消極損害

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

医療過誤について損害賠償を請求する際、損害額はどのように算定すれば良いのでしょうか。

損害賠償請求の実務において、医療過誤は、人の身体に傷害を生じさせる「人身損害」として取り扱われます。この人身損害については、損害を何種類かの項目に分類して算定する方法が定められており、その計算方法にも一定のルールが設けられています。

本ページでは、医療過誤による損害を分類した際の、「消極損害」と呼ばれる項目に焦点を当て、損害の計算方法から、医療過誤における損害賠償請求時の注意点を含めて説明します。

人身損害の考え方

医療過誤といった人の身体に傷害を生じさせる人身損害は、損害の項目を次の3種類に分類することができます。

  • 積極損害
  • 消極損害
  • 精神的損害

このうち精神的損害は、いわゆる慰謝料のことです。

財産や経済的な不利益の損害を財産的損害といい、これに、積極損害と消極損害が含まれています。積極損害と消極損害は、以下のように区分されます。

積極損害:医療過誤によって、被害者側(患者)が支出せざるを得なかった費用や既存財産の減少のこと
例)治療費や通院交通費等

消極損害:本来得られるはずであったにもかかわらず、医療過誤が生じたことによって得られなくなってしまった利益のこと
例)休業損害、後遺障害・死亡による逸失利益

消極損害とは

消極損害とは、医療事故により本来得られるはずであった利益が得られなくなったことに伴う損害のことです。消極損害としては、主に、休業損害・逸失利益が挙げられます。

休業損害は、医療過誤が原因で働けない期間が発生し、得られなくなった収入をいいます。医療過誤に遭う前の収入と休業期間をもとに算定します。また、現実の収入減がなくても、有給休暇を消化した場合や、休業に伴って昇給・昇格が遅れた場合等にも休業損害が認められます。

逸失利益には、被害者が死亡した場合に請求できる死亡逸失利益と、後遺症を負った場合に請求できる後遺障害逸失利益が含まれています。事故前の被害者の収入、年齢及び後遺症が残る場合には後遺症の等級を用いて逸失利益を算定します。なお、死亡逸失利益については、本来かかるはずであった生活費がかからないため、生活費部分を控除する必要があります。

医療過誤事案における損害の算定方法

医療過誤が認められ、加害者に対して損害賠償を求める際には、どのようにして賠償金を計算するかということが問題になります。

損害賠償額の算定には、裁判所の算定基準を適用します。頻繁に起こる交通事故のために作成された損害賠償額の算定基準を、医療過誤の事案においても使用しています。

具体的には、過去の裁判例とともに弁護士基準の様々な損害賠償額の算定方法が記載されている「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部発行 通称:赤本)を使用して算定します。

ただし、医療過誤のような事案では被害者が事故前に何らかの既往症を持っているケースが多く、どの範囲を医療過誤による損害と特定するかが問題となります。例えば、精神病や重度障害者が医療過誤に遭った場合、これを既存障害としてとらえ、逸失利益等が減額されるケースも見受けられます。このような場合には、元々の疾患の予後に関する統計的な資料を裁判所に提出して適切な賠償を受けられるように主張する必要があります。このように、医療過誤の損害額算定については、医学的な知見も踏まえて、詳細を個別具体的に検討する必要が生じる場合もあります。

この記事の執筆弁護士

大阪法律事務所 副所長 弁護士 髙橋 旦長
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監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
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