弁護士が教える!わかりやすい「遺言書の書き方」の手引き

この記事でわかること
遺言書とは、自分の死後に遺る財産についての意思表示をするための書類です。遺言書があることによって、相続人間の争いを防ぐことができる可能性があります。
自分で遺言書を作成する場合には、用紙や封筒に決まりはありませんが、形式や記載内容については無効にならないように細かい決まりを守らなければなりません。
もしも無効になってしまうと、かえって争いを引き起こしてしまうリスクがあるので、十分な知識を身につけてから作成しましょう。
この記事では、有効な遺言書の書き方や文例等について解説します。
目次
遺言書を書くための基礎知識
遺言書とは、被相続人が、自分の死後に財産をどう分けるかについて、意思表示をした書類です。
15歳以上であれば作成可能であり、自分が生きているうちはいつでも撤回できるので、若いうちに作成しても問題ありません。
遺言書には、次の3種類があります。
- ●自筆証書遺言
- ●公正証書遺言
- ●秘密証書遺言
遺産相続において、どの遺言書であっても不備がなければ法的効果は同じです。しかし、作成方法やかかる費用等が異なるため、どの種類を作成するかは慎重に検討しましょう。
なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、発見してもすぐに開封することができません。家庭裁判所において「検認」という手続きを行う必要があります。
検認とは、裁判所において遺言書の内容等を確認して、相続人に遺言書が存在することやその内容を知らせる手続きです。
検認を受けずに遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料に処せられるおそれがあるので注意しましょう。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成方法 | 財産目録以外の全文を自筆する | 公証人に作成してもらう | ・自筆以外にも代筆やパソコン等で作成することができる ・公証人に封紙に必要事項を記載してもらう |
メリット | ・作成するために費用がほとんどかからない ・誰にも内容を知られずに作成できる |
・形式的なミスによって無効となることがほどんとない ・全文を自分で作成する必要がない |
・遺言書の存在を証明してもらえる ・誰にも内容を知られずに作成できる |
保管方法 | ・自宅等で保管する ・法務局で保管してもらう |
・原本を公証役場に保管してもらう | ・自宅等で保管する |
作成等の費用 | 用紙等の実費のみ | 相続財産の価額によって異なる(1万6000円以上) | 1万1000円 |
検認を受ける必要 | ある ※法務局で保管してもらった場合には不要 |
ない | ある |
遺言書の効力(遺言書にできること)
遺言書によって、以下のようなことができます。
- ●相続分の指定
- ●遺産分割方法の指定
- ●遺産分割の禁止(ただし5年以内)
- ●遺贈
- ●子供の認知
- ●相続人廃除および相続人廃除の取消
- ●遺言執行者の指定
- ●未成年後見人の指定
- ●祭祀承継者の指定
- ●寄付
- ●生命保険の受取人の変更
これらの内容を遺言書に記載すると、その遺言書を作成した被相続人が亡くなったときに効力を発揮します。
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遺言書を作成するメリット
遺言書を作成することには、以下のようなメリットがあります。
- ●自分が望んだ相続人に、より多くの相続財産を遺すことができる
- ●法定相続人でない人に対して遺贈することができる
- ●相続手続きの負担を減らすことができる
- ●相続トラブルを防ぐことができる
- ●相続財産の分配以外にも、子供の認知等ができる
【種類別】有効な遺言書の書き方
自筆証書遺言を作成するときには、遺言書が無効にならないように、以下の点について注意しましょう。
- ●財産目録以外の全文、日付及び氏名を自筆する
- ●押印する
- ●日付を特定できるように明記する
- ●自書ではない財産目録には、全てのページに署名押印する
- ●誤った箇所は二重線で消して押印する
- ●「任せる」等のあいまいな文言を記載しないようにする
自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方について、次項より解説します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、財産目録以外の全文、日付及び氏名を自筆して押印した遺言書のことです。財産目録だけは、パソコン等を利用して作成することが可能となりました。
自筆証書遺言の形式には、訂正するときには二重線で消す等の細かな決まりがあります。
遺言書に使用する文言は、法定相続人については「相続させる」、法定相続人でない人については「遺贈する」とすることが望ましいです。少なくとも、相続財産を与えるときに、「任せる」や「託す」といった法的意味が明確でない文言は使わないようにしましょう。
なお、1枚の紙に夫婦共同で遺言をする等、複数人による「共同遺言」は無効となります。また、ビデオレターや音声記録等を遺言書の代わりにすることはできません。
公正証書遺言
公正証書遺言は、通常であれば公証役場に直接出向いて、公証人に作成してもらいます。
遺言者は原案を考えれば、遺言書を公証人が作成してくれるため、自分で遺言書を作成する必要はありません。
なお、作成された公正証書遺言を確認したら、公証人や2人の証人とともに署名押印することが必要となります。
後で揉めない遺言書を書くための3つの注意点
遺言書を作成しても、相続人が遺言書の内容に納得しない場合や遺言書の内容によっては、遺留分侵害額請求が行われることや、相続人全員による話し合い(遺産分割協議)が必要となることもあります。
相続人等が揉めるリスクを抑えるために、以下のような対策を行いましょう。
- ①遺言執行者を指定する
- ②遺留分に配慮する
- ③付言事項で気持ちを伝える
これらの対策について、次項より解説します。
①遺言執行者を指定する
遺言書によって、遺言執行者を指定することができます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために手続き等を行う人です。基本的には、遺言によって遺言執行者を指定する義務はありませんが、次のような遺言は、遺言執行者を指定しないと執行することができません。
- ●認知
- ●推定相続人の廃除および廃除の取り消し
- ●一般財団法人の設立
ただし、相続に関する知識があまりない人を遺言執行者に指定してしまうと、手続き等が進まなくなるおそれがあります。そのため、遺言執行者に弁護士等を指定しておくことができれば、複雑な手続きであってもよりスムーズに進めることができます。
②遺留分に配慮する
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に保障されている、相続財産の最低限の取り分です。
遺言書を作成するときに遺留分に配慮しないと、遺留分に足る相続財産を受け取れなかった人からの遺留分侵害額請求が行われ、トラブルに発展するおそれがあります。
なるべく、遺留分に足るだけの相続財産は分配するようにしましょう。
③付言事項で気持ちを伝える
付言事項とは、相続人等に伝えたい言葉を書き残したものです。例えば、家族に対する感謝の気持ちや遺言書を作成した経緯、相続財産の配分の意図、葬儀方法の指定等を記載します。
これらの付言事項には法的な拘束力はないものの、相続財産の取り分が少なかった相続人を納得させる効果等が期待できます。
遺言書の作成を弁護士へ依頼するメリット
遺言書を作成するときに、弁護士に依頼するメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- ●遺言書に記載するべき相続財産や、その価額について調査してもらえる
- ●遺言書の書き方や内容等についてアドバイスがもらえる
- ●自身の死後にトラブルが発生したときの対応を任せられる
遺言書の作成にあたって、以下のような困りごとがある場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
- ●どれだけ調べても、遺言書の書き方について自信がない
- ●自分が相続した不動産等の財産を放置していた
- ●相続争いを防止できるような遺言書を作成したい
- ●遺言執行者に指定できる人について心当たりがない
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自筆証書遺言の一般的な文例(ひな形)
ここで、自筆証書遺言の一般的な文例を掲載します。
遺言書
1 遺言者は、遺言者名義である次の不動産を、妻 甲野 花子(◯年◯月◯日生)に相続させる。
①建物
所 在 ◯県◯市◯町◯丁目◯番地
家屋番号 ◯◯番◯◯
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造
床面積 1階◯◯平方メートル 2階◯◯平方メートル
②土地
所 在 ◯県◯市◯町◯丁目◯番地
地 番 ◯◯番◯◯
地 目 宅地
地 積 ◯◯平方メートル
2 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、長男 甲野 一郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
3 遺言者は、遺言者名義である次の株式を、二男 甲野 二郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
◯◯株式会社 普通株式 ◯◯株
4 遺言者は、遺言者の有する、本遺言に記載のない一切の財産を妻 甲野 花子に相続させる。
5 遺言者は、遺言執行者として、長男 甲野 一郎を指定する。
付言事項
みんなと楽しい生活を送ることができて、私は幸せでした。私がいなくなっても、みんなで仲良く暮らしてください。
これからも安心して暮らせるように、母さんには家を残すことにしました。一郎と二郎は立派な会社に勤めているので、遺した財産には手を付けず、なるべく取っておきなさい。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 太郎 印

【ケース別】自筆証書遺言の5つの文例
自筆証書遺言で相続財産を分配するときの文例について、主なものを次項より掲載しているので、一般的な文例と併せてご確認ください。
①妻(夫)へ全財産を残す【子供がいる場合】
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻 甲野 花子(◯年◯月◯日生)に相続させる。
付言事項
我が息子 一郎へ。
父さんは、すべての遺産を母さんに遺したいと考えました。
一郎は、大きな会社に就職して出世し、十分に稼いでいるはずなので、遺産をすぐに相続する必要はないと思います。
母さんは大きな病気をしたので、これからも医療費がかかると思います。それと、家の段差をなくすためのリフォームも必要になるはずなので、お金の心配をさせたくありません。
ぜひ、父さんの考えを尊重してください。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 太郎 印
②妻(夫)へ全財産を残す【子供がいない場合】
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻 甲野 花子(◯年◯月◯日生)に相続させる。
第2条 遺言者より前に妻 甲野 花子が死亡していたときは、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を遺言者の弟 甲野 二郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、この遺言の執行者として、妻 甲野 花子(甲野 花子が死亡しているときは、甲野 二郎)を指定する。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 一郎 印
③子供同士で財産に差をつける
遺言書
1 遺言者は、遺言者名義である次の株式を、長男 甲野 一郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
◯◯株式会社 普通株式 ◯◯株
2 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、二男 甲野 二郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
3 遺言者は、遺言者の有する、本遺言に記載のない一切の財産を長男 甲野 一郎に相続させる。
4 遺言者は、遺言執行者として、長男 甲野 一郎を指定する。
付言事項
一郎は地元に残って、ずっと私の面倒を見てくれたので、多めに財産を相続させることにしました。
それでも、株価が少し下がっていることを考えると、二郎にも十分な財産を残せたと思います。
これからも、兄弟仲良くしてください。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 太郎 印
④親へも財産を残す
遺言書
1 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、妻 甲野 花子(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
2 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、長男 甲野 一太郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
3 遺言者は、遺言者名義である次の株式を、父 甲野 太郎(◯年◯月◯日生)に遺贈する。
◯◯株式会社 普通株式 ◯◯株
4 遺言者は、遺言者名義である次の債券を、母 甲野 月子(◯年◯月◯日生)に遺贈する。
管理金融機関 ○○証券株式会社
取扱支店 ○○支店
口座番号 〇〇〇〇
銘柄 ○○国債
銘柄コード ○○○○
額面 ○○円
5 遺言者は、遺言者の有する、本遺言に記載のない一切の財産を妻 甲野 花子に相続させる。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 一郎 印
⑤自分の兄弟姉妹・甥姪へ財産を残す(親・配偶者・子供がいない場合)
遺言書
1 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、弟 甲野 二郎(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
2 遺言者は、遺言者名義である次の預金を、妹 甲野 花子(◯年◯月◯日生)に相続させる。
○○銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯
3 遺言者は、遺言者名義である次の株式を、甥 甲野 一太郎(◯年◯月◯日生)に遺贈する。
◯◯株式会社 普通株式 ◯◯株
4 遺言者は、遺言者の有する、本遺言に記載のない一切の財産を弟 甲野 二郎に相続させる。
◯年◯月◯日
住所 東京都◯区◯町◯丁目◯番◯号
遺言者 甲野 一郎 印
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遺言書の書き方に関する質問
遺言書に生命保険について記載したい場合はどの様に書けばいいでしょうか?
生命保険金は受取人固有の財産とされるため、受取人を指定しておけば、基本的には相続に伴う問題は生じません。
しかし、2010年4月1日以降に契約した生命保険の受取人は、遺言書によって変更することが可能です。
受取人を変更するための書き方には、特に決まりがありません。ただし、受取人を変更するためには、保険契約者の相続人が保険会社に通知しなければなりません。また、変更前の受取人に保険金が支払われてしまうと、変更後の受取人は保険会社から保険金を支払ってもらうことができなくなります。
そのため、受取人を遺言によって変更するためには、遺言執行者を指定しておくことが望ましいでしょう。
遺言書の封筒の書き方を教えてください。
自筆証書遺言は封筒に入れなくても有効です。しかし、汚れて読めなくなるリスクや、内容を親族等に見られてトラブルになるリスク等があるため、なるべく封筒に入れるようにしましょう。
封筒は、なるべく二重封筒を選びましょう。表には遺言書であることを明記して署名し、遺言書の作成日を記入しましょう。
また、封筒には「開封せずに裁判所で検認してもらう」旨を記載しておくと良いでしょう。
最後に、封をした後で、綴じ代(とじしろ)に遺言書と同じ印鑑によって押印しましょう。
遺言書の書き方についてご不安な方はご相談ください。
自分で遺言書を作成する方は、まだ少ないのが実情です。ミスがあると、遺言書が無効になったり、親族の争いを引き起こしたりするリスクがあるため、正確な遺言書を作成しなければなりません。
そこで、遺言書を作成するときには弁護士にご相談ください。弁護士であれば、無効になるリスクや、争いを引き起こすリスクを減らした遺言書を作成するためのお手伝いができます。
また、相続手続きに詳しい人が親族等にいない場合には、子供等が手続きのために大変な苦労をするおそれがあります。弁護士が遺言執行者になれば、多くの手間がかからなくなるので、そのようなご要望についてもぜひご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)