ニューズレター


2024.Feb vol.111

集合住宅における民泊トラブル


不動産業界:2024.2.vol.111掲載

私は、アパートの賃貸経営をしています。入居者の一人から、「隣の部屋に不特定多数の若者が出入りしている様子であり、深夜に騒音を発生させたり、ゴミ出しのマナーが悪かったりして、困っている」という旨の苦情を受けました。

他の入居者や管理会社に聞き込みを行ったところ、どうやら当該居室において民泊営業が行われているようです。

本アパートは全戸住居用として賃貸しており、事業を行うことは許可していません。このような場合、当該居室の賃借人との賃貸借契約を解除することはできるのでしょうか。


賃貸借契約の使用目的が「住居」としての利用に限られている場合、居室において民泊営業を行うことは用法遵守義務違反に当たり、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊する行為であるとして、賃貸借契約の解除が認められる可能性があります。

以下、類似のケースに関する裁判例を中心に、詳しく見ていきましょう。

さらに詳しく

1.民泊事業の規制緩和

近年、民泊事業への参入規制が緩和されたことに伴い、マンションやアパート等の集合住宅においても民泊営業が行われることが珍しくなくなりました。

宿泊施設不足への解決策や不動産の有効利用の一環として期待される一方、利用者のマナー違反が問題視されるケースが散見されます。

具体的には、本件のような騒音問題やゴミ出しに関するマナー、共用部分の使い方等について、他の入居者から苦情が上がるということが多いようです。

それでは、本件のように賃貸借契約上、使用目的が「住居用」に限られている場合において、賃借人が民泊営業を行っていた場合、そのことを理由に賃貸借契約を解除することはできるのでしょうか。

2.裁判所の判断

本件と類似したケースにおいて、賃貸借契約の解除を認めた裁判例があります(東京地裁平成31年4月25日判決)。

同裁判例の事案では、居室の使用目的が住居としての使用に限定されていたことや他の入居者から民泊利用について苦情が上がっていたこと等を理由に、賃借人による民泊営業は、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊する行為であるとして、賃貸借契約の解除を認めました。

なお、同事案においては、契約上、賃借人が居室を転貸すること自体は認められていました。賃借人はそれを根拠として“転貸が可能である以上、民泊利用も可能性なはずだ!”と主張したものの、裁判所は「特定の者がある程度まとまった期間にわたり使用する住居使用の場合と、1泊単位で不特定の者が入れ替わり使用する宿泊使用の場合とでは、使用者の意識等の面からみても、自ずからその使用の態様に差異が生ずることは避け難い」として、一般的な転貸と民泊の差異を指摘し、転貸が認められていたからといって民泊が可能となるわけではないという旨判示しています。

3.終わりに

上記裁判例においては契約の解除が認められましたが、これはあくまでも事例判断であり、契約内容、利用者の迷惑行為の程度や頻度、賃借人の対応等の事情によっては、異なる判断が下される可能性がある点には注意が必要です。また、民泊営業が行われていたことを立証するためには、例えば、ウェブサイトでの顧客募集の状況や防犯カメラのデータ等の客観的な証拠が必要となる場合があります。

本件のような入居者からのクレームを放置してしまうと、更なるトラブルに発展してしまう可能性もあるため、状況に応じて適切な対応をとることが肝要です。

賃貸トラブルにお困りの方は、早めに弁護士に相談することをご検討ください。

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