2025.4.9
2025年3月における法律アップデート
歳入局命令ポー164/2568号登録事業者による国外物品販売に係るVATについて、スタートアップ事業者を対象とするスマートビザ(Smart Visa)、スマートビザ(Smart Visa)の申請のながれ、一部の恩典対象外の業種を定める投資委員会(BOI)通達、産業高度化措置(Smart and Sustinable Industry)、外国人の滞在許可に関する新規則
Topic 1 最新法律アップデート
官報に掲載された最新のビジネス関連法律は、以下の通りです。
所轄官庁 | 題名 | 通達日 | 適用日 | |
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1 | 財務省 | 歳入局命令第トーポー361/2568号 主題:歳入法典に基づく申告書提出及び納税場所について |
2025年2月3日 | 2025年3月3日~3月7日 |
2 | 財務省 | 歳入局命令第トーポー362/2568号 主題:歳入法典に基づく申告書提出及び納税場所について |
2025年2月21日 | 2025年3月4日~3月6日 |
3 | 財務省 | 歳入局命令第トーポー363/2568号 主題:歳入法典に基づく申告書提出及び納税場所について |
2025年2月24日 | 2025年3月20日~3月21日 |
4 | 財務省 | 歳入局命令第ポー164/2568号 主題:登録事業者による国外への物品販売 |
2025年2月5日 | 2025年2月5日 |
5 | 財務省 | 歳入局通達(第24号) 主題:民商法典改正法に基づく配偶者の権利、義務及び法的地位(仏歴2567(2024)年) |
2025年2月6日 | 2025年2月6日 |
6 | 財務省 | 所得税及び付加価値税に関する財務省通達(第836号) 主題:公益機関、団体、診療所及び教育機関の追加 |
2025年2月19日 | 2025年度の課税所得又は2025年2月のVAT課税標準を対象 |
7 | 財務省 | 歳入局長通達 主題:技術及びイノベーション研究開発者の追加(第303号)Fusion Solution Co.,Ltd.技術研究開発部門を、研究開発者第777号として追加。 |
2025年2月11日 | 2024年10月29日 |
8 | 財務省 | 歳入局長通達 主題:技術及びイノベーション研究開発者の追加(第304号) |
2025年3月4日 | 2025年3月4日 |
9 | 財務省 | 所得税及び付加価値税に関する財務省通達(第837号) 主題:公益機関、団体、診療所及び教育機関として、「(1039)ナレースワン大学病院財団」を追加 |
2025年2月19日 | 2025年度の課税所得又は2025年3月のVAT課税標準を対象 |
10 | 財務省 | 所得税及び付加価値税に関する財務省通達(第838号) 主題:公益機関、団体、診療所及び教育機関第318号の変更 |
2025年2月19日 | 2019年7月30日 |
11 | 財務省 | 所得税及び付加価値税に関する財務省通達(第839号) 主題:公益機関、団体、診療所及び教育機関第340号の変更 |
2025年2月19日 | 2002年9月27日 |
12 | 財務省 | 仏歴2568(2025)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第791号) 主題:持続可能な漁業管理を目的とした漁船の中止プロジェクトに基づく補償金を対処とする所得税免除措置 |
2025年2月16日 | 2025年2月18日 |
13 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ポー3/2568号 主題:有能な外国人をタイに誘致することによる経済及び投資刺激措置に基づく特別滞在許可に関する資格、基準及び条件 |
2025年2月4日 | 2025年2月4日 |
14 | 投資委員会(BOI) | 有能な外国人をタイに誘致することによる経済及び投資刺激促進委員会通達第1/2568号 主題:代理人の認証に関する基準、手続き及び条件 |
2025年2月24日 | 2025年2月24日 |
15 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ポー7/2568号 主題:洪水に影響を受けた被投資奨励者支援措置 |
2025年2月28日 | 2025年2月28日 |
16 | 投資委員会(BOI) | 2025年2月14日付投資委員会解説 主題:投資委員会通達第15/2565号に基づく省エネルギー、再生可能エネルギー又は環境負担軽減による効率の強化措置における産業高度化(Smart and Sustainable Industry)奨励恩典の申請について |
2025年2月14日 | 2025年2月14日 |
17 | 投資委員会(BOI) | 2025年2月14日付投資委員会解説 主題:太陽光発電事業における太陽光発電機器の据付を対象とする法人税免税額を算定するための投資額計算に関する指針 |
2025年2月14日 | 2025年2月14日 |
18 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ソー2/2568号 主題:投資委員会通達第9/2565号に投資奨励恩典対象業種の改正 |
2025年2月18日 | 2025年2月18日 |
19 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ポー4/2568号 主題:有能な外国人をタイに誘致することによる経済及び投資の刺激化措置に基づく特別滞在許可申請における資格認定に関する手続 |
2025年2月18日 | 2025年2月18日 |
20 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ポー5/2568号 主題:スマートビザの申請における資格、基準及び条件について |
2025年2月18日 | 2025年2月18日 |
21 | 投資委員会(BOI) | 投資委員会通達第ポー6/2568号 主題:スマートビザの申請を希望する外国人の資格認定に関する手続 |
2025年2月18日 | 2025年2月18日 |
22 | 入国管理局 | 入国管理局命令第14/2568号 主題:タイに入国する外国人の査証申請又は変更について |
2025年2月19日 | 2025年1月23日 |
23 | 入国管理局 | 入国管理局命令第12/2568号 主題:外国人に対する一時滞在許可について |
2025年2月19日 | 2025年1月23日 |
24 | 労働省 | 労働省通達 主題:2025年2月4日付閣議決定に基づくラオス及びベトナム国籍者に対する特別就労許可について |
2025年2月11日 | 2025年2月14日 |
25 | 労働省 | 労働省通達 主題:2024年9月24日付閣議決定に基づき2025年2月13日まで就労が許可されたカンボジア、ラオス、ミャンマー及びベトナム国籍者に対する特別就労許可について(第3号) |
2025年2月11日 | 2025年2月14日 |
26 | 労働省 | 仏歴2568(2025)船員としての職業斡旋のために宣伝広告に関する労働省規則(第2号) | 2025年2月25日 | 2025年2月14日 |
27 | 労働省 | 労働省通達 主題:重大な災害を受けた地域における雇用者及び被保険者の拠出金軽減に関する基準、手続き及び条件(仏歴2568(2025)年) |
2025年2月25日 | 2025年2月28日 |
28 | 労働省 | 労働省通達 主題:災害区域における雇用者及び被保険者の社会保険料申告及び納付期限の延長について |
2025年2月25日 | 2025年2月28日 |
※調査対象は、歳入局、投資委員会(BOI)、関税局、財務省、タイ工業団地公団(IEAT)、入国管理局、労働省、労働福祉保護委員会、商務省、国防省、農業・協同組合省、運輸省、天然資源・環境省、エネルギー省、工業省、内務省(ビジネス関連のみ)、タイ中銀、デジタル経済社会省を範囲としております。
Topic 2 トピックス・ニュース
1.歳入局命令ポー164/2568号登録事業者による国外物品販売に係るVATについて
本通達は、国外販売及び国外サービスの場合のVAT、特に、仕入VATの取扱いについて規定しています。ここで言う国外取引というのは、いわゆる三国間貿易を意味しています。つまり、タイへの輸入を伴わず、第三国から仕入れて第三国の購入者へ販売すると取り引きです。例えば、タイの事業者が日本から仕入れてインドの事業者へ日本から直接輸出してもらって販売する取引になります。
タイのVATは、日本を含めた他国のVATの場合もほぼ同じと思いますが、タイ国内販売及び国外サービスに対してのみ課税されることになっています。従って、国外販売や国外サービスの場合は、「輸出」としていわゆる輸出免税となるのではなく、タイのVATの適用外取引となります。これに対応して、仮にタイの事業者が、国外販売に関して行った支出に伴うVATをタイの事業者が支払ったとしても、このタイの事業者は、仕入VATを毎月の売上VATから控除することが禁止されています。
国外販売は、仕入自体もタイ国内で行わないので、タイの事業者が製品の購入した製品の支払に関して仕入VATが生じることはまずありませんが、通常のVAT課税対象となる取引と今回のようなVAT適用外取引や非課税取引の両方をタイの事業者が行っている場合には、両方の取引に寄与している事務所の経費など共通経費の支出に伴う仕入VATを毎月の売上VATからどのように控除したらいいのか、問題となります。
以前は、No.Paw.89/2542という名称で、この場合の取引については、VATに関する歳入局長布告第29号に定める方法により仕入VATを①VAT課税取引と②VAT適用外取引及び非課税取引の売上合計額に対して①の売上が占める割合に応じて、共通経費に係る仕入VATの控除が認められていました。また、この歳入局布告第29号では、この場合の①と②の売上比率について、初年度は①と②の推定値の売上割合を用い、翌年以降は前年度の実際の売上割合を用いることになっていました。そして前年度の売上でVAT課税事業の割合が90%以上なら、仕入税額の全額控除が可能でした。
もっとも、特に国外取引に関しては、税務署の担当オフィサーによっては、①②の毎月の実際の売上比率で仕入VATの控除可能額を決定するよう指導する場面もかねてより指導する場合もありました。
そこで、本通達では、②のうち国外販売や国外サービスといったVAT適用対象取引については、まず毎月の売上比率で共通経費の支出に伴う仕入VATの控除可能額を算定し、VAT非課税取引もある場合は、前述の歳入局長布告第29号に規定された方法で仕入VATの控除可能額を算定するものとされました。
計算例
- 会計年度2024年度の売上の割合:農産物の国内販売売上(VAT非課税事業)50%、農産物の輸出売上50%(輸出免税事業【0%VAT課税事業】)
- 2025年4月の売上:
- 農産物の国内販売売上(VAT非課税事業)600万バーツ
- 農産物の輸出売上(輸出免税事後湯)1,000万バーツ
- 第三国で生産された農産物を第三国の購入者に直接引渡をした売上400万バーツ2025年4月の共通経費の支出に伴う仕入VATが100万バーツあるとしたら、4月分のVAT申告において、この共通経費の支出に伴う仕入VATの控除可能額は、以下の通り方法で計算されます。
- 2024年4月のVAT適用対象外売上の割合:400万÷(600万+1000万+400万)=20%
- 2024 第三国で生産年4月の共通経費の支出に伴う仕入VAT控除可能額:(100万―100万×20%)×50%=40万
ここでいうVAT非課税取引とは、VAT免税取引、特定事業税課税取引、特定事業税免税取引を意味しております。これらは歳入法典や勅令により規定されていますので、個別の取引に関して、何がVAT非課税取引に該当するかについては、専門家にご確認されることをお勧めいたします。また、VAT適用外取引についても、弊職の経験上、輸出免税を適用している事業者もいますが、それは誤った処理となります。さらに、サービスについては、提供地や使用地により、国内VAT課税取引、輸出免税取引、VAT適用対象外取引となる場合があります。従って、個別の取引に関していずれに分類されるか、別途、専門家に確認することをお勧めいたします。
最後に、本規定は、歳入局通達というもので、歳入局オフィサーが同じ解釈で取り扱うように指示を出した、解釈通達です。従って、法律の改正ではありません。
2.スタートアップ事業者を対象とするスマートビザ(Smart Visa)
投資委員会(BOI)は、スタートアップ事業者向けの特別滞在ビザ(Smart Visa)の発給のための資格、基準及び条件を発表しました。その内容は、以下の通りです。
- (1) 旧通達の廃止
- 特別滞在ビザ(Smart Visa)の発給に関する基準及び条件を定める投資委員会通達第ポー12/2561号の廃止
- (2) Smart Visa申請権利者
- a. スタートアップ事業者:国家イノベーション事務局などの政府機関から認定された対象産業に該当する事業をタイ国内で設立していること。
- b. 配偶者及び嫡出子:事業者と同時に申請することができる。
- (3) Smart Visa申請資格
- 認定された会社の株式を25%以上保有している又は取締役に就任している。
- 個人の口座に60万バーツ以上の預金を有しており、配偶者及び子供用に追加の預金を有していること。
- 医療保険に加入しており、移民法によって入国が禁止されていないこと。
- (4) 就労する権利
- 事業者及び配偶者は、認定された事業及び外国人に対して禁止されている職業以外に就労する場合は、労働許可証の取得を要しない。
3.スマートビザ(Smart Visa)の申請のながれ(投資委員会通達第ポー6/2568号)
投資委員会(BOI)は、スマートビザの申請に関する手続きを定める通達を発布しました。
その内容の要旨は、以下の通りです。
- (1) 申請:特別滞在ビザ(Smart Visa)の申請希望者は、ビザ及び労働許可証サービスセンター(以下、「ワンストップサービスセンター」という。)(One Stop Service Center for Visa and Work Permit)に対して資格認定を申請する。申請希望者がタイ国外に在住している場合は、その国におけるタイ在外公館に対して申請する。当該申請は、在外公館を通じてワンストップサービスセンターに送られる。
- (2) 資格認定:ワンストップサービスセンターは、国家イノベーション事務局、デジタル経済振興事務局、外務省などの関連機関に対して資格認定に関する照会を行う。各機関による審査は20営業日程必要
- (3) 審査:資格認定後、申請者はワンストップサービスセンターから7営業日以内に審査結果が送られる。申請者は審査合格日から60日以内に特別滞在ビザを申請しなければならない。
- (4) 配偶者又は子供:主たる申請者と同時に申請可
- (5) 更新:期限の更新を希望する場合は、期限日より60以上前に申請しなければならない。
- (6) 現状報告:特別滞在ビザ(Smart Visa)保有者は、現状報告を毎年行わなければならない。
- (7) 審査機関:申請書類の提出が揃った日から30日以内に審査結果を出さなければならない。
- (8) 取消:特別滞在ビザ(Smart Visa)の取り消しを希望する場合、書面をもってワンストップサービスセンターに届け出なければならない。
4. 産業高度化措置(Smart and Sustainable Industry)
産業高度化措置は、既に事業を営んでいる事業者又はBグループ事業(法人税免税恩典が認められない事業)を営んでおり、新規の投資奨励の申請を希望する事業者に対して、産業高度化を目的として工業またはサービスにおける事業の効率又は強化のための投資を促進及び刺激することを目的とした措置であります。その内容は、以下の通りです。
- (1) 本奨励措置に基づく投資奨励恩典を希望する事業は、申請時において投資委員会が奨励する業種でなければならない。但し、投資委員会事務局が恩典を認めない特別な方針を有する業種の場合はこの限りではない。
- (2) 既に投資奨励措置を受けている事業は、法人税免税恩典に期間が終了した又は法人税目税が認められない業種である場合において、本措置に基づく投資奨励恩典を受けることができる。但し、投資委員会事務局が恩典を認めない特別な方針を有する業種の場合はこの限りではない。
投資奨励を受けられる事業の範囲
既存の事業 (投資奨励恩典を受けているかを問わない) |
Bグループ事業(法人税免税恩典が認められない事業)を対象とした投資奨励恩典をに対して投資奨励を申請する新規事業 |
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条件
- (1) 土地及び運転資金を除く投資規模が、百万バーツ以上であること。但し、中小企業(SMEs)の事業者の場合は、土地及び運転資金を除く投資規模が50万バーツ以上であること。
- (2) 中小企業(SMEs)に該当する事業は、以下の基準を満たさなければならない。
- 1.1 タイ国籍を有する個人が登録資本金の51%以上を占める株式を保有しており、且つ取締役人数のうちの過半数がタイ国籍者でなければならない。
- 1.2 申請者は、投資奨励措置が享受された又はされていない事業の収入が、投資奨励事業から最初の収入が生じた日から3年間、年収500万バーツを超えてはならない。
恩典
- (1) 効率の強化又は事業の高度化のための機械/設備の輸入に係る関税の免除
- (2) 土地又は運転資金を除く効率向上又は事業強化のための投資額の50%の額により、3年間法人税免除。
但し、事業において更新又は導入する機械、自動化システム又はロボットの総額のうち、30%以上を、タイ国内の機械、自動化システムに接続又は支援する機械である場合は、土地及び運転資金を除く投資額の100%による法人税免税が3年間免除される。 - (3) 法人税の免税期間は、奨励証書の受取後に収入が生じた日から3年間とし、奨励証書の発行日から3年間以内に行わなければならない。
5. 外国人の滞在許可に関する新規則
入国管理局は、外国人の滞在許可の基準を現在の状況に合わせるために新たに入国管理局命令を発布しました。同命令は、2025年1月23日から適用されます。
同命令の内容は、以下の通りです。
- (1) 滞在許可の審査
外国人がタイ国に滞在すべき理由がある場合、入国管理局は1回につき1年以内の滞在を許可する。 - (2) 滞在許可のための資格を有しない場合。
- 滞在許可の終了日から7日以内に出国しなければならない。
- 滞在許可の期限が切れている場合、過料を命ずるものとする。
- (3) 滞在許可の終了
- タイ滞在が、許可された滞在理由に準じない場合。
- 滞在資格を満たさなくなった場合。
上記は、旧命令から変更はございません。
同命令で変更があった点は、改正された結婚平等法令に準拠するために「配偶者」の定義が変更された点です。