チーム医療における責任

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

近年、医療の細分化や医療技術の高度化・複雑化が進み、複数の医師や多職種の専門職者が相互に協力・連携して治療にあたる「チーム医療」が実施されるようになってきています。

チーム医療は、患者により的確に対応した医療を提供できるとともに、各医療従事者らにとっても業務を分担することで利益のある体制となっています。

チーム医療とは

チーム医療とは、1人の患者に対して、複数の医療従事者が連携して治療やケアにあたる医療のことです。

同じ診療科の複数の医師が集まる場合もあれば、異なる診療科から医師が集まる場合もあります。また、看護師、薬剤師、助産師、臨床検査技師等の、医師ではない医療従事者が集まる場合もあります。

医療従事者が互いに連携し補完することによって、医療の質や安全性を向上させながら、患者の精神面等の問題にも取り組むことができるとされています。

チーム医療のメリットとデメリット

チーム医療には、様々なメリットがあるといわれています。

例えば、近年、医療が高度化・複雑化していること等により、1人の医師があらゆる知識を習得することが難しくなってきました。そのため、各分野から専門性の高い医師が集まって医療を行うことで、医師があらゆる分野の詳細な知識を獲得する手間を省くことができます。また、医師と同時に看護師等が関わることによって、患者の精神的なケアを行うことや、クオリティ・オブ・ライフを向上させること等、きめ細やかな対応も可能です。さらに、様々な角度から患者を見守ることによって、異変を察知しやすくなり、医療ミスの防止にも寄与するのではないかと考えられています。

しかし、一方で、チーム医療のデメリットも指摘されています。例えば、複数の医療従事者らが連携・協働して治療を行うために、情報共有が不十分であったり、連携が上手く取れていなかったりすることでミスが発生する危険性があります。

チーム医療における医療過誤

チーム医療による治療の際に医療過誤が発生した場合には、誰がどのような責任を負うのか、見極めることが必要となります。多くの医療従事者が治療に携わっていても、その全員に責任があるとは限りません。

例えば、大学病院において、抗癌剤の過剰投与により患者が死亡した事案について、裁判所は主治医、指導医、診療科長、研修医等の各地位に基づき、各々に課せられた注意義務に違反しているかという観点から以下の判断を行いました(さいたま地方裁判所 平成16年3月24日判決)。

  • (1)主治医について

    主治医は、研修医と異なり独立して治療行為を行うことができる地位にあり、主治医として治療計画の策定・実施、さらには最終的な治癒を目指した治療行為を行うべき立場にあったとして、極めて安易に誤った治療計画を立てたことについて過失が認められました。また、同判決において、患者の治療計画の策定について、上級医のチェックが不十分であったからといって、主治医としての注意義務が減免されるものではないことが述べられています。

  • (2)主治医の指導医について

    指導医自身も患者を担当する医師として、医局内の他の医師に比して各段に重い注意義務を負い、かつ、単なる監督にとどまらず、主治医と並んで主体的に治療を行う義務があったと解され、同義務を怠ったとして過失が認められました。

  • (3)診療科長について

    診療科長の医師は、診療業務の最高責任者として、個々の患者の生命・身体に対する危険を防止すべき、治療の具体的内容にわたり、間違いのないように監督する義務を負っているとし、科長としての権限に基づき、個々の患者に対する治療をコントロールし得たとして、過失が認められました。

  • (4)研修医について

    研修医という従属的立場にあったこと、治療方針が実質的には専ら研修医以外の医師らによって決せられていたことに照らして、法的な責任を負わないと判断されました。

上記のとおり、チーム医療における各医療従事者らは、各々の立場に基づき、注意義務を負うことになりますので、各人ごとに不法行為責任の有無の判断がなされます。

そして、責任を負う者が複数人いるケースでは、共同行為者間に客観的関連共同性(社会的に見て数人の加害行為が一体とみられる関係がある)が認められる場合、共同不法行為として連帯して責任を負うことになります。

また、病院開設者は診療契約上の債務不履行責任として、又は使用者責任として損害賠償責任を負うことになります。

この記事の執筆弁護士

シニアアソシエイト 弁護士 宮本 龍一
弁護士法人ALG&Associates シニアアソシエイト弁護士 宮本 龍一
大阪弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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