遺産分割協議とは?流れや注意点など知っておくべき基礎知識

この記事でわかること
被相続人が亡くなると相続が発生します。相続人や相続財産等を調査して、遺言書がないことを確認したら、次は相続人全員で相続財産の分け方について話し合う遺産分割協議を行うことになるでしょう。
遺産分割協議では、気をつけるべきポイントが多数あります。必要条件が揃っていなければせっかく行った話し合いも無効になるかもしれません。
この記事では、遺産分割協議の流れや揉めやすいケース、成立させずに放置した場合の影響、協議がまとまらない場合の対処法等について解説します。
目次
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人全員が参加し、相続財産の内容を確認し、その分け方を話し合うことです。
遺産分割協議に参加する相続人とは、一般的には法定相続人のことです。
法定相続人とは、民法で定められている、被相続人の財産を相続する権利のある人です。
法定相続人は以下のように定められています。
- 配偶者:常に法定相続人になる
- 子:第1順位
- 両親等:第2順位
- 兄弟姉妹:第3順位
より順位の高い法定相続人がいる場合、下位の者は法定相続人になりません。
例えば、被相続人に子供がいる場合は被相続人の両親、兄弟姉妹は法定相続人にはなりません。
遺産分割協議は、相続人が1人しかいない場合や、遺言書が作成されておりその内容に従って相続財産を分配する場合等には行う必要がありません。
遺産分割協議に期限はないが早めに行う
法律上は、遺産分割協議には期限の上限は設定されていません。つまり、相続が開始してから何年経っていようとも協議は可能です。
ただし、相続放棄の期限は、自己のために相続が開始されたことを知ってから3ヶ月であり、相続税の申告は10ヶ月以内です。
それぞれ、期限を延ばせる制度はあるものの、なるべく早く手続きをした方が良いでしょう。
また、特別受益と寄与分の主張については10年以内に制限されているので注意しましょう。
遺産分割協議のやり直しは原則不可
遺産分割協議は基本的にやり直すことはできません。遺産分割協議で一度合意した内容は、「やっぱり気が変わった」等の理由で覆せるものではありませんので、安易に合意することは避けましょう。
もっとも、遺産分割協議が成立しても、新たに相続財産が見つかり、その財産の存在を知っていればこの協議内容にならなかったと考えられる場合には、錯誤により無効にできる可能性があります。
また、協議成立後、遺産分割協議書の作成前に相続人が亡くなった場合、協議内容を証明できないのであれば、亡くなった相続人の相続人を含めて協議のやり直しを行うことがあります。
まれに協議成立後に遺言書が見つかることがありますが、この場合には、遺言書内容ではなく協議内容の合意を継続すると相続人全員の意見が一致していればやり直しは不要です。
遺産分割協議のやり直しについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺産分割協議の流れ
遺産分割協議の進め方に特に決まった方法はありません。しかし、主に次のような流れで進めることが多いです。
- 相続人を確定させる
- 相続財産を確定させる
- 財産目録を作成する
- 遺産分割協議書を作成する
①相続人を確定させる
遺産分割協議を行うためには、誰が相続人なのかを確定させる必要があります。
被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を収集して確認する方法等により、相続人を調査、確定します。
相続人調査を丁寧に行うことによって、協議を終えた後で、新たな相続人の存在が判明するリスクを抑えることができます。
もしも調査に漏れがあると、相続人が足りないために遺産分割協議が無効となるおそれがあります。
そのため、調査を間違いなく行うことが重要です。
相続人調査の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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②相続財産を確定させる
遺産分割協議を行うために、相続財産の内容を確かめます。
相続財産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれるため、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払金等もすべて探しておく必要があります。
相続財産調査は、誰がどの財産を相続するかについての重要な判断基準になります。
調査が不十分だと、新たに発見された財産を誰が相続するかについて揉めるリスクがあるので、漏れのない正確な調査を行う必要があります。
主な相続財産を表にまとめたのでご確認ください。
遺産分割協議の対象となるプラスの財産 | |
---|---|
不動産 | 土地、家屋、借地権等 |
現金・有価証券 | タンス預金、株式、債券等 |
動産 | 自動車、バイク、宝石、貴金属、骨とう品等 |
その他 | 著作権等の知的財産権、ビットコインなどの暗号資産等 |
遺産分割協議の対象となるマイナスの財産 | |
負債 | 借金、保証債務等 |
税金関係 | 滞納していた住民税や固定資産税等 |
その他 | 未払いの医療費、クレジットカードの未払金等 |
相続財産調査の方法等について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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③財産目録を作成する
財産目録とは、どのような相続財産が、どの程度の金額や分量だけ存在しているかをまとめた書類です。
プラスの財産もマイナスの財産も、すべて記載します。
財産目録を作成する義務はありませんが、協議を進めやすくするために、作成するのがおすすめです。
④遺産分割協議書を作成する
財産目録を基に相続人全員で話し合い、全員の同意を得てから遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書とは、相続財産を誰がどのように相続するか等について記載した書面です。
遺産分割協議書に記載すべき事項として、主に次のようなものが挙げられます。
- 被相続人と相続人が誰であるか
- 遺産分割の対象となる相続財産
- 誰がどの財産を相続するか
- 寄与分や特別受益があればその内容
- 相続財産が後で発見された場合の処理方法
- 相続人全員による署名押印
遺産分割協議書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺産分割協議書と遺産分割証明書の違い
遺産分割証明書とは、遺産分割協議の内容を記載して相続人の1人が署名押印する書面です。
遺産分割協議書とは違い、署名押印した1人について証明書として利用できます。
全員分の証明が必要となる手続きでは、全員分の遺産分割協議証明書が必要となります。
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遺産分割協議でよく揉めるケース
土地や不動産がある場合
不動産は現金のように簡単に分けることができないため、誰か1人が取得するのか、もしくは相続人全員の共有にするのか決めなければなりません。
前者のように相続人の1人が取得しても、他の相続人へ各人の相続割合分を現金で支払えない場合はトラブルになります。
また、後者のように共有財産とすると、その不動産を売却しようと思っても共有者全員の同意が必要となり売却できないといった後々のトラブルが発生する可能性もあります。
さらに不動産の評価額の査定方法についても各相続人によって主張が異なるケースもあります。
家業がある場合
家業がある場合には誰が後継者になるのかといった問題が発生します。
また、その後継者が家業に関する遺産内容を他の相続人へ開示せず、相続財産の全体が不明瞭なまま遺産分割協議を強行しようとするパターンもあります。
そして後継者が必ずしも家業を継ぐことに前向きとは限りません。
我慢して後継者になったにもかかわらず、相続割合が等分になるのは納得できないといった心理的側面から遺産分割協議で揉めることもあります。
相続人以外が参加した場合
相続問題では、相続人以外の人間が意見することもよく見られます。
例えば、相続人の配偶者にとっては相続財産の配分は決して他人事では無いため、自身の権利の有無にかかわらず遺産分割協議の場に参加する傾向があります。
しかし、この場合の参加は利益を追求するためになることが殆どですので、遺産分割協議を乱す結果になることが多いでしょう。
遺産分割協議をしないで放っておいたらどうなる?
遺産分割協議を行わずに放置しておくと、不動産については被相続人の名義のままとなり、固定資産税は被相続人の配偶者等、相続人の代表者とみられる人に対して請求されます。
本来は相続人全員に支払い義務があることから、誰が負担するのかについて揉めるリスクがあります。
銀行口座についても、名義変更をしないと凍結したままの状態となり、10年経つと休眠口座になってしまいます。
その場合には、通常の相続手続きに加えてより多くの手続きが必要となるでしょう。
さらに、被相続人に借金があった場合、遺産分割協議も行わず相続放棄もしないままでいると単純承認したとみなされ債務を背負うことにもなります。
これらの事態を防ぐために、遺産分割を放置せず、できるだけ早く協議を進める必要があるでしょう。
遺産の分割方法
相続財産の分割方法は、以下の4つに分けることができます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
それぞれ、どのような特徴があるのか、デメリットも踏まえて確認してみましょう。
現物分割
遺産をそのまま分ける方法が現物分割です。たとえば、自宅不動産は長男に、現金は長女に、株式は次男に、といった分け方です。
財産の種類ごとに相続するため、相続財産を細分化せずに残せるのがメリットですが、財産の種類によって価値に差があるため、各相続人に公平に分けるのが難しいというデメリットがあります。
代償分割
特定の相続人が分割の難しい遺産を現物で取得し、その代わりに他の相続人に対して金銭を支払うことで相続割合の調整をとる方法です。
特に不動産が相続財産に含まれる場合には代償分割を選択されることが多いのですが、取得する相続人に金銭の支払い能力があることが必須となります。
換価分割
不動産など分割できない相続財産を売却などによって現金へ換金し、各相続人へ分配する方法です。
不動産を取得したい相続人がいない場合や、代償分割するには代償金の準備が難しいといったケースでよく選択される分割方法です。
現金に換えることで相続財産を公平に分けることができますが、売却する手間や仲介業者への費用等の負担もあるので、相続人間で負担について事前に話し合っておく必要があります。
また、売却すると譲渡所得税が発生する可能性がある点にも注意が必要です。
共有分割
相続財産を複数人で共有して相続する方法です。
たとえば相続財産である不動産を複数の相続人で共有名義にし、各相続割合の持ち分を登記するのが一般的でしょう。
ただし、共有財産となれば処分行為を単独で行うことはできないので財産としての活用に制限があります。
その状態で二次相続となった場合には、さらにトラブルの元になる可能性が高いと言えます。
一度共有財産となったものを単独名義にするには共有物分割請求を行う必要があるので、共有分割の選択は慎重に行いましょう。
遺産分割協議が無効になるケース
遺産分割協議は相続人全員が合意していることが絶対条件です。そのため、相続人が欠けた状態で行った協議は無効となります。
遺産分割協議が無効となるケースとして、主に以下のようなものが挙げられます。
- 全員の合意がない場合
- 相続人に未成年者がいる場合
- 相続人に認知症の人がいる場合
これらのケースについて、次項より解説します。
全員の合意がない場合
遺産分割協議において、相続人全員で合意していなかった場合には協議は成立しません。
多数決で確定するわけではないということを覚えておきましょう。
相続人が1人でも欠けていると、その遺産分割協議は成立しません。
そのため、後から協議に参加してない相続人が判明することのないように、相続人の調査はしっかりと行いましょう。
血縁関係は把握できていると思っても、親族が把握していなかった子が存在するケースもあるため、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍で確認が必要です。
相続人に未成年者がいる場合
相続人が18歳未満の未成年者である場合には、その相続人が単独で参加した遺産分割協議は無効となります。
なぜなら、遺産分割協議は法律行為に該当するところ、未成年者は有効な法律行為を単独で行うことができないからです。
また、通常の場合、未成年者についてはその父母や未成年後見人が法定代理人とし遺産分割協議を行いますが、未成年者と同様に父母等自身も相続人であるケースが多々あります。
この場合、未成年者と父母等は一方が得をすると一方が損をする「利益相反」の関係となるため、父母等が法定相続人として協議に参加すると協議が無効になるリスクが高いです。
利益相反が問題となる場合には、裁判所へ特別代理人の選任を申立てる必要があります。
特別代理人は相続に利害関係のない人物が選任されることが多く、手続きに時間がかかるため弁護士に相談した方が良いでしょう。
相続人に認知症の人がいる場合
相続人が認知症を患っている場合、その症状の程度によっては意思能力が認められず、その状態で法律行為である遺産分割協議を行うと無効になってしまいます。
相続人の中に認知症の方がいる場合には、法定後見制度を活用することが考えられます。
法定後見制度は、意思能力が不十分な人が不当な契約をしてしまうことのないよう、後見人等が本人に代わり法律行為を行うなど本人を保護するための制度です。
法定後見制度は家庭裁判所へ申立をし、裁判所が後見人を決定します。
ただし、後見人はあくまでも本人の利益を守る立場にあるため、本人の相続分が法定相続分を下回るような協議内容には応じることができない等、柔軟な結論を出すのは難しいでしょう。
また、遺産分割が終わっても、後見を終了することは基本的にできず、一生涯、後見人に報酬を支払い続けなければなりません。
そのため、なるべく生前に遺言書を作成しておき、遺産分割が必要ないようにしておくのが望ましいと言えます。
遺産分割協議に応じてもらえない場合やまとまらない場合の対処法
遺産分割協議に応じない相続人がいる場合には、弁護士に遺産分割協議の仲介について相談しましょう。
専門家のアドバイスを受けることで、交渉が好転する可能性があります。
それでも難しい場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることも検討しましょう。
遺産分割調停では、調停委員に間に入ってもらうことによって交渉を進めます。
調停が成立しない場合には、遺産分割審判に移行して結論を出してもらうことになります。
遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談ください
遺産分割協議は適切に行わなければ無効の可能性があるため、確かな知識が必要です。
そして、遺産分割協議に至るまでには相続人調査や財産調査が適切に行われていることも必須となりますが、決して簡単ではありません。
協議が開始しても各相続人の意見が簡単にまとまるかは財産内容などによっても異なります。
相続は調査~協議までケースバイケースですので、早期に専門家である弁護士に相談し、アドバイスを受けながら進めるのが最適な方法といえるでしょう。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)