非上場株式は上場株式とは異なり取引市場をもたないため、流動性が極めて低く、財産価値を正確に評価することも容易ではありません。
非上場株式を保有するメリットが少ない場合には、相続放棄を検討するケースもあるでしょう。
しかし、相続放棄は法的手続きを踏まなければ無効となるおそれがあるため、正しい知識が必要です。本稿では、非上場株式を相続するデメリットや相続放棄の流れなどについて分かりやすく解説していきます。
非上場株式は相続放棄できるのか?
相続財産はすべて価値あるものとは限りませんので、手放したいものや、引き継ぎたくない財産もあるでしょう。非上場株式を相続したくない場合には、相続放棄をすることも可能です。
相続放棄とは、相続開始から3ヶ月以内に相続人の財産を一切引き継がないとする法的な手続きです。相続放棄は一部の財産に限定して行うことはできません。
マイナス財産だけでなく、プラス財産も含めたすべての財産を放棄することになりますので注意が必要です。
非上場株式の相続放棄を検討する場合には、そのほかの相続財産も放棄してよいのかなど、慎重に判断するべきでしょう。
非上場株式を相続するデメリット
非上場株式を相続する場合、株式の流動性の低さや財産価値の不明瞭さなど、様々な問題が生じるケースがあります。
非上場株式の対象会社の経営に関与したいという明確な意思がなければ、相続するか否かは慎重に判断すべき財産といえるでしょう。
適切に判断するには、非上場株式を相続するデメリットを理解しておく必要があります。非上場株式を相続する主なデメリットには以下のとおりです。
- 株式市場での取引がなく売却が困難
- 多額の相続税がかかるリスクがある
- 保有するメリットが少ない
非上場株式の相続については、以下の記事で詳しく解説しています。
さらに詳しく非上場株式の相続における注意点|手続きの流れや相続税について株式市場での取引がなく売却が困難
上場株式は証券取引所を通じて売買することができ、市場価格も明確です。一方、非上場株式は証券取引所で取引できないため、売買するには自ら買い手を探す必要があり、買い手がなかなか見つからないというケースも少なくありません。
また、非上場株式は市場価格をもたないため、適切な売買価格が不明確です。売買価格を決定するには、株式価値を正確に見積もる必要がありますが、専門知識がなければ難しいでしょう。
また、買い手が価格に納得しない場合には交渉力が必要となるなど、非上場株式を売却するハードルは決して低くはありません。
売却が困難であることは、換金性の低さに直結するため、財産として保有するメリットは限定的といえます。
多額の税金がかかるリスクがある
非上場株式も相続財産にあたるため、相続税の対象となります。市場価格をもたない非上場株式は、国税庁の定める方式に従って相続税評価額を算出することになります。
具体的には、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式という3種類があり、各方式によって評価額が異なります。
相続税率は最大で55%であり、相続税評価額が想定以上に高くなった場合には多額の相続税が課される可能性も考えられます。
また、相続税の支払は相続開始から10ヶ月以内であるため、期間に十分な猶予があるわけではありません。
非上場株式の売却が困難であることを踏まえれば、非上場株式を相続した場合には、多額の相続税が生じるリスクも十分に考慮しておく必要があるでしょう。
非上場株式の相続税評価額についての詳細は、以下の記事をご参考ください。
さらに詳しく非上場株式の相続税評価額の計算方法は?保有するメリットが少ない
株式を相続することによって、必ずしも会社の経営に大きく関与できるわけではありません。
非上場会社においては、経営層である支配株主が経営への影響力を牛耳っているケースも多く、少数株主の立場であれば、会社経営に対する影響力は非常に限定的といえるでしょう。
また、少数株主への配当を受ける権利がはく奪されていたとしても、直ちに違法であるとまでは言えないとする裁判例も存在し、配当がないといった対応も考えられます。
外部からの監視体制が脆弱な非上場会社の場合は、一部の支配株主が会社利益を独占し、配当原資を少数株主へ還元しない等も十分に考えられます。
非上場株式の相続では、少数株主では経営への参画が見込めない、配当に期待できないなども踏まえて、株式を保有するメリットを判断すべきでしょう。
非上場株式の相続放棄の流れ
非上場株式を相続する場合には、法的に定められた手続きを適切に行う必要があります。相続放棄の一般的な流れは、以下のとおりです。
- 相続財産の調査
- 必要書類と費用の準備
- 家庭裁判所への申し立て
①相続財産の調査
相続財産の調査とは、被相続人のプラス財産(預貯金や有価証券、不動産等)とマイナス財産(借金や各種ローン、税金等の未払いの有無等)を把握する手続きをいいます。
相続放棄を選択するか否かを判断するには、相続財産の全体像を把握する財産調査が必要不可欠です。財産調査によって、マイナス財産があっても、それを上回るプラス財産があれば相続するメリットはある、など冷静に判断することができるからです。
相続財産の調査では、財産の有無だけでなく、それぞれの財産価値も正確に把握しなければなりません。
市場価格のない非上場株式を正しく評価するには、専門知識がなければ難しいでしょう。相続放棄の判断にも影響するため、非上場株式の評価は弁護士へ依頼することをおすすめします。
非上場株式の売買価格についての詳細は、以下の記事をご参考ください。
さらに詳しく非上場株式の売買価格はどう決まる?②必要書類と費用の準備
相続放棄の手続きには、主に以下の書類が必要となります。
相続放棄の申述書は裁判所のホームページからダウンロードが可能です。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続放棄を申し立てる人(申述人)の戸籍謄本
戸籍等の代わりに法定相続情報一覧図の写しの提出が可能な場合もありますので、利用する際はあらかじめ提出先の家庭裁判所へ確認しましょう。
また、申述人と被相続人の関係性によって、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本など、審理に必要な追加書類が求められることもあります。
相続放棄に要する費用としては、戸籍等の取得費用のほか、申述人1人につき収入印紙800円分を納める必要があります。
連絡用の郵便切手も書類提出時に納付しなければなりませんが、必要な切手代は裁判所によって異なります。裁判所のホームページに掲載されているので、事前に確認しておきましょう。
③家庭裁判所への申し立て
相続放棄の申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行わなければなりません。
相続放棄には期限があり、原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内と定められているため、この期間を超過しないよう注意しましょう。
書類提出後、家庭裁判所から照会書が送付される場合があります。照会書は相続放棄の意思確認などの書類ですので、届いた場合は必要事項を記入し、裁判所へ返送しましょう。
相続放棄の申述が受理され、裁判所から相続放棄申述受理通知書が届けば手続きは完了です。被相続人の借金等についての債権者へ対応するには、別途、相続放棄申述受理証明書を申請しておくとスムーズでしょう。
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相続人全員が相続放棄をしたらどうなる?
相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の財産を受け取る人物がいなくなるため、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が財産を管理することになります。
相続財産清算人によって債務の清算が行われた後、残った財産があれば、その財産は国庫に帰属します。
被相続人が過半数の株式を有する大株主であった場合、相続財産清算人が選任されるまでの間、株主総会における決議が停滞する可能性があり、会社の意思決定に支障が生じる可能性があります。そうすると、会社は一時的に、事実上の機能不全状態に陥ってしまう可能性があります。
事業を円滑に継続させるために、会社は、相続によって譲渡制限株式を取得した相続人に対し、当該株式を会社に売り渡すことを請求できる旨を定款で定めておくことが望ましいでしょう。
非上場株式だけを相続したくない場合にできること
非上場株式の流動性の低さや経営への関与の低さなどから、非上場株式だけを相続したくないと考えるケースは少なくないでしょう。
しかし、相続放棄の制度上、非上場株式だけを相続放棄するのは難しいといえます。株式を相続した上で手放したい場合は、会社や第三者に買い取ってもらうことを検討しましょう。
相続によって株式を分散させたくないと会社が考えている場合には、買取に応じてくれる可能性は十分にあります。また、相続した株式が譲渡制限株式であれば、会社が譲渡を承認しない場合には、会社等に対して株式の買取請求を行うことも可能です。
相続放棄以外の出口戦略を検討するには法的知識が必要となりますので、弁護士に相談しながら検討するとよいでしょう。
非上場株式の買取請求については、以下の記事で詳しく解説しています。
さらに詳しく非上場株式の買取請求とは?非上場株式の相続放棄に関しては弁護士法人ALGにご相談ください
非上場株式が相続財産に含まれていた場合、そのまま相続するとデメリットとなるケースもあります。非上場株式は売却が難しく、客観的な市場価格をもたないため、財産価値が不明瞭です。
また、相続税評価額が高額となる可能性もあり、相続税が多額になるリスクもあります。非上場株式の相続放棄を判断するには、相続財産を正確に把握する必要がありますが、そのためには専門知識が必要となります。
弁護士法人ALGでは、非上場株式を含めた相続全般に専門性をもつ弁護士が在籍しており、相続放棄のアドバイスはもちろん、財産調査や評価額の算定、相続放棄の手続きまで網羅的にサポートすることが可能です。非上場株式の相続放棄に少しでも不安があれば、ぜひ私どもにご相談ください。
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- 監修 :
- 弁護士法人 ALG&Associates執行役員弁護士 家永 勲
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