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タイ税務サポート

更新日: 2026年6月12日

タイでの決算手続き|スケジュールやスムーズに進めるポイントを解説

監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長

タイに進出する日系企業にとって、決算業務は適正な財務報告や法人税申告の基礎となる重要な業務といえます。

タイ特有の税務ルールを正しく理解せずに申告漏れや手続きの遅延が発生した場合、高額なペナルティや追徴課税を科されるリスクが生じます。

本稿では、タイにおける会計年度や決算スケジュール、決算業務をスムーズに進めるためのポイント等について詳しく解説していきます。

タイにおける決算

タイにおける決算とは、会計年度の終了時に財務状況をまとめ、1回会計年度の財務諸表を作成する作業です。通常、この業務は、会社の会計記帳責任者により行われます

さらに、タイではすべての法人に「法定監査」が必須とされており、報告書類もタイ独自の会計基準(TFRS)に従う必要があるなど、日本の決算とは異なる点が多々あります。

また、決算書類が株主総会で承認を得ていなければ正式な書類として商務省や歳入局への提出できない点も、タイの税務特有といえます。

決算月は日本では3月末が多くなっていますが、タイでは12月末が一般的であり、日本との差異を意識した対応が求められます。

タイの会計年度と決算期

会計年度とは、会社の収支や財務状況を決算するための1年間の単位を指します。決算月は定款で自由に設定することが可能ですが、タイでは1月1日から12月31日を会計年度とする会社が多くなっています。

日本の親会社に合わせて3月末決算を選択することも可能ですが、3月末決算とするタイ企業は少数となっているのが現状です。なお、会計期間の変更を行う場合、歳入局の許可が必要となります。

日本とタイの会計基準の違い

タイと日本の会計では、その目的からして異なっています。日本では、会社の実態を表す財務諸表等の正確性を管理し報告することを目的としています。

一方、タイでは、法律上、財務諸表を公認会計士に監査してもらい、商務省に提出するとともに、法人税申告書に添付することが義務化されているため、財務諸表を作成することが非常に重要となっています。

また、VAT申告義務のため
そのほか、以下のような違いが挙げられます。

タイ 日本
監査・税務申告 企業規模に関わらずすべての法人に会計監査義務がある。
法人税は年2回、VATについては毎月申告が必要。
監査義務は上場企業など一定規模以上の法人に限定されている。
法人税は原則、年1回申告。
会計基準の性格 上場企業など一定の企業は、IFRS準拠のTFRS。そのほかの非上場企業等は、非公開企業向けの会計基準であるTFRS for NPAEsとなる。 日本の法律や税制を元にしたJ-GAAP。国際会計基準とは収益やのれんの処理など異なる点があるため調整が必要。
費用・損金処理 損金不算入費用については専用の勘定科目で集約 経費と損金の区別は税務調整で行う

タイの決算業務スケジュール

タイにおける決算業務は、以下のような流れで行われます。

  1. 財務諸表の作成
  2. 会計監査
  3. 定時株主総会
  4. 財務諸表の提出
  5. 確定申告・納税

財務諸表の作成

財務諸表の作成は、会計年度内に発生した売上、経費、資産・負債などの全取引を正確に集計することから始まります。これらを基に、タイの会計基準に準拠した以下の財務諸表を作成します。

  • 貸借対照表(B/S)
  • 損益計算書又は包括利益計算書(NPAEが適用される中小企業は選択可)
  • 株主持分変動計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 財務諸表の注記

実務上、非常に重要となるのが証憑(請求書・領収書など)の整理です。タイではインボイスの形式要件が非常に厳しく、不備があると書類の差し替えが必要となり、場合によっては税務申告に使えないといったリスクがあります。

そのため、決算時には単なる数字の集計に留まらず、各証憑が適切なものであるかを精査し、決算準備を進める必要があります。

会計監査

タイでは、会社の規模にかかわらず、すべての株式会社に対して外部監査が義務付けられています。日本では外部監査は上場企業等に限定されており、この点、タイの税務体制とは大きく異なります。

具体的には、免許を有する公認会計士が財務諸表を精査し、タイの会計基準に準拠して適正に作成されているかを確認します。監査人は、財務諸表の正確性を検証したうえで、「監査報告書」を発行します。

この報告書がないと、その後の株主総会での承認や税務当局への決算書類提出が受理されません。会計監査は、タイの決算において非常に重要なプロセスであるため、慎重に対応しましょう。

定時株主総会

タイでは、会社は決算日から120日以内に定時株主総会を開催しなければならないとされています。多くの会社が12月末決算としているため、多くは翌年4月末頃までが開催期間となります。

この総会では、監査済みの財務諸表や申告書等を株主に報告し、承認を得ることが目的です。

そのほか当期利益をどのように扱うか(利益準備金の積み立てや次期繰越利益の決定)といった利益処分案や配当金の決定についても、議案として決議します。

開催にあたっては、株主への招集通知の送付が一般的ですが、定款に規定があれば、現地の新聞への公告も可能です。これらの手続に不備があった場合には、書類が受理されない可能性もあるため、細心の注意を払うことが大切です。

財務諸表の提出

定時株主総会で承認を受けた後、会社は開催日から1ヶ月以内に、監査済みの財務諸表を商務省や歳入局へ提出する必要があります。提出方法は窓口以外に、e-Filingによるオンライン申請も可能です。

通常、法人税確定申告書類の提出は、事業年度末日から150日以内とされていますが、オンラインによる場合は158日以内に延長されます。なお、商務省へは株主名簿も届け出る必要があります。

この財務諸表に記載された利益額は、法人税申告における課税所得算出の基礎となる重要なデータです。提出期限を超過しないよう、綿密なスケジュールを立てて実施しましょう。

確定申告・納税

タイの法人税は、年2回の申告・納税手続きが必要です。

会計年度の途中で行う中間申告は、会計年度開始から6ヶ月経過した月の末日から2ヶ月以内に行うもので、年度末の推定利益の2分の1に対する法人税を納税します。

その後、決算日から150日以内に法人税の確定申告を行います。確定申告では、監査済みの財務諸表を添えて通期の純利益に基づき申告・納税します。

この際、過少申告や延滞があればペナルティが発生します。中間申告での予測利益が実際の確定利益と25%以上の差が生じていた場合、納税の支払い遅延とみなされ、月1.5%の延滞税が課されます。

また、税務調査で納税不足が判明した場合は20%相当の罰金が科されますので、中間申告においても厳密な予測をたてて申告することが大切です。

なお、税金を納めすぎた際は還付申告も可能ですが、専門家に相談したうえで対応しましょう。

BOI企業の監査について

タイ投資委員会(BOI)の奨励を受けている会社は、通常の法定監査に加えて、BOI独自の基準に基づく特別な監査を受ける必要があります。

これは、法人税減免などの税制優遇を受ける条件として、認可されたプロジェクトが適切に運営されているかを確認するためです。

監査では、投資実態や生産量、売上限度、さらには原材料の輸入・在庫記録がBOIの提示した条件と合致しているかを確認します。監査結果報告書は、決算日から120日以内にBOI事務局へ提出しなければなりません。

提出を怠ったり内容に不備があったりすると、法人税の優遇が受けられないばかりか、遡及的な納税を命じられるリスクもあるため、通常の決算手続以上に慎重な対応が求められます。

タイにおけるBOI会社の設立についての詳細は、以下の記事をご参考ください。

タイにおけるBOI会社の設立

タイの決算業務をスムーズに進めるためのポイント

タイにおける決算業務は日本における手続きとは異なります。業務をスムーズに進めるには以下のポイントを意識しましょう。。

  • 事前準備をしっかり行う
  • 決算書を正確に作る
  • 専門家に相談する

事前準備をしっかり行う

決算業務をスムーズに行うには、決算前の「事前準備」がポイントとなります。まずは月次処理で記録した取引が正確かを再点検し、現預金残高や債権債務の照合を済ませておきましょう。

決算時に慌てないよう、未処理の仕訳や誤記入、証憑の不足などはこの段階で修正しておくことが肝心です。

また、過去の繰越欠損金の確認も重要です。繰り越し可能な期間や金額を正確に把握しておくことで、納税予測がより正確となります。

経理担当者、外部監査人、そして日本本社との連携フローを事前に見直し、タイ特有の決算手続をスムーズに進められる体制を構築しましょう。

決算書を正確に作る

正確な決算書の作成とは、1年間の会計取引を整理し、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書等の財務諸表へ集約する重要な作業です。

これらの書類は法定監査の対象となるため、数値の根拠となる請求書や領収書、契約書などの証憑についても漏れなく整理しておくことが大切です。

決算書作成の際は、タイ会計基準に則った会計処理を意識することも重要です。日本の会計基準とは異なる点が多々あるため、違いを事前に確認し、必要に応じて修正を行っておかなければなりません。

証憑の不備や基準の誤解は、監査の遅延や税務調査での指摘に直結するため、日々の記帳段階から監査や会計基準を意識することが求められます。

専門家に相談する

タイの会計・税務は日本とは異なる独自のルールが多く、専門知識なしに処理を進めるのは非常に困難といえます。タイでは弁護士が税務業務を広く担当しており、この点も日本とは大きく異なる慣習といえるでしょう。

タイにおける税務については、専門性をもつ弁護士に相談することで、各種書類の作成から煩雑な監査対応まで一貫したサポートを受けられます。

また、社内では対応が難しい最新の税法や申告義務を漏れなく対応することが可能になります。タイにおける税務リスクを回避するには、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

タイ決算に関するQ&A

決算期を変更することは可能ですか?

決算期を任意で変更することは可能です。主な変更理由としては、日本の親会社の連結決算時期に合わせるためや、業務の繁忙期を避けたい、あるいはグループ全体の税務管理を最適化したいなどのケースが見られます。

変更にあたっては、まず株主総会で承認を得ることや、新しい会計期間も原則として12ヶ月以内に収める必要などがあります。

具体的な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 株主総会決議: 定款の会計年度に関する項目を修正する決議を行います。
  2. 登記修正: 商務省へ定款修正の登記申請を行います。
  3. 行政への届出: 歳入局に対し、決算期変更の承認申請・届出を行います。
  4. 会計帳簿の調整: 承認された新しい決算期に基づき、期首・期末の再設定を行います。

タイでの決算期変更は書類提出から承認まで数ヶ月を要する場合もあるため、余裕をもって着手することが大切です。

タイで決算を行う際に日本語の資料は使えますか?

タイの決算では、会計帳簿および証憑類はタイ語で作成・保存することが原則として義務付けられています。ただし、日本の責任者が内容把握のために英語や日本語を併記することはよくあります。

日本語の資料はあくまで社内の参考資料や、日本本社への報告用としては使用できますが、タイ行政への提出や法定監査の際には正式な書類として認められません。

日本語のみの領収書や契約書がある場合は、必要に応じてタイ語へ翻訳しておくなどの対応が必要です。

BOI企業は決算手続きが簡略化されますか?

BOI認定企業であっても、決算手続き自体が簡略化されるわけではありません。通常の企業と同様に、監査済み財務諸表の作成や、それに基づく法人税申告の手続きは適切に行う必要があります。

一部の報告書類において提出形式が緩和されるケースはありますが、むしろ税制優遇を受けるために「BOI事業」と「非BOI事業」を分ける経理処理や、専用の監査報告書の提出が求められるため、決算実務においては通常よりも工数が増える傾向にあります。

決算後に申告漏れがあった場合はどうなりますか?

決算後に申告漏れが発覚した場合は、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。速やかに修正申告書を提出し、不足税額を納付しましょう。

自主的な修正であっても、不足税額に対して月1.5%の延滞税が課されるほか、税務調査によって指摘された場合には高額な加算税が上乗せされることもあります。

万が一、申告漏れが発覚した場合には、迅速な是正がリスクを最小限に抑える鍵となるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

タイでの決算業務は専門家のサポートでスムーズに進めましょう

タイの決算業務には、日本の会計処理や手続きとは異なる点が多々あります。

すべての法人に対する監査義務や月次の税務申告など、非常に複雑な対応が求められますが、申告期限の超過や申告漏れは厳しいペナルティに繋がるため現地法を踏まえた正確な対応が必要不可欠です。

ALGでは、タイの現地法や実務に精通した弁護士が、貴社の決算業務をサポートいたします。

法的な観点に基づいた税務調整へのアドバイスはもちろん、税務当局への提出書類の精査や、万が一の税務調査への対応まで、ワンストップ対応が可能です。

タイでの決算手続きに不安がある、スムーズに進めたいなどのお悩みがあれば、ぜひ私どもへご相談ください。

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