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タイ税務サポート

更新日: 2026年6月18日

タイのVAT還付請求とは?手続き・必要書類・税務調査の注意点を解説

監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長

タイで事業を展開する企業にとって、VAT(付加価値税)の管理は、現地の税務において極めて重要な実務の一つです。

月次の集計において仕入VATが売上VATを上回った場合には、その差額について還付請求が可能です。

ただし、還付申請を行うと、高い確率で税務調査の対象となるため慎重な判断が求められます。

本稿では、タイのVAT還付請求の具体的な仕組みや申請手続き、還付請求の注意点まで分かりやすく解説します。

タイのVAT還付請求とは

タイのVAT還付請求とは、月々の集計において「仕入VAT」が「売上VAT」を上回った場合に、その差額分をタイの歳入局(税務署)から返還してもらう手続きのことです。

ここでいう仕入VATとは、企業が商品の仕入れや経費支払い、設備の購入などの際に取引先へ支払ったVATを指します。一方、売上VATとは、自社が商品販売やサービス提供を行った際に顧客から受け取るVATのことをいいます。

売上VATと仕入VATの差額がマイナスに転じた場合、企業は還付請求を行うか、もしくは翌月以降のVAT申告へ税額を繰り越して相殺するかを選択することができます。

いずれの方法を選択するかは、企業の経営状況や資金繰り、税務調査リスクなどを勘案して慎重に判断する必要があります。

VAT(付加価値税)とは

タイのVAT(付加価値税)とは、日本の消費税に相当する間接税です。タイ国内での商品販売やサービス提供、および物品の輸入など幅広い取引に対して課税されます。法律上は10%の税率ですが、現在は勅令により一律7%の税率となっています。

タイでは、年間売上が180万バーツを超える事業者になると、タイ税務当局へVATの登録を行い、毎月VATの申告および納税を行わなければならないとされています。

VATの納税額は、自社が顧客から受け取った「売上VAT」から、仕入れや経費の支払いで取引先に支払った「仕入VAT」を差し引いて算出します。

この計算によって売上VATが多ければ差額分のVATを納め、逆に仕入VATの方が多ければ、差額の還付請求や翌月への繰越が可能となる仕組みです。

VAT還付請求が発生するケース

VAT還付請求が発生する代表的なケースとして、「輸出企業」が挙げられます。

タイでは輸出取引に対するVATの税率は0%です。売上VATが発生しない一方で、国内の原材料調達などによる仕入VATは生じるため、恒常的に還付が発生しやすいビジネスモデルとなっています。

また、国内市場向けの「製造業」などでも、原材料の大量購入や外注費の支払いなどが先行する時期であれば、仕入VATが売上VATを大きく上回る場合もあります。

そのほか、タイ新規進出企業についても還付請求が発生しやすいと考えられます。

事業が軌道に乗って売上が発生するよりも前に、オフィスや工場の設立、製造設備の導入といった大規模な初期投資が先行して集中するためです。進出初期の段階では多額の還付請求が発生するケースが多々見られます。

VAT還付請求では税務調査が行われることがある

タイでは、VATの還付請求を行った場合には、原則として税務調査が実施されます。一度国庫に入った税金を戻すことになるため、非常に厳格な審査となります。

税務調査では、還付対象となる仕入取引が架空のものではなく、事業目的で発生した実在する取引であるかどうかが厳しく確認されます。

また、調査の範囲はVATの整合性だけでなく、法人税の申告内容や日々の帳簿をはじめとする他の税目の会計処理まで対象となることが一般的です。結果として、還付申請額を税務調査による追徴課税額が上回るケースもあります。

税務調査によるペナルティを防ぐには、タックスインボイスの原本管理はもちろん、契約書や領収書などの証憑書類等についても日頃より整理・保管しておくことが極めて重要となります。

タイのVAT還付請求の手続き方法

VATの還付請求に関する手続きには、主に以下の2つの方法があります。

  • VAT申告による還付申請
  • 過払い税額の還付請求

VAT申告による還付申請(PP.30)

タイでは、VAT登録事業者は毎月の取引内容をまとめたVAT申告書(PP.30)を、原則として「翌月の15日」までに歳入局へ提出する義務があります。

現在は、オンラインによる電子申告(e-Filing)の利用が一般的となっており、この場合の申告期限は翌月23日までに緩和されています。

仕入VATが売上VATを上回ってマイナスが発生した場合、VATの月次申告書上で「現金による還付」か、あるいは「翌月以降への繰り越し」のどちらかを選択できます。

「還付」を選択した場合には、税務当局による税務調査の対象となります。税務調査の過程では、タックスインボイスの原本確認や、取引の実態を証明する契約書・総勘定元帳といった追加資料の提出を細かく求められることが多いため、還付請求における実務上の大きなハードルとなっています。

過払い税額の還付請求(Kho.10)

過去のVAT申告内容に誤りがあり、税金を過剰に納付してしまった場合には、通常の月次申告書ではなく、専用の還付請求申請書である「Kho.10」を用いて還付請求を行うことができます。

月次申告による還付とは異なり、過去のVATの修正や売上・仕入税額の計算ミス、二重納付などによって意図せず過払いが発生してしまったケースにおいて、その過誤を修正して過払い分の返還を求める手続きです。

申請にあたっては、該当する月のVAT申告書の控えはもちろん、過払いの原因と正しい税額を客観的に立証するための会計帳簿や領収書、タックスインボイスなどの証憑書類の提出が求められます。

これらの書類をもとに税務当局が確認手続きを行い、内容に問題がないと認められれば、過払い分の還付が行われます。

VAT還付請求の際に必要となる書類

VATの還付請求を行うには、原則として以下の書類が必要となりますので事前に準備しておきましょう。

  • タックスインボイス
  • その他の証憑書類

タックスインボイス(Tax Invoice)

支払った仕入VATの控除や還付請求を行うには、売り手から発行された正式なタックスインボイスの原本が必要不可欠です。

タックスインボイスとは、取引が行われたことを証明する重要書類であり、その記載内容については法律で詳細に定められています。

還付請求に必要となるタックスインボイスには、以下の必要事項が一字一句正確に記載されていなければなりません。

  • 「Tax Invoice」の文言
  • 発行日時
  • 発行者の社名や住所
  • 13桁のVAT登録番号
  • 買い手の社名や住所
  • 具体的な取引内容(商品の名称、種類、区分、数量、価格)
  • 商品価格とは区分されたVAT金額

その他の証憑書類

VATの還付請求を行った際の税務調査では、取引実態を証明する各種書類の提出が細かく求められることがあります。

具体的には、取引の内容を示す「契約書」や「発注書」などの取引関連書類、実際に金銭の授受が生じていることを証する「銀行の振込記録(送金証明書)」や「通帳のコピー」といった支払記録が挙げられます。

また、日々の取引が適正に処理されているかを確認するため、会計帳簿や、月次の売上・仕入記録の提出も求められるでしょう。

これらの書類とタックスインボイスの整合性を確認するだけでなく、細かな書類ミスも含めて厳しく審査されます。

VAT還付までにかかる期間はどれくらい?

VATの還付請求は国庫から現金を返還するという性質上、必ず税務当局による厳しい審査を経る必要があり、還付金が支払われるまでには相応の時間がかかります。

仮に取引内容がシンプルで、調査が書類審査のみであったとしても、手続きの完了までには数か月程度を要することが一般的です。

もし、提出したタックスインボイスなどの証憑書類に不備が見つかったり、現場での税務調査が必要となった場合には、還付までに2年以上の長期間を要するケースもあります。

タイ進出企業がVAT還付請求をする際の注意点

タックスインボイスの管理を徹底する

タイのVATにおいては、適切なタックスインボイスがなければ還付請求は一切認められないとされています。そのため、日頃からタックスインボイスを適切に管理することが不可欠といえます。

取引開始前には、「取引先が歳入局に正式にVAT登録している事業者か」を確認することが大切です。その上で、取引の都度、タックスインボイスの原本を必ず取得し、紛失を防ぐためにも社内で適切に保管しなければなりません。

受領したインボイスの記載内容に企業の名称や住所のスペルミス、納税者番号の漏れ、税額計算の誤りなどの不備がないかは、そのつどチェックするべきでしょう。少しでも形式的な不備などがあれば、税務調査の際に還付が否認される要因となります。

還付請求と繰り越しのどちらが適切かを慎重に判断する

過払いVATの還付請求を行うことは、手元のキャッシュを増やすという大きなメリットがある一方で、タイ歳入局による税務調査の対象となるリスクを伴います。

発生した差額については、安易に還付請求を選択するのではなく、翌月以降の申告へ繰り越すべきかどうかも含めて慎重に判断するべきでしょう。

この判断にあたっては、現在の会社の資金繰り(今すぐ現金が必要か)と、税務調査にかかる時間や労力、さらには日々の会計処理状況などの税務リスクを踏まえて決断しなければなりません。

十分な売上VATが発生する見込みがあるのであれば、還付ではなく繰り越しを選ぶ方が実務上は安全といえます。

VAT制度に精通した専門家に相談する

タイのVAT制度は、日本の消費税と似た間接税ですが、インボイスの詳細な法定記載要件や還付請求に伴う税務調査の実施など、実務ルールにおいては異なる点が多々あります。

タックスインボイスの管理や記載確認といった書類要件の把握、税務調査への対応などには、タイの税法に関する専門的な知識が必要となるケースも少なくありません。

調査による追徴課税などの税務リスクを避けるためには、現地の税法や実務に精通した専門家からアドバイスを受けることが有効といえます。特に設備投資や輸出取引などによって還付請求額が大きく膨らむ場合は、申請前に専門家へ相談されることをおすすめします。

VAT還付請求に関するご不明点はALGにご相談ください

タイでビジネス展開するにおいて、VATの正しい知識や還付に伴う税務リスクへの対処は必要不可欠です。

たとえば、書類管理が不十分なまま還付申請を行えば、税務調査で思わぬ追徴課税を招く可能性もあります。VAT還付請求に疑問があれば、専門家のアドバイスを受けたほうがよいでしょう。

弁護士法人ALGでは、タイ現地法や税務実務に精通した弁護士と連携しながら、日系企業が直面しやすい現地税務・法務の課題に日本語で対応しております。

タックスインボイスの内容チェックや還付・繰越のアドバイス、税務調査を踏まえた事前準備まで、幅広いサポート体制を整えております。

VAT還付手続きやタイ税務に関する疑問・ご不安があれば、お気軽にご相談ください。

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