コラム

コラム

更新日: 2026年5月14日

【タイ労務】タイの休日・休暇制度|ルールや注意点を詳しく解説

監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長

タイにおける休日・休暇のルールは、日本の労働基準法とは考え方や制度内容が大きく異なります。

現地の法令を正しく理解せず、日本の制度と同様の労務管理を行うと、思わぬ法的リスクや労使トラブルを招くことになるでしょう。

本稿では、週休日や祝祭日、さらにはタイ特有の病気休暇や出家休暇といった休暇制度など、労務管理に必須の休日、休暇について具体的に解説していきます。

タイの労働法と休日

タイの労働者保護法(LPA)では、主に以下の3種類の休日が定められています。

会社は法令を遵守し、これらの休日を適切に付与しなければなりません。各休日の定義や運用ルールを正しく理解することは、適切な労務管理に必要不可欠といえます。

  • 週休日
  • 祝祭日
  • 年次有給休暇

週休日

タイでは、会社は従業員に対し、1週間に1日以上の週休日を与えるという原則があります。この際、週休日と週休日の間隔は6日以内に設定する必要があります。

日系企業を含む多くの会社では、土日の週休2日制を採用していますが、工場を操業している会社では週休1日制を採用しているところもまだ多くあります。

賃金の支払いに関しては、月給制の場合は週休日も有給扱いとなりますが、日給制および出来高制の従業員については、原則として週休日は無給でよいとされています。

また、ホテル業、運送業、飲食店、森林作業といった業種については、業務の性質上、週ごとに休みを固定することが難しいため、従業員との事前合意があれば週休日の累積や繰り延べが可能です。

ただし、その場合であっても、週休日と週休日の間は4週間以内にしなければならず、休日の間隔を無制限に広げることはできません。

祝祭日

タイには日本の「祝日法」に相当する法律が存在せず、法定されている休日は、毎年5月1日の「全国労働者の日(メーデー)」のみとなっています。そのため、その他の祝祭日については、会社が独自に設定する必要があります。

具体的には、メーデーを含む年間13日以上の休日を祝祭日として定め、あらかじめ従業員に周知しなければなりません。

一般的には、政府が発表する官公庁の休日に準じて設定したり、宗教等の慣習を考慮した祝祭日を設定する会社が多いでしょう。

なお、祝祭日が週休日(日曜日など)と重なった場合には、翌労働日を振替休日として付与する義務がありますので、適切な管理が必要です。

年次有給休暇

タイの労働者保護法上、会社は1年以上継続勤務した従業員に対し、年6日以上の年次有給休暇を付与する義務があります。

具体的な付与日数については、この法定最低ライン(6日)を下回らない範囲で、労使間の合意によって決定されます。

日本の労働基準法とは異なり、タイの法律では勤続年数に応じて一律に付与日数を増加させる義務はありません。しかし、他社と差別化を図る手段として、勤続年数に応じて段階的に日数を増やしている会社もあります。

また、勤続1年未満の従業員に対しては法律上、有給休暇の付与は義務とされていません。

しかし、優秀な人材の定着などを目的として、「2ヶ月の勤務ごとに1日」といった形式で、入社初年度から有給休暇を付与する運用も増えています。

未消化分の繰り越し

1年間で消化しきれなかった有給休暇については、労働法上は繰り越し不要とされていますが、実務上は労使協議に基づき、翌年以降へ繰り越して合算するケースも多くみられます。

繰り越ししない場合は、未消化分を消滅させることはできず、原則として休日労働手当に相当する賃金での買い取りが推奨されます。トラブル防止のため、有給休暇の未消化分に関する清算ルールは明確にしておきましょう。

退職時の買い取り

従業員の退職時に未消化の年次有給休暇が残っている場合、その有給が「退職年度に付与されたもの」か「繰り越されたもの」かによって、法律上の買い取り義務が異なります。

退職年度の未消化分

原則として自主退職や懲戒解雇の場合、会社に買い取りの義務はありません。ただし、普通解雇の場合には、当年度の付与日数に対する未消化分を買い取る義務が生じます。

繰り越しにより蓄積された未消化分

労使合意に基づき繰り越された未消化分については、従業員の既得権利として扱われるため、自己都合退職か解雇かを問わず、退職時にそのすべてを買い取らなければなりません。

退職時に未消化の有給休暇の取扱いを誤るとトラブルに発展するおそれがあるため、就業規則に規定するなど適切な管理体制が必要です。

なお、法定以上の繰り越しや買取を認める場合についても、同様に就業規則等で明確にしておきましょう。

タイの休暇制度

タイの労働者保護法では、労働者の権利として「法定休暇」が定められています。このなかには有給扱いにしなければならない休暇もあるため、正確な知識が求められます。

そのほか、福利厚生の一環として出家休暇や慶弔休暇といった独自の休暇制度を導入する会社もあります。

タイの主な法定休暇

  • 病気休暇
  • 避妊手術休暇(不妊手術休暇)
  • 用事休暇
  • 兵役休暇
  • 研修・技能開発休暇
  • 出産休暇(2025年の法改正により期間等が拡充)
  • 出家休暇

病気休暇

従業員が病気や負傷により労務提供が困難な場合、タイの労働者保護法では病気休暇を取得できるとされています。また、病気休暇のうち年間30日間までは有給としなければなりません。

会社が医師の診断書の提出を求めることができるのは、原則として3日間以上連続して休む場合に限られます。1〜2日程度の短期間の欠勤では、診断書がないことを理由に病気休暇の申請を拒否することはできません。

この制度を悪用し、仮病で休暇を取得するケースも散見されます。虚偽申請が判明した場合の処分内容を就業規則に具体的に規定し、不正利用を抑止する体制を整えておきましょう。

避妊手術休暇

従業員が避妊手術を受ける場合、医師が診断書において必要と認めた期間については、避妊手術休暇(不妊手術休暇)を取得することができます。

避妊手術休暇は、医師が必要と判断した期間については、すべてを有給として処理しなければなりません。病気休暇(年間30日まで有給)とは別枠の権利であるため、適切に管理しましょう。

用事休暇

用事休暇は、2019年の法改正により、すべての従業員に認められた比較的新しい休暇の権利です。具体的には、私的な用事であっても、年間3日間の休暇が有給で取得できるというものです。

用事休暇の対象となる「用事」に法律上の詳細な規定はありませんが、役所での手続き、子供の学校行事、家族の介護等、個人的な事情が対象に含まれると考えられます。

取得事由を会社が決めることは可能ですが、極端な制限は認められないでしょう。

兵役休暇

兵役休暇とは、従業員が軍の演習や訓練のために召集された場合に取得できる法定休暇です。

兵役休暇は年間60日を上限として、有給休暇としなければなりません。

兵役休暇は長期の兵役ではなく、一時的な召集や訓練を想定した制度です。そのため、60日以降の期間については無給でよく、会社によっては従業員と合意退職とするケースもみられます。

研修・技能開発休暇

研修・技能開発休暇とは、従業員が研修や技能の向上、能力開発等のために取得できる休暇です。

研修・技能開発休暇は原則として無給で差し支えありませんが、18歳未満の労働者については、年間30日を上限として有給扱いにする義務がありますので、注意が必要です。

出産休暇

出産休暇は、日本の産前産後休暇に相当する法定休暇です。女性従業員は、1回の妊娠につき最大120日間の休暇を取得する権利があります(2025年12月の法改により延長)。この120日間には、土日などの週休日や祝祭日も含まれます。

この休暇は出産時だけでなく、妊娠中の検査のために取得することも認められています。

期間のうち最初の60日間については、会社に賃金全額を支払う義務があり(2025年12月の法改正により延長)、残りの期間については、社会保険基金から給付される仕組みです。

なお、タイには日本のような育児休業制度は存在せず、出産休暇が終われば復職となります。

また、女性従業員は新生児が合併症のリスクを伴う身体障害を持って生まれた場合に最大15日間の賃金半額休暇の取得が認められ、配偶者の育休休暇も出産日から90日以内に最大15日間の有給休暇の取得が認められるようになりました(2025年12月の法改正)。

出家休暇

出家休暇は労働者保護法上の法定休暇ではありませんが、国民の9割以上が仏教徒であるタイでは慣習として導入している会社が数多く存在します。

タイでは男性が通過儀礼として、功徳を積むための出家を短期間行う風習があり、一般的には1~2週間程度の出家休暇を取得します。

法的な付与義務はないため、この期間を無給としても法律上の問題はありませんが、現地の宗教文化を尊重して一定期間については有給とする会社もあります。

休日・休暇に関する就業規則の規定

労働者保護法108条では、従業員が10人以上の事業所に対し、就業規則の作成を義務付けています。その中でも「休日および休日に関する規則」や「休暇に関する規則」は法定必須項目となります。

具体的には、以下のような内容を記載します。

  • 申請方法(何日前までに、誰に、どのような方法で申請するか)
  • 期間・日数(法定を上回る付与があるか、未消化分の取り扱い)
  • 有給・無給の区分(賃金支払いの有無とその範囲)
  • 必要書類(診断書や証明書の添付の要否)

タイの休日・休暇制度の制定や運用における注意点

タイの休日・休暇制度の制定や運用には、タイの社会的背景も踏まえた検討が必要です。特に以下の2点に注意しましょう。

  • 休暇申請・連絡ルールの厳格化
    タイでは、欠勤や休暇連絡をSNSで行うことが一般的です。そのため、「誰が・いつ・何日取得したか」の把握が困難となり、労務管理が煩雑化しています。SNSでの連絡だけでなく、事後に正式な申請やシステム入力を義務付けるなど、申請ルールを明確にしましょう。休暇の取得状況を適切に管理できる体制を整えることが大切です。
  • 勤怠と連動したインセンティブの設計
    タイでは労働者が休みがちという問題が生じています。出勤意欲を高めるために、無遅刻・無欠勤の従業員に対して「皆勤手当」を支給したり、ボーナスの査定に勤怠実績を組み込む等を検討しましょう。休暇は重要な権利ですが、安易な欠勤を防ぐ体制を整えることで、現場の秩序向上に繋がります。

タイの労務管理に関するお悩みは、専門家である弁護士にご相談ください。

休日・休暇制度の運用を誤ると、従業員との信頼関係が悪化するだけでなく、未払い賃金などの労使トラブルに発展するリスクがあります。

現地法制度に則った制度運用を行うことはもちろん、法改正にも注意して適切な労務管理を実施することが大切です。

しかし、現地法制度やタイ特有の慣習を踏まえた労務管理は容易ではありません。就業規則や制度運用に少しでも不安を感じられるようであれば、専門家である弁護士への相談をおすすめします。

ALGでは、タイ現地の労働法務に精通した弁護士が、貴社の状況に応じた法的アドバイスを提供いたします。就業規則の作成や改定、トラブル発生時の交渉、訴訟対応まで、幅広いサポートが可能です。

タイの労務管理に関するお悩みがあれば、ぜひ私どもにご相談ください。

お問い合わせ

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。

日本国内からのお問い合わせ

0120-529-006

タイ国内からのお問い合わせ

+662-254-5788

受付時間平日10:00〜20:00/土日祝10:00〜18:30

メール相談予約受付

執筆弁護士

弁護士法人ALG&Associates タイオフィス 所長

弁護士川村 励

プロフィールはこちら