会社にとって、定款は組織運営の根幹を定める憲法ともいえる重要な書類です。
そして、株主や債権者など一定の要件を満たす者は、会社法に基づき、この定款を閲覧する権利を有しています。
定款の閲覧請求に対して、会社は原則として請求に応じることが必要ですが、株主等の権利濫用といえるような場合には慎重な対応が必要となります。
本稿では、定款の閲覧請求権に関する基本事項や閲覧方法、会社が備えておくべき注意点を網羅的に解説します。
目次
定款とは
定款とは、会社の組織や活動に関する基本的なルールを定めたもので、会社設立時に必ず作成しなければならない重要な書類です。
会社の運営に関する以下のような事項が記載されています。
- 商号(会社名)、事業目的、本店所在地などの基本情報
- 役員数や任期
- 広告の方法
- 発行可能株式数
- 株式に関する事項(譲渡制限の有無など)
- 最初の事業年度
- 発起人の氏名、住所等
定款は、原則として、公証人の認証を受ける必要があります。
会社を設立した後も、事業内容の変更や組織再編など、会社の状況に応じて変更されることがあります。
定款は、会社自身だけでなく、株主、債権者、取引先など、会社に関わる全ての人々にとっての重要な情報源です。
そのため、定款の内容は常に最新の状態に保ち、必要に応じて適切に開示されなければなりません。
定款の閲覧請求権とは
定款の閲覧請求権とは、株主や債権者など、会社法で定められた者が、会社の定款を閲覧または謄写(コピー)できる権利のことです。
この権利は、会社の経営状況を把握し、株主としての権利を適切に行使するために認められています。
具体的には、株主総会での議決権行使の判断材料としたり、会社の事業内容や役員の構成を確認したりする目的で利用されるなどがあります。
会社は、原則としてこれらの閲覧請求を拒否することはできません。
ただし、正当な理由がある場合は、例外的に拒否が認められるケースもあります。
誰が請求できる?
定款は重要な書類であるため、閲覧請求は原則として、株主や債権者に限られています。
定款の閲覧請求権はすべての株主に認められる単独株主権にあたり、保有する株式数によって権利が制限されることはありません。
また、裁判所の許可を得た場合には、親会社などの特定の利害関係者にも閲覧請求が認められます。
原則として、利害関係のない一般人が定款を閲覧することはできませんが、定款の一部である登記事項や事業目的等については、法務局で登記事項証明書を発行することで確認できます。
株主が閲覧請求をする目的は?
株主が定款の閲覧請求を行う目的は様々ですが、会社の経営方針や意思決定プロセスを把握し、自身の投資判断に役立てるなどが考えられます。
定款を閲覧することによって、会社の基本的事項を確認したり、運営が正しく行われているのかなどを判断する手助けとしている可能性もあります。
これらの情報を確認することで、株主は会社の経営状況や将来性を評価し、場合によっては自身の権利を適切に行使するための準備を行うことができるでしょう。
閲覧請求は拒否できる?
定款の閲覧請求は、正当な理由がある場合には基本的に拒否できません。
会社法では、利害関係者に会社の運営状況を確認する権利が認められているためです。
ただし、閲覧請求が不当な理由や会社に過度な負担を与える場合には、拒否することが認められることもあります。
拒否が認められる事例としては、以下のようなケースが該当すると考えられます。
- 具体的な目的が不明確で、単なる嫌がらせや業務妨害などの権利濫用による場合
- 頻繁に閲覧請求が行われるなど、業務に著しい支障をきたす場合
ただし、権利濫用や業務上の著しい支障の立証責任は会社側にあるため、閲覧請求の拒否は容易ではありません。
拒否したい場合には弁護士に相談することをおすすめします。
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定款の閲覧方法
定款には現行定款と原始定款があります。
原始定款は会社設立時に作成された「設計図」のようなものであるのに対し、現行定款は現在有効なルールを定めた定款です。
定款の閲覧は、会社の所在地や登録内容に応じて複数の方法があります。
具体的には、現行定款は会社の本店や支店で閲覧できますが、原始定款は法務局や公証役場で閲覧することになります。
つまり、閲覧方法には以下の3種類が挙げられます。
- 本店や支店での閲覧請求
- 法務局での閲覧請求
- 公証役場での閲覧請求
各閲覧方法について以降で解説していきます。
本店や支店での閲覧請求
会社法では、定款を会社の本店および支店に備え置くことが義務付けられています。
株主や債権者は、これらの場所に直接出向き、定款の閲覧請求権を行使することが可能です。
定款の閲覧請求がなされた場合、本店や支店では現行定款を提示することになります。
なお、電子定款の場合は、電子ファイルとして保管されているため、閲覧用のパソコンや個室を用意するなどが必要でしょう。
謄写(コピー)を求められた場合には、閲覧請求者に実費として請求することが一般的です。
法務局での閲覧請求
会社の設立登記を行う際には、法務局に定款を提出する必要があります。
附属書類として提出した定款は、登記申請から10年間、法務局に保存されることになります。
ただし、保存期間については令和元年10月の改正前は受付から5年間とされていたため、設立時期によってはすでに破棄されている場合もありますので、あらかじめ法務局へ確認が必要です。
閲覧できるのは原始定款のみとなっており、閲覧申請書に利害関係を記載する必要があります。
なお、登記簿等についてはオンライン申請が可能ですが、定款については非対応となっています。
会社の本店所在地を管轄する法務局で現物保管されているため、現地で閲覧申請を行わなければなりません。
公証役場での閲覧請求
公証役場での定款閲覧請求は、会社設立時に定款を認証した公証役場で定款を閲覧する方法です。
閲覧希望者は、公証役場に出向き、所定の手続きを行うことで公証人が管理する定款を確認できます。
公証役場では原則として、認証後20年間、認証時の定款が保存されているので、この間であれば手続きが可能です。
ただし、保存されているのは認証時の原始定款のみとなるため、必ずしも現行の内容に沿うわけではありません。
なお、公証役場で定款の閲覧請求ができるのは、嘱託人、その承継人または利害関係人とされていますので、請求権が証明できる資料の持参が必要となります。
定款の閲覧請求に関する注意点
定款の閲覧請求がトラブルにつながらないよう、会社は日頃から準備を整えておくことが大切です。
定款の閲覧請求に関する主な注意点は以下のとおりです。
- 現行定款に更新しておく
- 第三者の関与に注意する
各項目について以降で確認しておきましょう。
現行定款に更新しておく
定款は、会社の設立時に定める経営方針の軸となるものですが、経営状況に応じてその方針が変更されることは珍しくありません。
つまり、会社の状況に合わせて定款の内容が変更されることも、決して特別なことにはあたらないといえます。
むしろ、現在の内容を適切に反映しておくべきでしょう。
定款の閲覧請求に応じる際には、必ず最新の定款であることを確認する必要があります。
古い定款を閲覧させてしまうと、誤解を招いたり、トラブルの原因となる可能性があります。
定款の変更があった場合は、速やかに法務局で変更登記を行うとともに、社内の記録も更新するようにしましょう。
第三者の関与に注意する
定款の閲覧請求に際しては、第三者の関与に注意が必要です。
特に、顧客や取引先、パートナー企業などの外部関係者が関与する場合、情報の適切な管理が重要となります。
具体的には、親族が同業他社を経営している少数株主などから閲覧請求があった場合、情報が競合他社へ漏れるリスクが生じます。
このようにリスクを伴うケースでは、閲覧請求に応じるのかを慎重に判断しなければなりません。
定款作成や変更、閲覧請求については弁護士法人ALGにご相談ください
定款は、会社の根幹を定める重要な書類であり、その作成や変更には専門的な知識が必要です。
また、定款の閲覧請求への対応も、原則として応じる必要がありますが、事案によっては慎重に対応しなければ大きなリスクを背負うことになりかねません。
定款に関する対応について少しでも不安があれば弁護士へご相談下さい。
弁護士法人ALGには、会社法に精通した弁護士が多数在籍しており、定款の作成・変更、閲覧請求への対応など、企業法務に関する様々なご相談に対応しております。
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東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。 東京弁護士会所属。私たちは、弁護士106名、スタッフ220名(司法書士1名を含む)を擁し(※2024年1月4日現在)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。