医療事故の類型

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

医療事故の態様はさまざまですが、いわゆる医療ミスによるものと、そうでないものが存在します。

医療事故という結果が生じてしまった背景には、必ず原因が存在します。今後の医療事故を少しでも減らしていくには、医療事故が発生した原因を分析する必要があるでしょう。そのために、日本でも医療事故調査制度が作られており、医療事故の報告件数は年々増える傾向にあります。

ここでは、医療事故の類型について解説します。

医療事故とは

医療事故とは、医療に関わる場所で、全過程において発生する人身事故のことです。医療事故の中で、医療従事者の過失によって発生するものを医療過誤と呼んでおり、これがいわゆる「医療ミス」です。

医療事故の類型

医療事故は、以下の3つの類型に分類することができます。

  1. ①明らかに医療従事者に過失があるもの
  2. ②医療従事者に明らかな過失はないが、医療技術や患者とのコミュニケーションについて改善の余地があるもの
  3. ③医療従事者に過失が全くないもの

医療従事者には過失のない医療事故であっても、説明不足等によって患者がこれらを混同している場合には、トラブルが発生する可能性があります。

明らかに医療従事者に過失があるもの

明らかに医療従事者に過失がある医療事故として、患者や薬の取り違え、手術部位の間違い、ガーゼの体内への残存等が挙げられます。

医療従事者に過失があるかの判断が難しいもの

医療従事者に過失があるか否かの判断が難しい例としては、手術・検査に伴う合併症が挙げられます。合併症は、医療従事者が問題のない手順・手技で実施しても発生する場合があるからです。ただし、合併症という言葉で説明される経緯について法的な過失が存在することもあるため、このような場合には慎重に検討する必要があります。

医療事故調査制度(医療事故調査・支援センター)

医療事故調査制度とは、日本で2015年10月より施行された制度です。この制度によって、一般社団法人日本医療安全調査機構が「医療事故調査・支援センター」として厚生労働大臣の指定を受けています。この機構に対しては、各医療機関より、医療事故やヒヤリ・ハットに関する報告がなされており、どちらの報告件数も増加傾向にあります。これは、医療現場において報告する意識が高まってきたためではないかと考えられています。

2018年に医療事故として最も多くの件数が報告されているのは、転倒・転落を含めた療養上の世話に関するものです。他にも、治療・処置に関するもの、ドレーンチューブに関するもの、薬剤に関するもの等が数多く報告されています。

また、ヒヤリ・ハットとして報告されているものの中では、薬剤に関する事例が多くなっています。ヒヤリ・ハットの中には、ミスに気づかないまま処置が実行されていたら、患者が命を落とす可能性のあったものも含まれています。

医療事故を防ぐための工夫

医療事故を防ぐために、人の教育を丁寧に行うことや人を増やすこと、人のミスを減らすための機械を導入すること等の方法が挙げられます。そして、医療機関において、おかしいと思ったことをすぐに指摘できる環境を作ることが大切です。

一般的に、人間の介在する部分が多いシステムは、不完全で信頼性の低いものになりがちであり、医療は人の手に頼っている部分が多いため、必然的にミスが起こりやすい環境になっています。実際に、医療事故の原因としてヒューマンエラーが占める割合は高いといわれており、医療従事者が多忙であることや、夜勤明け等の注意力が下がっている時間帯があること、医療従事者のチームワークが良くない場合があること、責任感が欠如した医療従事者が存在すること等がミスを起こしやすい要因と考えられます。他にも、薬の名称が似ていることや、医療器具の操作方法が複雑になってきたこと等も影響していると考えられます。

医療機関には、人がミスを犯す生き物であることを前提とした制度作りが求められているといえるでしょう。

この記事の執筆弁護士

大阪法律事務所 副所長 弁護士 髙橋 旦長
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 副所長弁護士 髙橋 旦長
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監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
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