子なし離婚のメリット・デメリットや後悔しないためにできること
子供がいない夫婦は、離婚するにあたって、親権や養育費、面会交流といった子供に関する取り決めをしないことから、離婚のハードルが低く、一般的に子供のいる夫婦よりも離婚しやすいといわれています。
しかし、子なし夫婦だからといって必ずしも離婚がスムーズにできるわけではありません。離婚する際には、注意したいポイントがあります。
この記事では、子なし夫婦が離婚を考える理由や子なし夫婦が離婚するメリット・デメリット、離婚を切り出す前にすべきことについて解説していきます。
目次
子なし夫婦は離婚しやすい?
令和4年厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」のデータによると、子供がいる夫婦と子供がいない夫婦の離婚率には大きな差がないことが分かりました。
子供あり | 子供なし | 合計 | |
---|---|---|---|
件数 | 111,335 | 81,918 | 193,253 |
割合 | 57.6% | 42.4% | 100.00% |
しかし、子供がいる夫婦の場合は、離婚に踏み切る夫婦もいますが、夫婦仲が良くなくても、子供が大きくなるまではと、離婚を思いとどまる夫婦も多いでしょう。
しかし、子なし夫婦の場合は親権や養育費の支払いなど子供に関する取り決めをする必要がないことや、離婚後は完全に他人同士に戻れることから、一般的に離婚に対しハードルが低いといわれています。
子どもがいない夫婦が離婚を考える理由
子なし夫婦が離婚を考える理由には、さまざまなものが考えられますが、その代表的なケースとして以下のような理由が挙げられます。
- 配偶者が子供を欲しがらない
- セックスレス・不妊などの事情
- 価値観や性格の不一致
- DV・不貞行為・モラハラ
次項からはそれぞれについて、詳しく解説していきます。
配偶者が子供を欲しがらない
子なし夫婦が離婚を考える原因として多いのは、子供を持つことに対する意見の相違です。
一方の配偶者が子供を持ちたいと思っていても、もう一方の配偶者が子供を欲しがらない場合では、お互いに話し合いをしても解決にいたらず、離婚してしまうケースがあります。
子供を持つということは、夫婦の生活や自分の人生に大きな影響を与えることです。結婚当初はお互いに子供を持つことに消極的であっても、夫婦の一方が「自分の血がつながった子供が欲しい」「子供を抱いてみたい」という思いに変わることもあるでしょう。
特に女性は子供を持つのにタイムリミットがあるため、女性側が強く子供を持ちたいと希望している場合は、離婚につながりやすくなります。
セックスレス・不妊などの事情
夫婦どちらも子供を望んでいて、健康面に問題がなくても、必ずしも子供を授かれるとは限りません。
また、双方が子供を持ちたいと思っていても、セックスレスでは子供を授かることはできません。
そのような場合、不妊治療に臨む夫婦も多いと思いますが、不妊治療に対する考えの違い、一方が協力的ではない、なかなか子供ができずプレッシャーを抱えているなど、不妊治療がストレスとなり夫婦関係に亀裂が入り離婚に至る場合もあります。
また、近年多くなっているのが男性不妊です。
しかし、男性は自分が不妊の原因であることを認められず、妻のせいにしてしまい離婚に至るケースもあります。
価値観や性格の不一致
子供がいてもいなくても、多くの離婚の原因として挙げられるのが性格の不一致です。
性格の不一致には価値観の不一致も含まれ、金銭感覚や生活習慣、家族の在り方など考え方などの相違が離婚につながります。
夫婦は元をたどれば他人同士ですから、結婚して共同生活を円満に過ごすためには、お互いの協力や歩み寄りが必要です。
しかし、子なし夫婦の場合は、歩み寄って我慢してまで夫婦生活を過ごすメリットがないと判断すれば、離婚を考えるようになってしまうでしょう。
DV・不貞行為・モラハラ
配偶者からDVやモラハラを受けていたり、配偶者に不貞行為(不倫)をされていたりする場合は、離婚を考えるのは当然のことでしょう。
DVやモラハラをする配偶者は、自分がひどい行為を行っているという自覚が薄く、無自覚に配偶者を傷つけている場合もあります。
不貞行為やDV・モラハラは法律では不法行為として、裁判でも離婚が認められる法定離婚事由にあたります。不法行為を受けている配偶者は我慢して結婚生活を続ける必要はありません。
まずは身の安全を確保し、弁護士に相談しましょう。
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子供がいない夫婦が離婚するメリット・デメリット
子供がいない夫婦が離婚するメリットとデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
離婚をお考えの方は、離婚を切り出す前にまずこの項目を確認しましょう。
子なし夫婦が離婚するメリット
まずは子なし夫婦が離婚するメリットについて見ていきましょう。
離婚後の経済的負担や取り決めが少ない
子供がいない夫婦が離婚するメリットとして第一に、離婚後の経済的負担や取り決めることが少ないことが挙げられます。
未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、養育費の問題や、親権、面会交流など、子供のことで取り決めなければならないことが多くあります。
特に親権は争いになりやすく、親権者を定めなければ離婚ができないため、離婚までに時間がかかってしまうこともあるでしょう。
一方、子供がいない夫婦の場合は、子供について取り決める必要がなく、慰謝料や財産分与、年金分割などといった項目だけで済むため、比較的スムーズに離婚条件について話し合いができる可能性が高まります。
再婚や再出発がしやすい
次に人生の再出発がしやすく、子供がいる場合に比べ再婚しやすいという点が挙げられます。
親権者となり離婚した場合、再婚したいと思う人ができても、子供が再婚を望まない場合もありますし、子供と相性が悪い場合もあります。
それに比べ、子供がいない場合には、子供のことを考慮する必要がない分、再婚しやすいでしょう。
また、子供がいない場合は離婚後の子供の環境の変化を考慮する必要がないため、引っ越しや転職がしやすく、人生の再出発がしやすいでしょう。
離婚後に配偶者との関係を断ち切りやすい
離婚後に相手と連絡を取る必要がなく、関係を断ち切りやすいのも子なし離婚のメリットでしょう。
子供がいる場合は、離婚後も養育費を受け取ったり、面会交流のために連絡を取り合ったりと完全に縁を切るのは難しいものです。
人によっては、離婚後も元配偶者と連絡を取らなければならないことをストレスに感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、子供がいない場合は離婚後に元配偶者と連絡を取る必要がなく、関係を断ち切りやすくなります。
そのため、精神的なストレスを感じることがなく、すっきりとした気持ちで新しい生活を始められるでしょう。
子なし夫婦が離婚するデメリット
ここまで子なし夫婦の離婚についてメリットを解説しましたが、デメリットはあるのでしょうか。 見ていきましょう。
経済的な自立が必要
子供がいる場合は養育費や児童手当などの経済的サポートがありますが、子供がいない場合は当然ながらそのようなサポートは受けられません。
離婚後は自分1人の収入で生きていかなければなりません。そのため、経済的に自立する必要があります。
婚姻中、専業主婦(夫)だった場合は、仕事を探し、収入を得る必要があります。共働きであっても元配偶者分の収入がなくなるため、生活水準が下がることを受け入れる必要があるでしょう。
そのため、離婚の前に金銭的な準備をしておくことが大切です。
離婚後の手続きが煩雑
子なし離婚の場合、自分の姓を婚姻前の姓に戻す方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合には、銀行口座やクレジットカードなどの名義変更が必要です。
また、離婚により住所を変更する場合は、役場で転居届の提出が必要となります。
この届出は引っ越し先が同じ市区町村なのかどうかによって手続きが変わるので注意しましょう。
また、離婚の報告は会社に言いにくいと感じるかもしれませんが、社内規定上、婚姻関係に変更が生じた場合は報告が必要な場合もあります。会社の規定を確認し、必要に応じて速やかに報告するようにしましょう。
後悔しないために!離婚を切り出す前にすべきこと
前述したとおり、子供がいない夫婦の離婚ではメリット・デメリットがあり、これを把握した上で離婚をするべきか判断することが大切でしょう。
離婚で後悔しないためにも、離婚を決める前に以下のことをしておきましょう。
離婚を切り出す前に話し合う
離婚したいと思う相手と話し合うのは、難しいと感じるかもしれませんが、離婚しか選択がないのか、夫婦関係の再構築はできないのか、お互いの意見を確認することはとても大切です。
夫婦関係の修復を試みる
夫婦関係を修復するためには、まず離婚という考えをいったん頭の片隅に置くことが必要です。
今さら夫婦でどのようにしたらいいのか分からない場合は、カウンセリングや円満調停の申立てを検討するのも良いでしょう。
家庭内別居、別居をしてみる
相手と離れ、ストレスが軽減することで、お互いの大切さに気付くきっかけにもなり得ます。
別居となると、金銭面での不安もあるかもしれませんが、別居中は婚姻関係にあるので「婚姻費用」を請求することができます。
婚姻費用については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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子なし夫婦の離婚の流れ
子なし夫婦が離婚の決意した場合の離婚までの流れは以下のとおりです。
- 協議離婚
協議離婚とは、夫婦の話し合いで離婚や離婚条件について決めることです。相手が離婚に合意すれば離婚の理由は何でも構いません。双方が離婚に合意できたら離婚協議書の作成をおすすめします。 - 離婚調停
夫婦で話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合は家庭裁判所の調停手続きを利用しましょう。離婚調停は調停委員を間に挟み、話し合いで問題の解決を図ります。そのため、夫婦のどちらかが離婚を拒否している場合は調停が成立しません。 - 離婚裁判
調停が不成立に終わった場合は、裁判を提起し判決による離婚を求めることができます。裁判では、離婚の理由が法定離婚事由に当てはまるかで離婚の可否が判断されます。
裁判では、特に法律の知識が必要となるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
調停や裁判など、離婚の詳細については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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法定離婚事由とは
離婚裁判では、民法が定める以下のような法定離婚事由がなければ離婚が認められません。
【法定離婚事由(民法第770条)】
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
この記事では、子なし夫婦が離婚を考える理由を解説しましたが、それらは法定離婚事由に当てはまるのでしょうか。
不貞行為は明確な法定離婚事由に当てはまりますが、その他モラハラ、DV、セックスレスは程度にもよりますが、婚姻を継続し難い重大な事由があるときに当てはまり、離婚が認められる場合もあります。
一方で、裁判では、価値観の不一致などだけでは離婚が認められない傾向にあります。
離婚が認められる理由については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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離婚のご相談受付
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子なし離婚を決意したらやるべき4つの準備
離婚を決意したらやるべき準備が4つあります。特に専業主婦(夫)で収入がない場合は、離婚後の生活に困らないようにしっかりと準備をしていきましょう。
では、次項からやるべき4つの準備について見ていきましょう。
離婚後の生活に向けた準備
離婚後には、基本的に自分1人の収入で生活をしていかなければなりません。
しかし、専業主婦(夫)であった場合には、離婚後すぐに就職先が見つかるとは限らないため、離婚前から、就職先や住居を探すことが大切でしょう。
また、専業主婦(夫)の場合、ブランクもあることから、就職先をすぐには見つけられないかもしれません。そのため、離婚前に資格を取るなどの準備も必要となる場合もあるでしょう。
また、新しい居住地では、家賃のほかに家具や家電のお金がかかってしまいます。実家に頼ることも検討しましょう。
財産分与や年金分割など離婚条件を決める
子なし離婚では、子供のいる夫婦の離婚よりは、取り決めるものが少ないものの、財産分与や年金分割など決めるべき重要な項目がいくつかあります。
財産分与
婚姻期間中に夫婦が築き上げた財産を均等に分配することです。財産を隠されないよう、離婚前にどのくらい財産があるのか、どんな財産があるのか、確認しておくことが大切です。
年金分割
夫婦が婚姻期間中に納めた保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。専業主婦(夫)など、これまで配偶者の扶養に入っていた方は将来の年金の金額に大きな影響が出るため、忘れずに行いたい項目です。
慰謝料を請求する場合は証拠の確保
慰謝料は配偶者の不法行為によって精神的苦痛を負った場合に請求することができます。
例えば、配偶者が不貞行為をしていた場合では、配偶者だけでなくその不倫相手にも慰謝料を請求できる可能性があります。
他にも、DV、モラハラ、セックスレス、生活費を渡さない悪意の遺棄などがあった場合にも慰謝料を請求できる可能性があります。
しかし、慰謝料の請求には配偶者が言い逃れ出来ないよう、証拠を集めることが大切です。証拠隠滅されるおそれもあるので、離婚を切り出す前に配偶者に気付かれないよう集めておきましょう。
また、証拠が集まらなかった場合でも配偶者が不法行為を認め、慰謝料を支払うことに合意すれば、慰謝料を受け取ることができます。
離婚慰謝料の請求に必要な証拠などの詳細は、以下のリンクで解説しています。ご参考ください。
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弁護士に相談する
スムーズに離婚を進めるためには、離婚問題や夫婦問題に詳しい弁護士に相談することもおすすめです。
弁護士は法律の知識や夫婦の問題に詳しいだけでなく、夫婦問題に対する解決の経験や実績が豊富です。
特に夫婦問題に詳しくなるためには多くの案件の数をこなすことが大事とされています。
離婚問題を弁護士に依頼することで、あなたの代わりに配偶者と交渉するだけでなく、何が2人にとってベストな解決策であるかを見出し、アドバイスをしてくれます。
また、離婚の際に決めるべき項目について漏れなく、不利にならないよう請求していくことができます。
子なし夫婦の離婚は弁護士に依頼することで早く解決することがあります
子なし離婚は、子供がいる夫婦に比べ、離婚のハードルが低いといわれていますが、それでも離婚について揉めてしまう夫婦も少なくありません。
特に、自分の離婚をしたい理由が法定離婚事由に当てはまるのかどうか、配偶者に不法行為があったとしても有益な証拠にはどのようなものがあるか、分からないことも多いでしょう。
なかには、配偶者が離婚の話に応じてくれないというケースもあるでしょう。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)