国際離婚で子供の親権や養育費はどう決めるの? 日本と外国での違いは何?
国際結婚した夫婦が離婚するとき、未成年の子供がいる場合は親権や養育費についてしっかりと取り決めておかなければなりません。日本では単独親権を定めており、非親権者は子供の監護に関わることが難しくなります。相手が親権や監護権を主張している場合は親権の問題で争いになるでしょう。
また、養育費についても、日本で判決を得ても外国では強制執行ができないことがあり、その場合は養育費を請求することが難しく、泣き寝入りになってしまいます。
この記事では国際離婚の親権に着目し、親権や養育費を日本で決める場合や外国で決める場合について解説していきます。
目次
国際離婚で子供の親権を決めるためには
国際離婚の親権では「どこの国の法律に従って決めるか」が鍵となります。子供の親権については以下の法律が適用されます。
●子供の本国法が父又は母の本国法と同一であれば子供の本国法
子供が日本国籍を有しており、父母どちらかが日本国籍の場合は日本法に従って親権者を定めます。子供が国際結婚した相手の国籍を有していれば相手の国籍の法律に従って親権者を定めます。
つまり、子供と父または母が同じ国籍であれば、子供の国籍の法律がそのまま適用されるということになります。ただし、子供が多重国籍の場合、子の常居所地がある国の法律が適用されることもあります。
日本の法律で親権を決められるか? (準拠法)
外国人配偶者と離婚する際、子供の親権を日本の法律に従って決めることができるでしょうか。
離婚に関する具体的事件に適用される法律を準拠法といいます。つまり、どこの国の法律が適用されるかということです。
国際離婚で離婚や親権が問題となっている場合、離婚について日本の裁判所に国際裁判管轄が認められれば、親権についても日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。しかし、離婚と親権の問題について、日本の裁判所で裁判できるからといって、両方の問題に当然に日本法が適用されるわけではありません。
どこの国の法律が準拠法になるかは法律関係ごとに判断されるため、離婚請求と子の親権の決定では準拠法が個別に判断されます。そのため、離婚と親権でそれぞれ準拠法が異なる場合があり、例えば、離婚は日本法が適用されるが、親権には外国方が適用されるというように、日本の裁判所で外国の法律を適用し、裁判が行われることもあるのです。
国際離婚の親権については、通則法32条の「親子間の法律関係」により、以下のように定められています。
-
子の本国法が父または母の本国法(父母の一方が死亡し、または知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法による
-
その他の場合には子の常居所地法による
国際離婚で親権を日本の法律で決める場合
日本人が国際結婚をして日本国籍を有する子供と日本で暮らしている場合、日本法で親権を決めます。
日本では単独親権が定められており、父母どちらか一人が親権または監護権を持ちます。海外では共同親権としているところもあるため、考え方の違いから争いになりやすくなります。
親権の決め方はまず夫婦の協議(話し合い)により決めていきます。協議で決まらない場合は離婚調停を行い、不成立となった場合に離婚裁判に移行し、その中で親権を決めていきます。
日本の裁判所の判断基準
訴訟で裁判所が親権者を決定する時には以下のような事情からどちらが妥当か判断されます。
- これまでの養育実績
- 養育能力、意欲・姿勢
- 心身の健康状態
- 経済力
- 居住環境
- 現在の子供との関係性
- 親族や友人などによるサポート
- 子供の年齢
- 子供の希望
- 兄弟姉妹の有無
離婚後に親権の変更は可能か?
離婚後であっても親権者を変更することは可能です。しかし、離婚時における親権者の指定の時のように、父母の協議だけでは親権者を変更することはません。なぜなら、親権者を変更することは、子供の現在の生活環境や今後の人生に対しても多大な影響を与えると考えられているため、このような重要なことを父母の話し合いだけで勝手に変えるのは妥当ではないと考えられているからです。
子供の親権者変更には親権者変更調停という手続きが必要です。
親権者変更調停とは、家庭裁判所で行われる調停手続きの一つであり、子供の父母が調停委員を間に挟み子供の親権について話し合うための制度です。
調停の話し合いによって親権を変更する際には父母が同意していることが大前提となります。それに伴い子供の親権を変えても良いといえるケースかどうかを家庭裁判所の調査官が調査します。調査官が親権を変更しても特に問題なく子供のためになると判断した場合に親権者の変更が認められます。
離婚後の親権者変更については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
国際離婚の親権を外国の法律で決める場合
国名 | 親権 | 決め方 | 養育費 |
---|---|---|---|
アメリカ | 共同親権 | ― | 義務化(罰則あり) |
韓国 | 選択的共同親権 | 協議 | 義務化 |
中国 | 共同親権的 | ― | 義務化 |
ドイツ | 共同親権 | ― | 義務化 |
共同親権とは、両親のどちらもが子供に対して親権を持っている制度のことです。日本でも婚姻中であれば「共同親権」となりますが、離婚をすると「単独親権」に変わります。
外国では離婚後も共同親権が認められる国もあり、養育費などを含めた決め方は国によって異なります。
先進国においては共同親権を採用している国が多くあります。共同親権は父母が合意して親権を行使することと考えられていますが、運用方法は各国で異なります。
●アメリカ
基本的な親権の考え方は子供の最善の利益に基づいて決定されるべきとしており、父親と母親は平等に扱われ、性別によって親権に有利となるわけではありません。離婚後も「共同親権」として父母がともに親権を持つことも可能な州が多くあります。
●ドイツ
1998年以降共同親権が認められるようになりました。教育・医療といった事項は両親の協議により決定されます。またドイツでは少年局が設けられており、共同親権の行使の援助などを行っています。
●イギリス
2014年から共同親権が認められています。子供が18歳になるまでは親の責務を行使する義務を負っており、親は共同して子供を監護するものと定められています。
国際離婚での子供の養育費
国際離婚でも養育費の支払い義務はあります。国際離婚で養育費を決める際はどこの国の法律が適用されるかが問題となります。
基本的には「子供の常居住国の法律」が適用されます。
つまり、子供が日本で生活しているのであれば、日本の法律が適用されます。
日本法が適用された場合は、養育費についてまずは父母で協議を行います。養育費の金額は父母が合意すればいくらになっても構いません。合意に至らない場合には、裁判所が公開している「養育費算定表」を参考にすると良いでしょう。
協議で決められない場合には、調停や審判といった家庭裁判所の手続きを踏むことになります。
調停や審判で決定する養育費の金額は、裁判所の養育費算定表を用いて決められることが多くあります。
離婚後の養育費の相場については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
養育費は受け取り方に工夫を
国際離婚した配偶者から養育費を受け取りたいときは「回収できなくなる」ことに注意が必要です。
離婚すると相手がもともと永住者でない限り日本に滞在する在留資格(ビザ)を失うため、自国に帰ってしまう可能性が高くなります。国に帰ってしまうと養育費が支払われなくなった場合に請求することは困難になるでしょう。
外国にいる相手に対し強制執行することは日本国内と異なり容易ではありません。国際離婚で養育費をしっかり受け取るためには、以下のような工夫が必要です。
- 一括で受け取る
- 送金方法をしっかりと決め、支払われなかった場合の対処法などもきちんと取り決める
国際離婚での子供との面会交流
国際離婚をして元配偶者とは他人になったとしても、元配偶者が子供にとって親であることには変わりありません。
子供の意思を尊重し、可能であれば頻繁でなくても面会交流をしましょう。
元配偶者が自国に帰っている場合も考えられえますので、年に一度日本に来てもらうか、相手国に赴き面会交流を続けることも視野に入れましょう。面会交流を行うことで、元配偶者の「養育費を支払おう」という気持ちを高めることにもつながります。
しかし、国際離婚の場合、離婚後も国境を越えた子の連れ去りに注意が必要です。
監護権を有している親から子供が連れ去られた場合は、連れ去り先及び連れ去り元の国がハーグ条約の締結国である場合には、国の援助を得て子供の返還を求めることができます。
ハーグ条約については次項で解説していきます。
面会交流については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
合わせて読みたい関連記事
子供の連れ去りを禁止するハーグ条約
ハーグ条約とは、国際的な子供の連れ去りを禁止する条約です。
国際離婚をすると、子供と非監護親が国をまたいで別の国で暮らすケースも多くなります。そのような時、子供が現在の居住国から父母どちらかの居住国に連れ去られると、生活環境が一変し子供への影響が多大なものとなってしまいます。
そこで、各国が条約を締結して子供の不法な連れ去りを防ぎ、万が一連れ去られてしまった時は迅速に元の環境に戻そうとしています。
ハーグ条約は子供が16歳未満の場合に適用されます。
国際離婚した際、監護権のない親が子供を不法に自国に連れ去れると「犯罪」が成立することもあるため注意が必要です。
子の連れ去りは外国だけの話ではありません。日本人に監護権がなく、面会終了時に子供を相手国に帰さないと「連れ去り」に当てはまり、「誘拐」または「拉致」といった犯罪となってしまいます。
ハーグ条件のデメリット
ハーグ条約にはデメリットもあります。例えば、以下のようなケースでも、外国で国際離婚をした日本人女性が子供を連れて帰国したくても、「条約に基づく返還請求が確保されない」という理由で外国の裁判所などで帰国を認めてもらえないことがあります。
●子供の国籍が日本であり、日本人の母親が親権を持っている場合
たとえ子供の国籍が日本であっても、住んでいる国の裁判所が認めなければ子供が出国することはできません。
外国で国際離婚をする日本人女性はまずこのことをしっかりと頭に入れ、子供と引き裂かれることが無いよう十分に調べておく必要があるでしょう。
●DVで身の危険を感じた場合
外国で夫のDVなどをうけ、身の危険を感じ子供と日本に帰国した場合でも、ハーグ条約によって子供だけ本国へ返還されてしまうこともあるのです。子供が母親と暮らすことを望んでいても本国の判断で無理やり引き裂かれてしまうこともあります。
子供がいる国際離婚は夫婦2人だけの問題ではなくなります。親権や養育費などでお困りの場合は経験豊富な弁護士へご相談ください。
国際離婚では本人同士の問題という枠を超えて国と国の問題となりかねないケースが多くあります。例えば、離婚した相手が勝手に子供を連れて帰国してしまったというケースではもはや本人だけではどうすることもできない場合もあるでしょう。
離婚や親権の問題は国によって法律が異なり、ご自身のケースではどこの国の法律が当てはまるのか、なかなか分かりにくい問題でもあります。
国際離婚、親権の問題については私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは夫婦問題、離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、外国の法律や事情に詳しい弁護士も在籍しております。子の連れ去りは心を痛める大きな問題です。一刻も早く解決できるよう尽力いたします。
また、親権や養育費などについてもご相談者様の問題を丁寧にヒアリングし、解決に導いていきます。
国際離婚については私たちにご相談ください。
離婚のご相談受付
来所法律相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)