セクハラ被害で請求できる慰謝料の相場は?増額されやすい7つのケース
セクハラ被害によって精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を請求できる可能性があり、その金額は30万~300万円程度とされています。
相場に幅があるのは、被害内容や影響の大きさにより金額が変わるためで、軽度と判断されるケースでは数十万円にとどまる一方、悪質性が高く深刻な心身の負担を伴うケースでは300万円を超えることもあります。
この記事では、セクハラの慰謝料相場や高額な慰謝料が認められるケース、慰謝料請求の手続きや流れなどについて解説します。
慰謝料請求が認められるセクハラ行為とは?
セクハラ被害によって精神的苦痛を被った場合は、慰謝料請求できる可能性があります。
そもそもセクハラとは、相手の意に反する性的な言動によって、職場で不利益を被ったり、就業環境に悪影響を及ぼす行為をいいます。
主に以下の4種類に分けられます。
- 対価型セクハラ
- 環境型セクハラ
- 制裁型セクハラ
- 妄想型セクハラ
それぞれの種類に当てはまる具体的な行為は、下表のとおりです。
| セクハラの種類 | 概要 | 具体例 |
|---|---|---|
| 対価型セクハラ | 何らかの対価として性的関係を要求するセクハラ |
|
| 環境型セクハラ | 職場での性的な言動、行動によって就業環境を悪化させるセクハラ |
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| 制裁型セクハラ | 異性に対して圧力をかけるセクハラ |
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| 妄想型セクハラ | 相手が自分に好意があると勘違いして、しつこくつきまとうセクハラ |
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「セクハラの種類」と「どこからセクハラになるのか」については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラの慰謝料は加害者と会社に請求できる
セクハラ被害に遭い慰謝料を求める場合、加害者だけでなく会社側にも法的責任が認められるケースもあります。企業に責任が生じ得る主な法的根拠は、次の3つです。
使用者責任
従業員が業務に関連して第三者へ損害を与えた場合、会社も損害賠償責任を負う制度です。加害者が職場でセクハラ行為に及んだと認められると、会社も被害者への賠償義務を負います。
安全配慮義務違反
企業には、従業員が心身の安全を確保しながら働ける環境を整える義務があります。セクハラを放置し、被害が拡大した場合は、この義務に違反したとして会社の責任が追及されます。
セクハラ防止措置義務
男女雇用機会均等法により、企業にはセクハラを防ぐための体制整備が求められています。相談窓口の設置や再発防止策の実施が不十分と判断されると、会社にも賠償責任が及びます。
セクハラで請求できる慰謝料の相場はいくら?
精神的苦痛の大きさは個別の情によって異なるため、セクハラの内容や悪質性、両者の関係性や年齢などを総合的に考慮して慰謝料が算定されます。
そのため、金額には一定の幅が生じます。ここからは、具体的な相場について確認していきましょう。
セクハラの一般的な相場
セクハラで請求できる慰謝料の相場はおよそ30万~300万円程度といわれています。ただし、セクハラの違法性が強いケースでは、個別の事情を考慮して、相場より高額になる場合もあります。
ここからは、どのようなケースが高額になるのか、詳しく解説します。
セクハラで退職にまで至ったケース
セクハラが原因で退職に追い込まれた場合、損害賠償の相場は100万~300万円程度となります。金額が高くなる背景には、慰謝料に加えて、退職に至ったことによる「逸失利益」が含まれているからです。
逸失利益とは、セクハラがなければ仕事を続け、継続して収入を得られていたはずの給与との差額を指します。
退職まで至らなくても、精神的苦痛が大きく休職に追い込まれたケースでは、休業損害(セクハラ被害により働けなくなった期間の減収分)が加算され、損害賠償額が高額になることもあります。
もっとも、退職や休職とセクハラとの因果関係が認められた場合に限られます。
セクハラを理由に退職するケースについて、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラが刑事事件にも該当するケース
不同意わいせつ罪や不同意性交等罪など、刑事事件に該当するような悪質なセクハラ行為では、慰謝料が高額になる傾向があります。
実際に、過去の裁判例では、強制わいせつ罪(当時の刑法)にあたる行為により深刻な精神的苦痛を与えたとして、加害者に1000万円の慰謝料支払いを命じた事例もあります。
セクハラ被害を訴える際の流れについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラで慰謝料請求が認められた裁判例
-
セクハラの慰謝料(弁護士費用含む)として66万円が認められた裁判例
【平25(レ)938号 東京地方裁判所 平成26年2月28日判決】
事案の概要
勤務先の会社役員である加害者男性から、身体的接触を含む度重なるセクハラを受けた結果、被害者女性は強い精神的苦痛を抱えるようになり、不安障害を発症して通院と治療が必要になりました。そこで、加害者男性に対し、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料や治療費等の支払いを求めました。
裁判所の判断
裁判所は、被害者女性が記録していた備忘録に記載された行為について、内容が具体的で信用きると判断し、加害者男性によるセクハラを認めました。
一方で、セクハラが行われた期間は約2ヶ月と短期間で、行為の頻度も高いとはいえない点が考慮され、不安障害の発症がセクハラに直接起因したとは認められないと判断しました。このような事情を踏まえ、セクハラ行為が重篤なものであったとは言い難いとして慰謝料は60万円、弁護士費用相当額の損害は6万円と認めるのが相当だと判断されました。
-
セクハラの慰謝料(治療費、逸失利益などを含む)として約862万円が認められた裁判例
【平14(ワ)13089号 東京地方裁判所 平成15年9月30日判決】
事案の概要
社団法人で勤務していた被害者女性は、職場の加害者男性から性的嫌がらせのほか、三度にわたる強姦等の被害を受けた結果、深刻なPTSDを発症し、退職を余儀なくされました。被害者女性は、加害者男性に対して不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、勤務先の社団法人に対しても、使用者責任または債務不履行(職場環境保持義務違反)に基づく損害賠償を請求しました。
裁判所の判断
裁判所は、約2年間という長期にわたり継続して行われた悪質な行為である点、被害女性がPTSDを発症し、現在も入院治療を続けている点など考慮し、被害女性が受けた精神的苦痛は非常に大きいと判断しました。そのうえで、治療費194万3800円、逸失利益337万7506円、慰謝料250万円、弁護士費用80万円を損害として認め、社団法人と加害者男性に対して、連帯して862万1306円の支払いを命じました。
セクハラの慰謝料が増額されやすい7つの要素
個別の事情によって慰謝料額にはかなり幅があります。具体的に慰謝料額を左右する要素として、次のものが挙げられます。
- セクハラの回数・頻度・期間
- セクハラの態様・悪質性
- 加害者の社内での立場
- 退職を余儀なくされた
- 精神疾患を発症した
- 加害者の事後の反省や謝罪等がなかった
- 会社がセクハラ行為を認識していた
セクハラの回数・頻度・期間
セクハラの回数や頻度が多ければ多く、さらに行為が長期間続いた場合は、精神的苦痛が大きくなるため、慰謝料が高額になる傾向があります。
また、「やめて欲しいと何度も伝えて、拒んだのにやめてもらえなかった」といった場合も慰謝料が増額されやすくなります。
セクハラの態様・悪質性
「今日の服装可愛いね」、「恋人いるの?」といった性的な発言をされるケースより、「胸やお尻を触られた」、「突然キスされた」などの身体的な接触があるケースの方が、悪質性が高いとして慰謝料が高額になり得ます。
さらに、身体への接触を伴う悪質なセクハラは、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に該当し、刑事事件として処罰される可能性があります。
加害者の社内での立場
セクハラ加害者が高い地位や権限を持つ立場にある場合、その立場を悪用してセクハラが行われたと評価されやすく、悪質性が高いため、慰謝料が高額になる傾向があります。
特に、社長や役員など経営層によるセクハラは、従業員が拒否すること自体が難しく、抵抗すれば不利益につながるおそれもあるため、高額な慰謝料が認められるケースが多く見られます。
退職を余儀なくされた
セクハラ被害が原因で働き続けることが難しくなり、最終的に退職を余儀なくされた場合は、精神的苦痛が大きく評価されるため、慰謝料が高額になる傾向があります。
退職に至った場合は慰謝料に加え逸失利益を、退職までは至らなかったものの、セクハラの影響で働けない期間が生じた場合は休業損害を請求できる可能性があります。
逸失利益・・・セクハラがなければ通常どおり勤務を続け、得られていたはずの収入
休業損害・・・セクハラ被害の影響で仕事を休まざるを得なくなり、その期間に発生した減収分
どちらのケースでも、セクハラ行為と退職や休業との因果関係が認められることが重要な判断要素となります。
精神疾患を発症した
セクハラ被害によって受けた心の傷がとても大きく、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症した場合は、セクハラ被害の深刻さが評価され、慰謝料が高額になる可能性があります。
さらに、治療に必要となった医療費についても損害として請求できます。
精神疾患の発症を理由に慰謝料を請求する際には、被害状況を裏付ける証拠が重要です。医師の診断書や医療費の領収書、通院記録などをそろえることで、セクハラ行為との因果関係を立証しやすくなります。
セクハラ被害でのうつ病発症については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
加害者の事後の反省や謝罪等がなかった
加害者が一切謝罪せず、事実を否認したり、被害者へ責任転嫁するような態度を取った場合、行為の悪質性が強く認定されやすくなります。
その結果、被害者が受けた精神的負担がより大きいと判断され、慰謝料が増額されるでしょう。
また、反省の欠如は再発防止への意識が乏しいと評価され、被害者が感じる不安や恐怖が長期化する可能性が高く、こうした事情も、精神的苦痛を拡大させた要因として考慮されます。
このように、加害者が誠意ある対応を取らないケースでは、被害の深刻さが一層重く受け止められ、高額な慰謝料が認められる場合があります。
会社がセクハラ行為を認識していた
会社がセクハラの事実を把握していながら、適切な対応や処分をせずに放置していた場合、会社に対して使用者責任を追及できる可能性があり、慰謝料は高額になり得ます。
さらに、セクハラが発生した状況と業務との関連性が強いほど、会社側の責任は重くなり、請求できる慰謝料の金額も高くなりやすいでしょう。
セクハラを会社が対応してくれないことについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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セクハラ被害で慰謝料を請求するには「証拠」が重要
セクハラ被害で慰謝料を請求する際は、被害を裏付ける証拠が欠かせません。証拠が不十分だと、交渉や裁判でセクハラの事実を認めてもらえず、適正な慰謝料が得られない可能性があります。
特に、少額訴訟や労働審判、通常訴訟など裁判所を通じた手続きでは、証拠の有無が結果を大きく左右します。
立証責任は被害者側にあるため、どのような証拠を集めるかが重要です。実際に慰謝料請求で役立つ証拠には、以下のようなものが挙げられます。
- セクハラ行為を撮影した写真データや動画データ
- セクハラ発言やセクハラ行為をしたことを認める音声データ
- セクハラ発言やセクハラ行為をしたことを認めるメールやLINEなどのやりとり
- セクハラの内容・日時・場所などを詳細に記載した日記やメモ
- セクハラ行為を受けているところを目撃した第三者の証言
- セクハラが原因で心身の健康が損なわれて病院に通院していることがわかる医師の診断書、通院記録
- 会社や警察などに相談した事実がわかる相談記録
セクハラの証拠になるものや証拠がない場合の対処法については、下記の各ページで解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラの慰謝料を適正額で獲得するなら弁護士に相談
セクハラ被害で適正な慰謝料を得たい場合は、弁護士への相談が大きな助けになります。セクハラ被害の慰謝料請求を弁護士に依頼する主なメリットは次のとおりです。
-
必要な証拠の種類・収集手順を的確に示してくれる
有効な証拠は何か、どのように確保するべきかを具体的に示してくれるため、適正な慰謝料を請求できる可能性が高まります。
-
裁判例を踏まえた相場の主張ができる
弁護士は判例や過去の解決例を基に“客観的な根拠”を提示できるため、不当な提示額を拒否しやすくなります。
-
加害者・会社との交渉を代理してくれる
被害者が直接相手とやり取りする必要がなくなり、精神的負担が大幅に軽減されます。また、弁護士が介入することで相手が真摯に対応するケースも多く見られます。
弁護士に依頼した場合の費用相場は?
セクハラ被害の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、相談料、着手金、成功報酬、日当、実費などの弁護士費用がかかります。
弁護士費用の相場は下表でまとめていますが、事務所によっては、無料相談や着手金不要の完全報酬制を採用しているところもあります。
弁護士費用は安い金額ではありませんが、加害者や会社を相手にご自身だけで対応するのは、大きな負担となり、交渉力や法律知識が求められる場面も多くあります。
ご自身の希望に適う結果を目指すのであれば、弁護士に相談・依頼して進めることをおすすめします。
セクハラ被害での弁護士費用については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラの慰謝料を請求する方法と流れ
セクハラの慰謝料を請求する際の主な流れは、次のとおりです。
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内容証明郵便を送付する
内容証明郵便は、日本郵便がどのような内容の郵便を送ったのか証明してくれるサービスです。
請求した事実の裏付けとなるほか、こちらの本気度が伝わり、相手が応じる可能性が高まります。 -
交渉を行う
内容証明郵便送付後、相手から何らかの反応があれば交渉をはじめます。
ただし、被害者の請求どおりに支払われるケースは稀で、減額や拒否を示されることも少なくありません。そのため、正当な慰謝料額を支払ってもらうように粘り強く交渉します。 -
少額訴訟や労働審判を申し立てる
交渉で解決しない場合は、少額訴訟や労働審判といった簡易な裁判所の手続きを検討します。
基本的に少額訴訟は1回の期日、労働審判は3回以内の期日で終結するため、早期解決が期待できます。 -
裁判を提起する
交渉や労働審判等でも解決しない場合には、最終的に裁判を提起します。裁判では、証拠に基づきセクハラを立証できれば、慰謝料の支払いが命じられ、判判決に従わない場合は強制執行により支払いを実現できます。
セクハラの慰謝料を請求する方法と流れについては、下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
セクハラ被害の慰謝料獲得のために、弁護士が寄り添いながらサポートいたします。
セクハラ被害による慰謝料は30万~300万円程度とされ、行為の悪質性や被害状況によってはさらに高額となる場合があります。
ご自身のケースで慰謝料を請求できるのか、どの程度の金額が見込めるのかは、弁護士へご相談ください。
私たち弁護士法人ALGは、被害の内容や経緯を詳しく伺い、法的知識と豊富な経験を踏まえて、想定される慰謝料額や進め方を丁寧にご説明します。
あわせて、請求の手続きや具体的な流れ、有利に進めるためのポイントについてもアドバイスいたします。
セクハラ被害を受けても、誰にも相談できず泣き寝入りしてしまう方は少なくありません。
被害回復のため、そして再発防止のためにも、適切な慰謝料請求による責任追及が重要です。まずはお気軽にご相談ください。
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監修 : 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
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