
コラム
タイ税務サポート
更新日: 2026年7月3日
タイのVAT(付加価値税)とは?税率や申告方法など知っておくべき知識
監修弁護士 川村 励 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス 所長タイに進出する日本企業にとって、VAT(付加価値税)の申告や運用ルールの理解を避けて通ることはできません。
タイのVATは日本の消費税に相当する制度ですが、適用される税率や毎月の申告義務など、実務面では日本の消費税とは大きく異なる点があるため注意が必要です。
本稿では、VATの基本的な仕組みや適用される税率、登録事業者の基準、申告方法などについて分かりやすく解説していきます。
タイのVAT(付加価値税)とは
タイのVAT(付加価値税)は、商品の購入やサービス料などの取引に課される一般に間接税とい言われる税制で、日本の消費税に相当します。VATはタイ歳入法に基づき、タイ歳入局が管轄となります。
VATと日本の消費税では、税率や申告頻度が異なるため注意が必要です。日本の消費税が標準10%であるのに対し、タイのVATでは7%が適用されています。
また、申告義務が年単位である日本とは異なり、タイでは原則として毎月申告と納税を行わなければなりません。タイのVATには正確でスピーディーな事務処理が求められます。
VATの目的
タイにおけるVATの主な目的は、バリューチェーン全体で段階的に税金を徴収し、納税のタイミングを早期化することにあります。
この仕組は、日本の消費税と基本的に同じです。すなわち、タイのVAT制度でも、原材料の仕入れから製造、卸売、小売までの取引段階ごとに課税されています。これにより、最終消費を待たずに効率的な税収確保が可能となっています。
VATの税率と課税区分
VAT税率
タイのVAT税率は、本来10%と定められていますが、経済政策の一環として軽減措置が導入されており、現在は7%が適用税率となっています。
ただし、税率は一律ではなく、輸出取引などは「0%課税取引」、農産物や教育サービスなどは「免税」といった異なる税率区分が存在します。
取引内容によってVAT税率や仕入VATの取り扱いが異なるため、自社の取引がどの課税区分に該当するかを正しく把握することが大切です。
0%税率が適用される取引
VATは主にタイ国内で消費される取引に対して課税されるため、国外で消費される取引については税率0%と定められています。具体的には、以下のような取引が0%税率の対象取引となります。
- 商品の輸出取引
- 航空機または船舶による国際輸送サービス
- 海外向けサービス
- 保税区域関連取引
- 輸出向け原材料の販売 など
VATの0%税率の適用は、国際市場での価格抑制を可能にするため、タイの輸出競争力を高める目的があります。
VATが免除される取引
VATが免除される取引には、生活や福祉に直結する項目が多く含まれます。具体的には、以下の取引が免除の対象とされています。
- 農産物や動物、肥料、飼料、新聞・教科書などの生活必需品
- 専門職サービス(医療、会計監査、弁護士業務・法務サービスなど)
- 教育サービス
- 文化サービス
- 銀行・金融サービス
- 不動産の貸付 など
VAT免税取引と0%税率取引では、実務上の取り扱いが異なります。0%税率取引では仕入VATの控除が可能であるのに対し、免税取引の場合は仕入VATを控除することができません。
免除取引は仕入VATが還付されず事業者のコストとなるため、注意しましょう。
VAT登録が必要となる事業者
タイ国内で事業を行う場合、原則として年間売上高が180万バーツを超える事業者にはVAT登録が義務づけられています。
また、売上高が180万バーツに満たない事業者であっても、仕入VATの還付や控除を受けるには任意で登録する必要があります。
そのほか、タイでは新規取引の際、売上規模にかかわらず取引先からVAT事業者登録証(P.P.20)の提示を求められることがあります。そのため、BtoB取引が主となる企業であれば、VAT登録は早めに行っておくべきでしょう。
VAT登録の手続き
VAT登録は、事業所の所在地によって歳入局の管轄が分かれています。事業所がバンコクであれば地区の歳入事務所で登録を行い、その他の州であればその地域の歳入局にて手続きを行います。
登録手続きは、年間の売上高が180万バーツに達した日から30日以内に課税事業登録を完了させなければなりません。
この登録期限を過ぎるとペナルティの対象となる可能性もあるため、売上推移は適切に管理しておきましょう。
VAT登録の申し込みが受理されると、審査後にVAT事業者登録証(P.P.20)が発行送付されます。
VAT事業者登録証(P.P.20)は各取引で発行するタックスインボイスの発行及び受け取ったタックスインボイスをVAT控除に使用するための重要な条件となりますので、必ず保管しておくべきものになります。
VAT登録の必要書類
VAT登録には、VAT登録申請書のほか、以下の書類を添付する必要があります。
- 会社登記簿謄本
- 会社設立書類
- オフィスの賃貸借契約書
- サイン権を持つ取締役のパスポートのコピー
- 月間予想売上高の情報 など
拠点の実態を厳格に確認されるケースもあり、その場合にはオフィスの写真や地図などの追加提出を求められることもあります。
書類に不備があると登録が遅れてしまうため、事前に準備しておきましょう。
仕入VATの控除とタックスインボイス
仕入VATをコストにせず、売上VATから控除するには、タックスインボイスが不可欠です。
タックスインボイスとは、その取引がVATの課税対象であることを証明する重要な書類です。日本でいうところの適格請求書に該当します。タックスインボイスがなければ、仕入VATを売上VATから控除することはできません。
仕入VATの控除とは、商品の仕入れやサービス提供を受けた際に支払ったVATを、売上VATから差し引く仕組みです。
売上VATによって仕入VATを賄うため、企業が負担する実質的なVATは自社の付加価値部分に対してのVATのみとなります。
ただし、タックスインボイスがない、もしくは不備がある場合には、仕入VATの控除が否認されコストとして処理することになります。
タックスインボイスを受領した際は、内容に不備がないか必ず確認しましょう。
タックスインボイスの要件
タックスインボイスの記載は、歳入局が定める要件を満たした形式でなければなりません。記載する項目は以下の通りです。
- 「タックスインボイス」と明記
- 発行事業者の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店)
- 購入者または受取人の名称、住所、納税者番号、事業所区分(本店/支店)
- 発行日
- タックスインボイスの番号
- 販売した商品・サービスの詳細(名称、数量、価格など)
- 販売した商品・サービスに適用されるVAT合計金額
- その他、歳入局が定める事項
VATの合計金額は商品代金とは別に記載しなければなりません。
また、住所や支店番号の誤記といった形式的な不備でも仕入VATの控除が否認されるリスクがあります。受領時には各項目が正確に記載されているか確認することが大切です。
仕入VATの控除が認められないケース
支払った仕入VATのすべてが売上VATから控除できるわけではありません。一定のケースでは控除が認められず、費用として処理する場合もあります。仕入VATが認められない主なケースは以下の通りです。
- タックスインボイスの原本がない
- タックスインボイスの記載事項に誤りや不備がある
- 発行資格のない者が発行したタックスインボイス
- 事業に直接関係のない支出に関するVAT
- 交際費に関するVAT
- 乗用車や10人乗り以下のバスの購入・リース・修理にかかるVAT など
税務調査で不適切な控除が発覚した場合は、本来の税額だけでなく加算税、延滞税という重いペナルティが課されます。
書類の形式確認はもちろん、その支出が控除可能な区分かについても判断することが必要です。
VATの計算方法
タイのVAT納付額は、一ヶ月間の「売上VAT」から「仕入VAT」を差し引くことで算出されます。
例えば、1,000,000バーツの売上があった月であれば、売上VATは、1,000,000×7%=70,000バーツとなります。
同月に600,000バーツの仕入れを行っていれば、仕入VATは600,000×7%=42,000バーツです。VAT納付額は売上VATと仕入VATの差額であるため、70,000―42,000=28,000バーツとなり、この月のVAT納付額となります。
もし仕入VATの方が多ければ、追加の納付額は発生しません。差額分については、翌月以降に繰り越すか、還付請求することになります。
VAT還付と繰越について
仕入VATが売上VATを上回った場合、納税額はマイナスとなります。この月の差額分については、企業が「(金銭による)還付」または「繰越」のいずれかを選択します。
繰越は、マイナス分を翌月以降の納税額と相殺する方法で法定期限はありません。一方、金銭による還付請求は、過払いとなったVATの返還を求める方法ですが、発生から3年以内に限定されます。
もっとも、繰越により累積した還付対象金額はいつでも歳入局に対して金銭による還付請求を行うことができます。
ただし、歳入局に対して金銭による還付請求を行った場合は税務調査の対象となります。税務調査ではタックスインボイスの整合性などVATに関する項目だけでなく、法人税などの税目についても調査が行われます。
この税務調査は、調査の対象となる売上と仕入VATに関連する会計期間に対応して行われますので、例えば、長期間繰越して還付対象金額が積みあがった結果、金銭による還付請求を行うと、税務調査の対象期間と税務調査期間が長期に及ぶ傾向にあります。
従って、タイ国内売上があまり望めない輸出企業などは、繰越をしても還付対象額が蓄積する傾向にある企業の場合は、繰越をせず毎月金銭による還付請求がすすめられます。
VATの申告方法と期限
VAT登録事業者は、取引の有無にかかわらず、毎月VATの申告を行う義務があります。なお、申告期限は提出方法によって異なります。
紙の申告書を用いる場合は、翌月15日までに歳入局窓口へ申告しなければなりません。一方、電子申請システム(e-Filing)を利用する場合は、翌月23日までに期限が延長されます。
VATの支払いがなくても毎月の申告が必要となるため、電子申請も検討しておいたほうがよいでしょう。申告漏れや期限超過などがあればペナルティの対象となるため、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
VAT申告の必要書類
VATの申告手続きでは、VAT申告書を作成し、売上・仕入の総額や税額を報告します。申告時には、主に以下の書類が必要となります。
- VAT申告書
- タックスインボイスの原本
- 仕入に関する書類
- 輸出に関する書類
- 源泉徴収証明書 など
これらの申告に関連する書類には保存義務が定められています。原則5年間、最長7年間とされています。
ただし、税務調査は最悪の場合、10年までさかのぼって行われることもあるため、10年間保存することが推奨されます。
VAT申告を怠った場合のペナルティ
タイではVAT申告の遅延や無申告に対する罰則が設けられています。罰則の内容は主に以下の3つです。
- 罰金
期日内に申告しなかったことに対する罰則であり、300バーツ又は500バーツ/月が課せられます(法令上は2,000バーツ以下)。 - 延滞税
税金の支払いが遅れたことに対するペナルティで、未払税額に対して毎月1.5%が加算されます(上限は未払税額)。 - 加算税
無申告に対しては納付すべきVATの200%、過少申告などによる修正申告に対しては不足額の100%がペナルティとして課されます。ただし、税務調査での交渉により、20%~50%まで減額されることがあります。
VAT申告を怠るリスクは金銭面だけではありません。申告の不備が続けば管理体制に問題ありとして、税務調査のターゲットになりやすくなるでしょう。
税務コンプライアンスが低い企業とみなされれば、会社のレピュテーションリスクを高めてしまうおそれもあります。
タイVATに関するQ&A
日本本社との海外取引ではタイVATは発生しますか?
日本本社との取引であっても、条件次第ではタイVATが発生する可能性があります。
タイVATは、タイ国内におけるサービス提供や輸入に対して課税されるため、日本本社との取引が「タイ国内で使用または消費される」場合には、課税対象になり得ます。以下のような取引はVATの対象になりやすいでしょう。
- 管理費
- ロイヤルティ
- 商標使用料
- IT・クラウド利用料
- 技術支援やコンサルティング費用 など
日本本社はタイでVAT登録をしていないため、タイ歳入局へ納税申告はできません。そのため、サービスを受けたタイ法人が代行してVATの申告と納付を行う必要があります。この仕組みは「リバースチャージ」と呼ばれ、支払ったVATは、翌月の申告時に自社の仕入VATとして売上VATから控除が可能です。
VAT還付における「登録輸出企業」「優良輸出企業」とは何ですか?
VAT還付を通常より早く、スムーズに受けるために税務当局の認定を受けた企業であり、ステータスごとに恩典があります。
登録輸出企業とは、VAT還付手続を簡素化・迅速化するために税務当局へ登録を行った輸出企業を指します。また、優良輸出企業は納税実績や会計の透明性が高く、税務当局から特に「信頼性が高い」と認められた企業が該当します。
優良輸出企業は、登録輸出企業よりも一段上のステータスとなっており、還付の実施がよりスピーディに行われます。輸出割合が高く毎月還付が発生するのであれば、これらの認定を検討してもよいでしょう。
VAT申告などタイ税務のサポートは弁護士法人ALGにお任せください
タイのVAT制度は、毎月の申告義務やタックスインボイスの適切な管理など、企業にとって非常に負担の大きい制度といえます。
形式的な不備であっても税務上のペナルティに直結するため、現地の税務ルールを正しく理解し、適切に運用することが求められます。
弁護士法人ALGでは、タイの税務や法務に精通した弁護士が在籍しており、タイにおける税務をワンストップでサポート致します。
適正な申告手続きや万が一の税務調査対応には、法的根拠に基づいた専門家のアドバイスが不可欠です。
VAT申告や還付請求、税務調査リスクなど、タイVATにお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
お問い合わせ
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います。
日本国内からのお問い合わせ
0120-529-006タイ国内からのお問い合わせ
+662-254-5788受付時間l平日10:00〜20:00/土日祝10:00〜18:30
メール相談予約受付※日本語、タイ語、英語のサポートをご利用いただけます。
執筆弁護士



