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タイ税務サポート
更新日: 2026年7月9日
BOIの起算日とは?免税開始時期とタイ進出企業が注意すべきポイント
監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長タイ進出の日系企業の多くが活用しているBOI(タイ投資委員会)制度。
その中でも「起算日」は法人税の免税期間が開始する重要な日付ですが、その仕組みや確定のタイミングは複雑といえます。
起算日の理解が曖昧なままだと、BOIの恩典をうまく活用できない可能性もあります。
本稿では、BOIの起算日の基礎知識や具体的な決まり方、さらに進出企業が不測の税務リスクを回避するために注意すべきポイントを分かりやすく解説します。
BOIの「起算日」とは
BOIの「起算日」とは、法人税の免税や減税といった税制優遇措置の適用期間を計算する上で基準となる日付のことです。
BOI制度では、事業のグループ(業種や技術の重要度など)に応じて3年から13年の法人税免税期間が個別に設定されています。
この免税期間は起算日が正式に確定した瞬間から、カウントダウンが開始される仕組みです。起算日の認識を誤ると、恩典期間を無駄にしてしまうなど事業計画に大きな影響を与える可能性もあるため、極めて重要な日付として管理しておく必要があります。
タイにおけるBOI会社の設立については、以下の記事で詳しく解説しています。
起算日が重要になる理由
早い段階で起算日を迎えてしまうと、事業が軌道に乗って十分な利益が出る前にBOIの免税期間が終了してしまい、恩典を十分に活かせない可能性が考えられます。
一方、起算日をある程度遅らせることができれば、黒字化のタイミングと税制優遇期間が合致し、より有効に恩典を活用できる可能性が高まるでしょう。
起算日の日付は、投資回収計画や設備投資、売上発生のタイミングといった事業計画・税務計画そのものに直結する重要な要素です。大きな節税効果に繋げるには、立ち上げの赤字期間と収益予測のバランスを考慮したうえで起算日を設定できるとよいでしょう。
BOIの起算日はいつから始まるのか?
原則として最初の収益認識日から起算
BOIの税制優遇における免税期間は、一般的に「BOI事業からの最初の収益認識日」を起算日としてスタートします。
従って、たんに工場が完成した日や機械を設置した日を指すのではありません。具体的には、BOI事業売上を請求書を最初に発行した日が、操業開始の客観的な判断基準とされています。
最初の請求書発行日と同時に免税期間も開始するため、最初の取引日には細心の注意を払う必要があります。
起算日とBOI証書発行日の違い
BOIの認可が下りた日と、免税の基準となる起算日は必ずしも一致しません。
認可を受けた後、企業は機械の輸入や設置、工場の建設、人員の確保など、実際の事業を動かすための様々な準備期間を経ることになります。
こうした立ち上げに向けた準備期間中はまだ事業がスタートしていないため、BOIの免税期間が消費されることはありません。
準備期間を終えてBOI事業に関する最初の請求書を発行した日が正式な起算日となり、免税期間のスタートとなります。認可日を免税の開始日だと誤認して事業計画を組まないように注意しましょう。
起算日が遅れるケース
タイ進出では、様々な要因で起算日が当初の予定より遅れるケースが多々あります。
具体的な要因としては、工場の建設工事の遅れや、輸入する製造設備の導入・セットアップの遅延などが挙げられます。
また、タイ現地の省庁から取得すべき各種許認可(工場操業許可や環境影響評価など)の手続きが難航し、認可取得が遅れることも起算日が遅滞する要因の1つです。
そのほか、市場の急激な変化によって、経営判断として事業開始を延期する場合もあるでしょう。
但し、操業開始のための準備期間は、BOI証書日から原則3年以内となっていますので、3年以内に準備が完了しない場合は、BOIに期限の延長を申請する必要があるのでご注意ください。
手続することを怠れば、最悪の場合、恩典が取消となるおそれもあります。
BOIの起算日に関する実務上の注意点
操業開始通知手続き
BOI証書日から原則3年以内に、BOI企業はBOI申請時に約束した工場設備などへの投資を完了する義務を負っています。この義務を「操業開始通知手続」と言います。この手続きを怠ると最悪の場合、BOI恩典が取り消されるおそれがあります。
もっとも、この操業開始通知手続きと法人税免税恩典の起算日は必ずしも連動していません。ある程度、工場などの投資が完了していれば、フル操業でなくてもBOI事業を開始することができ、先にBOI事業の売上に関する請求書が発行されて、起算日が先行している場合が非常に多いです。
後日、行う操業開始通知手続きにより、最終的に免税の範囲が確定するので、先行して法人税免税恩典を行使している場合、操業開始通知手続きで確定した免税の範囲を超えて法人税免税恩典を行使してしまう可能性があります。
そうなると、過去に免税を受けた法人税申告の修正など多大な影響を及ぼすリスクがありますので、法人税免税恩典の行使や、操業開始通知手続きは、慎重に行う必要があります。
投資スケジュールと起算日のタイミングを調整する
免税の起算日は、機械設備の導入や事業開始のタイミングとも密接に関係しています。
もし初期投資や生産ラインが不完全な状態で事業を開始してしまうと、BOI事業と認められる法人税免税恩典範囲外として後日追徴課税のリスクが生じる可能性があります。そうなると、想定外の税負担が生じることになり、経営にも影響を及ぼすことになりかねません。
また、想定していた需要が少なくBOI事業のために投資した費用を上回る売上が得られないために十分な利益が出る前に貴重な免税期間を終えてしますことがあります。
そのため、工場建設の進捗や主要な設備導入のスケジュールは正確に把握し、いつ事業を開始するべきかを慎重に検討しましょう。
最大限の免税効果を得るには、フル生産に近い形で黒字化が見込めるタイミングと起算日が合致するよう、操業計画を緻密に立てることが重要となります。
日本本社との取引開始時期を調整する
タイ現地法人の操業開始に伴い、日本本社との間で部品の供給や製品の販売といったグループ内取引が本格的に始動するケースは多々あります。
起算日を迎えたあとは実際に売上や利益が発生し始めるため、適切な税務管理を行える体制を構築しておかなければなりません。
特にグループ会社間取引においては、取引価格の設定や利益配分が適正であるかという「移転価格税制」の視点も必要となってくるでしょう。
BOIによる免税メリットを最大限に活かしつつ、タイ当局から不当な利益移転とみなされるリスクを防ぐためにも、日本本社とタイ法人の間でいつから、どのような条件で取引を開始するのか、時期と契約内容を事前に整理しておくことが大切です。
起算日の誤認による税務リスクに注意する
企業側が起算日を誤って認識していると、本来の法人税免税期間を間違えてカウントしてしまうおそれがあります。
まだ免税期間内だと思い込んでいた期間が、実はすでに課税期間に入っていた場合には、意図しない申告漏れが生じてしまいます。
免税期間終了後の税務申告にも狂いが生じるため、タイの歳入局から過少申告とみなされ、多額の追徴課税などのペナルティを科されるリスクもあります。
起算日の判断は取引の実態に応じて複雑になる場合が多いため、少しでも迷う場合は、事前にタイの税務に精通した弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
BOI起算日に関するQ&A
BOIの起算日は変更できますか?
原則として一度確定した起算日を企業側で自由に変更することはできません。ただし、会計士による監査を受ける前であれば、まだ対策を講じることができるかもしれません。
実際に変更する必要がある場合は、BOIに詳しい弁護士や公認会計士に相談されることをおすすめします。
まだ利益が出ていなくてもBOIの免税期間は始まりますか?
はい、始まります。BOIの免税期間の開始は、利益が出ているか否かにかかわらず、実際に事業が操業開始(最初の売上発生)した時点で始まります。
そのため、赤字が続いている状態であっても免税期間は経過していきます。なお、免税期間中の損失については免税期間後5年間繰り越せるといった優遇措置もあります。
BOI企業の税務に関するご相談はALGにお任せください
タイ投資委員会(BOI)の恩典を最大限に活用し、法人税免税のメリットを確実に享受するためには、「起算日」の正確な把握と戦略的な事業計画が必須となります。
操業開始のタイミングや日本本社との取引開始時期の調整など、起算日の設定には実務を踏まえた判断が必要です。タイ特有の法規制や税務リスクへの深い理解が求められますので、専門家と相談した上で設定した方がよいでしょう。
弁護士法人ALGでは、タイの企業法務や現地特有の労務・税務に精通した弁護士が、貴社の税務における管理体制の構築から運用まで幅広くサポートいたします。
起算日の見極めやBOIへの報告手続き、移転価格税制への対応など、実務上の疑問や不安がございましたら、ぜひ私どもへご相談ください。
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