなどの場合、株主が不満を抱きやすくなります。

特に、配当を自分の会社に対する投資のリターンとして期待している株主であれば、利益に見合った配当を求め、経営陣に対して配当の増加を強く要求することが考えられます。

このような場合、株主総会で配当方針を巡る対立が生じ、少数株主であるとしても、他の株主を巻き込むことで経営に圧力をかけるケースもあります。

配当に関するトラブルを未然に防ぐためには、利益の使途や配当の決定理由について十分な説明を行い、真摯に対応することが重要となります。

情報開示の不透明さに関するトラブル

会社経営の透明性は、株主との良好な関係を築く上で不可欠な要素の1つです。

財務状況や経営戦略について十分な情報を開示しない場合、株主は経営陣の判断や方針に疑念を抱き、会社への不信感を強めてしまう可能性もあります。

特に、利益配分や将来の見通しなどに関する情報が限定的だと、会社が何らかの不利益を被っており、それを隠しているのではないかという疑念が生じてしまいます。

会社は、株主が経営の実態を理解できるよう、積極的かつ分かりやすい情報提供を心がけるべきです。

株主との特別な関係性によるトラブル

株主が親族であるほか、会社と特別な関係がある場合には、以下のような特有のトラブルが生じやすくなります。

  • 親族(家族経営の場合など)
    経営権を誰に継承するかを巡り、親族間で感情的な対立が生まれ、結果として経営の安定を損なうこともあります。
  • 役員
    役員が株式を保有していると、経営方針の違いが原因で関係性が悪化した場合、役員からは解任できても、株式を回収することは容易ではないため、株主としての地位が残り、株式が細分化されることに加え、トラブルの火種となり得ます。
  • 従業員
    従業員が株主の場合、株式に関する退職時の取り決めが不十分だと、株式買取の条件について争いが起きやすくなります。
    従業員に株式を保有させている場合には、持株会を設立することが一般的ですが、退職時に持株会も自動退会とする制度設計が必要です。
  • 取引先(取引、資本提携、M&A等の場合)
    取引先が株主の場合、取引終了時の株式買取価格で揉めるケースが予測されます。資本提携やM&Aを見据えて株式を保有させていた場合、期待していた金額と実際の評価額に乖離が生じ、交渉が難航することがあります。

少数株主とのトラブルを放置するリスク

少数株主とのトラブルを放置することは、企業経営に深刻なリスクをもたらすおそれがあります。

少数株主は、会社法によって一定の権利が保護されており、トラブルを放置した状態が続くと、これらの権利を行使される可能性があります。
また、M&Aや事業承継などの重要な経営戦略の実行を妨げる要因にもなり得ます。

少数株主とのトラブルを放置することによって起こり得るリスクは様々ですが、代表的な例としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 経営陣に対する信頼が低下する
  • 株主総会での対立が激化する
  • 株主代表訴訟を起こされる
  • 株式買取請求権を行使される
  • 事業承継やM&Aが困難になる

少数株主権や単独株主権の詳細については、以下のページで詳しく解説しています。

さらに詳しく少数株主権とは? さらに詳しく単独株主権とは?

経営陣に対する信頼が低下する

少数株主との対立を放置していると、社内外から経営陣への信頼が大きく損なわれてしまうリスクがあります。

少数株主との対立が収束せずに、裁判等の法的な紛争に発展して長期化すれば、取引先や金融機関も会社の健全性に疑問を持つ可能性もあります。
その結果、取引条件の悪化や融資の引き締めなどにつながることが少なくありません。

また、従業員にも不安感が広がり、モチベーション低下や離職率の上昇を招くおそれがあります。

さらに、少数株主が株主総会で経営陣の交代や取締役の解任、さらには企業再編を強く求める事態に発展することもあり得ます。

株主総会での対立が激化する

少数株主との対立が続くと、株主総会の場でその対立が激化しやすくなります。

特に、少数株主であるとしても、団結して反対票を投じられた場合には、取締役の選任や会社の重要な経営判断が思うように進まなくなる可能性も否定しきれません。

その結果、会社として必要な経営戦略や事業方針の決定が滞り、意思決定のスピードが鈍化すれば経営の安定性が損なわれてしまう恐れがあります。

そして、こうした状況が長引けば、会社全体の不利益に繋がり、競争力の低下や業績の悪化を招く可能性も否定できません。

株主代表訴訟を起こされる

会社が法に基づく適正な手続きを怠った場合、少数株主から法的責任を追及されるリスクが生じます。

代表的なものが株主代表訴訟で、これは株主が会社に代わって、役員の不法行為や義務違反に対する責任追及等のために訴訟提起できる制度です。

実際に株主代表訴訟が起こされると、多額のコストや時間がかかるだけでなく、会社の社会的信用にも悪影響を及ぼすおそれがあります。

一方で、株主代表訴訟を回避するために、経営陣が積極的な経営判断や新しい挑戦を控える傾向が強まれば、会社の成長力や競争力が損なわれるリスクもあります。

株式買取請求権を行使される

株式買取請求権とは、少数株主が特定の経営判断(合併、事業譲渡、会社分割など)に反対する場合、自身の保有株式を会社に買い取るよう請求できる権利です。

この権利が行使されると、株式の買取価格をめぐり会社側と少数株主で争いになるケースが散見されます。

価格について合意が得られない場合、最終的には裁判所への「株式買取価格決定申立」に発展し、司法判断を仰ぐことになる可能性もあります。

裁判所が高額の買取価格を認めた場合、会社にとっては予想外の出費となり、財務状況に大きな影響を及ぼすリスクもあります。

少数株主の買取請求や、株式買取価格決定申立について詳しく知りたい方は、以下のページをご参考ください。

さらに詳しく少数株主の買取請求 さらに詳しく株式買取価格決定申立とは?

事業承継やM&Aが困難になる

事業承継やM&Aの場面では、少数株主の存在が大きな障害となることがあります。

たとえば、社長が子供などの親族に事業承継を計画していても、少数株主の協力が得られなければ、様々な制約が生じるおそれがあります。

少数株主が経営方針に反対したり、不当な干渉をしてくることがあれば、経営の自由度が損なわれ、事業承継が困難になるケースもあります。

また、M&Aで会社を第三者に売却する場合、買主は自由な経営を目指して全株式の取得を希望することが一般的です。

しかし、少数株主が株式の売却に応じないのであれば、買主は取引に消極的になり、M&A自体が頓挫することもあり得ます。

また、株式の売却に応じたとしても、買取価格が合意に至らなければ交渉が長期化し、M&Aの機会を逃してしまうことも考えられるでしょう。

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少数株主とのトラブルを避けるための対策

少数株主とのトラブルを避けるための対策として、主に以下のようなものがあります。

  • 適法な会社経営を行う
  • 任意での買取交渉を目指す
  • スクイーズアウトを検討する
  • 弁護士に相談する

適法な会社経営を行う

反対派となる少数株主は一定数存在することを想定して、会社は法令を順守した経営を徹底するべきでしょう。

適切な経営体制が整っていれば、トラブルの発生を未然に防ぐだけでなく、万が一裁判を起こされた場合でも自信を持って対応することができます。

具体的には、定款を実態に合わせて定期的に見直すことや、株主総会を定期的に開催して十分な情報を提供することなどが挙げられます。

また、株主から質問や請求等があった場合には、会社法に基づいた対応を速やかに行い、信頼関係の向上に努めましょう。

さらに、企業法務に精通した顧問弁護士をつけることも重要です。
顧問弁護士がいれば、日常的な問題点の確認やトラブル発生時の速やかな対応が可能になり、より安定的に経営を進めることができます。

株式の集約のために任意での買取交渉を目指す

少数株主とのトラブルを根本的に解消するためには、株式を集約し、経営者個人が100%の株式を保有する形が理想といえます。

そのためには、まず少数株主との間で任意の買取交渉を行い、納得できる条件で株式を譲り受けることを目指しましょう。

交渉においては、感情的な対立を避け、冷静かつ建設的な話し合いを心がけることが重要です。

もし交渉が難航し、価格や条件で折り合いがつかない場合でも、(株式に譲渡制限が付されている場合には)株式は自由に譲渡しにくいことや、相続時に相続税の負担が発生する可能性があることを説明し、納得の上で合意形成を図ることが大切です。

スクイーズアウトを検討する

任意での株式買取交渉がまとまらない場合、最終的な手段としてスクイーズアウトの活用も視野に入れる必要があります。

スクイーズアウトとは、会社や経営者が法的手続を用いて少数株主の株式を強制的に買い取る仕組みです。

具体的には、特別支配株主(議決権の90%以上を保有する株主)による株式等売渡請求や株式併合など、会社法に定められた方法が複数存在します。

スクイーズアウトは、少数株主の権利を侵害する可能性もあるため、会社法で厳格な手続きが定められています。

少数株主のスクイーズアウトについて詳しく知りたい方は、以下のページをご参考ください。

さらに詳しくスクイーズアウトとは?

弁護士に相談する

少数株主とのトラブルや株式の整理が必要になった場合、早い段階で弁護士に相談することが重要です。

弁護士に依頼することで、買取交渉の代理人として相手方と直接交渉を行い、的確な合意形成が期待できます。

また、株式の適正な買取価格についてのアドバイスを受けることもできるため、価格交渉を有利に進めることができるでしょう。

万が一、トラブルが訴訟に発展した場合にも、会社側の法的主張の整理や訴訟手続き全般のサポートを受けることができます。

トラブル時だけでなく、今後のリスクを防ぐための定款・規則の見直しや、円滑な株主総会運営のアドバイスなど、予防法務の面でも力強い味方といえます。

少数株主とのトラブルに関しては弁護士法人ALGにご相談ください

少数株主とのトラブルは、経営の安定や会社の成長に大きな障害となり得ます。

トラブルとならないためには、会社の経営の透明性や法令遵守、組織体制など幅広い面で対応が必要となります。

法的知識が必要となるため、社内人材だけで対応することは難しい場面も多いでしょう。少数株主とのトラブルやその防止対策は企業法務専門の弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人ALGでは、企業法務に関する知識と実績を有する弁護士が多数在籍しております。貴社の状況に応じて最適なアドバイスを行い、適切な法的サポートを提供いたします。

少数株主とのトラブル対応にお悩みがあれば、ぜひ私どもへご相談ください。

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弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士131名、スタッフ240名を擁し(※2026年4月1日時点)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。