看護師と医療過誤

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

看護師

保健師助産師看護師法5条では、看護師が行う典型的な業務は、「療養上の世話」と「診療の補助」と規定しています。

保健師助産師看護師法
第5条
この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

看護記録

看護記録は、日本看護協会の策定する『看護記録に関する指針』において、「あらゆる場で看護実践を行うすべての看護職の看護実践の一連の過程を記録したもの」と定義されています。

「療養上の世話」、「診療の補助」といった看護師の行う業務は広範に亘るため、看護記録には多くの情報が記載されており、医療過誤事件における重要な証拠となります。

裁判例には、医師の作成した診療録に記載されている内容と看護記録に記載されている内容との間に齟齬があるという事案において、診療録に記載されている事実が存在するとは認められない、と判断したもの、つまり、診療録よりも看護記録に記載された内容の方が信用できると判断したものがあります(横浜地方裁判所 平成19年3月22日判決)。

看護師による過誤

最後に、看護師や准看護師による行為に過失を認めた裁判例を2例紹介します。

【京都地方裁判所 平成17年7月12日判決】

1例目は、「診療の補助」に該当する静脈注射についての裁判例です。

医師が塩化カルシウムの静脈注射を指示するも、准看護師が誤って塩化カルシウムではなく塩化カリウムを希釈することなく静脈注射し、これにより、患者(6歳)は不整脈、心停止、低酸素脳症を来し、その結果、両上肢機能全廃、両下肢機能全廃、体幹機能障害が残存したという事案について、裁判所は、准看護師が静脈注射を行う場合には、薬剤の種類、量、投与方法等を十分確認の上投与することはもちろん、医師の指示内容に不明な点や疑問点等があれば、医師や薬剤師に再度確認する等して、薬剤の誤投与、誤注射を防ぐべき注意義務を負うが、本件准看護師はこれに違反したとして、約2億5000万円の支払を命じました。

【福岡地方裁判所 平成19年6月26日判決】

2例目は、「療養上の世話」に該当する食事介助についての裁判例です。

入院中の患者が夕食として出されたおにぎりを誤嚥して窒息死したという事案について、裁判所は、

  • 「食事摂取時は必ず義歯装着のこと。誤嚥危険大」との申し送りがあったこと
  • おにぎりは嚥下しにくい食物であること

等を理由に、担当看護師については、一口ごとに食物を咀しゃくして飲み込んだか否かを確認する等して、患者が誤嚥してしまわないように細心の注意をはらって見守るとともに、誤嚥してしまった場合には即時に対応すべき注意義務を負っていたとして、30分間病室を離れた点に注意義務違反を認め、約2900万円の支払を命じました。

この記事の執筆弁護士

弁護士 上田 圭介
弁護士法人ALG&Associates 弁護士 上田 圭介
東京弁護士会所属
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監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
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