監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
産婦人科で赤ちゃんや母親に障害が残ってしまったり、亡くなってしまったりした場合、医療過誤で訴えたいと考えることでしょう。しかし、医療過誤の訴訟は難しいと聞いたことのある方も少なくないと思われます。
医療過誤の訴訟は、医療の知識が必要なので難しいことは否定できません。しかし、専門的な知識のある弁護士であれば、訴訟やそれ以外の手段で解決できる可能性があります。
このページでは、医療過誤訴訟について、準備すべきことや手続きの流れ、産婦人科を訴えるときの注意点等について解説します。
目次
産婦人科による医療過誤で訴えたい場合には、訴訟を提起します。訴訟とは、裁判所において、基本的には公開された法廷で行われる、争いを解決するための手続きです。
個人が医療機関による過失について賠償を求める場合には、民事訴訟の一種である損害賠償請求訴訟によって争います。
訴訟によって、トラブルの最終的な解決を図ることができます。また、医療の改善を求める機会にすることができる等のメリットがあります。
しかし、訴訟費用がかかり、敗訴してしまうリスクがある点はデメリットです。
医療過誤によって損害を受けた場合には、訴訟を提起する前に、示談交渉による和解を図るのが一般的です。
和解による紛争解決を試みるのは、訴訟によって争うと時間がかかるからです。特に医療訴訟の場合、解決までに数年以上かかってしまうケースも珍しくありません。そのため、早期に解決するために、和解を試みることが多いです。
特に、病院側がミスをしたことが明らかな場合では、病院側も早期の解決を望んでいるケースが多く、和解に至ることが多いです。
産婦人科を訴える前には、主に以下のような準備をする必要があります。
医療訴訟では、重要な証拠となる資料の多くを医療機関が保管しているため、証拠を確保することの重要性が高いです。証拠を確保できないと、医療機関側に不利な証拠を破棄されてしまうリスクがあります。
確保するべき証拠は、主に以下のようなものです。
証拠を確保することができたら、その内容について整理します。そして、医療ミスの有無や、医療機関側の行為と、母子の死亡等の結果との因果関係について検討します。
確保した証拠に基づいて、今後の方針を決定します。特に、医療機関を訴えた場合に、勝訴できる見込みがあるかという点が重要です。
勝訴の可能性がある場合には、紛争の解決方法について方針を決めます。主に、以下のような方法から適切なものを選択します。
なお、調停とは、調停委員に仲介してもらいながら話し合いを進める手続きです。紛争を解決するための強制力はありませんが、柔軟な解決が可能となる点がメリットです。
また、医療ADRとは、東京三弁護士会などの民間事業者が提供している紛争解決制度です。東京弁護士会のADRでは、医療事件に詳しい弁護士等があっせん人として選任され、中立公正な立場で当事者間の紛争解決を支援します。
訴訟の手続きは、主に以下のような流れで進めます。
まずは、訴状を作成して裁判所に提出します。医療訴訟の訴状には、「請求の趣旨」として、主に請求する損害賠償金の金額を記載します。
また、「請求の原因」として、過失の内容や、過失と母子の死亡・後遺症などとの因果関係、死亡・後遺症などによって受けた損害等を記載します。
ま訴訟を起こされた相手方は、第1回の口頭弁論期日までに答弁書を裁判所へ提出することにより、訴状に対する反論を行います。
まそのとき、答弁書の内容を立証するための証拠も併せて提出します。
裁判所において、基本的には公開された法廷で口頭弁論が行われ、原告側と被告側が主張・立証します。
医療訴訟では、専門家による鑑定が行われることも多いです。
口頭弁論の回数を重ねて、証拠調べは終わったと裁判所が判断すれば終了となります。
口頭弁論によって心証が形成されたら、裁判所から和解をすすめられることがあります。和解が成立しない場合には、判決が出されて第一審は終了します。
第一審の結論に納得できない場合には、上級裁判所に控訴することができます。控訴審判決にも納得できなければ、さらに上級の裁判所へ上告することができます。
控訴や上告の期限は、判決正本の送達を受けた日の翌日から起算して2週間以内です。
上告して判決が下された場合や、期限内に控訴や上告をしなかった場合では、判決は確定します。
判決が確定すると、判決の内容に従う必要があります。損害賠償請求が認容されていれば、相手方が賠償金の支払いを行います。もしも支払いが行われなかったとしても、判決書によって強制執行が可能です。
産婦人科を訴えるときには、主に以下のような点に注意しましょう。
医療訴訟の重要な特徴として、弁護士に医療の専門知識が必要であり、医療機関の過失や、損害との因果関係について主張できなければ勝つのは難しい点が挙げられます。
また、争いが長期化しやすいことや、訴えても勝訴できる割合が低いことも挙げられます。ただし、勝訴できる割合が低いのは、医療機関に明らかなミスがあった場合には和解等によって解決することが多いからであり、訴えてもほとんど負けるという意味ではありません。
医療訴訟では、医療機関の過失を証明し、損害賠償責任を立証することが難しいため、医療調査を十分に行わなければなりません。
医療調査として、主に協力医による鑑定が行われます。医療の専門家である協力医から、医療機関による診療に問題がなかったかについて、カルテなどの証拠に基づいて意見を出してもらいます。
産科医療補償制度とは、出産の影響によって発症した重度の脳性麻痺の赤ちゃんについて、補償するために設けられた制度です。以下の3つの基準を満たせば、速やかに補償金を受け取ることができます。
補償金を受け取ったとしても、医療訴訟ができなくなるわけではありません。ただし、医療訴訟で勝訴した場合、補償金は基本的に差し引かれます。
医療訴訟を行うためには、医療訴訟に強い弁護士への相談が必要となります。なぜなら、医療訴訟は専門性が高いので、弁護士であっても十分な知識を身につけなければ勝つことが難しいからです。
私たちは、弁護士が医学博士の学位を取得することを推進するなど、専門性を高めるように努めています。
医療訴訟に強い弁護士に依頼するメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
医療機関の過失によって赤ちゃんに後遺症が残存したことや、医療機関が診療録を改ざんしたことが認められた裁判例について、以下で解説します。
平13(ワ)147号、仙台地方裁判所 平成14年12月12日判決
本件は、生まれた赤ちゃんが細菌に感染しており、生後2日で哺乳力が低下して、NICUのある病院に転医したものの脳性麻痺等の後遺症が残った事案です。
裁判所は、被告医院のカルテに記載されている生後2日の治療について、証言や他の証拠から信用できない記載が多く、投薬経過等が正確に記載されたものとは認められないとしました。そして、当日の午前11時過ぎには、赤ちゃんに敗血症や髄膜炎を疑わせる症状が現れていたのに、午後3時頃まで抗生剤の投与等の処置を行わなかったと認めました。
また、赤ちゃんの様子を注意深く観察していれば、けいれん症状が出た午後1時50分には相当程度の確実性をもって敗血症と診断することができたと認め、被告医院は観察義務や転医義務に違反したとしました。
赤ちゃんが発症した早発型敗血症は、午前から抗生剤の投与を受け、早期にNICUに転医されていれば、重度の後遺症は残らなかったと推認するべきであり、被告医院の義務違反と赤ちゃんの後遺症との間には因果関係がある旨判示されました。
以上のことから、適切な治療が行われても労働能力喪失率が20%程度になった可能性が認められたものの、逸失利益や介護費用、弁護士費用等、合計約9270万円の請求が認容されました。

医療過誤のご相談受付
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