非上場株式の売買価格はどう決まる?評価方法やポイントなど

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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非上場株式には、上場株式のように明確な市場価格が存在しません。
そのため、事業承継やM&A、第三者へ譲渡等を行う際には、妥当な売買価格を判断することが非常に困難といえます。

実際の価値から乖離した価格設定をしてしまうと、適正な取引がなされなかったり、みなし贈与等といった税務面で思わぬ負担が生じる可能性もあります。

非上場株式の売買価格を決定するには客観的に合理的な価格を設定する必要があるでしょう。

本稿では、非上場株式の主要な評価方法や、トラブルを回避するために押さえておくべきポイントを分かりやすく解説します。

非上場株式の売買価格はどう決まる?

非上場株式は証券取引所のような取引市場が存在しないため、客観的な市場価格をもちません。

そのため、非上場株式を売買する際の価格は、売り手と買い手で合意した価格になるのが原則となります。

しかし、当事者間の合意だけで自由に価格を決めてしまうのはリスクを伴います。

客観的な根拠がないまま低額、もしくは高額な価格設定をしてしまうと、適正な取引がなされないおそれや「みなし贈与」等と判断されて思わぬ課税に繋がるおそれもあるでしょう。

当事者間で非上場株式を売買する際にその価格を決定するにあたっては、それぞれの事案ごとに適切な評価方法を個別的に判断して、私法上の評価方法及び税務上の評価方法等を参考に、適正な時価を算定した上で交渉を進めることが大切です。

非上場株式の売買価格の評価方法

非上場株式の売買価格を算出する方法には大別して3つの類型があります。

いずれの方法を用いるかによって、株式の評価額が大きく変わるケースもありますので、それぞれの方法について理解しておくべきでしょう。

主な評価類型は以下のとおりです。

  • マーケット・アプローチ
  • インカム・アプローチ
  • コスト・アプローチ

マーケット・アプローチ

マーケット・アプローチとは、上場している類似会社や、過去に成立した同業他社の取引事例を参考にして株式価値を算出する手法で、継続企業であることを前提にした算定方法です。

マーケット・アプローチを用いるメリットは、実際の市場データを活用するため、比較的容易に客観的で現実的な評価が可能となる点でしょう。

第三者に対して信頼性の高い評価額になるといえます。

一方で、事業内容や規模が類似する会社が存在しない場合や取引データがない場合、他の企業とは異なる成長ステージにある場合は比較が難しく、評価対象となっている会社固有の性質を反映させられないデメリットもあります。

市場の好不況といった一時的な株価変動の影響を受けやすいという点もデメリットといえるでしょう。

主な評価方法の概要は以下の表のとおりです。

類似企業比較法 評価対象会社と事業内容・規模が似た上場企業を選定し、その株価を基に、利益や純資産などの指標から比較した倍率を用いて対象会社の株式価値を算出します。
取引事例法 過去に行われた同業他社の株式譲渡やM&A等の取引事例を基に、各種倍率を算出し、評価対象会社の株式価値を算出します。

インカム・アプローチ

インカム・アプローチとは、将来に予想される利益やキャッシュフローに着目して、その会社が今後、どの程度収益を生み出すことができるかという将来性を基に株式価値を算出する方法であり、継続企業であることを前提にした算定方法です。

インカム・アプローチのメリットは、その会社特有の成長性や収益性を株価に反映できる点にあり、市場変動があっても評価に大きく影響せず、安定した評価が可能です。

特に成長段階にあるベンチャー企業や、独自の技術やノウハウを持つ会社の評価に適しているといえるでしょう。

一方で、将来の収益を予測するのは不確実性が伴います。
割引率などの設定には評価者の主観が入りやすく、客観的な評価が難しいうえ、計算には高い専門性が必要というデメリットがあります。

主な評価方法の概要は以下の表の通りです。

DCF法 評価対象会社の事業において将来期待されるフリー・キャッシュフローを、リスクに応じた割引率で現在価値に引き直して算出する手法です。
収益還元法 評価対象会社が将来的に生み出すであろう利益を、リスクを加味した一定の還元率で割って株式価値を算出する方法です。
配当還元法 評価対象会社が行う、株主への配当金の将来予測値を基に株式価値を算出する方法です。

コスト・アプローチ

コスト・アプローチとは、会社の保有する「純資産額」に着目して価値を算出する方法です。

この手法のメリットは、貸借対照表上の資産や負債、純資産の数値をベースとするため、客観性が極めて高いことにあります。

また、具体的な財務データを用いるため、計算が比較的容易であり、かつ信頼性のある評価が可能です。

デメリットとしては、帳簿には現れないブランド力や独自の技術力といった、目に見えない無形資産や将来の収益力が株価に反映されにくい点が挙げられます。

そのため、赤字に陥り清算が必要な企業など、継続企業の前提に疑義がある会社等の株式価値評価に採用されることが多い傾向にあります。

主な評価方法の概要は以下の表のとおりです。

時価純資産法 貸借対照表に記載された資産・負債を時価で再評価し、その差額を基に株式価値を算出する方法です。
簿価純資産法 会計上の帳簿価額を基準に株式価値を算出する方法です。修正簿価純資産法と呼ばれることもあります。
清算価値法 会社を解散・清算することを前提に、全資産の売却見込額から負債や清算費用を差し引いた残額を基に株式価値を算出する方法です。

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非上場株式の売買価格を決める際のポイント

非上場株式の評価方法は1つではないため、慎重に判断する必要があります。また、評価方法を適切に活用しなければ、税務リスクを伴うおそれもあります。

売買価格を決定する際には、以下のような点に留意するとよいでしょう。

なお、私法上妥当な価格を設定したとしても、必ずしも税務上妥当であると判断されるものではない点にも注意が必要です。

  • 適正な評価方法を選択する
  • 税務リスクに注意する

適正な評価方法を選択する

非上場株式の評価において、すべての会社に合致する唯一無二の評価方法はありません。そのため、どの評価方法が最も合理的であるかを適切に判断する必要があります。

判断するには、取引のシチュエーションも踏まえて選択しなければなりません。

例えば、税務上の評価は、法律や国税庁が定める財産評価基本通達等に従うことになりますが、非上場株式を売買する場面では、財産評価基本通達に基づく国税庁方式のほか市場価値を測るDCF法や類似企業比較法等が多く用いられています。

評価するにあたっては、会社の事業状況や資本政策上の目的、比較可能な類似会社の有無といった要因も影響します。一つの方法だけに頼らず、複数の評価方法を組み合わせることも検討するとよいでしょう。

評価方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、組み合わせることによって、より客観的で納得感のある価格評価が可能になります。

税務リスクに注意する

非上場株式の譲渡価額の決定には、税務上の取扱いに注意しましょう。
非上場株式の売買では、当事者の合意価格が原則となりますが、税務上は価格の適正性が必要となります。

譲渡価額が国税庁の定める「税務上の時価」と大きく乖離する場合、税務上は時価で取引したものとして扱われます。

そのため、時価と譲渡価額の差額は「みなし贈与」や「みなし譲渡」と判断され、予期せぬ課税リスクに繋がる可能性があります。

法律や財産評価基本通達等を用いて算出した適正な時価よりも、譲渡価額が著しく低いもしくは高い場合、売り手・買い手の双方に課される税金は以下の表のとおりです。

売買の当事者である法人が発行法人であるのか、個人が会社の従業員であるのか等によって判断が異なるケースもあります。

低額譲渡もしくは高額譲渡に該当するおそれがある場合は、早めに弁護士や税理士へ相談することをおすすめします。

低額な譲渡取引となる場合
取引区分 売り手側 買い手側
個人から個人 所得税(譲渡価額-取得費等) 贈与税(適正時価-譲渡価額)
個人から法人 所得税(譲渡価額―取得費等)
※みなし譲渡課税となる場合
→所得税(適正時価額-取得費等)
法人税(適正時価額―譲渡価額)
法人から個人 法人税(適正時価額―取得費等) 所得税(適正時価額―譲渡価額)
※法人と個人との関係性により、給与所得となるか一時所得となるかが異なります。
法人から法人 法人税(適正時価額―取得費等) 法人税(適正時価額―譲渡価額)
高額な譲渡取引となる場合
取引区分 売り手側 買い手側
個人から個人 所得税(適正時価額―取得費等)
贈与税(譲渡価額―適正時価額)
※適正時価額を超える範囲は、贈与されたものとして、贈与税が課税されます。
課税なし
個人から法人 所得税(適正時価額―取得費等)
所得税(譲渡価額―適正時価額)
※適正時価額を超える範囲は、法人と個人の関係により、給与所得か一時所得として課税されます。
課税なし
※ただし適正時価額との差額は「寄附金」扱いとなり法人税負担に影響する可能性があります。
法人から個人 法人税(適正時価額―取得費等)
法人税(譲渡価額―適正時価額)
※適正時価額を超える範囲は、贈与されたものとして、法人税が課税されます。
課税なし
法人から法人 法人税(適正時価額―取得費等)
法人税(譲渡価額―適正時価額)
※適正時価額を超える範囲は、贈与されたものとして、法人税が課税されます。
課税なし
※ただし適正時価額との差額は「寄附金」扱いとなり法人税負担に影響する可能性があります。

非上場株式の売却における税金については、以下の記事で詳しく解説しています。

さらに詳しく非上場株式の売却(譲渡)にかかる税金は?

非上場株式の売買価格に関しては弁護士法人ALGにご相談ください

非上場株式の売買では、その売買価格の決定に注意しなければなりません。

上場株式のように市場価格がないため、原則として当事者の合意による価格で売買することになりますが、根拠のない価格設定は思わぬトラブルに発展するおそれがあります。

しかし、非上場株式の評価方法は幅広く高度な専門知識を要します。
また、取引内容や会社の状況によって適切な評価方法が異なるため、判断が難しいといえるでしょう。

弁護士法人ALGでは、企業法務に専門性をもつ弁護士が、状況に合わせた最適な評価方法をご提案いたします。

また、売買における価格交渉のサポートや売買契約書の作成など幅広く対応しておりますので、非上場株式の売買価格について疑問等ございましたら、ぜひ私どもへご相談ください。

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