少数株主権とは?行使できる権利一覧や単独株主権との違いなど

監修
弁護士 家永 勲

弁護士法人ALG&Associates執行役員

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少数株主権は、一定以上の株式を保有する株主に認められた権利であり、会社法に詳細が定められています。

少数株主権は、株主総会に反映されにくい少数株主の利益を保護するなどの目的があり、その具体的な権利内容は多岐にわたります。

具体的な少数株主権それぞれに要件が定められているため、会社は正しい知識がなければ適切な権利行使なのかを判断することが難しいといえるでしょう。

本稿では、少数株主権の定義や単独株主権との違い、主な少数株主権などについてわかりやすく解説していきます。

少数株主権とは?

少数株主権とは、一定割合以上の議決権を有する株主が行使できる権利の総称をさします。

相続や従業員への交付等によって株式が分散した結果、多数の少数株主を抱えている会社もあるでしょう。

少数株主権は、こうした少数株主に一定の権利を与え、支配株主の不適切な優遇や会社の業務執行を監督するといった目的があります。

また、株主総会は原則として多数決で決議されるため、不利な状況におかれやすい少数株主を保護するために認められた権利でもあります。

少数株主権の行使によって、少数株主と会社の対立構造になれば、経営の意思決定が鈍化するなど様々な影響が考えられるため、会社としては権利行使が要件を満たしているかを判断できる正しい知識を備えておくことが不可欠です。

少数株主の定義

少数株主の法的な定義はありませんが、一般的には、一定以上の議決権又は株式を有するが、経営に直接的な影響を与えない程度の持株比率の株主となります。

議決権割合が過半数未満であるため、経営方針に対する直接的な影響力は小さいといえるでしょう。

これに対して、議決権の過半数を保有する株主を支配株主といいます。
支配株主はその持株比率から株主総会で大きな決定力をもち、会社経営に深く関与しています。

しかし、少数株主であっても支配株主であっても、会社の所有者という点では同じです。少数株主であっても少数株主権が認められている場合があります。

少数株主権を行使されれば経営に様々な影響が生じてしまうため、支配株主であっても少数株主を無視した方針決定はリスクを伴うといえるでしょう。

非上場株式における少数株主の詳細については、以下の記事をご参考ください。

さらに詳しく少数株主が非上場株式を抱えるリスク

「自益権」と「共益権」について

株主の権利は、自益権と共益権に大別されます。

自益権とは、会社から経済的な利益を受けられる権利をいいます。
具体的には、剰余金の配当を受ける権利や会社が解散・清算する際の残余財産の分配を受ける権利などが挙げられます。

一方、共益権とは会社経営に関与できる権利です。
共益権は、単独株主権と少数株主権に分類されています。

単独株主権は1株でも株式を保有していれば行使できる権利ですので、少数株主を含めたすべての株主は単独株主権の行使が可能です。

単独株主権と少数株主権は、いずれも会社の経営状態の確認や監視などの目的で行使されることが一般的です。

少数株主対策を考えるにあたっては、このような自益権と共益権の違い等についても理解し、少数株主権として具体的にどのような権利があるのかを把握する必要があります。

少数株主権と単独株主権の違い

少数株主権は一定以上の持株割合が要件となりますが、単独株主権は1株でも保有していれば権利を行使することができます。

単独株主権の主な権利は、株主総会での議決権や定款閲覧謄写請求権、株主総会議事録閲覧謄写請求権など会社の運営状況に関する情報収集や業務執行の監督などがあります。

単独株主権は、1株以上の株式保有で行使が可能であるため、少数株主も単独株主権を行使できます。ただし、一部の権利行使には、株式の保有期間が要件となっているため注意が必要です。

非公開会社の場合は、株式の保有期間は問われませんが、公開会社の場合には、一部の権利に期間要件が設けられているため、必ず確認しましょう。

単独株主権の具体的な権利の種類は下表をご確認下さい。

権利 公開会社における
保有期間の定め
定款閲覧謄写請求権 不要
剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株主総会議決権 不要
株主名簿閲覧謄写請求権 不要
募集株式発行差止請求権・自己株式の処分差止請求権 不要
新株予約権発行差止請求権 不要
株主総会議事録閲覧謄写請求権 不要
累積投票請求権 不要
取締役の違法行為差止請求権 必要
取締役会招集請求権 不要
取締役会議事録閲覧謄写請求権 不要
執行役の違法行為差止請求権 必要
計算書類閲覧謄写請求権 不要
特別清算開始申立権 不要
吸収合併契約等の閲覧謄写請求権 不要
新設合併契約等の閲覧謄写請求権 不要
会社の組織に関する行為の無効の訴え 不要
株主総会決議取消の訴え 不要
株主代表訴訟提起権 必要

単独株主権について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

さらに詳しく単独株主権とは?

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少数株主権の一覧

少数株主権は単独株主権とは異なり、行使できる権利ごとに持株比率などの要件が定められています。

例えば、株主総会の議題提案権を行使する場合には、総株主の議決権の100分の1以上または300以上の持株数が必要です。

また、公開会社の場合は単独株主権と同様、権利によって行使前6ヶ月間の株式保有期間が求められることがあります。

保有期間が要件となる権利は単独株主権に比べて多く、少数株主権を行使できる株主は限定的といえるでしょう。

少数株主権を行使された場合には、権利を行使できるだけの株式を保有する株主であるのか、保有期間の要件に該当するかなどは必ず確認しなければなりません。

少数株主権の具体的な権利内容については下表をご確認下さい。

権利 議決権数・株式数の要件 公開会社における保有期間の定め
株主総会の議題提案権 総株主の議決権の100分の1以上
または300個以上
必要
株主総会の議案通知請求権 総株主の議決権の100分の1以上
または300個以上
必要
株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求権 総株主の議決権の100分の1以上 必要
業務執行に関する検査役選任請求権 総株主の議決権の100分の3以上
または発行済株式総数の100分の3以上
不要
会計帳簿閲覧謄写請求権 総株主の議決権の100分の3以上
または発行済株式総数の100分の3以上
不要
清算人の解任請求権 総株主の議決権の100分の3以上
または発行済株式総数の100分の3以上
必要
役員の解任請求権 総株主の議決権の100分の3以上
または発行済株式総数の100分の3以上
必要
役員等の責任軽減への異議権 総株主の議決権の100分の3以上 不要
株主総会招集請求権 総株主の議決権の100分の3以上 必要
会社解散請求権 総株主の議決権の10分の1以上
または発行済株式総数の10分の1以上
不要

株主総会の議題提案権

株主総会の議題提案権とは、株主が議決権を行使できる一定の事項について、株主総会の議題とするよう請求できる権利です(会社法303条)。

この請求は、株主総会の8週間前までに限定されており、期間経過後の請求については、会社は応じる義務はないと考えられます。

権利行使する株主は、総議決権の100分の1以上または300個以上の株式を有している必要があります。

なお、取締役会非設置会社においては、株主総会の議題提案権に保有株式数や保有期間の要件、さらには株主総会の8週間前までといった行使時期の制限が設けられていません。

そのため、取締役会非設置会社においては、実質的に単独株主権に分類されます。

株主総会の議案通知請求権

株主総会の議案通知請求権は、株主が提出する議案の要領を、招集通知に記載するよう会社に請求できる権利です(会社法305条)。

請求は、株主総会の日の8週間前までとされていますが、定款で期間が短縮されている場合は、その限りではありません。権利行使する株主は、総議決権の100分の1以上または300個以上の株式が必要です。

議案通知請求権についても、議題提案権と同様、取締役会非設置会社では、保有株式数や保有期間の要件、株主総会の8週間前という行使時期の制限が対象外となっています。

そのため、取締役会非設置会社では、議案通知請求権は単独株主権として扱われます。

株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求権

株主総会の招集手続き等が適正に行われていることを監視するため、少数株主は、裁判所に対し、招集手続等の調査を行う検査役の選任の申立てを請求できます(会社法306条)。

請求は会社に対してではなく、裁判所へ申立てる必要があります。
裁判所は、選任請求を不適法であるとして却下した場合を除き、検査役を選任しなければなりません。

検査役の調査結果は総会決議の取消の訴えの証拠とされるケースもあります。

検査役選任請求権を行使できる株主は、総議決権の100分の1以上を有している必要があるため、議決権割合には注意しましょう。加えて、公開会社の場合には、株式を6ヶ月以上保有しているという要件も必要となります。

業務執行に関する検査役選任請求権

会社の業務執行について不正や法令・定款違反が疑われる場合、少数株主は調査のために、裁判所へ検査役の選任を申立てることができます(会社法358条)。

申立てをうけた裁判所は、不適法であるケースを除き、検査役を選任しなければなりません。
選任された検査役は会社の業務や財産状況を調査し、裁判所へ報告します。

業務執行に関する検査役選任請求権を行使できるのは、総議決権の100分の3以上の議決権または発行済株式総数の100分の3以上の株式を有する株主です。
なお、株式の保有期間については要件とされていません。

会計帳簿閲覧謄写請求権

一定の要件を満たした少数株主は、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧や謄写を会社に請求できます(会社法433条)。

ただし、この請求は会社の営業時間内でなければなりません。
また、少数株主は請求理由を明らかにする必要があるため、請求理由が不明な場合や不当な理由に基づく場合は、会社は請求を拒むことができます。

会計帳簿閲覧謄写請求権は、総議決権の100分の3以上の議決権または発行済株式総数の100分の3以上の株式を有している少数株主に限られます。
なお、株式の保有期間は問われません。

会計帳簿閲覧請求権については、以下の記事で詳しく解説しています。

さらに詳しく会計帳簿閲覧請求権とは?

清算人の解任請求権

重要な事由がある場合、少数株主は裁判所へ清算人の解任請求を申立てることができます(会社法479条2項)。

通常、清算人の解任は、株主総会で決議しますが(同条1項)、株主総会で決定が難しい場合などは少数株主権の行使も可能です。

権利を行使する少数株主は、総株主の議決権または発行済株式総数の100分の3以上の保有要件を満たしていなければなりません。加えて、公開会社の場合には、株式を6ヶ月以上保有しているという要件も必要となります。

役員の解任請求権

役員の解任は株主総会の決議によって可能ですが、多数派の株主の意見により解任できない場合があります。

役員に不正行為や法令違反等があれば、少数株主は裁判所へ役員解任の訴えを提起し、裁判所の判断で役員を強制解任できます(会社法854条)。

役員解任請求を提起できる少数株主は、総議決権または発行済株式総数の100分の3以上を保有している必要があります。公開会社であれば、6ヶ月以上の株式保有も権利行使の要件とされているため、注意しましょう。

役員等の責任軽減への異議権

一定の要件に該当する会社の場合、取締役会の決議によって、損害を与えた役員の責任を一定額まで免除できます。

この取締役会決議への対抗措置として、少数株主には役員等の責任軽減への異議権があります(会社法426条)。
異議権を行使されると、取締役会決議による責任の免除を行うことはできません。

異議権を行使できる少数株主は、総議決権の100分の3以上を有している必要があります。なお、公開会社、非公開会社にかかわらず株式の保有期間は要件とされていません。

株主総会招集請求権

少数株主権には、取締役に対して株主総会の招集を請求する権利があります。
請求するには、株主総会の目的や招集の理由を会社へ示さなければなりません。

また、目的とする事項については、請求株主が議決権を行使できる内容に限られます。請求後、招集手続きが行われない等があれば、裁判所の許可を踏まえて、少数株主が株主総会を招集することも認められています。

株主総会招集請求権を行使できる少数株主は、総議決権の100分の3以上を有している株主に限られます。
また、公開会社の場合には、6ヶ月以上の株式保有期間も要件となります。

会社解散請求権

少数株主権には会社の解散を請求できる権利があります(会社法833条)。
会社の業務執行が著しく困難な状況にあり、やむを得ない事由がある場合、少数株主は訴えをもって会社の解散を請求できます。

解散請求権を行使できる少数株主は、総議決権または発行済株式総数の10分の1以上を有している株主に限られます。
なお、株式の保有期間については要件とされていません。

少数株主権を行使する場合の制限

少数株主権を行使できる株主は、議決権割合や株式保有期間などによって限定されています。ただし、権利行使の制限はそれだけではありません。

会計帳簿閲覧謄写請求権は会社の営業時間内とされており、権利行使に時間の制約があります。

株主提案権は株主総会の8週間前という期間の制限があり、かつ、一株主が提案できる議案数は10個までとされています。もし、議案数が過剰に多くなれば、株主総会の進行が妨げられるなどのトラブルも予想されるでしょう。

これらの制限は、少数株主の保護を図りつつも、一部の株主による濫用的な権利行使によって会社の運営が過度に妨げられることを防止しています。

そのため、少数株主から権利行使を受けた会社は、議決権割合や株式保有期間だけでなく、権利行使の制限についても確認して、正当な権利行使には適切に対応しつつ、不当な請求に対しては法的根拠に基づき適切に対処することが求められます。

少数株主権に関するご相談は弁護士法人ALGにお任せください

少数株主権は、支配株主による独走や不当な利益誘導を牽制し、会社の適切な業務執行を監督・是正し、少数株主の利益を保護するための重要な権利です。

少数株主権が行使された場合、会社はその権利を尊重し、会社法に従って対応しなければなりません。

しかし、少数株主権の権利内容や要件は様々であるため、会社が迅速に確認し、適切な対応をするには難しいケースもあるでしょう。

弁護士に相談すれば、権利行使の適正性や会社としての対応方法などについて法的アドバイスを受けることができます。

弁護士法人ALGでは、企業法務に詳しい弁護士が在籍しており、貴社の状況を踏まえた法的サポートを提案できます。
少数株主権に関する不明点等があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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