監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
帝王切開は、なるべく安全に赤ちゃんを産むために行われます。
医療の進歩によって安全になってきた帝王切開ですが、母親のお腹を切り、赤ちゃんを子宮から取り出す手術なので、後遺症が残る場合もあります。
帝王切開の性質上、やむを得ない後遺症もありますが、医療過誤によって後遺症が残ることもあります。
この記事では、帝王切開を行う理由や起こり得る後遺症、赤ちゃんへの影響等について解説します。
目次
帝王切開とは、母親もしくは赤ちゃんに何らかの問題があり、経腟分娩が難しいケース等において、母親のお腹を切開して赤ちゃんを出産する方法です。
帝王切開による出産は珍しいことではなく、4人に1人は帝王切開で生まれているとも言われ、比較的安全な手術と言われています。
術後に動きにくさを感じたり、麻酔が切れてから2日~3日程度は痛みを感じることもあります。
動いても痛みを感じなくなるまでには、帝王切開から2週間~4週間程度かかることもあります。
帝王切開には、事前に帝王切開を選択し、入院・手術の日程を決めて行われるケース(予定帝王切開)と、分娩前もしくは分娩中に緊急に帝王切開の必要が生じて行われるケース(緊急帝王切開)があります。
予定帝王切開と緊急帝王切開について、症状や行う理由を表にまとめましたのでご覧ください。
| 症状 | 理由 |
|---|---|
| 前置胎盤、低置胎盤 | 子宮口近くの胎盤の一部が子宮壁から剥がれて、多量の出血を起こす可能性があるため |
| 狭骨盤 | 骨盤が狭く、赤ちゃんの頭が通りづらいため |
| 子宮筋腫 | 産道に大きな子宮筋腫があると、赤ちゃんが通過できないため |
| 逆子(骨盤位) | 赤ちゃんの頭が最後に産道を通ることになり、へその緒を圧迫して赤ちゃんが酸素不足になるリスクが高いため |
| 症状 | 理由 |
|---|---|
| 妊娠中、分娩中の胎児状態悪化 | 胎児の心拍数が繰り返し低下する場合や、胎盤早期剥離が起こった場合などに、胎児の状態の悪化を避けるため |
| 分娩の進行不良 | 陣痛が弱い、胎児が大きい、産道が狭いなどの理由で、経腟分娩が困難となり、赤ちゃんや母親の負担が重くなるため |
| 母体の合併症 | 妊娠高血圧症候群など、出産によって症状が治まる可能性が高いため |
| 子宮内感染 | 赤ちゃんに感染して状態が悪くなることを防ぐため |
帝王切開を行うと、母親のお腹を切開するため、後遺症が残ってしまうリスクがあります。
主な後遺症として、以下のようなものが挙げられます。
帝王切開子宮瘢痕症(帝王切開瘢痕症候群)とは、帝王切開した部位がうまく癒着せず、陥没してしまうことによって、月経異常や不正出血等が生じる疾患です。
月経のときに、傷痕に血液が溜まってしまったり、傷痕からの出血が生じることによって不正出血が生じることがあります。
帝王切開子宮瘢痕症の影響として、月経後の茶色いおりものがみられることが多いです。
また、月経期間が長くなる、月経痛がひどくなる、不妊などの症状が出ることもあります。
治療法としては、低用量ピルなどのホルモン治療や手術が挙げられます。
手術は、子宮鏡で瘢痕部を切除する方法や、腹腔鏡によって瘢痕部を修復する方法で行われます。
帝王切開は母親のお腹を切開する手術なので、切開した傷痕はほぼ間違いなく残ります。
そして、そのうちの一部では、ケロイドのように赤く盛り上がった傷痕になってしまいます。
帝王切開の傷口は、術後1週間程度で閉じます。それから1週間~2週間程度で、新しい細胞が増えて、少しずつ傷を埋めていきます。
このとき、細胞が増えすぎてケロイドや肥厚性瘢痕のように傷跡が赤く盛り上がってしまうことがあります。
傷痕をなるべく目立たないようにするためには、医療用のテープ等による傷口のケアを行う必要があります。
また、レーザー治療等によって、傷痕を目立たなくする方法もあります。
帝王切開によってできた傷が痛んだり、痒くなったりすることがあります。
これは、皮膚の下の組織が治りきっていないことや、筋肉の収縮がうまくいかないこと、血流が悪くなること等が影響します。
患部の冷却や肌の保湿、炎症を抑える薬の塗布や内服で症状を抑えることが出来ます。
硬膜穿刺後頭痛とは、帝王切開のときに行う脊髄麻酔で硬膜穿刺を行った後に発生する頭痛です。
頭痛の原因は、硬膜の穿刺部位から脳脊髄液が漏出することだと言われています。
頭痛が発生しても、大半は一週間程度で治るため、なるべく安静にします。
しかし、一部は頭痛が続いてしまうため、硬膜外自家血注入法によって脳脊髄液の漏出を止める方法や、カフェインの摂取によって改善させる方法等が考えられます。
帝王切開のときに行う麻酔の合併症で、手足のしびれが生じることがあります。
一般的には数週間で治るケースが多いですが、術後の数ヶ月に及ぶケースもあります。
治療法として、温熱療法やビタミンの内服等が挙げられます。
癒着とは、本来であれば離れているべき身体の組織がくっついてしまうことです。
開腹手術では、90%以上の確率で癒着が発生するとも言われています。
開腹手術の際に、体内の臓器に触れることによって、炎症を引き起こすことなどが癒着しやすくなる原因と考えられます。
癒着すると、下腹部の痛みを引き起こすことがあります。また、癒着の影響で、下腹部痛や膀胱の機能障害、腸閉塞などが生じるおそれもあります。
予防する方法として、癒着防止シートを臓器に用いることが挙げられます。
また、薬によって腸を動かすことや炎症を抑えることなども有効です。
帝王切開で生まれたとしても、赤ちゃんの成長や健康等に悪い影響はありません。
帝王切開が一般的な出産方法になってからも、経腟分娩をより良い出産方法だと考える方が少なからず存在します。
しかし、医療の進歩によって手術も改善しているため、正しい方法で行われる帝王切開であれば、安全性は高いと考えられます。
帝王切開の際に医療過誤があると、赤ちゃんだけでなく母親も危険に晒されることになります。
帝王切開で考えられる医療過誤として、手技のミスだけでなく、帝王切開が必要だという判断が遅れること等も挙げられます。
もしも、赤ちゃんや母親に、医療過誤による後遺症が残った場合には、医療機関に損害賠償を請求できる可能性があります。
帝王切開を行う判断が遅れたために、赤ちゃんに重度の後遺障害が残ったことについて、損害賠償請求が認められた裁判例を以下でご紹介します。
浦和地方裁判所 平成8年2月28日判決昭61(ワ)797号
本件は、前置胎盤の疑いがある母親に陣痛促進剤が投与され、赤ちゃんの心拍数が減少したために帝王切開を行うことが決められて出産したところ、重症の新生児仮死となり、脳に重度の後遺障害を負った事案です。
裁判所は、被告病院の医師の注意義務について、以下の3点に留意するべきであったと指摘しました。
以上の留意点から、被告病院の医師は、助産師と連携し、赤ちゃんの状態に十分に注意して、帝王切開の時機を失することのないように適切な処置をするべき注意義務があったとしました。
その上で、被告病院の医師は、初めて赤ちゃんの徐脈が認められた段階で陣痛促進剤の投与を中止する等して、再び赤ちゃんの心拍数に異常が生じる等したときには、直ちに帝王切開術の施行を決定するべきであったと指摘しました。
そして、被告病院の医師が、赤ちゃんに初めて徐脈が認められた段階から速やかに適切な処置をしていれば、赤ちゃんの新生児仮死の重さには格段の差異が生じたとして、医師の注意義務違反と赤ちゃんの後遺障害との因果関係を認めました。
以上のことから、赤ちゃんの逸失利益や慰謝料、介護費、弁護士費用等として、裁判所はおよそ6963万円の請求を認容しました。

医療過誤のご相談受付
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