自己破産の7つのデメリット|影響やよくある誤解を弁護士が解説
自己破産というと、ネガティブなイメージを抱かれている方も多いのではないでしょうか。
自己破産では借金がゼロになるという最大のメリットがある反面、高額な財産は手放すことになるなどデメリットが多く、ご家族にも影響が及ぶ可能性もあります。
そのため、債務整理の方法のなかでも最終手段と言われていますが、だからといって過剰に不安を感じる必要はありません。
この記事では、自己破産に不安や疑問を感じている方に向けて、自己破産のデメリットを中心に、自己破産による影響や誤解されがちなポイントについて分かりやすく解説していきたいと思います。
目次
自己破産の7つのデメリット
自己破産は、「借金の返済が免除される」という大きなメリットがある代わりに、次のようなデメリットがあります。
- ブラックリストに載る
- 官報に掲載される
- 職業や資格が制限される
- 財産が処分される
- 保証人が一括請求を受ける
- 郵便物が破産管財人に転送される
- 転居・海外旅行など移動に制限がかかる
自己破産で借金をなくして、前向きな人生を再スタートさせるためにも、デメリットについて正しく知っておきましょう。
①ブラックリストに載る
自己破産をすると、債務整理をしたことが事故情報として信用情報機関に5~10年程度登録されます。
いわゆるブラックリストに載るという状態で、この間は新たな借入れやクレジットカードの利用などが制限されます。
ブラックリストに載ることで生じる影響
- ローンやキャッシングなど、新たな借入れが難しくなる
- クレジットカードの作成・利用ができなくなる
- 賃貸契約の審査が通りにくくなる
- 携帯電話やスマートフォンが分割払いで購入できなくなる
- 子供の奨学金など、家族・知人の保証人になれなくなる
ブラックリストに載る期間
| 信用情報機関 | 登録される主な信用情報 | ブラックリストに載る期間 |
|---|---|---|
| JICC | 消費者金融系 | 免責確定日から5年 |
| CIC | クレジットカードや消費者ローン | 破産手続開始決定日から5年 |
| KSC | 銀行系のローン | 破産手続開始決定日から7年 |
②官報に掲載される
自己破産をすると、官報に自己破産の事実と氏名・住所などが掲載されます。
官報とは?
官報とは、裁判所での決定事項や、国会・皇室に関する情報を国民に周知するために、国が発行する広報誌のことです。
自己破産では、破産手続開始決定と免責許可決定のタイミングで、計2回官報に掲載されます。
この官報は誰でも閲覧することができますが、金融業者や税務署などの一部の業種・職種の人を除き、日常的に官報を確認している人はほとんどいないので、官報から自己破産したことがバレる可能性は低いといえます。
③職業や資格が制限される
自己破産では手続きが完了するまでの間、次のような職業に就けなくなります。
- 弁護士・司法書士・弁理士・税理士・公認会計士などの士業
- 公証人・公正取引委員会・教育委員会などの一部の公務員
- 警備員
- 生命保険の募集人
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 古物商 など
これらの職業や資格の制限は、自己破産の手続きが終わると解除(復権)されます。
ただし、会社役員や人事官など一部の職業では自己破産によって失職や罷免されることがあります。
④財産が処分される
自己破産では、生活に必要な最低限の財産を除き、高価な財産は処分されて、債権者への返済に充てられます。
「自己破産の処分対象となる財産」と、「自己破産しても残せる財産」は次のとおりです。
自己破産の処分対象となる財産の一例
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金
- 不動産
- 20万円以上の価値がある資産
(自動車、生命保険の解約返戻金、有価証券、貴金属など)
自己破産しても残せる財産の一例
- 99万円以下の現金
- 価値が20万円以下の資産
- 衣服、家具、家電などの生活必需品(差押禁止動産)
- 給料、退職金の4分の3(差押禁止債権)
- 年金、生活保護給付金、児童手当(差押禁止債権)
- 破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
⑤保証人が一括請求を受ける
保証人の付いた債務がある場合、自己破産をすると保証人が一括請求を受けることになります。
自己破産をすると主債務者(破産者)の債務は免責されますが、その効力は保証人には及ばず、債務の支払義務は保証人に移ります。
そのため債権者は、主債務者へ請求できなくなった残債を、保証人に対して一括請求します。
通常、保証人には分割返済が認められないため、保証人が一括返済できない場合には、保証人自身も債務整理が必要になるケースもあります。
「自己破産をすると保証人が借金を肩代わりすることになる」
このことを念頭に置いて、自己破産を検討している場合には、保証人への影響についても弁護士に相談してみましょう。
⑥郵便物が破産管財人に転送される
管財事件の場合、破産者宛の郵便物が破産管財人に転送されます。
管財事件とは?
自己破産には「管財事件」と「同時廃止」の2種類の手続きがあります。
管財事件とは、破産者に一定の財産がある場合や、ギャンブル・浪費による借金がある場合に、裁判所が選任した破産管財人が財産を調査・処分し、債権者へ配当するという手続きです。
管財事件では、破産管財人が破産者の財産を正確に把握する必要があり、申告漏れや隠し財産を調査する目的で、郵便物の内容が確認されます。
転送の対象となるのは破産者宛の郵便物のみで、ご家族宛の郵便物や宅配便が扱うメール便などは対象に含まれません。
自己破産の手続きが完了すれば転送は解除されますし、手続き中に転送された郵便物は、破産管財人によって内容が確認された後で返却してもらえます。
⑦転居・海外旅行など移動に制限がかかる
管財事件の場合、転居や海外旅行などで手続き中に居住地を離れる際には、事前に裁判所の許可が必要になります。
管財事件では、破産管財人が破産者の財産を管理し、裁判所によって破産を認めるかどうかの調査が行われます。
そのため、手続き中は裁判所や破産管財人といつでも連絡が取れるようにしておくため移動が制限されるのです。
自己破産の手続きが完了した後は、裁判所の許可がなくても自由に居住地を離れることができますが、手続き中に居住地を離れる場合には、事前に裁判所の許可を得なければなりません。
転居や旅行など、居住地を離れるにあたって正当な理由があり、裁判所や破産管財人からの連絡に支障をきたさないと判断されれば、裁判所により移動が許可される可能性が高いです。
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自己破産が家族に及ぼすデメリット
自己破産をするとご家族にどのような影響があるのか、不安に感じていらっしゃる方も多いと思います。
自己破産によるデメリットは債務者本人だけでなく、次に挙げるようにご家族へ影響するものもありますので、詳しくみていきましょう。
- 破産者名義の持ち家や車は失う
- 家族が保証人の場合は返済義務が生じる
- 家族カードが使えなくなる
- 保険が解約されてしまう
破産者名義の持ち家や車は失う
自己破産をすると、破産者名義の持ち家や車は失う可能性があります。
基本的に自己破産では、20万円以上の価値がある資産は、回収・処分されて債権者への返済に充てられます。
そのため、ご家族で同居している持ち家や、ご家族で共有している車が破産者名義の場合、自己破産をすると手放す必要があるのです。
引っ越しや、場合によっては子どもの転校を強いられたり、日常生活で使用していた車がなくなって不便を強いられたりして、ご家族にさまざまな影響が及びます。
家族が保証人の場合は返済義務が生じる
ご家族が保証人になっている場合、自己破産によって免責された破産者の返済義務は保証人に移るので、保証人であるご家族が借金を肩代わりすることになります。
住宅ローンなどの銀行からの借入れや奨学金は、ご家族が保証人になっているケースが多いです。
自己破産した後、残債は債権者から一括請求された場合に、保証人になっているご家族が支払えないと、ご家族も債務整理が必要になる可能性があります。
そのため、ご家族が保証人となっているケースでは、主債務者の自己破産と同時に、ご家族の債務整理についても弁護士に相談して、アドバイスを受けることをおすすめします。
家族カードが使えなくなる
自己破産した債務者本人のクレジットカードは解約されてしまうため、家族カードも使えなくなります。
家族カードで公共料金の支払いをしている場合は支払方法の変更手続きが必要になりますし、ポイントやマイルといった付帯サービスも失効してしまうので注意しましょう。
なお、自己破産したことはご家族の信用情報には影響しません。
そのため破産者のご家族名義のクレジットカードであれば、そのまま利用することも、新たに契約して作成することも可能です。
保険が解約されてしまう
解約返戻金が20万円を超える保険は、自己破産するにあたって解約することになります。
解約返戻金は保険を解約したときに払い戻されるお金ですが、この解約返戻金が20万円を超える場合は、自己破産の手続きにおいて預貯金などと同様に財産とみなされ、保険は解約されて債権者への返済に充てられます。
「万が一のことがあったときに」
「子どもの将来のために」
と、ご家族のために加入している保険も、自己破産することで解約せざるを得なくなって、結果的にご家族に影響が及ぶ可能性もあるので注意しましょう。
自己破産による解約の対象となる保険は、次のとおりです。
- 学資保険
- 生命保険
- 養老保険
- 傷害保険
- 自動車保険
- 火災保険
- 地震保険
- 損害賠償保険 など
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自己破産のデメリットに関するよくある誤解
年金が受け取れなくなる?
「自己破産をすると年金が受け取れなくなる」というのは誤解です。
国民年金・厚生年金・障害年金・遺族年金などの公的年金や企業年金の受給権は、法律によって差し押さえが禁止されているので、自己破産をしても年金を受け取ることができます。
年金受給者が自己破産しても支給が止まることもありませんし、将来受け取れるはずの年金が受給できなくなったり、減額されることもありません。
ただし、次のような例外もありますので注意しましょう。
| すでに受け取った年金 | すでに受け取った公的年金や企業年金は、「年金」として区分されず、現金や預貯金と同等に扱われ、自己破産すると回収・処分の対象となり、債権者への返済に充てられます。 |
|---|---|
| 個人年金 | 個人年金は、個人が任意で加入し、積み立てを行う私的年金です。 この個人年金は、破産者個人の財産とみなされるため、自己破産すると回収・処分の対象となって解約されるリスクがあります。 |
選挙権がなくなる?
「自己破産をすると選挙権がなくなる」というのは誤解です。
選挙権は、18歳以上の日本国民に与えられた、憲法によって補償された権利です。
自己破産をしても選挙権はなくなりませんので、手続き中も手続き後も、変わらず選挙で投票できます。
戸籍や住民票に自己破産したことが載る?
「戸籍や住民票に自己破産したことが記載される」というのは誤解です。
自己破産をしても、その事実は戸籍や住民票には記載されません。
そのため、戸籍や住民票を通して自己破産したことが周囲に知られる心配はありません。
生活保護が受給できない?
「自己破産をすると生活保護が受給できない」というのは誤解です。
そもそも生活保護は、生活に困っている人に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。
そのため、生活をするために必要であれば、自己破産をしても生活保護を受給することができますし、受給中であっても自己破産をすることが可能です。
なお、生活保護受給者が自己破産する場合には、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで費用を立て替えてもらうことができます。
生活保護受給者が法テラスを利用して自己破産をすると、ケースによっては法テラスの立替え費用の返済が猶予・免除されることがあります。
ローンを一生組めなくなる?
「自己破産をすると一生ローンが組めなくなる」というのは誤解です。
自己破産によってローンが組めなくなるのは、信用情報機関に事故情報が登録されている=ブラックリストに載っている期間のみです。
自己破産では、5~10年程度で事故情報が削除されるので、その後は住宅ローンや自動車ローンなどの審査も通りやすくなり、新たにローンを組むことも可能になります。
自己破産を理由に勤務先から解雇される?
「自己破産を理由に勤務先から解雇される」というのは誤解です。
自己破産を理由に解雇することは、法律で禁じられています。
会社から借金をしていたり、会社の人が官報をチェックしていたりして、自己破産したことを会社に知られても、そのことを理由に解雇される心配はありません。
ただし、自己破産によって職業・資格に制限を受ける場合には、勤務先との雇用契約上、解雇事由に該当して解雇される可能性がありますので注意しましょう。
自己破産以外の解決方法もある
債務整理の方法は自己破産以外にも、個人再生や任意整理といった方法があります。
いずれも、自己破産とは異なって借金の支払義務がなくなるわけではありませんが、自己破産よりもデメリットが少ないという特徴があります。
| 個人再生 |
個人再生とは、裁判所を介して借金を大幅に減額してもらう方法です。 元金ごと1/5~1/10程度まで大幅に減額してもらった借金の残りを、3~5年で分割返済していきます。 個人再生が向いている人
|
|---|---|
| 任意整理 |
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉して借金の減額を目指す方法です。 将来利息や遅延損害金をカットしてもらい、元金を3~5年で分割返済していきます。 任意整理が向いている人
|
自己破産が向いていない・自己破産は避けたいという方は、個人再生や任意整理を検討することになります。
自己破産のデメリットがご不安な場合は、債務整理に詳しい弁護士にご相談ください
自己破産は、ほかの債務整理の方法と比較してデメリットが多いことから、ネガティブなイメージを抱き、誤った情報によって過剰に不安を感じている方もいらっしゃいます。
ですが、自己破産するとどのようなデメリットがあって、ご家族にどう影響するのか、正しい知識を身につけておくことで、自己破産によって前向きな人生を再スタートさせることも可能です。
自己破産のデメリットやご家族への影響が不安で、一歩が踏み出せずにいる方は、一度弁護士法人ALGまでご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
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