ニューズレター


2016.May Vol.18

震災によって建物が倒壊した場合、賃貸借契約は終了するの?


不動産業界:2016.5.vol.18掲載

先日、九州で大きな地震があって、建物もたくさん倒壊しちゃったみたいだけど、地主の私からすると、建物を所有する目的で貸している土地(借地)の上に建てられていた建物が倒壊したら、土地の賃貸借契約も当然に終了するのかが気になるんだよね。
借地上の建物ではなく、賃貸マンションが倒壊した場合の各部屋の賃貸借契約も同じかな?


借地上の建物が地震によって倒壊しても、当然に借地契約が終了するということはありません。
一方、建物の賃貸借契約の場合は、賃貸借の目的である建物が滅失すれば賃貸借契約が終了すると解されています。ただ、この場合も、建物滅失の原因となる地震が「特定大規模災害」に認定された場合には、賃借人に対する一定の配慮が求められています。

さらに詳しく

①借地借家法の規定

建物所有目的で締結される土地賃貸借契約(いわゆる借地契約)において、借地契約の締結後、最初の契約期間中に借地上の建物が滅失しても、借主が任意に建物を再築してよいことを前提とした規定が設けられています。

一方、借地契約の締結後、更新がされた後に建物が滅失した場合、借主及び貸主間で建物再築についての合意が形成されない場合でも、借主または貸主から相手方に対する中途解約権の行使によって借地契約が終了するものとされており、当然終了とはされていません。

これに対し、建物の賃貸借契約については、賃貸目的物が滅失した時点で賃貸借契約は終了するものと考えられています。なお、当該帰結は、これまでは、民法の規定の解釈及びその旨判断した最高裁の見解に基づいて導かれておりましたが、現在提出中の民法改正案では、明文の規定として定められています(改正法案616条の2)。

なお、建物の「滅失」とは、建物が建物としての効用を喪失した状態をいうものと解されており、崩落しているような明らかな倒壊のほか、直立はしているものの、日常使用に耐えうる状態に修繕することが困難といえる状態も、「滅失」に該当すると考えられます。

②特別措置法の規定

以上の他、特に阪神淡路大震災以降の多くの自然災害における経験を踏まえ、近時、「大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法」(以下、「特措法」といいます。)が制定されました。

特措法では、借地について、地震等の災害のうち、政令によって「特定大規模災害」と認定されたものによって建物が滅失した場合、借地人は、政令の施行日から起算して最大6ヶ月は、仮に何もしなくても、自らの借地権の存在を第三者に主張できるほか、借地上に、自らが所有していた建物を特定するために必要な事項及び建物を再築する旨の掲示を掲げる場合は、政令施行日から3年間、借地権を第三者に主張できるものとされています。

もっとも、借地契約が継続すれば地代も発生し続けるわけですから、建物の滅失により不要となった借地権に基づいて地代だけが発生し続けないよう、借主には、上述の政令施行日から1年の間、借地権の解約を申し入れる権利も認められています。

一方、特措法上、借家の滅失の場合についてはこのような規定は置かれておらず、契約の終了が前提とされています。ただし、滅失した借家の敷地上に、特定大規模災害として政令が発せられた日から3年以内に賃貸人が新たに建物を建築したうえで、当該新築建物への入居者の勧誘等をする場合には、従前の賃借人のうち、知れている人に対して遅滞なくその旨告げなければならないとされており、通常の場合に比べると賃借人に配慮が示されているといえます。

以上のとおり、建物の賃貸借契約の場合と異なり、借地契約については、仮に震災によって借地上の建物が倒壊しても、当然に終了するものとはされていません。
この点を誤解して、地主の方が、借地契約が終了したものとして行動してしまうと、契約責任や不法行為責任が発生する恐れもありますので、ご注意ください。

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