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タイ税務サポート

更新日: 2026年6月5日

タイ法人税の基礎知識|税率・申告・優遇制度をわかりやすく解説

監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長

タイへの進出を検討、あるいは既に事業を展開している日本企業にとって、最も基本となる税目が「法人税」です。

タイの税制では、日本とは異なるルールや実務慣行が数多く存在するため、これらを正しく理解したうえで実務にあたる必要があります。

対処を誤れば税務調査の対象になり、多額の加算税が課されるなど様々なリスクを抱えることにもなりかねません。

本稿では、タイの法人税に関する計算方法や優遇制度、申告実務まで幅広く解説していきます。

タイの法人税

タイの法人税とは、タイ国内で事業を行う法人に課される税金です。タイの法令に基づき設立された法人だけでなく、外国の法令に基づき設立された日本企業の法人も課税対象となる場合があります。

なお、売上の生じない駐在員事務所であっても法人税の申告手続は必要とされています。

税率

タイの法人税率は原則として一律20%です。日本における法人税の実効税率が約30%前後であることを踏まえると、タイでの税負担は比較的低く設定されているといえるでしょう。

なお、資本金500万バーツ以下かつ収益が3,000万バーツ以下という条件を満たす中小企業に対しては、以下の累進課税が適用されます。

  • 300,000バーツ以下:非課税(0%)
  • 300,001バーツ~3,000,000バーツ:15%
  • 3,000,001バーツ以上:20%

この軽減税率により、進出初期の段階や小規模な事業運営の場合には、日本国内に比べると税負担を大きく抑制できる仕組みとなっています。

課税対象者

タイの法人税は、タイ国内で事業活動を行う法人が対象となります。

タイの現地法人はもちろん、外国企業の支店やパートナーシップ、ジョイントベンチャー(合弁会社)、さらには営利事業を行う社団法人や財団法人も納税義務を負います。

駐在員事務所は、原則として収益活動が禁止されているため法人税自体は発生しませんが、給与支払等に伴う源泉徴収義務と税務申告義務はあります。収益がなければ申告不要というわけではありませんので、注意しましょう。

タイ法人税の計算方法

タイの法人税額は、会計上の利益から費用を控除するなど税務調整を行った「課税所得」をもとに算出します。具体的な計算式は以下の通りです。

  • 課税所得 = 会計上の利益 + 損金不算入額 - 損金算入額(優遇控除・繰越欠損金等)
  • 法人税額 = 課税所得 × 20%(標準税率)

損金不算入もしくは損金算入等の調整が生じるため、会計上の利益と課税所得は必ずしも一致しません。

例えば、減価償却費、限度額を超える交際費、領収書のない取引などは、税法上の要件に従い「損金不算入」として税務調整する必要があります。

この調整を誤ると正確な法人税額が算出できず、後の税務調査で追徴課税を受けるリスクがあるため、不明であれば専門家へ相談しましょう。

税務調整の具体例

税務調整の主だったものとして、「減価償却」「繰越欠損金」「損金不算入」が挙げられます。日本とは異なるルールがありますので必ず確認しておきましょう。

減価償却

タイでは、減価償却は日割りで計算したうえで税法上の償却率を用います。日本のような少額資産の一括償却特例は原則として存在しないため、たとえ少額であっても減価償却しなければなりません。

繰越欠損金

繰越欠損金は、発生した翌年度から5年間にわたって繰り越しすることが可能です。なお、BOI(投資委員会)の恩典により法人税が免除されている企業は、免税期間中に生じた欠損金を、免税期間終了後から5年間繰り越せるという特例もあります。

損金不算入

以下の費用については、損金算入が認められません。

  • 引当金(貸倒引当金や退職給付引当金)
  • 限度額を超える交際費
  • 私的な費用
  • 罰金や延滞税
  • タイの事業に無関係な費用
  • 虚偽または架空の費用 など

タイ法人税に関する優遇制度

タイにおける法人税の優遇には以下のような制度があります。

  • 投資委員会(BOI)
  • 特別経済開発区(SEZ)

それぞれの制度を正しく理解し、事業計画に応じて活用しましょう。

投資委員会(BOI)

タイ投資委員会(BOI)は、タイの経済発展を目的に、様々な投資案件の認可や投資インセンティブの付与を行う政府機関です。

BOIの認可を取得した事業は最長8年(業種によっては最大13年)法人税が免除され、期間終了後もさらに5年間、法人税が50%軽減される措置があります。

また、機械設備や原材料の輸入税の免除、外資100%での会社設立の許可といった多数のメリットがあります。

BOI認可の対象となる主な事業には、製造業やハイテク産業、物流業、研究開発、インフラ関連などがあります。

認可を受けるには事前申請が必須であり、認可後も投資額や事業内容、タイ人を雇用するなどの要件を厳守しなければなりません。

条件を満たさない場合は、BOI恩典が取り消されるリスクもあるため、認可後の対応も重要となります。

タイにおけるBOI会社の設立について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考ください。

タイにおけるBOI会社の設立

特別経済開発区(SEZ)

タイ政府は、近隣諸国との連携を目的とした特別経済開発区(SEZ)を指定しています。

SEZ内の特定産業に投資する企業に対しては、法人税率を通常の20%から10%に軽減する措置が10年間にわたり適用されます。

また、BOI(投資委員会)との併用により、最長8年間の法人税免除や機械類の輸入関税免除、輸送費・電気代・水道代の10年間の200%控除などの優遇措置を受けることも可能です。

SEZは主に製造業や物流、観光支援事業などが対象です。優遇を受けるには、指定地域内への拠点設置が必須であり、対象業種の事業を行っているなどの条件を満たさなければなりません。

現在、SEZは10カ所となっているため、エリアの選択についても事業との親和性を考慮するべきでしょう。

タイ法人税の申告と期限

タイの法人税は、納税者が自ら税額を計算して納める自己申告・自己納付制度を採用しています。

1事業年度につき、年度前半の実績や予測に基づく「中間申告」と、年度末の決算に基づく「確定申告」があり、計2回の申告・納税対応が必要です。

現在はオンライン申告(e-Filing)が普及しており、この場合、窓口提出より期限が数日間延長されるなどの利点もあります。

中間申告

タイでは、事業年度開始後6か月を経過した日から60日以内に中間申告と納税を行う義務があります。12月決算の企業であれば、8月末が申告期限となり、申告時には指定の申告書を使用し、窓口またはオンラインにて手続きします。

中間申告における納税額は、予想される年間収支から算出した法人税の半額です。

もし、中間申告時の予想年間収支が確定申告時の課税所得より25%以上低い予想となっていた場合は、ペナルティの対象となってしまいます。具体的には、不足法人税額の20%という加算税に加えて月1.5%の延滞税も課されます。

このようなリスクを避けるためには、中間申告時であっても実績に基づいた正確な年間予測が必要となります。

確定申告

確定申告は、各会計年度の決算日から150日以内に行う必要があります。12月末決算の企業であれば、翌年5月末(オンライン申告の場合は約8日間の延長あり)が期限です。

確定申告では、1年間の実際の課税所得に基づき最終的な法人税額を算出します。すでに中間申告や源泉徴収で納付済みの税額がある場合は、それらを差し引いた差額を納付します。

確定申告に必要となる主な書類は以下のとおりです。

  • 法人税確定申告書
  • 公認会計士による監査済みの財務諸表
  • 移転価格税のためのディスクロージャーフォーム

領収書が不適切であったり計算ミスがあれば追徴課税などにも繋がるため、正確な書類準備が不可欠です。

タイ法人税の還付請求

中間申告での前払い額や、取引時に差し引かれた源泉徴収税額の合計が、確定申告で算出された最終的な税額を上回る場合、その差額について還付請求を行うことができます。

還付を受けるには確定申告書の所定欄に還付金を明記し、税務署による審査・承認を得ます。還付は銀行振込、または翌期以降の納付税額との相殺という形で処理されることが一般的です。

ただし、タイでは還付申請を行うと、たいていの場合、税務調査が実施されます。全会計項目が対象であり、会計帳簿はもちろん領収書、請求書といった証憑類についても整備されていなければなりません。

調査で不備が発覚すれば、還付どころか追徴課税となるおそれもあります。還付請求の申請は慎重に判断しましょう。

よくある質問

タイで課税所得が赤字の場合、法人税はかかりますか?

課税所得が赤字であれば、原則として法人税は発生しません。

タイの法人税は、税務上の利益である「課税所得」に対して課される仕組みです。そのため、利益が残らず赤字となっていれば、納付すべき税額はゼロとなります。

ただし、税務申告の義務自体がなくなるわけではありません。たとえ赤字であっても、事業年度の中間申告および年度末の確定申告は通常通りに行う必要があります。

赤字だからといって申告を怠ると、無申告による罰金や延滞税の対象となるほか、将来利益が出た際に赤字(繰越欠損金)を相殺して節税する権利が認められないリスクがあります。

タイ支店と現地法人で法人税の扱いは異なりますか?

税率はいずれの形態であっても一律20%となりますが、取り扱いが異なる点があります。

現地法人が日本へ配当を送金する際は10%の源泉徴収税がかかるのに対し、タイ支店の場合は、利益送金税として送金額の10%が追加課税されます。

また、現地法人は日本本社とは別法人として扱われますが、支店は日本法人の一部とみなされます。そのため、撤退時には現地法人のほうが清算手続きに時間と費用がかかる傾向があります。

それぞれ性質が異なるため、プロジェクトの規模や事業戦略に応じて形態を検討しましょう。

日本企業がタイで法人税を支払った場合、日本との二重課税はどのように調整されますか?

日本とタイの間では、二重課税の回避と脱税防止を目的とした「日本・タイ租税条約」が締結されています。

この条約により、日本企業がタイに恒久的施設を有しないのであれば、原則としてタイで事業所得に対する法人税は課されないとされています。恒久的施設に該当するかどうかについて専門家へ確認しましょう。

また、タイ側で発生する配当・利息・ロイヤリティ等への源泉所得税についても、条約に基づき税率が軽減される措置があります。

そのほか、タイで納付した税額については、日本での確定申告時に「外国税額控除」を適用することで、日本本社の法人税額から差し引くことができます。

このような仕組みによって、同一所得に対して両国で課税される二重課税が防止されています。

タイ法人税に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください

タイの税制において重要なのは、20%という法人税率だけではありません。中小企業向けの優遇やBOIによる優遇措置など、日本企業が活用可能な制度が複合的に関連しています。

また、税務調整や中間申告時の25%ルールなどは、日本の税務慣行よりも厳しい部分もあり、タイ進出の落とし穴ともいえるでしょう。

タイで安定した経営を維持するには正確な法人税申告が必要であり、現地の税務に関する専門知識が求められます。

ALGでは、タイ現地の法制度や実務に精通した弁護士が、貴社のタイ進出における税務をサポートいたします。

現地法人もしくは支店の選択やBOI申請のアドバイス、複雑な税務調整を伴う申告書の作成代理まで、ワンストップでの対応が可能です。タイ法人税に少しでも不安があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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