個人再生ができない10のケースとは?対処法などを弁護士が解説
個人再生は、自己破産のように財産を手放す必要がないので、「住宅などの財産を残したまま借金を大幅に減らしたい」という方におすすめの方法です。
ただし、借金を抱えていれば誰でも個人再生ができるわけではありません。
条件を満たしておらず申立てが棄却されたり、再生計画案が不認可となったりして、個人再生ができないケースもあります。
本記事では、個人再生ができないケースについて、失敗しないためのポイントにも触れながら詳しく解説していきます。
個人再生ができないケース
個人再生とは、裁判所を通じて借金の減額を図る手続きですが、以下のケースに該当する場合は「認可されない」「認可されてもメリットがない」などのリスクがあります。
これは、一定の要件を満たさない場合や手続きに不備がある場合は、個人再生が認められないことがあるためです。
- 安定した収入がない
- 借金の総額が5000万円を超えている
- 借金の総額が100万円未満である
- 多額の財産を所有している
- 債権者の反対があった(小規模個人再生)
- 手続き費用が準備できない
- 特定の債権者にだけ返済した
- 再生計画案の提出期限を守らない
- 個人再生手続き中に新たな借り入れをする
- 履行テストで返済を滞らせた
一つでも該当する場合は、個人再生ではなく他の債務整理の方法を検討した方がよい可能性もあります。
手続きを検討する際は、事前に弁護士へ相談し、自分の状況で利用可能かどうかを確認しておくことが重要です。
①安定した収入がない
安定した収入がないと、そもそも個人再生を利用することができません。
個人再生は手続き後も借金の返済義務が残るので、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることという開始要件があります。
正社員かどうかは問われませんが、雇用や自営による安定した収入が必要です。
再生計画通りに最後まで支払いを継続できる見込みがなければ、個人再生を申し立てても裁判所は認めてくれません。
なお、個人再生には“小規模個人再生”と“給与所得者等再生”という2種類の手続きがあります。
給与所得者等再生では、「安定した収入があること」に加え、「その変動幅が小さいこと」という特有の要件があります。
具体的には、「過去2年間の年収に20%以上の変動があるかどうか」を目安に判断されるのが一般的です。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違いについては、以下のページをご覧ください。
さらに詳しく個人再生の2つの種類②借金の総額が5000万円を超えている
住宅ローンや税金を除いた借金の総額が5000万円を超えている場合、個人再生は利用できません。
個人再生は、法人向けの民事再生を個人向けに手続きの一部を簡略化したものです。
そのため、個人が現実的な返済計画を立てられる金額の上限として、民事再生法で「債務総額が5000万円以下であること」という要件が定められています。
借金の総額が5000万円を超える場合、個人再生の申立て自体が認められませんが、すべての法人・個人を対象とする通常の民事再生により借金を減らすことは可能です。
ただし、民事再生は手続きがより複雑で費用も高額になるため、実際には自己破産を選択するケースが多いです。
③借金の総額が100万円未満である
借金の総額が100万円未満の場合、個人再生をしても借金を減らすことができません。
個人再生では、借金の総額に応じた最低弁済額が定められており、住宅ローンを除く借金の総額が100万円未満の場合はその金額が最低弁済額となります。
つまり、100万円未満の借金は減額されることなく、全額返済する必要があるので、個人再生をするメリットがありません。
最低弁済額を上回る金額でなければ、再生計画案を作成・提出しても認可されず、手続きは失敗となってしまいます。
そのため、借金の総額が100万円未満のケースでは、任意整理で解決を図ることが多いです。
最低弁済額の詳細については、以下のページもご参考ください。
さらに詳しく個人再生の最低弁済額とは?④多額の財産を所有している
多額の財産を所有していると、手続き後の弁済額が高額になり、個人再生ができなくなる可能性があります。
個人再生の場合、自己破産のように財産を処分する必要はありません。
しかし、借金の総額に基づいて決まる「最低弁済額」を、所有している財産の総額(=清算価値)が上回る場合は注意が必要です。
この場合、清算価値が最低弁済額となり、月々の弁済額に対して収入が足りず、裁判所の認可が得られない可能性があります。
仮に裁判所の認可が得られても、途中で支払いが難しくなり、個人再生が失敗するおそれもあります。
なお、所有する財産が多くても財産隠しはやめましょう。
個人再生では、自身が所有するすべての財産を正確に申告する必要があり、裁判所による財産調査も行われます。
財産隠しが発覚すると、再生計画が不認可となったり、認可された再生計画が取り消されて一括返済を求められたりするなど、さまざまなリスクが生じるため注意が必要です。
個人再生と財産の関係については、次のページで詳しく解説しています。ご参考ください。
さらに詳しく個人再生で財産は残せる?⑤債権者の反対があった(小規模個人再生)
小規模個人再生の場合、債権者の過半数から反対(不同意)があると、認可が得られず個人再生ができません。
小規模個人再生では、債権者に対して「再生計画案に同意するかどうか」を問う書面決議が行われます。
書面決議で「債権者の半数以上」または「債権額の半数を超える債権者」からの反対(不同意)があった場合、再生計画は不認可となり、個人再生手続きが廃止されます。
債権者から不同意の書面が出されるケースはそれほど多くありませんが、特定の債権者が債権額の多数を占める場合などは注意が必要です。
⑥手続き費用が準備できない
裁判所へ支払う手続き費用が準備できないと、個人再生の申立てが棄却されてしまいます。
個人再生を申し立てる際は、裁判所費用として2~3万円程度が必要になります。
- 申立手数料(収入印紙):1万円程度
- 予納金(官報公告料):1万3000円程度
- 郵便切手代:2000~5000円程度
これら裁判所費用のほか、個人再生の手続きを弁護士に依頼する場合、弁護士費用として50万~60万円程度が追加で必要です。
個人再生をご自身で行う場合、弁護士費用を準備する必要はありません。
しかし、多くのケースで個人再生手続きをサポート・監督する“個人再生委員”が選任され、その報酬として15万~25万円程度の費用がかかります。
費用を準備できないと、手続きを進められず申立てが棄却となり、個人再生はできなくなります。
個人再生にかかる費用について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
さらに詳しく個人再生にかかる費用の相場は?⑦特定の債権者にだけ返済した
手続き中に特定の債権者だけに返済すると、個人再生ができなくなるおそれがあります。
個人再生では、すべての債権者に平等に対応する必要があり、手続き中に特定の債権者だけに返済する行為(=偏頗(へんぱ)弁済)は禁止されているためです。
手続き中に特定の債権者を優先して返済すると、偏頗弁済した分だけ最低弁済額が増える可能性があり、場合によっては個人再生の申立てが棄却されるおそれもあります。
親族や友人・知人からの借り入れは、迷惑をかけないよう優先的に返済したいお気持ちもあるでしょう。
しかし、偏頗弁済は個人再生が失敗する原因となり得るため、十分に注意が必要です。
⑧再生計画案の提出期限を守らない
裁判所から指定された期限までに再生計画案を提出できないと、手続きが廃止されるおそれがあります。
再生計画案とは?
再生計画案とは、「個人再生手続きで減額してもらった借金を具体的にどのように返済していくのか」という借金の返済計画を定めた書面のことです。
個人再生を行う債務者自身が作成し、裁判所の認可を得ることで個人再生が成立します。
再生計画案は、民事再生法で定められた基準に従って適切な内容で作成する必要があり、作成や資料収集に時間がかかることも少なくありません。
しかし、提出期限から1日でも遅れてしまうと手続きが廃止され、個人再生ができなくなるおそれがあります。
また、提出した再生計画案の追完を指示された場合も同様で、補正した再生計画案の提出が1日でも遅れると手続きが廃止となる可能性があります。
再生計画案の作成や補正は、余裕をもって対応しましょう。
⑨個人再生手続き中に新たな借り入れをする
手続き中に新たな借り入れをすると、個人再生の申立てが棄却される可能性があります。
具体的には、個人再生の手続きを弁護士に依頼し、債権者へ受任通知が送付された後に新たな借り入れをするなどのケースです。
この場合、支払不能な状態にあるにもかかわらず、返済できるかのように装ってお金を借りた詐欺的な行為とみなされ、申立てが棄却されるおそれがあります。
その結果、個人再生ができなくなる可能性があるため注意が必要です。
最悪の場合は詐欺罪に問われるおそれもあるので、個人再生の手続きを弁護士に依頼した後は、クレジットカードの使用を含め、新たな借り入れをしないよう注意しましょう。
⑩履行テストで返済を滞らせた
個人再生の履行テストで返済を滞らせると、再生計画が認可されない可能性があります。
履行テストとは
減額された借金を、今後3〜5年間にわたって計画どおりに返済し続ける能力があるかを確認するためのテストです。
裁判所は、手続き期間中に一定額の積立てを行わせることで、返済能力を確認します。
履行テストで返済ができない場合、裁判所から「十分な返済能力がない」「再生計画案が現実的ではない」などと判断されるおそれがあります。
再生計画を認めてもらうためには、滞りなく返済を続けることが重要です。
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個人再生ができない場合の対処法
個人再生ができない場合の対処法は、以下のとおりです。
- 安定した収入を確保する
- 費用を積み立てる
- 他の債務整理を検討する
- 再度個人再生を申し立てる
状況に応じて適切な対処法は異なるため、自分に合った方法を選択することが重要です。
判断に迷う場合は、専門家である弁護士に相談し、具体的な方針を検討することが望ましいでしょう。
安定した収入を確保する
個人再生では継続的に返済を行う必要があるため、安定した収入を得ることで利用できるようになる可能性があります。
安定した収入があると、「再生計画に基づく返済の継続が可能である」と評価されやすくなります。
そのため、以下のような対策を講じるとよいでしょう。
- パートやアルバイトではなく、正社員や契約社員として就職する
- 個人事業主で収入が不安定な場合は、副業を始める など
継続的な収入が見込める環境を整えることが、手続きの可否に大きく影響します。
費用を積み立てる
個人再生は裁判所を通して手続きを行うため、「裁判所費用」や「個人再生委員の報酬」「弁護士費用」がかかります。
申立て費用や弁護士費用が準備できない場合には、積立てを行うことが重要です。
弁護士事務所によっては、分割払いに応じてもらえる可能性もあります。
弁護士に手続きを依頼すると、受任通知が送られた時点で債権者からの督促や取り立てが一時的に止まります。
そのため、これまで返済に充てていたお金を積立てに回すことができるでしょう。
手続き開始後は資金を確保しやすくなるため、費用の準備が難しい場合でも対応できる可能性があります。
とはいえ、事前に費用の見通しを確認しておくことも重要です。
他の債務整理を検討する
個人再生ができない場合、任意整理や自己破産など他の債務整理の方法も検討しましょう。
任意整理とは?
任意整理とは、裁判所を介さずに直接債権者と交渉し、借金返済の負担軽減を図る方法です。
借金の元金までは減額されませんが、手続きの対象とする借金を選べるほか、周囲に知られにくいという特徴があります。
任意整理が向いているケース
- 借金の総額が100万円以下の場合
- 多額の財産を所有している場合
- 親族や友人からの借り入れを優先的に返済したい場合 など
自己破産とは?
自己破産とは、裁判所に破産を申し立てて「免責」の許可を得ることで、借金の支払義務を免除してもらう方法です。
高額な財産は手放すことになりますが、免責の許可が得られれば基本的にすべての借金がゼロになります(税金などの非免責債権を除く)。
自己破産が向いているケース
- 借金の総額が5000万円を超える場合
- 安定した収入が見込めない場合 など
任意整理と自己破産は、それぞれにメリット・デメリットがあるため、慎重に検討する必要があります。
詳しくは次のページをご参考ください。
さらに詳しく任意整理のメリット・デメリット さらに詳しく自己破産のデメリットとは?再度個人再生を申し立てる
個人再生に失敗した場合でも、必要な条件を満たすように準備をすれば、再度申立てを行うことができます。
書類の不備があった場合や、提出期限が間に合わなかったことが原因で失敗した場合などに有効です。
再度申立てを行う際には、前回の失敗原因を分析し、同じ問題が生じないように対策を講じましょう。
「次は失敗したくない」という方は、弁護士に相談し、必要な準備や手続きについて確認しておくと安心です。
弁護士であれば、個人再生の手続きを適切かつスムーズに進めることができます。
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個人再生の手続きで失敗しないためのポイント
個人再生の手続きに不備があったり、不誠実な対応をとったりすると、個人再生が失敗してしまう可能性があります。
そこで、個人再生の手続きで失敗しないための3つのポイントを紹介していきます。
- 個人再生の条件や棄却・却下事由を確認する
- 無理のない返済計画案を作る
- 弁護士へ相談する
個人再生の条件や棄却・却下事由を確認する
個人再生手続きの準備をする際は、「借金の総額が5000万円を超えていないか」、「再生計画に従って返済できる程度の安定した収入はあるか」など、個人再生の条件を満たしているかを確認しておきましょう。
あわせて、申立ての棄却・却下事由もあらかじめ確認しておくことで、失敗するリスクを防げます。
個人再生の申立て棄却事由
- 費用の予納がないとき
- 破産手続きが進行していて、破産手続きによることが債権者に利益があると考えられたとき
- 再生計画案の作成・可決・認可の見込みがないことが明らかであるとき
- 不当な目的で申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき
個人再生の条件を満たしていない場合や、申立て棄却事由に当てはまる場合、個人再生ができない可能性が高いです。
そのため、任意整理または自己破産を検討する必要があります。
無理のない再生計画案を作る
個人再生で失敗しないためには、無理のない再生計画案を作ることも大切です。
実現不可能な返済計画は、個人再生が失敗する原因になります。
ご自身の収支をきちんと把握したうえで、最低弁済額や返済期間なども考慮し、無理のない現実的な返済計画案を作成して完済を目指すことが大切です。
個人再生の再生計画案は、民事再生法で定められた基準に従い、適切な内容で作成する必要があります。
無理に自分だけで作成しようとせず、弁護士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
弁護士へ相談する
個人再生を検討している場合、債務整理手続きに詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、個人再生ができるかどうかのアドバイスだけでなく、代理人として個人再生手続きをサポートすることも可能です。
弁護士ができること
- 借金や収入などの状況から、適切な借金問題の解決方法を提案できる
- ご依頼者様に代わって裁判所や債権者とのやりとりが行える
- 申立てに必要な書類の準備や、再生計画案の作成のサポートができる
- 弁護士が受任通知を送付することで、借金の取り立てを一時的にストップできる など
個人再生ができないケースに関するよくある質問
個人再生の失敗・不認可となる確率はどれくらいですか?
個人再生が失敗する確率は約8%前後とされているため、成功率は約90%以上となります。
裁判所が不認可としたり、途中で打ち切られたりする確率は、およそ全体の1割未満です。
個人再生は、事前に条件を把握し、適切に手続きを行えば、成功する可能性の高い債務整理の方法といえるでしょう。
なお、個人再生が失敗する要因には、以下のようなことが挙げられます。
- 返済能力がないと判断された
- 履行テストが失敗した
- 書類の不備や期限切れがあった
- 財産隠しや虚偽の申告があった
- 債権者から反対された など
個人再生で失敗したらどうなりますか?
個人再生で失敗すると、減額効果が得られず元の返済義務が残るだけでなく、以下のような不利益を負う可能性があります。
- 遅延損害金が付加された額を一括請求される
- 弁護士費用や予納金など、手続きにかかった費用が返ってこない など
返済を一時的に停止していた場合、元本に遅延損害金が上乗せされた状態で請求を受ける可能性があります。
一括請求に応じることができない場合には、債権者から強制執行(差押え)を受ける可能性もあるため注意が必要です。
このような事態を避けるためにも、事前に十分な準備を行うことが重要です。
専業主婦(主夫)やパートだと個人再生はできませんか?
はい、完全な無収入の専業主婦(主夫)の場合は、個人再生を利用することができません。
個人再生は、減額された借金を原則として3~5年で継続して返済していく必要があるため、ご本人に安定した収入があることが必須条件となります。
配偶者の収入のみでは、原則として要件を満たすことができないため注意が必要です。
一方、パートやアルバイトで継続的に安定した収入を得られる場合には、個人再生を利用できる可能性があります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
個人再生はできないと諦める前に弁護士へご相談ください
個人再生をすると、借金を元金ごと大幅に減らせますが、さまざまな条件をクリアする必要があります。
「個人再生の条件を満たしていないかもしれない」
「申立て棄却事由に該当するかもしれない」
など、個人再生はできないと諦める前に、債務整理に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
弁護士であれば、個人再生ができるかどうかの判断はもちろん、ご相談者様の状況に合った借金問題の解決策を提案することができます。
個人再生の手続きに不安がある場合は、弁護士が代理人となって各手続きをサポートすることも可能です。
個人再生を検討されている方や、個人再生が失敗してしまった方は、一度弁護士法人ALGまでお気軽にご相談ください。
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監修:弁護士 谷川 聖治 / 弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 所長
監修:弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士131名、スタッフ240名を擁し(※2026年4月1日時点)、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの国内外13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。
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