ニューズレター

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2024.7.30

2024年7月における法律アップデート
タイ投資委員会(BOI)による産業高度化措置(Smart and Sustainable Industry)、仮想通貨にかかる所得税の課税、タイ長期滞在ビザ(LTR ビザ)を取得していないリモートワーカーにおける所得税の取り扱い

Topic 1 最新法律アップデート

Topic 1. 最新法律アップデート。

官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。

所轄官庁 題名 通達日 適用日
1 財務省 所得税に関する歳入局通達(第67号)
主題:仏歴 2547(2004)年所得税に関して定める歳入法典に基づく勅令(第424号)並びに仏歴2547(2004年)11月23日付政府機関による福利厚生基金への寄付を対象とする所得税の免除に関する基準、手続き及び条件に関する歳入局長通達(第134号)に定める政府機関による福利厚生についての首相庁規則に基づき設立された政府機関による福利厚生基金について。
2024年6月13日 2024年1月1日
2 財務省 所得税に関する歳入局通達(第68号)
主題:仏歴 2547(2004)年所得税に関して定める歳入法典に基づく勅令(第424号)並びに仏歴 2547(2004年)11月23日付政府機関による福利厚生基金への寄付を対象とする所得税の免除に関する基準、手続き及び条件に関する歳入局長通達(第134号)に定める政府機関による福利厚生についての首相庁規則に基づいて設立された政府機関による福利厚生基金について。
2024年6月13日 2024年1月1日
3 財務省 所得税及び付加価値税の免除に関する財務省通達(第818号)
主題:公共慈善団体、医療機関及び教育機関に定める財団27番の名称を、「ウボンラチャタニ県少年及び家庭裁判所による児童及び少年援助財団」へと変更する旨の通達。
2024年5月8日 2019年12月19日
4 財務省 所得税及び付加価値税の免除に関する財務省通達(第819号)
主題:バイマイパンスック財団を、公共慈善団体、診療所及び教育機関第1027号として定める旨の通達。
2024年5月30日 2025年度より適用
5 財務省 所得税及び付加価値税の免除に関する財務省通達(第820号)
主題:ラーマ7世財団を、公共慈善団体、診療所及び教育機関第1027号として定める旨の通達。
2024年6月5日 2025年度より適用
6 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第445号)
主題:住宅の新築の対価として支払った金額に相当する所得に対する所得税免除に関する基準、手続き及び条件につい て。
2024年6月24日 2024年9月24日
7 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第446号)
主題:特別経済開発区域に事業場を有する事業に対する所得税の減免に関する基準、手続き及び条件について。
2024年6月25日 2024年9月4日
8 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第447号)
主題:ターゲット産業に従事する会社又は法人格を有する組合の雇用及び投資に対する所得税の減免に関する基準、手続き及び条件について。
2024年6月27日 2024年6月27日
9 財務省 所得税に関する歳入局長通達(第448号)
主題:特別経済開発区域のターゲット産業に従事する事業を営む会社又は法人格を有する組合の所得税免除に関する基準、手続き及び条件について
2024年6月27日 2024年1月1日
10 財務省 所得税及び付加価値税の免除に関する財務省通達(第 821号)
主題:マダムペン財団を、公共慈善団体、医療機関及び教育機関第1029号とする旨の通達。
2024年6月10日 2025年度
11 財務省 歳入局長通達(第297号)
主題:技術及びイノベーションの研究開発者名簿に、Charoen Suk Pharmaceutical Co., Ltd. Tang Kui Jab 研究センターを第762号及び True Money Co., Ltd.技術研究開発センターを第763号として追加する旨の通達
2024年7月4日 2029年9月11日
12 投資委員会(BOI) 投資委員会解説
主題:投資委員会通達第3/2567号に定める包括的拠点移動における投資奨励措置
2024年6月18日 2024年6月18日
13 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第8/2567号
主題:投資委員会通達第 8/2565 号の改正
2024年6月28日 2024年6月13日
14 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第8/2567号
主題:投資委員会通達第15/2565号に基づく太陽光発電設備の導入による再生可能エネルギーの能率向上に向けた措置の改正
2024年6月28日 2024年6月13日
15 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第9/2567号
主題:コミュニティー及び社会に向けた投資奨励措置
2024年6月28日 2024年6月13日
16 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第10/2567号
主題:投資委員会通達第19/2565号に基づく国境経済開発区域におけるターゲット産業の種類
2024年6月28日 2024年6月28日
17 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第11/2567号
主題:自動車部品産業の高度化に向けた投資奨励措置
2024年6月28日 2024年6月28日
18 投資委員会(BOI) 投資委員会通達第ソー・5/2567号
主題:投資委員会通達第9/2565号に定める奨励事業一覧の改正
2024年6月28日 2024年6月28日
19 投資委員会(BOI) 首相庁通達
主題:仏歴 2567(2024)年投資委員会の委員及び相談役の選任
2024年7月3日 2024年7月3日

Topic 2 トピックス・ニュース

1.タイ投資委員会(BOI)による産業高度化措置(Smart and Sustainable Industry)(投資委員会通達第 15/2565 号)

BOI 恩典は、新規で事業を開始する場合だけでなく、追加で機械・設備を購入する際にも、追加の税務恩典措置が付与されていますので、今回は、以下にその内容をまとめて解説いたします。

1.1 機械の更新及び自動化システムの導入による能率向上における投資奨励措置
  • 奨励恩典申請の資格
    – 機械設備の金額が100万バーツ以上であること。本奨励証書の発行日から3年以内に購入をすること。
    – 自動化システムを用いた機械の導入の場合、機械設備を使用する事業が申請時に投資委員会が定める事業に該当していること(申請企業が投資奨励事業許可を得ている必要はない)。
    – 自動化システムを伴わない機械導入の場合、機械設備を使用する事業が申請時に本措置に定める事業に該当し、且つ法人税の免税恩典の範囲に該当する事業であること(申請企業が投資奨励事業許可を得ている必要はない)。
  • 奨励恩典の範囲
    機械の更新及び自動化システムの導入は、製造又はサービスの能率向上を目的としており、現状維持のための部品、消耗品の交換は対象とはならない。
  • 恩典の内容
    – 機械の輸入に係る輸入関税の免除
    – 本件BOI奨励証書発行後、最初の収益が発生した日から3年間、投資金額の50%を上限として法人税を免除。免除の対象は、既存の事業による収益。
1.2 デジタル技術の導入における能率向上を対象とする投資奨励措置
  • 奨励恩典申請の資格
    – 能率向上における投資額は100万バーツ以上であること。本奨励証書の発行日から3年以内に購入をすること。また、能率向上を目的として導入したデジタル技術の購入及び賃借に関する証拠を提示しなければならない。
    – 本投資奨励措置に基づく恩典の申請日時点で、デジタル技術を使用する事業が投資員会により定める事業であること(申請企業が投資奨励事業許可を得ている必要はない)。
  • 奨励恩典の範囲
    デジタル技術の導入は、企業全体の能率向上に対して適用されるものであること。
  • 奨励恩典の内容
    本件BOI奨励証書発行後、最初の収益が発生した日から3年間、投資金額の50%を上限として法人税を免除。免除の対象は、既存の事業による収益。尚、デジタル技術の価値の算定は、当該技術又は関連サービスの発生源及び支出をした証憑類から勘案される。
1.3 インダストリー4.0へ向けた効率向上のための投資奨励措置
  • 奨励恩典申請の資格
    – 投資額が100万バーツ以上であり、且つ奨励証書発行日から3年以内に出資しなければならない。
    – 本奨励措置に基づく恩典申請日時点で、効率向上する事業が投資委員会により定める事業であること(申請企業が投資奨励事業許可を得ている必要はない)。
  • 投資奨励恩典の範囲
    同恩典は、デジタル技術の導入を含む機械及び自動化システムの更新で、組織全体の業務効率に効果をもたらすもののみを対象としている。但し、機械の通常整備を目的とした部品又は資材の交換は除く。
  • 奨励恩典の内容
    – 機械の輸入関税の免除
    – 本件BOI奨励証書の発行後、最初の収益が発生した日から3年間、投資金額の100%を上限として法人税を3年間免除。免除の対象は、既存の事業による収益。
    尚、デジタル技術の価値の算定は、当該技術又は関連サービスの発生源及び支出をした証憑類から勘案される。
1.4. 製造又はサービスにおける自動化システム及びロボットの導入による能率向上のための投資奨励措置。
  • 投資奨励申請の資格
    申請の対象は、申請時点で投資委員会が定めるBグループ事業であること。
    – Bグループ事業とは、機械、原材料関連のみの恩典が認められ、租税に関する恩典が享受されない事業のことである(申請企業が投資奨励事業許可を得ている必要はない)。
    – 最低出資額は100万バーツ以上であり出資期限は設けられていない。
  • 投資奨励恩典の範囲
    製造又はサービスにおける機械又はロボットの導入は、業務の一部又は全体を支援する自動化システムによって稼働する機械又は自動ロボットの据付が必須。
  • 奨励恩典の内容
    – 製造又はサービスを支援するための自動システムの導入の場合、本件BOI奨励証書の発行後、最初の収益が発生した日から3年間、投資金額の50%を上限とした法人税の免除。
    – 国内における自動化機械産業の支援に繋がる機械の導入の場合、その自動化のための投資額のうち、30%以上がタイ国内調達によるものである場合は、奨励証書の発行後、最初の収益が発生してから3年間、投資金額の100%を上限とした3年間の法人税の免除。
1.5 Bグループ事業を対象とするインダストリー4.0に向けた投資奨励恩典
  • 恩典申請の資格
    申請の対象は、申請時点で投資委員会が定めるBグループ事業であること。
    – 最低出資額は100万バーツ以上であり、出資期限は設けられていない。
  • 奨励恩典の範囲
    インダストリー4.0に向けた、自動化システム及び設備同士の接続、データ分析及び情報収集における、機械、設備及びデジタル技術への投資であること。
  • 奨励恩典の内容
    本件BOI奨励証書発行後、投資額の100%を上限とした3年間の法人税免除

2.仮想通貨にかかる所得税の課税

デジタル通貨又は仮想通貨とは、暗号化による安全性が維持されるデジタル資産の一種であり、一般通貨と同様に交換を目的としたものであるが、無形である。仮想通貨から、以下の収入が生じた場合は、課税されるものとする。

2.1.仮想通貨/デジタルトークンを他者に売却した場合:売却額のうち、投資額を超えた部分(売却益)は、歳入法典第40条(4)(i)に定める課税所得とする。同一の種類の原価計算は、先入先出法(FIFO)などの、会計基準で認められた方法によるものとする。又は、仮想通貨の種類毎に区分して原価計算する方法を選択することもできる。選択した計算方法は、その課税年度を通して適用しなければならない。

2.2.仮想通貨のマイニングの場合:取得日時点では、課税所得とはならないが、当該採掘した仮想通貨の売却、配布、移転又は交換が生じたときは、歳入法典第40条(8)に定める課税所得とされる。その際、係る費用は、必要性及び適切性に応じて控除することができる。但し、電気料金、仲介料や、勅令145号並びに勅令第11号第8条の2に基づき減価償却されるコンピューターなどの資産への資本的支出にかかる費用など、関連する証拠資料の保管及び原価計算書を作成しなければならない。

同一の種類の仮想通貨の原価計算は、先入先出法(FIFO)などの会計基準で認められた方法及び仮想通貨の種類毎に区分して計算するものとする。所得者は原価計算の方法を選択することが可能でありできるが、選択した計算方法は、当該課税年度を通して適用しなければならない。

2.3.給与又は賃金として仮想通貨を取得した場合:被雇用者の場合、歳入法典第40条(1)に定める所得とされ、請負の場合は同法典第40条(2)に定める所得とする。同一の雇用者から、給与及び賃金の双方を取得した場合、所得者は同法第40条(1)に定める所得として合算する。申告額は、取得時の受領価格又は取得日時点の信頼性をもった平均参考価格による。選択した方法は、当該課税年度を通して適用するものとする。又、給与又は賃金として仮想通貨を取得した時、その取得した価格について納税した際、その仮想通貨の売却時における所得税の計算につき、損金に算入することができる。

2.4.贈与又は報奨金として取得した場合:歳入法典第48条(8)に定める所得に該当し、取得時の受領価格又は信頼性をもった平均参考価格による。選択した方法は、当該課税年度を通して適用しなければならない。また、仮想通貨の取得時に、当該取得価格について納税をした場合は、売却時にその取得価格を所得税計算上の原価として算入することができる。

2.5.仮想通貨の保持によって発生した便益の場合
2.5.1 デジタルトークンの場合は、歳入法典第40条(4)(h)に定める所得とされ、価格は取得時の受領価格又は信頼性を持った受領日の平均参考価格を適用する。適用した方法は、当該課税年度を通して使用するものとする。又、デジタルトークンの取得時、その取得価格について納税した場合は、売却時にその取得価格を所得税計算上の原価として算入することができる。
2.5.2 仮想通貨の場合は、歳入法典第40条(8)に定める所得とされ、価格は取得時の受領価格又は信頼性を持った受領日の平均参考価格を適用する。適用した方法は、当該課税年度を通して使用するものとする。又、その仮想通貨の取得時、その取得価格について納税した場合は、売却時にその取得価格を所得税計算上の原価として算入することができる。

3.タイ長期滞在ビザ(LTRビザ)を取得していないリモートワーカーにおける所得税の取り扱い

本題では、タイの長期滞在ビザを取得していないリモートワーカーが、租税条約によって所得税が免税されるかの論点について見ていきたいと思います。

タイが外国と締約したほぼすべての租税条約では、「自由職業又は専門サービスである人的役務」を定める条項において、所得税の免除に関する基準が「給与所得」と分離して定められているが、タイ国が日本、オランダ、ブルガリア、ベルギー、マレーシア及びフィリピンなどと締結した租税条約では、「給与所得」における所得税の免除基準が「人的役務」と同一の条項に定められており、事実関係が以下の条件に準拠していれば、タイにおける個人所得税の免除が認められる。

  1. 所得の発生源である締約国に事業拠点を有していないこと。
  2. 所得が発生した締約国に事業拠点を有しておらず、且つ所得の発生源である締約国の滞在期間が、その基準となる期間を超えていないこと。
  3. 所得の発生源である締約国に事業拠点を有しておらず、且つ所得が発生した締約国の滞在期間が、その基準となる期間を超えていないこと。さらに報酬または所得が、その発生源である締約国に所在する企業、恒久的事業場によって負担されるものではないこと。
  4. 所得の発生源である締約国に事業拠点を有しておらず、且つ所得の発生源である締約国の滞在期間及び報酬の金額が、その基準となる期間を超えていないこと。
  5. 所得の発生源である締約国での滞在期間が、その基準となる期間を超えておらず、報酬が居住国の負担であり、所得の発生源である締約国における企業、恒久的事業場又は事業拠点によって負担されていないこと。
  6. 所得の発生源である締約国の滞在期間が、その基準となる期間を超えておらず、取得する報酬は基準額を超えないこと。
  7. 所得の発生源である締約国において、所得が発生する役務の提供がされていないこと。
  8. 所得の発生源である締約国の滞在期間が、その基準期間を超えておらず、当該締約国事業拠点を有していないこと、さらに報酬が、所得の発生源である締約国で納税されるべき利益から控除されていないこと。

結論として、リモートワーカーは、タイ人又は外国人であるかにかかわらず、その租税条約に定める条件に準拠していれば、タイと租税条約を締結している所得の発生源である締約国での所得税が免除される。又、当該租税条約に定める条件を満たしておらず、所得の発生源である締約国で所得税を納付しなければならない場合、所得者は、その締約国で納税した分につき、租税条約に定める基準に基づいて、タイ国内で税額控除を受けることができる。

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