監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
医療過誤が発生し、被害者の患者が死亡したり、後遺障害が残存したりした場合に、患者側は加害行為者である医師・医療機関側に対し、どのような内容の賠償請求ができるのでしょうか。
損害賠償請求の実務においては、ある程度定型的に事件を処理するため、損害を何種類かの項目に分類しています。本ページでは、医療過誤による損害を分類した際に、「積極損害」と呼ばれる項目に焦点を当て、医療過誤における損害賠償請求時の注意点とあわせて説明します。
医療過誤のような人身損害の算定においては、損害賠償項目を財産的損害と精神的損害に分類して考えることができます。その中で、前者の財産的損害については、さらに積極損害と消極損害とに区別して損害額を算定していきます。
積極損害とは、医療過誤によって患者側が支払わなければならなくなった費用のことを意味しています。具体的には、治療費、付添費用、それらに伴って発生する通院交通費、入院雑費等が、積極損害として挙げられます。
一方、消極損害とは、医療過誤が起きなければ、患者側が得るはずだった利益のことを意味しています。具体的には休業損害、後遺障害・死亡による逸失利益が該当します。
したがって、医師・医療機関側へ損害賠償請求できる項目としては、積極損害、消極損害と、これに精神的損害である慰謝料を加えた3項目があることになります。
積極損害とは、医療過誤によって患者側が支払わなければならなくなった費用に関する損害のことです。主なものとして、以下の項目が挙げられます。
交通事故では、初診時から事故による怪我の治療を受けていることが多いため、単純に初診日から治療費を請求することができます。しかし、医療過誤では、もともと病気で病院に入通院しているため、過誤によって必要になった治療費の範囲の確定は難しい問題になります。
例えば、手術のため入院し、その手術で医療過誤が発生した場合には、手術ミスがなかったとしても、入院自体はもともと必要なものであったと解されます。そのため、総入院期間から、手術ミスがなくても入院予定であった期間を差し引いて、治療費等を算定する必要があります。
実務上、医療過誤事案の損害額算定にあたっては、主に、交通事故における損害賠償額の算定基準が採用されています。
具体的には、日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本、赤本)に記載されている基準を算定基礎としています。
ただし、医療過誤の事案では交通事故とは異なり、患者側に何らかの既往症となる疾病が存在している場合や初めから余命が長くない場合も少なくありません。そのため、交通事故における損害の算定基準を参考にしながらも、医療過誤特有の個別具体的な事情に照らして損害を算定し、検討する姿勢が求められます。
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